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 年少の三人のキューティーガールズのコントから幕を開けた、今日のアルバムイベント。
私は挨拶の部分で、『LALALA幸せの歌』とこの日のイベントを紹介してまい、下がった時にマネージャーさんに叱られる。
どうしたの、今日はアルバムイベントだってわかってるでしょ。
その通りなのだけど、今日は私にはもう一つのイベントも兼ねた日だったりする。
だからなのか、自分でも間違っていることにも気づかず、さらっとイベント名も言えてしまうのだ。
ちっさーに仲直りしないとね、そうしないといつまでも距離は縮まらない。
『テンション伸び子のテーマ』を唄った後、ちっさーと栞菜を残して私たちはステージから退く。
ちっさーが唄っている姿は、本当に楽しそうで見ている私も幸せな気持ちになる。
あの子、唄うことが何より好きで℃-uteにいて、夢を叶えている最中だから充実しているのかな。
愛理も唄う事が好きでこの世界に入ってきた子だから、ちっさーに負けず歌に対する情熱や実力は自分でも自信があると思う。
それだからか、めきめきと実力をつけつつあるちっさーを最近は認めている様子だ。
この前も、私に機会があればちっさーとコンサートでデュエットしてみたいと言っていたし。
愛理は仲間でライバルのちっさーをどう観ているんだろうな。

「愛理は最近、ちっさーと仲が良いみたいだけど、何かあったの?」
「ん? いきなり、ちっさーの話をするなんてどうしたの?」
「え、えぇと・・・まぁ~いいじゃん。愛理に話振ったんだから、答えてよ」

 ちっさーの話をこんな時にしだす私も私だけど、振られた途端にやにやして振り返るのはよそうよ。
すっごく愛理が面白そうな顔で私をじっとみつめてくる。
自分の頬が見られるたびに熱くなっていくのがわかり、目をつい逸らしてしまう。
ヤバい、何で愛理に見られただけでこんな照れてしまってるんだろうな。
本人を前にしたら、ちゃんと好きだって言えるか心配になってきてしまった。

「私がちっさーと仲が良いの気になる?」
「べ、別に・・・ちょっと気になるっていうか、もぉ~いいから答えて」
「そう怒らないでよ。ちゃんと答えるから。そうだねぇ~」

 愛理はもうそれはそれは愉快そうに考える仕草をしだした。
たぶん、答えは考えるまでもないのに私の困った顔がみたいとわざと意地悪をしているんだ。
いいから早く答えてほしいのに、変なところでSっぽいんだから。

「ちっさーとはCutie Circuitの間に一緒の部屋になった事があって、その時に仲良くなって色々と話すようになったんだよね。
 それからは学校の事とか、歌とかちょくちょく話すようになったんだよね」
「そっか。仲が良いのはいい事だ。リーダーとして安心した。君たち、前はそんなに話さなかったから」
「心配してた?」
「うん。そんなとこ」

 もう、何であからさまに疑ってる目で見てくるかな。
心配していたのは嘘じゃないのに、ちっさーを気にしてるのを面白がっている。
愛理は私がちっさーと仲良くなりたいのを見抜いちゃってるのかな。

「いいんじゃない。リーダーが皆に支えてもらうばっかりじゃなく、そういうのを気にかけるのはさ」
「もう愛理は・・・知らない」
「あははは、すねるなよ~舞美ちゃん可愛いんだから」

 いつもなら私が肩に手を回して言う台詞が、今は愛理の口から出ていることに顔が熱くなってくる。
ダメだ、本調子じゃない。
ちっさーの事でこんなにも普段とは同じことが出来なくなっている自分にすごく戸惑ってしまう。
これじゃまるで恋しているみたいじゃん、ちっさーに。
まだそういう好きとは違うつもりなのにな、本心ではそうではないのかな。
私はまだ心の中を見抜いてはほしくない――あの歌詞の子みたいに決心はまだ始まっていないんだから。

「噂をすれば、ちっさーだよ。二人でじっくりぃ~。栞菜、時間まであっち行こう」

 愛理は栞菜を連れて、別の場所に移動をしていった。
愛理だから、自分の出番までには必ず戻ってくるから、引き止めることもなく見送った。
愛理と栞菜がいなくなって、今は私とちっさーだけになった。
あの件以来、初めてまともにちっさーの顔をみてみると、仔犬の目で上目遣いに私を見てくる。
何か言いたげにじっとしているので、私は自分から言い出すタイミングを逃してしまいそうになる。
どうしよう、こういう場合は私から行くのが当然だよね。
だって、男の子だからって理由でいきなり避けたのは私なんだから、ちっさーが落ち込む事ないのに。
私は息を整え、歌の時間が迫っているからとわざと自分を急かしてみた。
こうでもしないと、ちっさーにちゃんと話しかけられそうにない。

「え、えぇと・・・あ、あのぉ」
「あのね」

 被った、ちっさーが言うとは思っていなかったから言い出したのに、これじゃ失敗だ。
でも、これがきっかけになってうまく話しかけることが出来たなって後になって思える。
よかった、ちっさーと目があった途端、一緒になって笑いあうことが出来た。
やっぱり笑うとこの子は可愛い。

「ちっさー、こっちのタイミング読んでたでしょ。もう、こっちが話しかけようとしたの台無し」
「舞美ちゃんこそ、僕の考えを読んでたとしか思えないんだけどな。こっちこそ台無しだよ」
「言ったな~『ちっちゃいね~可愛いね』なくせに」

 私は愛理がステージ上でしていた身振り手振りを真似して、ちっさーの頭を撫でてみた。
髪をせっかくセットしたのにくしゃくしゃにして悪かったけど、もう可愛さのあまりついやってしまった。
ちっさーは嫌がる様子もなく、嬉しそうにしていたから余計に調子に乗ってしまったのかもしれない。

「ちっちゃいは強調して言わないでよ。すっごく傷ついたぞ。グサって」
「ごめん、このあたり?」
「うん、そこらへんだ」

 お腹を撫でる振りをしだしたちっさーが、あまりにも演技に力が入っていたからちょっと心配になってしまった。
でも、そういう時って胸が苦しいんじゃないの、とは愛理が後で話した時に言った言葉だけど、その通りだね。
この時はちっさーが痛がっているから、そんな当たり前の事も忘れてつい釣られてしまった。
痛かったよね、今の言葉にじゃなくついさっきまでの私の態度に。

「ごめん・・・あのホテルの事だけど・・・ちっさー、男の子だからってさけたりしてごめんね。あんな事になっても普通に接してくれてありがとう」
「いいんだ、別に舞美ちゃんが傷つけようと思っていったんじゃないのはわかるから」
「それにしたって、私があの時は大人な対応できたらって何度も思うんだ。まだ未熟だね、私も」
「舞美ちゃん、僕こそもっと大人になるべきだって知ったよ」
「無理に大人になろうとしないで。私はそのままのちっさーが好きなんだから」

 言えた、今の私の素直な気持ち。
いえるかどうか心配していたけど、ちゃんとこうした場になったら案外すっきりするくらいに言えた。
これが今の私の気持ちだけど、あなたには届いたかな?
みつめあう私たちを裂くように、スタッフさんから「時間です」とステージに立てるよう準備を促される。
そうだった、これから私は愛理と一緒に唄わなくてはいけないのだった。
応援してくれいる人たちにアルバムを買っていただいたお礼でもあるイベントなのだから、しっかりしなきゃ。
私はちっさーに今まで謝れなかった意味も込めて、奮発してあるプレゼントをしようと決めていた。
ちょっと屈んだ私は、ちっさーの顔の位置にまで顔を下げて、頬っぺたにプレゼントを贈った。
ほんの一瞬の事だったけど、そのプレゼントはちっさーにしっかり伝わったと思う。
「時間だ」、私はもう顔が真っ赤になっているなと思いながら、振り返らずに愛理のところまで走った。

「どう、ちっさーとはちゃんと話せた?」
「うん、バッチリでぇ~す」
「それはリンリンさんの持ちネタだよ。よし、行こうか」

 舞ちゃんとなっきぃとすれ違い、私たちはステージに立った。

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