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 栞菜との約束、それは合同コンサートでりぃちゃんをマークして愛理から遠ざけることだった。
コンサートが終了した今、その約束を守ったかは発売された写真集に載った写真を見れば、そういう事だ。
僕はほとんど守っていないのだ。
写真集にDVDも編集されたものだとはいえ、僕はなっきぃと舞ちゃんといる時間が多かった。
舞美ちゃんとも普通に一緒にいたけど、りぃちゃんとはあんまりいなかった。
栞菜は目線で訴えてきていたらしく、気づかない僕にほとほと困り果てていた、と教えてくれた。
僕がりぃちゃんと一緒にいる時間が多くても、愛理はりぃちゃんの側にきていたと思うし、効果があったかは怪しい。
栞菜は頑張って二人の間に割り込もうとしたみたいで、話をしていたようだけど、ついていけなかったみたいだ。
それも仕方ないだろうな、あの二人はグループこそ別々だけど仲の良さは皆が認めるところだもん。

「ちっさー、どうして約束したことを守ってくれなかったの?」
「ごめんよ。忘れてたみたい」
「忘れてたじゃないでしょ~私は愛理と一緒にいたかっただけなんだから」
「そう言われてもな~とにかく後で別の事するから許してよ。ね」
「ちっさー、また忘れたとかなしだよ。いい?」
「了解。栞菜の言う事忘れないようにするね」

 栞菜はぶすっとした表情のままで、まだ怒りは納まらないようだった。
約束を守らなかったんだから、当然といえば当然で、栞菜には謝っても謝りきらない思いだ。
あの事件が起きなければちょっとは協力できたとは思うんだ。
それがどんな事件かは詳しくは思い出したくもないけど・・・




 コンサートのレッスンスタジオの隅でつまらなそうに座る雅を発見し、えりかは隣に座った。
雅がつまらなそうな顔をする理由を知っているえりかには、今から話す内容はきっと雅には喜ぶ自信があった。
たぶん、雅は自分の話に乗ってくる、それだけは確実だった。

「みや、最近彼氏と別れたって本当?」
「よく知ってたね。って、誰かに聞いた?」

 雅はぶっきらぼうにえりかに返答し、どこを見るでもなく顔を逸らした。
彼氏と別れた話をコンサート前の時期の今、ここで話したくもなかったし、思い出したくもなかった。
それをわざわざ思い出させ、話を振った本人は愉快そうに笑っているのが気に食わなかった。
そんなに私の不幸が蜜の味か、そう毒づいてやりたい気分だったが、言わずにいた。

「そんなのお見通しだよ。溜まってそうな顔してるじゃん」
「だね~やっぱずっと笑顔で仕事するのって疲れるし、息抜きにはよかったんだけどね。で、そっちは?」

 雅がご機嫌斜めなのは承知で話しかけていたが、ここまでとは予想してもいなかった。
だが、えりかにはそれをひっくり返すだけのネタだという自信があるので、特別苛立つことはしない。

「いや~いい相手みつけちゃってさ」

 雅にもたれかかるようにして、耳元で囁く。
自分でも今の顔はとんでもなくいやらしいだろうな、と鏡でも見て確認してみたかった。
雅は嫌味でも言われたと思ったらしく、露骨に嫌そうな顔をしているが、それでも興味だけは持ったようだ。

「いい相手? 何、どんな奴。えりかちゃんが気に入るくらいだし、すっごいイケメンなんでしょ」
「ふふっ、イケメンといえばイケメンなんだけどね。ただ、ガキんちょなんだよ」
「ガキんちょ? 面白いな、年下が趣味だなんてそれこそ知らなかった」

 えりかが年下に興味がある事がそんなに面白かったのか、雅は口を吊り上げて笑いだした。
これくらいしないと、別れた事をほじくり返された恨みや怒りの感情を和らげる方法が思いつかない。
しかし、雅に嫌味を与えられたにも関わらず、えりかはにやついた笑顔が変わることはない。

「ん~彼氏には早いけど、遊び相手にはバレないし、ぴったりなんだよね」
「で、誰なの?」
「千聖。岡井千聖」

 にわかには信じがたい名前を聞き、スタジオの中央で舞美にじゃれつく千聖を目で追った。
あの子がイケメン? 馬鹿な、℃-uteのメンバーであり、性別はれっきとした女性のはずだ。
そうでなければ、キッズオーディション自体受けられるはずがなく、この場にいるのも不自然なのだ。
それでは、どういう事なんだろうか。
答えはさすがに雅にも想像はできたが、言ってしまうと自分はおかしいのではないかと思えてきた。
そう思い、えりかをみると、相手はにっこりと微笑み、間違いないとこっくりと頷いた。
まさか、そんな筈はありえない・・・

「千聖はね、実は男の子なんだってさ。驚くのも無理はないよね。当然だよ」
「マジ?」

そう返すのがやっとだった。

「マジだよ。それでね、みやも私と千聖といいことしないかい?」

 雅が冷静に考えられるようになった時、千聖が目の前を通り過ぎていった。
その時、雅には思考するよりも早く本能が千聖を欲しっていた。

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