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 舞美ちゃんに一緒に寝ようって誘われた僕だったが、正直に言うとエッチな事が頭の隅にはあった。
ちょっとでも手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、触れてしまったらいけないんだ。
そんな事をしたら信じてくれると言ってくれた舞美ちゃんを裏切ることになる。
僕はまだ近いようでいて遠い距離にいるんだから、下手な事をしたらいけないという。
愛理には本当に参ってしまう、まるで僕の片思いを利用してゲームしているみたいだからだ。
舞美ちゃんには僕と二人きりになったら、なんて声をかけたりしたらしいし、何を考えているのかさっぱりだ。
うまくいってほしいからアドバイスとは言うけれど、どこまで本気かわからないだけに困る。
僕は舞美ちゃんがお風呂に入ったので、そのすきにバッグの中にしまってあるピンク色の小さな包みを確認した。
バッグの中に確かにある、夢のはずがないのに少しでもなければいいと思ってしまった。
だって、これはエッチをする為に必要なものだって保健の時間に習ったものだ。
僕らみたいな中学生が簡単に買えるはずがないものをどうして愛理は持っていたりするんだろうな。




「初めてだからってビクビクしたり、自分だけ気持ちよくなろうとしたらダメなんだって。慌てないにはどうしたらいいと思う?」

 あの日、僕と愛理、Berryzからはりぃちゃんを迎えて三人でラジオを収録した日に、愛理にこう切り出された。
ちっさーだってエッチがしたいでしょ、と僕の考えていることなんかお見通しとばかりにさらに続けてきた。

「簡単だよ、経験が大事なんだから。経験」

 経験、それは僕にエッチをしてこいって事なんだろうか。
エッチをしろといわれたって相手はいないし、僕にはまだ早すぎると思うから抵抗がある。
したいかと聞かれたら、別にと嘘を言っても、心の中ではしたくてウズウズしているタイプが僕だ。
愛理はそういう人をムッツリって言うんだよ、と子供に教えるように言うからちょっとイラッとした。
そういう愛理は僕なんかよりも大人かもしれないけれど、それでも子供には代わりないじゃないか。
彼氏だっていないって聞いたし、まずはそこから始めなきゃいけない人に言われたくない。
僕は考えなしだけど、愛理は頭でっかちって感じだ。
その愛理が経験って何をさせようって言うんだろうな。

「つまりはちっさーと初体験をしようと思って」

 主語がない言葉なのに言おうとしている意味は僕でも理解できてしまった。
愛理には何度も何度も驚かされてきた僕が、今度ばかりは目が飛び出るくらいに驚かされた。
初体験を愛理としようって誘いなんだ、頭の中で反響する言葉が物分りの悪い僕に理解しろと強制してくる。
嘘だ、冗談だ、聞き間違いだ、なんて言えたらよかったのに、言えなかった。
目の前の愛理がいつもの不気味な笑い声もあげず、黙って僕だけをじっとみつめてくる。
たったそれだけの事なのに、恐怖感はいつもよりも断然こっちの方が上だった。
蛇に睨まれたカエルのことわざの意味を改めて、自分の身をもって理解した瞬間だった。
逃げられない、僕はこれから愛理と初体験をしなくちゃいけないみたいだ。
僕の怖いものはいくつかあるけれど、中でも蛇は相当苦手な部類に入り、みただけで泣きそうになる。
泣きそうなくらいに怖い蛇を愛理にするなら、僕は間違いなくカエルだろう。

「私もね、こういう事ってせっかく私たち三人が揃ったんだし、皆でしようかなって思ってるの」

 ね、と愛理が隣にいたりぃちゃんにも視線を送った。
そうだったのだ、僕はすっかり愛理に気を取られて忘れていたけれど、りぃちゃんは最初からそこにいた。
つまり、りぃちゃんも僕が男の子だって知っていたことになる。
でも、りぃちゃんの前でヘマでもしたのかと色々と振り返って思い出してみたけど、全然思い出せない。
考え込む僕の様子をみて、りぃちゃんはくすっと笑い声をあげ、微笑みかけてきた。
とても自分とは同じ歳には見えない色気を醸し出すりぃちゃんは、キッズになった時から存在感が違った。
あの頃から、僕はりぃちゃんには異性を感じていたし、可愛くなる度に胸がドキドキさせられたものだ。
可愛いだけの子なら僕もそれほどりぃちゃんを特別視していたりはしなかっただろう。
りぃちゃんには理屈では説明できない不思議な力が備わっていて、その力もりぃちゃんの魅力になっていた。
僕らが揃ってトランプでババ抜きをしても、伏せてあるカードの中身なんてわからないはずなのにりぃちゃんは当てられた。
皆こそどうしてわからないの、って顔をして当然みたいにカードを取っていき、一番にあがる。
理由を尋ねてみると、何となくとか曖昧な事を言われて、余計にやきもきさせられた。
魔女になりたいとは言っていたからそういうのも関係あるのかな、とか考えたもののなりたいからってなれるわけでもない。
とにかく不思議さで言うなら愛理よりも不思議な女の子だ。

「ちさと、私も興味あるんだ。キスがどういうのかって。愛理から聞いたよ、したって」
「ちょ、ちょっと何で言ったんだよ。酷いよ」
「りぃちゃんと私が仲良いのは知ってるでしょ。何でも話し合ってるから、ちっさーの事も内緒には出来なかったの」

 ごめんね、って顔でちらっと舌を出して可愛く謝ってくる愛理。
これじゃ僕は責める事が出来ないじゃないか。
もう二人の言いなりになるのは絶対的で、たぶん三人になれる場所に行くんだろうな。
僕は諦めて、二人に言われるがまま、どこかのマンションまでやってきていた。
何でも愛理のお父さんが借りているマンションで、家族でもお父さんお母さん、愛理だけが自由に出入りできるらしい。
中に入る前からとても高級なマンションだとわかる造りをしていて、僕なんか出入り出来るところなんかじゃない。
喉がカラカラに渇き、唾を飲み込もうとするけれど、その唾さえも今の僕には出てきさえしない。
もう圧倒されてしまって、僕は怖いなぁと正直に思いながら、愛理とりぃちゃんに続いてマンションに入っていった。
マンションには何度も遊びに来たことがあるりぃちゃんは慣れた顔で堂々と入っていく。
それに引き換え、僕ときたら初めてみるマンションに戸惑ってしまい、あたふたしながら愛理たちについていく。

「着いたよ、ここが私のお部屋。スリッパは適当なの使っていいから、さぁ上がって」
「う、うん・・・でも、いいのかな。急にお邪魔しちゃってもさ」
「ちさと、何かしこまってるの。いつもならこんなとこ初めてって騒いじゃうくせにさ。私も最初は興奮したんだよ」

 りぃちゃんがからかうように僕に笑いかけ、背中を押して部屋の中までつれてきた。
部屋にある家具もドラマとかで見た値段が高そうなものばかりで、愛理が普段はどんな家に住んでいるのか想像できる。
ソファーを触ってみたら、はじき返してくる弾力が家にあるものと比べて断然いい。
舞美ちゃんとえりかちゃんは前に家に遊びに行ったことがあるって聞いたけれど、僕が呼ばれることはなかった。
聞いた話だと、間違えて家の物に書いてしまって謝ろうとした二人に、落書きしても平気と言って驚かせたことがあるみたいだ。
僕なんかそんな事になったら、調子に乗って怒られるまで書いてしまいそうだ。

「ちっさー、そんなところにたってないで座りなよ。来てくれたんだし、お茶出すから待ってて」
「あ、あぁ・・・適当なところでいいのかな」

 愛理はキッチンへと消え、リビングには僕とりぃちゃんが残された。
りぃちゃんは向かいのソファーに座り、じっと僕をみつめているばかりで話しかけてはこない。
あのくりっと大きな瞳を瞬きさせ、まるで僕を動物園の動物みたいに観察してくる。
僕は見られているな、と思い顔をあげ、目をあわせてしまい、あの瞳に吸い込まれそうになってすぐに顔をそらす。
りぃちゃんは魔女に憧れているようだけれど、今でも十分魔女って言えるような色気が感じられる。
目をずっとあわせていたら、メデューサが人を石にするように簡単に動けなくさせられてしまう。
僕は今もそれを十分に身をもって経験しようといている。
突然ソファーから立ち上がり迫ってくるりぃちゃんを目で追いながらも僕が動くことは出来ずにいた。
迫るりぃちゃんの笑顔からして、これから何が起こるか全く想像できない恐怖がある。
僕はとんでもないコンビにまだ行かなくてもよかった大人への階段を進まされようとしていた。

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