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 いつからだろうか、えりかが舞美に嫉妬し、彼女を遠ざけるようになったのは。
えりかが事務所に正式に入所する際、彼女は事務所が経営する芸能スクールの天才ともてはやされていた。
自分でも若干天狗になっていた事は否めないが、それでも同期で入った他のメンバーよりも上なのは確かに思われた。
歌の実力に限らず、ルックス面においても自分が可愛くないはずはなかった。
元モーニング娘。の矢口真里が率いるZYXにも選ばれ、順調に歩んでいけるだろうと考えていた。
が、それは儚く散ることになる。
運命の2004年、その年に自分を含めた七人を除いて八人が先行してデビューを飾るのが発表された。
その名は『Berryz工房』、モーニング娘。の妹分として話題を集め、記者会見にはマスコミも大勢参加した。
それを眺める自分たち七人は、このままデビュー出来るのか?
不安にならない日はなかったといっていい。
悔しくて、悲しくて、苦しい思いを共に抱いた自分たちがこの後、『℃-ute』としてデビューするまで不安は消えなかった。

 残った七人は、いつかデビューが出来るといいね、とお互いを励ましあいながらコツコツと活動を続けた。
そして、やっとデビューが叶う事になった年、舞美はデビューと重なって写真集撮影を行っていた事を知る。
舞美はスタイルは決して悪い方ではないが、かといってグラビア栄えのする体型でもなく、細い割りにがっしりとしている。
一方、自分は細くて女の子らしい柔らかさのあるスタイルだと自覚している。
なのに、写真集の撮影は舞美だけにかかり、えりかにはその後の予定にも含まれる事はなかった。
次がある、この時まではまだ自分にもそう言い聞かせられた。
しかし、それがだんだん数が増え、事務所の方が回す仕事量に歴然とした差が出ると、えりかには舞美に嫉妬心が芽生えていた。
それをはっきりと思い出せはしないが、確実にえりかの心に火種となってくすぶり始めていた。
年末、再度写真集に行く舞美と国内に残って平凡に学校に通う自分。
年明け、安倍なつみとのデュエットを結成する舞美とカラオケでマイクを握って歌う自分。
五月、シンデレラ応援ユニットと題して新たにユニット参加する舞美と『ドドンガドン音頭』でしかメインのない自分。
舞美が遠くに見えてしまう。

 そのえりかにも、一人共感を抱かざるをえない人物が一人いた。
岡井千聖である。
彼女、否、彼には以前からどこか自分と似た境遇を重ねてみていたことが多いのに気づいた。
まず、グループのエースとして事務所からは推され、ファンは比較して圧倒的な数を誇る点。
相手が仕草や表情、どれを取っても上品さが漂うのに対し、回される役目に雰囲気、仕草などが芸人のそれに近い点。
えりかは千聖をどこかしらそういう目でみていたことが多かった。
だから、千聖には勝手に強い仲間意識を持ち、お姉さんのように接していたし、懐いてくれていると安心した。
その安心もあっけなく散る。
千聖は舞美を慕い、お姉さんに甘えるがごとく好きだといってくれた。
馬鹿な、千聖とは蚊のお墓を立てたり、一人でいる自分を構ってくれる優しい子だと思っていたのに。
裏切られた感覚よりも、舞美に奪われたと思う感覚が強く残り、怒りの矛先は舞美に変わった。
また私から奪うつもりなの、あんたは・・・千聖まで・・・



 合同コンサートの醍醐味は何と言っても、普段会えないメンバーたちにも会えることにつきる。
いくら春からの新番組『ベリキュー』の収録で会っていても、Berryzのメンバーには会う機会は少ない。
同じ会場にいても、楽屋は違うんだし、自分たちで移動しない限りはほとんど会わない。
特に共通点や話しかけ安さ、趣味、そういう諸々を含めると、会っても話さないメンバーは多い。
僕の中では夏焼雅ちゃんはそのいい例だ。
雅ちゃんは桃ちゃん、愛理の参加するユニット『Buono!!』にも参加する実力のあるメンバーだ。
美人だな、と誰もが思う顔立ちと、確かな歌唱力を持っている点で人気も高いって話を聞いた。
それは僕も同感だから、ファンの人たちが歌をうまいって言うのも共感する。
その雅ちゃんが珍しく僕に話しかけてきてくれたので、喜んで相手をしている。

「ちさとは最近歌が本当にうまくなったよね。歌声を間近で聴いて感心しちゃった」
「ありがとう。雅ちゃんもBuonoあるし大変なのに、Beryyzの歌もメインあるから喉を気をつけて」
「優しくしちゃってさ~女の子にはそうしろって言われたの?」
「何で? 私だって仲間なんだから心配して当然じゃん」
「ちさとはぁ~仲間だけど、そうでもなくない?」

 いきなり何を言い出すんだろうな、この人は。
仲間だけど、そうでもないってどんな意味があるって言うんだよ。
雅ちゃんは愛理やりぃちゃんと違って、難しい話をするメンバーでもないから安心してたのに。

「どういう意味なの、それは」
「ちょ~わかりやすいじゃん。ちさとは違うんでしょ? えりかちゃん言ってたよ」
「何を?」
「あんたが」

 雅ちゃんは僕を後ろから抱きしめ、囁くような小さな声でこう言った。

「男なんだってね。別にバラそうとは思わないから安心してよ。これからちょっと付き合ってよ」

 雅ちゃんの言葉の一つ一つが僕には嘘だとしか思えなかった。

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