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「ちさととこうして話すのって久し振りだよね。ほら、映画の撮影で熊井ちゃんと三人で合宿して以来だよね」
「あ、うん。そうだね。三人で勉強もして、映画の撮影もして、忙しかったけど楽しかったね」
「うん。ちさとと熊井ちゃんは怖がりだったよね」

 僕の隣に座ったりぃちゃんに、誘惑でもされるのかと思っていたのにそうでもなかったみたいだ。
座るなり、僕の肩に頭を乗せて体を寄せてきたりぃちゃんに驚きはしたけれど、雰囲気で何となくそのままになっている。
ちらっとりぃちゃんの表情を覗くと、うっとりして遠くを眺めているみたいに目を細めている。
こんなに間近でりぃちゃんの顔を最近見たことがなかったから、僕なんかよりよっぽど大人っぽくて綺麗だと思った。
サラサラした髪の毛から漂うシャンプーの甘い香に、僕は少し酔ってしまいそうになる。
山口県で撮影した『ほたるの星』で、僕らは初めて故郷を離れて生活する経験をしてきた。
撮影中、僕らは何をするのでも一緒にしてきた中だったんだった。
まだ子供だったこともあるけど、りぃちゃんを見て初めて女の子を可愛いと思った。
フォローをするわけじゃないけど、熊井ちゃんだってもちろん可愛い。
それでも、僕に女の子を異性なんだと理解させてくれたのはりぃちゃんだった事は間違いない。

「今ではりぃちゃんだって怖がりだって聞くぞ。確か一人だけ幽霊みたって騒いだんだよね」
「そうそう、あれには驚いた。もうあれのせいで幽霊だいっきらいなんだから」
「あははは、りぃちゃんも変わったなぁ。僕らが入れない場所にもスイスイ入っていってたのに」

 あれからもう随分経つのに昨日の事のようにはっきりと思い出せる。
ずっと一緒にいて、僕が男の子だってよく二人にバレなかったなと苦笑いをしてしまう。
まだ小さかったんだし、ちょっとでも興奮したらお母さんとの約束も忘れて、いつも通りの事をしてしまいそうなのに。
思い出すと、あの時はまずかったかもなんて場面が次から次に思い出されてくる。
僕の覚えている限りでは、一度もバレそうになった事はないんだからバレていないはずだ。
バレなかったのはまさに幸運だったとしか言いようがないんだろうな、ありがたいことに。
勘のいいりぃちゃんにしても、さすがに僕が男の子だったことは見抜けなかったんだから、人間なんだな。

「ねぇ、ちさと。私の頭撫でてくれる?」
「え!?いや、それは・・・どうして?」
「理由がないとそんなこともしてくれないの?私はただちさとが撫でてくれたら落ち着けるから」
「う、うん・・・わかった」

 反則だ、上目遣いに潤んだ瞳で僕の目を捉えて離さないから、ついりぃちゃんに引き込まれてしまった。
しかも、今日は胸の開けた服を着ているものだから、僕の位置からは大きな胸の谷間がみえる。
僕みたいな詰め物ではないから、きっと触ったらすごく柔らかいんだろうな。
栞菜やなっきぃだって負けていないとはいえ、りぃちゃんの胸に比べたらまだまだな気がしてきた。
りぃちゃんの体つきって写真集で確認したけれど、すごく丸みをもった”女の子”というより”女性的”だ。
それであの可愛さなんだから、同級生の男の子たちは落ち着いて授業どころじゃないんだろうって想像した。

「ちさとの手、小さいのに優しくて力強いね。包まれてるみたい」

 僕が頭を撫でてから気分が落ち着いてきたりぃちゃんが、ふと呟いた。

「よ、よせやい。僕なんかまだ体も小さくて力強いなんてあるものか」
「照れなくたっていいじゃん。私はちさとみたいな男の子、嫌いじゃないよ」

 りぃちゃんはいつだって真剣な眼差しを、皆に向けているからこれは本気なんだろう。
嫌いじゃない、だからって好きって事もないんだろうと冷静になれって頭が言う。
舞ちゃんって僕を好きでいてくれる女の子がいて、舞美ちゃんって片思いの相手がいるのに僕はりぃちゃんに惹かれている。
りぃちゃんはしょっちゅう℃-uteの楽屋にきては、愛理と楽しそうにお話をしていることが多い。
そのりぃちゃんがみせる寂しそうな表情をみかけると、僕はいつも頭の片隅で声をかけてあげたくなる。
でも、声をかけるのにどうしても気後れしてしまうから、声をかけそびれて帰る後姿を見送るばかりだ。

「ちさと、どうして私がいっつも℃-uteの楽屋にいくかって言うとね、愛理といたいから」

 僕の頭の中を見透かしたみたいに楽屋の話をしてくるなんて、まだまだ不思議な力が残っているのかな。

「わかるよ。寂しがりやだもんね、りぃちゃんは。わかるよ」
「それとね、ちさとの事をみていたいからなんだ」
「ふぇ!?ちょ、ちょっと、待ってよ。そんな冗談じみた事を突然言わないでよ」
「嘘じゃないよ、今日だって愛理に頼んでセッティングしてもらったの。私はちさとが好きだよ」

 まただ、あの反則的な瞳で僕に語りかけてくる。
この瞳をみてしまったら、もう逃げる事も引き返す事も出来ない。
僕はただただ、りぃちゃんとみつめうだけだった。

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