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 二組めまでの撮影が無事に終了し、いよいよ私たちの出番というところで休憩が入った。
あたりはすっかり暗くなり、場所はお寺だからいつお化けが出てきてもおかしくない。
風が強く窓や戸を叩きつけ、私の恐怖心を容赦なく煽ってくる。
怖がりな私にはとてもキツいロケがこれから始まろうかと思うと、かなり気が滅入ってしまう。
スタッフさんは簡単だよと説明してくれたけど、どうしてまたお墓に行かなくてはならないんだろうな。
怖い怖いと思うと、トイレが近くなり私は床がきしむ廊下を渡ってトイレまででかけた。
明かりをつけてもぼんやりとした明かりで頼りなくて、こんなところからすぐに抜けだしたい。
早く用を済ませて皆のいる場所に戻りたい、なんて思っていると、どこからか声が聞こえてきた。

「えりかちゃんさ、ちぃをうちらの仲間にするってマジ?」
「まぁね。だって、千奈美なら面白がって一緒にやってくれそうじゃん」
「だけどさ~あの子やるかな。ちぃってそういうのやるイメージないんだよね。うちらだけでいいじゃん」
「誘えばやってくれると思うよ。千奈美だって悪戯好きだから」

 私には二人の女の子の声が、幽霊やお化けに思えてしまって誰の会話なのかはさっぱりわからない。
腰を抜かしそうなくらい怖くて、声の主が幽霊やお化け以外なら誰でもよかったのだ。
もうこんなところにいたくない一心で、すくんでしまう足を奮い立たせてトイレから走った。
後ろは振り返らずにひたすら走って走って走りまくった。
だから、部屋に戻る前に舞美の顔がみられた時は、安心して急に涙が出てきて困った。
抱きついた瞬間、「もう泣かないの」と言って背中に回してくれた腕の温もりが心地よかった。

 私が落ち着いた頃、舞美は恥ずかしそうに頬を赤らめて訊ねてきた。

「あ、あのぉ~、千聖と愛理のこと聞いてくれた?」

 やっぱりそのことだったか、とちょっぴりおかしくて笑いそうになる。
気になることはそれしかないだろうこともわかっていたから、私はサインを作って話した。

「うん。バッチリだよ。千聖はね、あんたのこと好きだっていうじゃん。全然問題ないよ」
「ちょっとぉ~それは私が聞いてほしかったことじゃないじゃん。私は愛理との関係を聞いてって言ったのに」

 とびっきりの笑顔でVサインまで作って報告し、肝心なのはそこじゃないと指摘されて苦笑いするしかなかった。
そうだった、私は二人の関係性を探ってと言われていたのだった。
私も舞美に負けず劣らず何か抜けているようで、こういうところで親近感が湧いてくる。

「そ、そうだっけ~にゃははは。いいじゃん、気持ちは聞き出せたんだしさ」
「それは私も知ってるんだよね。私に好きって言ってるわりに、愛理を誘ったからおかしいと思ってるわけ」
「大丈夫だよ。向こうは遊園地行くなら舞美が一番だって言ってるんだからさ」

 舞美と遊園地に行きたいってこと以外の情報は全然聞き出せていないのだから、ここは誤魔化すしかない。

「もうそれだけじゃダメだよ。千奈美の馬鹿」
「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。親友がせっかく助けてやったのにその言い草は酷いだろ。次から聞いてやんないぞ」
「いいよ。千奈美じゃ頼りないってわかったから。次からは桃に頼もうっと」
「あ~本当に酷い奴。本当に聞いてやらないぞ~」

 笑い交じりに私と舞美がふざけあう中、あいつの身に忍び寄る影があったとは思いもしなかった。

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