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今日は久し振りのオフで、桃子と真野ちゃんとお出かけしている。
おしゃべりをしたり、ウィンドウショッピングをして、オフを楽しんでいる。
キャップを被ったりして変装してみるけど、ファッションとしても通用するから我ながらナイスアイディアとか言って。
ちょっと自画自賛しちゃったかな、と反省しつつ、私たちはお昼になったので休憩がてらランチにお店に寄った。
相変わらず桃子はプライベートでも息継ぎしてるのかと疑問になるほど、ずっとしゃべり続けている。
聞いている私と真野ちゃんは相槌を打つのがやっとで、こちらが話を切り出すタイミングなんてほとんどない。
おしゃべりをする桃子をみてると、この世の幸せはこれしかないって顔でいるから、遠慮してしまう。
私や真野ちゃんが今みたいに遠慮している部分もあるのを、本人は気づいているのかな。
あえて気づかないふりして話してる可能性もなくはないけれど、だとしたらかなり質が悪いな。

「でね、くまいちょーったらちょー面白いの。本当にさ。って、二人とも聞いてる?」

 熊井ちゃんを唯一くまいちょーと呼ぶ桃子は、彼女がかなりお気に入りらしい。
メンバーの中だと熊井ちゃんの話題に上る回数がダントツだ。
熊井ちゃんはおっとりしている割に頑固なところもあるみたいで、あれで結構気が強いという。
あんまり接する機会の少ない私からみると、のんびりそうな子にみえるのに意外だ。

「聞いてるよ。もう、桃子ばっかり話してるじゃん。そんなに早口で話してて疲れないの?」
「疲れるわけないじゃん。これがストレス発散なんだもん。平気だよ。ね、真野ちゃん」
「えっ? そうなんだ。私はわからないかも」 突然、桃子から話を振られて、困ってしまう真野ちゃん。
「女の子っておしゃべりが好きじゃない。だから、二人ともそうなんだと思ってた。違うの?」

 目をパチクリさせて、私たちの顔を交互に見て、同意を求めてくる桃子。
桃子ってよくこういう表情をして、あなたたちもそうなんでしょと強く目で訴えてくるから困る。
皆、あなたと同じわけではないよと言ってしまいたいのに、あの瞳はそれを許さない。
いわゆる桃子なりの無言の圧力なんだろうな。

「うぅ~ん、私はストレスとかってどこかで発散してるんだと思う。だって、ストレスってあんまり感じないから。
 気づいたときには、ストレスってなくなってるし」

 私は自分なりに考えてみて、桃子の質問にこう返してみた。
二人ともストレスを感じないと言った私をまじまじと見て、信じられないと顔に書いてある。
普通の感覚ではないよね、とはよく言われる私は、そんなの嘘だと気にさえもしていなかった。
だけど、こうして二人に同時にそんな顔をされたら、違うのかなと疑ってしまった。

「舞美ってさ、改めて思うけど鈍感だよね。こんな言い方したら悪いけどさ。鈍感だよね」
「そんなに鈍感、鈍感って言わなくてもいいじゃん。わかったから、真野ちゃんのいる前で鈍感はやめて」
「やめないよ。早めに気づいてもらった方がいいよ。真野ちゃんね、舞美ったらすっごい鈍感だから」

 桃子が関西のおばさんがよくする、会話の合間に入れる手振りを真似した。
しかも、とびっきりの笑顔でするものだから、本当におばさんっぽく見えてきた。

「うん、そんな感じするかも。あっ、ごめん・・・つい」 真野ちゃんは同意はするものの、失言だったと慌てて口を塞ぐ。
「もぉ~二人とも。怒るからね。本気で」 私も怒った振りでもしようと、拳をあげてポーズだけ取る。
「あはははは、じゃあもっと怒らせちゃおうっと。真野ちゃん、どんどん鈍感って言っちゃって」 

 怒った私をからかおうと、桃子は調子に乗ってはしゃいでいる。
もぉ、可愛いから許すけど、本当なら許してあげないんだからね。
こんな調子で笑いあう中、私たちのオフは時間が過ぎていった。
真野ちゃんがトイレに席を立ち、二人だけとなった時、桃子が大真面目に「綺麗になったね」と囁いてきた。
不意をつかれたも同然だった私は、唖然としてまともに反応が出来なかった。
口をだらしなく開けて、頬は赤く染め、すっかり黙り込んでしまった。

「最近、恋してるんじゃない? あんたさ、本当に可愛くなったと思うよ」
「え、えぇと・・・わかる?」
「マジぃ!? 冗談で言ってみたんだけど、マジだったんだ・・・」

 私は桃子が本気で言っていると思ったから、恋してますと言ったも同然の返事をしていた。
桃子は私が恋をしているとは思わなかったみたいで、冗談だったのにと驚いてさっきの私みたくなっている。
それから桃子が動き出すまで数秒かかり、言葉を選びながら私に再び質問をしてきた。

「そ、そっか。舞美にもそんな相手いたか」
「うん、まぁね。言いづらいんだけど、身近な人かな。あ、これ以上はいえないかも」

 身近な人、という単語を聞き、今まで以上にいい食いつきを桃子はみせた。
そこから導き出される相手が誰か大体判るとでも言うように、ニヤニヤとした笑いを浮かべている。

「スタッフの人でしょ~最近イケメン入ったもんね。そうでしょ、そうなんでしょ~」
「ううん、違う。もっと身近な人」
「もっと身近な人? え、誰だろう・・・」 ここで、訳がわからないと唸って考え出す桃子。

 真野ちゃん、遅いな、どうしたんだろう。
こんな時に限って、メイク直しでもしているのか、なかなかトイレから戻ってきてくれない。
あんまり遅いと桃子がさらに質問をして、いずれは誰か答えまで辿りついてしまう。
そうなったら、あの子が男の子だと℃-ute以外の人間に知られて、事件が起きる可能性がある。
バレた時を想像すると、冗談抜きで悲しい結末しか訪れない予感がする。
そうならない為にも、真野ちゃんに早く戻ってきて、話題を変えてほしい。

「舞美の身近で男って言うと、まさか千聖じゃないよね? あは、冗談だって」
「え? 何でわかったの」

 桃子の口から聞けるとは思ってもみなかった単語が出てきて、私は呆然としてしまった。
何で桃子がちっさーが男の子だと知っていたのか、それはわからないけど、当てられてしまった。
桃子も冗談だとは言いつつ、私の驚いた顔をみて、どういう事か悟ったみたいだ。
私の相手が岡井千聖だと気づいたのだ。
そして、桃子は神妙な顔つきになったかと思うと、すぐに笑顔になって、私の手を握ってきた。

「素直におめでとうっていえないけど、うん、おめでとう。相手があいつとはね、驚いたわ。
 とにかく好きならアタックあるのみだよ。あいつ、結構奥手だし」
「桃子、詳しいね。ちっさーと何かあった?」
「うふふ、まぁ昔ね。千聖はどうなの? あんたを好きなの?」
「好きだって言ってくれたよ。一人の女の子として好きだって」 照れ臭かったけど、ちっさーが言ってくれたまま教えた。
「よかったじゃ~ん、両想いだよ。いいことだよ」

 桃子は人事ながら、自分のことのように喜んでくれた。
今更ながら、桃子が千聖をどうして男の子かと知っているかは聞きづらくなってしまったけど。
私の手を握って振り回す桃子がはしゃいでいるタイミングで、真野ちゃんは戻ってきてくれた。
それと時を同じくして、愛理から千聖の誕生日を祝おうとメールが来ていた。
そのお祝いの席で、私は千聖に待ってもらっていた返事をしよう、そう決意を固めた。

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