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 どんな女の子でも自分をお姫様として扱ってくれる王子様を、心の奥底で求めているものだ。
だからといって、単純に特別扱いをすればいいというわけでもないから、女の子の相手は一筋縄ではいかない。
それがお嬢様ともなると、普段からちやほやされている分、恋人に求める対応も一般庶民とは違う。
僕が今までにデートしたお嬢様には、英国王室御用達の高級茶葉が出る専門店でなければお茶をしない子がいた。
そんな場所など知らない僕は、携帯端末やら聞き込みに奮闘して時間を潰してしまい、お嬢様は怒りだしデート代金の全額返却する羽目になってしまった。
それ以来、ご利用相手がお嬢様とわかると、いつ高級店に行きたいと要求されてもいいよう、デート現場周辺のお店をインプットするようになった。
インプットが功を奏したか、あの一件以降は全額返却するなんてヘマはしていない。
そんなのは当たり前だ、僕はいつまでもエッグでくすぶっているよりも、早くキッズに昇格したいのだ。
表面的には笑顔を装いつつも、内面では仕事を確実にこなすことだけを考えていた。

「ここはいつも人でいっぱいだねぇ。平日でも道いっぱいに人がたくさんいるから参っちゃう」
「仕方無いよ、雑誌にも特集記事が載るくらいだし、人気スポットなんだよ」
「たまにはゆっくり見たいじゃない。私と栞菜だけでここを独占してさ」
「そうなったら、うちらがVIP待遇されてるみたいで面白いね。今度やってみようか?」
「うん」と頷き、ウフフフ、と笑い声を洩らし、幸せそうに満面笑顔で僕の小さな肩に頭をのせてくる。

 今、女の子たちで賑わう通りを、僕と愛理は本当の恋人のように手を繋いで歩いている。
平日とはいえ人ゴミの多いこの通りを歩く僕らは、決してはぐれたりしないよう、指と指を絡めあう恋人繋ぎで手を繋ぐ。
すぐ隣を歩く愛理をちらっと横目で確認すると、僕の目線に気づいたのか目を細めてにっこりと微笑んだ。
もうすっかり気を良くしている愛理お嬢様は、歩きづらいのもお構いなしにくっついてくる。
これもデートが順調に進んでいる証拠であるので、僕としても少々歩きづらかったところで我慢あるのみだ。

「ねぇねぇ栞菜、みて。あそこに可愛い雑貨屋さんがある。寄っていこう」

 しばらく歩いたところで、愛理が何やら寄りたいお店を発見したらしく、指を指して場所を示してきた。
メルヘンチックな外観に、店内もそれに見合ったこれまたメルヘンな造りで、まるで童話のお家がそのまま現実世界に飛び出してきたかのようだ。
僕はお店を見て、すぐに如何にも愛理が好きそうだと納得してしまい、失笑していた。

「あぁ~今笑ったでしょう? 高校生にもなってこんなお店で行くなんてガキだとか思ったんじゃない」
「違うって。愛理なら好きそうだなと思って、納得しただけだって」
「だといいですけどぉ。まぁどう思われようと、お店には突撃しちゃうんだけどね。ほら、行くよ」

 僕の腕を引っ張り、半ば無理やりお店に連れ込む愛理。
こんな時、彼女はそこら辺をぶらぶらと歩き回る女子高生と変わらない仕草や行動をみせる。
だが、それも束の間で、すぐに彼女は学校であだ名されている”不思議ちゃん”的行動をしだす。

「一人でさっさと歩くなよ、ついていくのが大変じゃないか」
「文句言わないの。男なら女の子を引っ張っていくくらいじゃないとダメだよ。『俺についてこい』って」

 突如、人気のない通路に入るとバレリーナにでもなったつもりか、爪先立ちでくるくると回転しながら移動をはじめた。
目が回らないのか気になるが、問題はそれよりもここがいつ人が来るかわからない場所ということだ。
僕も調子に乗って羽目を外すことはあるが、こんな場所ではとても外すことは出来ない。
こういうところが愛理の”不思議ちゃん”的行動なのである。

「今どき、そんな古風な男は流行らないって。今の時代、男と女は対等の関係なんだからさ。俺は愛理と対等がいいの」
「対等ね、ふぅ~ん。栞菜に男らしさを求めるのは間違ってるかもね。あんまり男らしくても栞菜じゃないかも」
「だろう? だからさ、俺は今のままでいいよ。愛理も今の俺を好きになってくれたんでしょ?」
「まぁね~。あっ、カッパちゃんはっけ~ん。行こっ」

 またしても、彼女は僕の腕を取って、目的のカッパのぬいぐるみが並べられた棚の前まで走った。
カッパには目がない彼女は、大小さまざまなぬいぐるみを手にとって、じっくり眺めだした。
一つ一つ抱きしめ、抱き心地を確かめる顔には、食事時にしかみせない至福だと言わんばかりの輝きに満ちている。
愛理は自分の顔ほどもあるぬいぐるみが気に入ったか、自分の目線の位置にまで持ち上げてみつめあう。

「この子が一番可愛いなぁ~みてみて。栞菜くぅ~ん、あ・そ・び・ま・しょ」

 カッパの両手を持って左右に振り、あたかもカッパが自らの意思で手を振っているかのようにみせてくる。
僕もそれに応えるため、手近にあったぬいぐるみを同じように動かした。

「いやですよぉ~」
「あぁ~また意地悪したぁ~栞菜の馬鹿。どうしてそんなことばっかり言うの? えい!!」

 愛理はカッパの右手を持ち上げ、僕の持っていたカッパを叩く振りをしてきた。

「痛い痛い。酷いことするな~愛理カッパは。こうなったらお返しだ。えい!!」と、僕はカッパのぬいぐるみを突進させた。

「もうこれじゃあ動けないよ。じたばたして逃げてやるんだから。うぅ~ん」
「逃がさないよ。愛理カッパは栞菜カッパのものにするんだ」
「もぉ~そこはカッパじゃなくて愛理にして」

 愛理が上目遣いに僕に『抱いて』と合図を送ってきたのをみて、僕はそろそろ次の段階へ進む頃合いかと確信した。

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