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 桃ちゃんが星空を眺められる場所がいいと希望したので、僕らは山下公園まで歩いてきていた。
ここはデートスポットで有名なので周りにはたくさんのカップルで溢れ返っている。
僕と桃ちゃんみたいなお子様にはまだ早そうな場所みたいで、居心地が悪い。
素直に帰るといってくれないとは思うけれど、ここは帰ろうと言い出してみることにしよう。

「桃ちゃん、早く帰らない? ここ、カップルでいっぱいだよ。僕ら確実に浮いてるよ」
「いいじゃん、気にしないの。うちらだってカップルみたいなもんじゃん。ここまできたら、港までいこうよ」
「えぇ~マジでぇ!?」

 やっぱり予想通りに帰るとは言ってくれず、桃ちゃんはすたすたと奥へ進んで行く。
やれやれ、桃ちゃんはこういうときは言い出したら何言っても無駄なんだよな。
溜息をこぼしながら、僕は桃ちゃんの隣をしっかりキープする。
こんな危なっかしい場所で一人にしたら、桃ちゃんみたいな可愛い子だと何があるかわからないし危険だ。

「ねぇ、千聖。ほらほら、みてみて。あそこのカップルなんてキスしちゃってるよ。うわぁ~すごぉい」

 口元に手をあてて、関西のおばちゃんが面白いものをみつけて喜んでいるみたいにはしゃぐ桃ちゃん。
ベンチに座ってキスしてるカップルをしっかり指でさしてしまっているし。
はぁ、僕がどれだけ心配してるか知らないで本当に呑気な人だな。

「あのさ、キスしてるのを見たらまずいでしょ。それに声が大きいって。見るなら静かにしなよ」
「なになに、その私は見ません的な言い方。自分だって見てるでしょ。見るなら静かにとか言ってさ」
「はいはい。見てました。桃ちゃんほどじっくりは見てないけどね」
「ちさとはまだ子供だねぇ~あれくらいさ、みんな普通にしてるってよ。舞美だってキスしてほしいとか期待してるんじゃないの」

 本当に関西のおばちゃんがからかうように肘で僕を小突いてくる。
顔だってどんなことを想像してるのか知らないけど、男の子の僕なんかよりよっぽどいやらしい。
桃ちゃんは僕と舞美ちゃんがキスしたことを知らないのだろうな、この調子だと。
去年のコンサートツアーで実は僕からキスした映像が、ばっちりとDVDに収められているっていうのに。

「舞美ちゃんとキスするっていったって、恋人でもないんだからしようって言って出来るわけないじゃないか。というか、僕だってキスくらいあるよ」
「え、えぇ~あんたがキスしたことあるって見栄張ってるんでしょ。無理しないの」

 本当にDVDに入ってるあの映像を見たことがないんだろうな、桃ちゃんは。
僕だって自慢じゃないですが、キスくらいしたことはあるんです。
その先はまだ早いかなって自粛してるけど、いつかは大好きなあの娘と出来たらいいかなって思ってはいる。
それを言うと桃ちゃんが面白がって話がややこしくなりそうなのでここでは内緒にしておこう。

「笑ってるけど、そういう桃ちゃんこそキスくらいしたことあるの? あ、まさかないとか?」
「ちょ、ちょっと~何で中学生のあんたにからかわれなくちゃならないわけ? 信じられない。あのね、ありますよ。それくらい」
「そっちこそ無理しちゃって~いいんだよ。僕の前だからって見栄張らなくてさ。素直になっちゃいなよ」

 さっきはそっちからからかってきたんだから、これでおあいこだぞ。
僕がからかったからか、桃ちゃんはいつもベリーズにからわれてるときみたく騒ぎまくっている。

「あははは、やっぱりないんだ~桃ちゃんキスしたことないんじゃん。子供だねって言葉、そっくりあげるね」
「くぅ~ガキんちょのあんたに言われることになるとはね。あぁ~悔しい~もぉ~こうなったらキスした経験でっちあげてやる」
「それは嘘つきになるよ。泥棒の始まりだからね。いけないんだ~」

 僕が調子に乗っていたことがいけなかったのかもしれないけど、ああいう不意打ちはよくない。
桃ちゃんは反撃もしてこないでじっとみつめてきたかと思うと、僕の頭を掴んで自分の唇を近づけてきた。
スローモーション映像をみている感覚で近づいてくるのがはっきりとわかるのに抵抗できない。
くっつく、なんて思ったときには時すでに遅し。
桃ちゃんの唇で僕の唇はふさがれていた。

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