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 なっきぃがイメージする僕とお似合いの女の子が舞ちゃんで、ちょっとがっかりした。
舞ちゃんはすごく可愛いし、そこらへんの男の子が恋人に出来るような相手じゃないこともわかっている。
高望みだとしても、僕がお似合いだって言ってほしいのは、舞ちゃんじゃなくて舞美ちゃんだ。
僕と舞美ちゃんが並んだら、きっと誰でも姉と弟だと思うに違いない。
前はそれでもいい、憧れの舞美ちゃんのそばにいられるだけで十分だって自分に言い聞かせていた。
でも、今はそれだけじゃ満足できない。
秋のコンサートでキスをしてから、僕はそれ以上の関係を望んでしまっている。
舞美ちゃんの恋人になりたい。

「そんな顔しないで。乗り物に乗りたいって言ったのはちっさーでしょ。さ、いこう」
「うん。そうだね、こんなところで話していても、時間がもったいないしね」

 なっきぃとのデートは本当に面白かった。
初めはお姉さんっぽくしようと落ち着いていたのに、マスコットキャラクターが登場するや否やなっきぃは騒ぎだした。

「ちっさー、みてみて。私たちの方に近づいてくるよ。うわぁ~可愛い。写真撮ろうよ」

 気づいたら、僕以上になっきぃの方がはしゃいでいた。
ジェットコースターに乗ったらきゃあきゃあ騒ぐし、ジャングルの中を冒険するアトラクションに行くと動物をみつけては名前を叫んだ。
普段、楽屋でも大人しいなっきぃの楽しそうな顔がみられて、誘った僕としては最高のお土産をもらった気分だ。

「ちっさー、ほらほら、このカチューシャ可愛くない? 耳がついてるんだよ」

 今は少し早いけど、お土産屋さんにあるものを買いに来ていた。
そのあるものというのが、なっきぃが試着しているネズミの耳のついたカチューシャだったりする。
遊園地内をこれをつけて歩いている女の子をみつけ、自分も欲しくなったというので寄ろうということになった。
鏡をみて、映る自分に笑いかけ、カチューシャを可愛いとやたらと褒めるなっきぃ。
女の子って何故か物にまで可愛いって単語を使うのが不思議なんだよな~。
僕も動物は大好きだから可愛いのはわかるけど、さすがに物にまで可愛いとは言わない。
そういう感覚を身につけるのも女の子になりきるには大事なのかな。

「私は女の子用のにしようっと。ねぇ、ちっさーもつけてみない? 男の子用があるんだよ」
「えぇ~僕はいいよ。だって、そういうのって女の子用でしょ。僕はカチューシャするほど長くもないし」

 僕はこの時にはまだショートだった髪を撫でつけ、照れ隠しに下を向いてしまう。
自分ではカチューシャなんて似合うはずがないと思っているから、抵抗がある。
それでも、なっきぃは僕の前にカチューシャを差し出して、つけてと催促してくるので、しぶしぶつけてみることにした。

「キュフ、よく似合うじゃん。ちっさー、可愛いよ。これなら、女の子同士で遊びに来たみたいだよ」
「そ、そうかな。仕事で見られるならいいけど、プライベートだとそれは複雑かも」
「いいじゃん。ちっさーが可愛いことに違いはないんだし。ほら、一緒に買おう」

 なっきぃに押されるがまま、つけた状態でカチューシャを買うはめになった。
これをつけた姿でいるところを舞ちゃんにはみられたくはないや。
みられでもしてみろ、馬鹿にされるに決まっている。

「ちっさー、女の子に気配りが足りないぞ」
「え、あ、あぁ~ごめん。荷物持ってあげないとだね」
「ううん、そうじゃなくて。舞ちゃんにも買ってあげてないでしょ。だから、ほら、私が代わりに買ってあげちゃった」

 そう言って、袋からなっきぃがしているのと同じカチューシャが出てきた。

「帰ったらちゃんと渡すんだよ。舞ちゃんもすごく似合うと思うな。ちっさーが男の子のをして、舞ちゃんが女の子をしたら本当のカップルみたい」

 どうあっても、なっきぃは僕と舞ちゃんをカップルにしないと気がすまないようだ。
ここまでされてはつき返すわけにもいかないから、ありがとうとお礼を言って、素直に受け取った。
贅沢な悩みなのは自分だってわかっているつもりだけど、僕は舞美ちゃんが好きなんだ。
それは舞ちゃんだって好きだけど、それが恋愛感情なのかは説明がつけられなくてもどかしい。
それだけに舞ちゃんが僕を好きでいてくれるのは、どこがよかったからなのかピンとこない。
性格にしたって優柔不断で、スタイルにしたって身長ではもう舞ちゃんに負けてしまっている。

「℃-uteじゃなくて、普通の男の子と女の子としてでも最高のカップルだと思うな」

 一人勝手に盛り上がるなっきぃのさりげない一言。
普通の男の子と女の子、か。
本当にただの学生として僕らが出会っていたらどうなっていただろう。
もしも僕が一般人で違う出会い方をしていても、舞ちゃんは好きになってくれたのかな。
なっきぃに渡されたカチューシャを眺めながら、ふとそんなことを考えてしまった。

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