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 触れたとき、どんなおまじないをしてくれるのかワクワクしていた気持ちが吹きとんだ。
ワクワクがドキドキに変わり、自分でも胸がギュウっと鷲掴みされて苦しくなるのをとめられない。
りーちゃんが唇を離してからも、胸のドキドキが納まらなくて苦しくなるばかりだ。

「千聖、目を開けていいよ。おまじない、ちゃんとかけてあげたからね」

 返事がしたくても言葉がうまく出せない。
頑張って言葉を出そうとすると、あとかうとか言うばかりでまるで発声練習しているみたいになってしまう。
落ち着け、って頭で体に命令を出しても言うことがきかなくて、自分の体じゃない。
いつの間に僕はこんなにポンコツロボットになってしまったんだろうな。
あんなにフットサルが大好きで走りまわっていた自分が、今の自分とは別人に思ってしまう。
走る元気はなくてもいいから、とにかくりーちゃんに返事するくらいの小さな動きはしてほしい。
動け、口だけ動かせばいいはずだぞ。
口に神経を集中させて、何とか「うん」と返事を返すことができた。

「ふふっ、早く目を開けなよ。いつまで目を瞑ってるの?」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕、今、目あけるから」
「はいはい。驚きすぎだよ、千聖は」

 自分からキスしてきたっていうのに、りーちゃんはまるで驚いた様子もなく笑っている。
どうして、僕なんかより落ち着いていられるんだろう。
男の子のくせに、我ながら情けなくて自分にガッカリしてきた。

「ほら、せっかくの夜景がもったいないよ。一緒に見るんでしょ。千聖、目を開けて」
「う、う、う・・・ん」

 唾を飲み込み、ゆっくりと息を吐いた後、恐る恐る目を開けてみる。
目を開けたとき、僕はネオンの光が眩しくて少し目が痛いくらいだった。
だんだんと目が慣れていき、りーちゃんの顔や体、マンションの手すりや周りのビルがはっきりとしてきた。
ぼんやりとだけど、りーちゃんの背後で光るネオンがよりりーちゃんを輝かせてみえる。
まるで絵本の中からお姫様が飛び出してきたような美しさで、またしても言葉を失ってしまった。
りーちゃんの頭の上に一瞬ティアラが見えて、ただのパジャマがドレスに早変わりしていた。

「どうしたの? ちょっと、さっきから黙ってばかりで変だよ。おまじない効いてないみたいじゃん」
「え、えぇ~と、ぼ、僕、おかしくなっちゃったのかな。りーちゃんがお姫様にみえた」

 この言葉を聞いて、りーちゃんは目を丸くして驚き、そしてまた笑いだした。
心なしか、ちょっと照れているように見えるのは僕の都合のいい見方なのかな。

「ちょっと~お姫様とかいって、私をからかうつもりでしょ~この悪戯っこは」
「からかったりするもんか。りーちゃんがすごく可愛いかったんだ。びっくりするくらい」
「え? 可愛いって言ってくれた? え、え、え、や、やだなぁ~」
「本当だって。僕、りーちゃんが可愛くって好きになっちゃいそうだった」

 みるみるうち、りーちゃんの顔が赤くなっていたようにみえる。
でも、暗い中だからはっきりとはしないし、ただ単に赤いネオンが当たっていただけかもしれない。
りーちゃんが僕を好きでも、、この場ではあんまり都合のいい考えはしないようにしなくては。

「ち、千聖、好きになっちゃいそう・・・じゃなくてね、好きになっていいんだよ。私ばっかりが片思いなのは辛いから」

 瞳を潤ませて、じっと僕をみつめて

「これじゃ、付き合ってるのに片思いの主人公みたいじゃん。千聖の心を奪いたい」

と続けた。

 Berryz工房の去年出したシングルの主人公みたい、か。
そんなことはないよ、僕はもう心を奪われてしまっているもの。
あれだけ舞美ちゃんを好きだっていっても、僕はこんなにも簡単にりーちゃんに心を奪われている。
軽い気持ちで舞美ちゃんを好きになったわけじゃないはずだ。
だけど、今はりーちゃんしかみえない。

 ようやくお二人さんをみつけた時、私はとびっきりの瞬間を目にしてしまった。
目を瞑ったちっさー相手にりーちゃんからキスをし、唇を離し微笑んでいる。
自分から告白にいける女の子だからキスもできるとは思ったけど、私のサポートなしでああも頑張れるとは意外だったかも。
そんな場面を目撃して微笑んでしまった私は、ここで改めてりーちゃんを呼んだ意味を思い出した。
りーちゃんとちっさーをくっつけてやろうと私はしていたのだった。
そこを途中、暴走して自分がムラムラきてしまうことになっておかしくなったのだ。
だから、今の二人のキスは当初の目的を達したことになる。
まぁ、仕方無いからここは二人の思い通りにさせてあげることにしよう。

「りーちゃん、僕はもう心奪われちゃってるかも」
「え? 街の音がうるさくって聞き取れなかったよ。もう一回いって」
「う、嘘だ~この距離で聞こえないはずはないよ。ちょっと、りーちゃん冗談はやめろって」
「だぁめ。街の人静かにしてくださぁ~い。これから千聖が告白しまぁ~す」
「も、もぉ~そんなことするならもう言わないからなぁ~」

 二人がじゃれあっている姿は姉が弟をからかっているようにしか見えない。
街の音は確かに深夜なのによく響いてくるけれど、本当に聞こえないわけではないから、りーちゃんなりの嬉しさを表現しているだけだろう。
意地悪なお姉さんにからかわれるのがよくお似合いですこと、ちっさーは。
えりかちゃんにみや、それから私にりーちゃんも加われば、なかなか面白そうだ。
これからも君の恥ずかしがりながらのいい反応に期待しているよ。

「あぁ~もぉ~りーちゃんなんて大嫌いだぁ~」
「言ったな~さっきは好きになりそうだって言ってたのにぃ~」
「あれはなしなし。意地悪な女の子は好きじゃないもん」
「酷い。せっかくいい雰囲気だったのに~神様の馬鹿~」

 りーちゃんのおまじないはきいたのでしょうか。
それはまだ自分でも気づいていません。
ですが、確実に千聖の心に梨沙子の気持ちは伝わったはずです。
小さなつぼみでも、これからの頑張り次第では大きな目に育つかもしれないのです。
りーちゃん、おまじないがちっさーに届くといいね。

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