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 今日は静岡の浜松で℃-uteのコンサートがあり、私たちは新幹線に乗って静岡までやってきた。
あいにくの雨で、遠くから会場まで来てくれたファンの人たちのことも気が掛かりだけど、一番の心配は我がリーダーだ。
今、会場でリハーサルを行っているのは私を含め六人なのだ。
舞美ちゃんは遅刻して私たちと同じ新幹線に乗り遅れ、まだ新幹線の中にいる。
リーダーなのにおっちょこちょいで頼りないところがある舞美ちゃんは、それでも℃-uteには大事なリーダーだ。
私個人としても、舞美ちゃんはいつまで経っても本当のお姉ちゃんみたいに思っている。
千聖とのことは嘘なんだと言ってほしいけど、嘘じゃないことは自分自身がよくわかる。
だから、今もこんなに苦しい想いをしているんだもの。
その苦しい思いをちょっとでも取り除きたいくせに、私は今、千聖を尾行した。
千聖はリハーサル中もずっと気にしていた、舞美ちゃんの現在の様子をマネージャーさんに尋ねいている。

「マネージャーさん、舞美ちゃんはまだなのかな?」
「そうね、同行してるスタッフの話だとあと一時間くらいってことだけど。千聖は舞美がそんなに心配?」

 そわそわとして落ち着きなくリハーサルをしていたせいで、千聖はスタッフさんから集中していないと注意されていた。
それでも、舞美ちゃんが心配で仕方なかったから、こうしてマネージャーさんを探し回っていたのだろう。
舞美ちゃんの心配をする千聖の顔は真剣そのもので、今日みた顔で一番力がある。
そんなに舞美ちゃんが心配なの?
もしも、私が舞美ちゃんみたく遅刻したら千聖は心配してくれるよね。

「うん、やっぱりリーダーいないとしまらないからさ。舞美ちゃんに全力で走ってこいって伝えといてよ」
「ふふっ、はいはい。千聖、休憩もうすぐ終わりだからステージに戻る」
「はぁ~い」

 舞美ちゃんがいつ来るのか、それがわかると嬉しそうな顔でリハーサルに戻っていった。
千聖、私があなたから離れたんじゃないよ、あなたが舞美ちゃんにくっついていっちゃっただけなんだよ。
ギュっと張り裂けそうになる胸を抑え、私も千聖を追いかけてリハーサルに戻る。
まだ諦めちゃダメだ、チャンスならこれからどんどんあるんだから。

「休憩おわり、リハーサル続きやるよ!!」

 客席からスタッフさんの声が会場いっぱいにこだまする。
私は笑顔の千聖をチラチラと眺めながら、自分の立ち位置についた。
舞美ちゃん、気持ちなら私は負けないからね。

「お待たせ~ごめんねぇ~皆」

 あれから一時間、慌てた様子で会場に舞美ちゃんが到着した。
舞美ちゃんが到着する頃には、私たちはリハーサルを通しで何度もやって疲れていた。
ジャージ姿でステージに上がってきた舞美ちゃんに、皆が遅いぞと声をかけつつ、笑顔で出迎える。
私もそうしたかったけど、怒りたい気持ちが胸の中をグルグルと渦を巻いている。
遅刻をしてきて笑顔で謝られても全然許す気にならないし、何よりあんなに千聖の気持ちを独占してしまうのが許せない。
私だって、お姉ちゃんのことは許してあげたい。
でもね、やっぱり千聖をいきなりかっさらっていくのはダメなの。

「もぉ~そうやって皆が甘やかす。だから、舞美ちゃんは遅刻するんだよ。舞美ちゃんも舞美ちゃんだよ」
「どうしたの、舞ちゃん?」

 皆が一人勝手に怒る私をおかしなものを見る目でみてくる。
私一人を除いて皆が許しているよ、と空気を醸し出しているのに、私だけが怒っているから浮いてしまう。
何さ、もう知らない。

「舞ちゃん、ごめんね。お姉ちゃん、お寝坊さんだったね」
「いいよ、ちょっと怒ってみたかっただけ。それよりリハーサルの続きをするんでしょう」

 はぁ、舞美ちゃんの到着で一層激しく降るようになった雨に、私の悲しみの涙もちょっぴり混じっているのかもしれない。
そう思いながら、私はリハーサルに頭を切り換えた。

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