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 ちっさーが男の子だとわかった日、あの日は私にとっても特別な日になった。
私たちはメンバー同士で頬っぺたにキスをする程の仲のいいグループだけれど、口と口ではしたことがなかった。
しかもステージ上でされるとは予想外だった。
リハーサルでも昼公演でもそんな事はなかったのに、夜の公演でちっさーが突然私の唇を奪っていった。
『YES!しあわせ』、この曲には歌詞の中に『キスしてる』というフレーズがある。
そこの振り付けに私とちっさーが向き合ってキスをする振りをするところがあって、そこでちっさーからキスされたのだ。
最初はびっくりして何をされたのか一瞬わからなかったけれど、ちっさーがしってやったりって顔で笑っているのをみて
あぁキスしたんだと実感が湧いた。
私は照れ臭くて、すぐに顔を逸らしてしまったのだけれど、思えばそうして正解だったのかもしれない。
あの時点では知らなかったとはいえ、私はあろうことか男の子とキスをしてしまったのだから。
もしも、男の子とわかっていたらきっととんでもなく緊張してステージどころじゃなくなっていたと思う。
ちっさーは男の子だし女の子を好きになるのは当然のことなのに、その相手が私なのは意外過ぎて現実味がない。
私たちは家族みたいに強い絆で結ばれていると思っていたから、あの子が私を異性としてみているのが不思議だった。
私はちっさーを意識して男の子としてみた事はないけれど、ずっとボーイッシュな子だとは思っていた。
それがまさか本当に男の子だったから、驚きもしたし同時にやっぱりと頷いてしまう部分は少なからずあった。
フットサルをしている時のちっさーは活き活きしていて、グラウンドで駆け回る姿には好きなんだなと微笑ましくみていた。
ドリブルでボールを捌くテクニックは私たちの中でも抜き出てセンスがあるって監督も言っていたし、
ちっさーが℃-uteの活動をしていなかったならサッカー選手になれたかもしれない。
ちっさーのフットサルをしている時の横顔、それを思い出すとちょっぴりカッコイイなぁと何故だか私が照れてしまう。
まだ男の子って知ってから日が浅いし、年下でまだ子供なちっさーを意識しているとは思えないのにこの気持ちは何?

「舞美ちゃん、今度のバスツアーでちっさーと同じ部屋にしなよ」

 これは名案とばかりに目を細めてうっとりした笑顔で提案してきた愛理。
彼女はちっさーが男の子って知らない筈なのに、キスをしてからは面白半分でやたらと二人にしたがる。
それだけならいいのだけれど、ちっさーをちらっとでも見ていると「見てたでしょ」とからかってくる。
確かに最近は撮影の合間の休憩時間はついちっさーを目で追っていることも多い。
でも、それはちっさーの秘密が皆にバレないように私も気をつけているからであって、決して好きとかではない。
と、自信ないけどそう思っている。
愛理にはそのからかった後の私の慌てっぷりがみたいから言っているような節がある。
結構、愛理も落ち着いているようでいて子供な面があるのには少しだけ安心させられる。

「えぇぇぇ~何でよぉ。ちっさーちっさー言うなら愛理が一緒になればいいじゃん」
「私は栞菜と同じ部屋になるからいいよ。えりかちゃんはなっきぃと一緒で、舞ちゃんは私たちと一緒でもいいし」
「何、もう勝手に部屋割り決めてるの。やだなぁ~私にも選ぶ権利あるでしょ」
「選ぶ権利はあるけど、皆にも意見きいてみてからでも遅くないよ。たぶん多数決でこれで決まりかな」

 ここまできたら、部屋割りは愛理の案が通ったも同然だろうな。
皆も私が慌てる様子をみたら、これは面白そうって事になってどんなことしても決定になる。
舞ちゃんは特に私が慌てる様子をみて「面白い」って声をあげて調子に乗るタイプだし、嫌になっちゃう。
そういえば、舞ちゃんはあれだけ仲が良くて一緒にいるのに気づかないなんて鈍いなぁ。
ちっさーが男の子だって知ったらうるさそうだし、舞ちゃんは知らない方がいいかもしれないな。
そうだね、秘密を守るって意味でも私が一緒になるのが一番かもしれない。

「へへん、いいよ。私がちっさーと一緒の部屋になるよ」
「どうしたの?いきなり物分りよくなっちゃってさ」
「ま、まぁいいじゃん。ちっさーの面倒をみてあげようかなってね。あははは」
「もう気まぐれなんだから。わかった、えりかちゃんたちにはお仕事で会った時に話しておくね」
「はぁい。愛理もBuono!の活動も頑張るんだよ。じゃあ、お休み」
「うん、お休み」

 電話を切ると、私は疲れが出たのかベッドに倒れこんだ。
ファンクラブのバスツアー、そこでは私とちっさーがあれから初めて二人きりになるのか、と思うとドキドキしてきた。
いくら男の子だって意識していなくても、キスをした事はまた別なのだ。
ちっさーは私を異性としてみているのか、だとすると今度お話が出ている写真集なんてどうなんだろうな。
年頃になってきたわけだし、私の水着姿みておぉとか言って興奮するのかな。
うちには二人のお兄ちゃんがいて、小さい頃にはよくキャッチボールをして遊んだこともあって、今でも仲がいい。
小さい頃にはお風呂にも一緒に入っていたし、お互いに裸は見慣れていたのに大きくなると違和感を覚えた。
華奢だった体つきは筋肉が浮き出てゴツゴツしてきたし、声も太くなってきた。
そうなると、私にはお兄ちゃんが私のお兄ちゃんじゃなくなった気がして複雑になった。
その違和感を決定づけたのが、お兄ちゃんが一人でエッチな事をしている所をたまたま目撃したことだった。
お兄ちゃんたちも大きくなると、こそこそしてエッチな本みていたりしてるってお母さんが言っていた。
部屋の掃除にいくと、エッチな本が散らかっていたりしたらしい。
私は初めは不潔だとか抵抗があったけれど、男の子なんだし当たり前だと思うようになって、気にしないようになった。
でも、あの光景だけは今でも忘れられない。
お兄ちゃんが部屋でこもって、一人エッチな本を開いてあそこを弄っていた日のことを。
しばらくはあの光景が頭から離れず、ようやくオナニーって言うことを知った時には皆そんなものかって割り切っていた。
それでも、私はちっさーにはそんな事してほしくない。
別に今まで女の子だと思っていたからとかじゃなく、ちっさーには穢れてほしくなんかない。
私が好きなら、これからグアムに行って撮影する写真集はどんな気持ちで見るんだろうなぁ。

「舞美ちゃん、もうすぐバスツアー始まるんだからぼけっとしてないで」
「ぼけっとなんかしてないってば。ちょっと考え事してただけだよ」
「舞美ちゃんでも考え事するんだね、安心した。妹としてはお姉ちゃんの進歩が嬉しいな」
「舞ちゃ~ん、言ったなぁ~このこの」

 私がモヤモヤした気持ちを抱えたまま、とうとう気づけばバスツアーの当日になっていた。
バスガイドさんの衣装を着ての写真撮影があったりと企画が盛りだくさんのツアーだ。
ファンの人たちとも触れ合って、日頃の応援に感謝して恩返しが出来たらいいな。
だけど、私にはやっぱりちっさーの事が気がかりだった。

「考え事してるっていうよりもぼけっとした顔だよ。舞美ちゃんには考え事は無理だって」
「言ったな~妹。私はそんな育て方した覚えないよ」
「また言ってる。本当の事いっただけなのに」
「くすぐったい~それは禁止だよぉ。きゃはははは」

 ぼけっとしてるなんて私らしくないし、ファンの人たちに失礼だよね。
いつだって全力投球がモットーなんだから、今だけはちっさーの事忘れなきゃ。
今だけは・・・

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