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 女の子って皆ませているものなんだろう、桃ちゃんにしても、舞ちゃんにしても、愛理にしても。
皆、男の子よりも先に恋愛に興味をもつから、自然とその先のことも興味が出てくる。
だからって好きでもない相手とキスなんかしても嬉しいものだろうか。
愛理は僕よりもキスに興味があるような事を言っているのに、ファーストキスが僕でいいのか?
不思議な子だと思っていた僕も、まさかここまで不思議な子だと予想外だ。

「い、いつから気づいていたの?」
「っていうことは男の子で正解なんだ。ケッケッケ」

 ゆ、誘導尋問には気をつけろってドラマの台詞であったけど、実際に使うんだね。
僕は愛理がてっきり確信してるものだと思って返した言葉だったから、こうなるとやられたとしか言えないや。
みるみる顔は赤くなっていくし、体が震えだしてしまうしで、もう終わった。
愛理が怖くてみたくないんだけど、恐る恐る顔をみたら八重歯をみせて笑っていた。
いつもはチャームポイントに思っていた八重歯も、今は怖さを倍増させる。

「そ、それまでは・・・わ、私が女の子だって信じてたっていうこと?」
「ふふっ、もう私なんて女言葉無理して使わなくていいよ。もうバレたんだもん。信じてたからまさかって感じかな」

 今までは演技で言っていた『私』も今は訳が分からないうちに口にしていた。
それを愛理は余裕がある顔で使わなくていいよ、なんて言い出して、完全に愛理のペースだってわかった。

「そうだよね。だって、普通女の子しか入れないオーディションだったもんね」
「うん。あの時は男の子っぽい子だなって思ってたのね。でも、気づいたらあぁ~やっぱりって」
「愛理は頭がいいし、気づいちゃうよね」
「勉強はしてるけど、頭がいいって程じゃないよ。気づいたのは、舞ちゃんのちっさーといる時の様子が不自然だったから」

 舞ちゃんは桃ちゃんの次に気づいた女の子だから、秘密を握ったままかれこれ何年か経つ。
その間、舞ちゃんは二人きりの時は小学生のくせしてやたら甘え方が小学生っぽくないそうだ。
愛理曰く、あれは「恋する女の子の目」らしく、同性の女の子相手にするとは思えないとまで言った。
言われてみれば、僕もドラマでしか見たことない大人の女の人が男の人といる時の表情によく似ていた。

「それでも、舞ちゃんの年齢を考えたら、男の子相手とはいえ、ませてるよね」

 苦笑まじりの愛理は切なそうな顔をしている。
愛理だって僕からしたら、随分大人っぽい考え方をするなって思う。
今回でおかしいと思われたら、その時点でダメだって学べた。
だから、もしかしたら僕はもう他にも誰かに気づかれているかもしれない・・・なっきぃはありえる。
なっきぃはしっかり者だし、愛理みたく気づいているのに気づかないふりしてくれている可能性もある。

「そんな事から僕がおかしいと思ってたなんてすごいなぁ」
「あぁやった経験が活きたのかも。だって、大人っぽい曲をつんく♂さんからもらっちゃうんだもん。
 歌詞の内容がわからなくてお母さんに質問したりして、勉強したからかな」
「僕はあぁで唄ってる愛理が羨ましかったよ。テレビみて唄ってる愛理をみてる自分が嫌になりそうだった」
「でも、今は一緒に唄えてるんだからいいじゃない。ちっさー、歌唄ってるとき幸せそうだよ」
「えへへ。うん、唄うのは子供の頃から好きだし」

 この後、僕と愛理は歌という共通点が出来たことで話は盛り上がった。
あんなにさっきまで怖いと思っていたのが嘘みたいに僕は愛理を信頼して話した。
それに愛理も喜んでくれ、僕とはしない学校の話もしてくれた。
でも・・・「でも、ちっさーとキスするの忘れたわけじゃないからね」、と無情にも言われてしまった。

「僕とキスをしたがるのはどうしてなの?」
「せっかくこんなにバレないところに男の子がいるんだから、それを活かさない手はないでしょ」
「そういうことか」
「ただし、キスするときはリードしてね。私、初めてだから」
「うん。わかった。キスしよう」

 愛理はゆっくりと目を瞑り、ちゃんとお願いだよ、と呟いた。
その顔には初めてのキスに対する不安が感じられて、愛理の女の子らしい面がみられて安心した。
よかった、こういう愛理のほうが僕は好きだ。
ライバル意識はあったけれど、僕は愛理が嫌いなわけじゃなく好きだったし、憧れてもいた。
そっと愛理の肩に手を置き、そっと顔を近づけていく。
唇が触れ合う瞬間、愛理から漂う甘い香に少しクラクラさせられた。
舞美ちゃんとは違うけど、とってもとろけそうな匂いがする。
心臓もバクバクいって破裂しそうな速さで鼓動を打って、慣れてる僕でも緊張する。

「ちっさー、早くぅ」
「いくよ、愛理」

 僕は勢いまかせにチュっと唇に触れ合わせ、すぐに離してしまった。
愛理の唇の感触も覚えられない速さで唇を離した僕に、愛理は不満そうに目を開けてぶすっとした。

「ちっさー、早すぎだよ。もうちょっと唇の感触を確かめさせて」

 僕はべったりした掌をベッドのシーツで拭き、また愛理の華奢な肩に手を置く。
今度はちゃんと感触がわかるようにキスするわけだから、緊張感がこの時点で高まってきた。
目が合い、愛理は目を閉じていく。
それを合図に僕も覚悟を決め、ゆっくりと顔を近づけていき、キスをした。
数秒間が何時間にも何日にも感じられる。
愛理の唇って柔らかいなぁと思った頃、愛理から唇を離していた。

「キスってこういうものなんだ。ケッケッケ」
「そこ、ケッケッケって笑うとこかな」
「だって、自然とそう笑っちゃったんだもん。ねぇ、ちっさーは舞ちゃん以外にもキスした人いる?」
「ううん・・・愛理が初めてだよ」
「ふぅ~ん。ねぇ、好きな人っているの?」
「な、何さ、いきなり・・・」
「そんな顔するってことはいるんだ。ねぇねぇ、誰々?」
「や、嫌だよ。それだけは言うもんか」
「えぇと同じクラスの子?」
「違うよ。何が何でも僕は言わないからな。しつこく聞いても無駄だぞ」
「学校の子でもなさそうだし、℃-uteのメンバーとか?」
「えぇ!?」
「ちっさー、わかりやすいなぁ~その反応からすると誰だろうな」

 図星すぎる。
嘘が下手な僕はどうも言葉にしなくても顔で言っているようなものだから、すぐに皆、僕の嘘に気づいてしまう。
メンバー一人一人言っていたら、どんな人でも相手がわかる。
でも、そんな苦労をしなくても愛理はすぐに見抜いていたらしく、一人目で言い当ててしまった。

「舞美ちゃん?」
「・・・」
「やっぱり~舞ちゃんは一方的にあっちが好きって感じがしてたから。ちっさーは舞美ちゃんといる時、いつもと違う」

 僕はもう無言で顔を真っ赤にして俯いた。
恥ずかしい秘密がまたバレた、それも誰にも言ったことがない秘密を。
僕はどう反応したらいいかわからず、ただ「あぁ」とか「うぅ」しか言えない。
どうしてもこうも僕の周りは秘密に気づくんだ?
あぁ~これは神さまの悪戯ってやつじゃないだろうか。
もう頭がグチャグチャでまともに考えが浮かんでもこない僕に、愛理がある提案をしてきた。

「ステージ上で舞美ちゃんに告白しちゃえば?そう、さっき私にしたみたいにキスで」

 これがファンの人たちの間でも話題になった、コンサートのキス事件の始まりだった。

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