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「ふぅん、そんなことあったんだね。知らなかったな。行くって言ってくれれば、私からチケット手配したのに」

 Buono!のライブに実は僕もこっそりとお邪魔していたことを話すと、愛理はとても嬉しそうに笑った。
桃ちゃんに来て、と呼ばれていたからだよと明かすと、ちょっぴり残念そうでもあった。
愛理曰く、普段同じグループにいる自分を応援しにきたって言われる方が嬉しい、らしい。
その愛理が中でも一番興味を示した話題というのが、舞波ちゃんも男の子だったことだ。

「へぇ~それこそ初耳だよ。何でそんな面白そうなの話してくれなかったのぉ」

 愛理のまん丸おめめがキラキラと輝き、舞波ちゃんとのことをもっと話してとせがんでいる。
キッズの頃だって、舞波ちゃんと愛理が仲良かったって話は全く聞かないのに、何で愛理はこんなにも舞波ちゃんの話が聞きたいんだろうな。
少し嫌な予感がする。

「僕が男の子だってことだけでも騒ぎになるのに、舞波ちゃんのことは話せるわけないじゃないか」
「私は口が堅いから言わなかったよ」と言って、八重歯をちらりと覗かせて笑う。

 この笑顔は気をつけろってことだって、長年の勘がそう言っている。
愛理が目を細めて、八重歯をみせて笑ったときは何かを企んでいるってことだ。
つまり、舞波ちゃんをどうにかしてしまおうって考えているんだろう。
そんなことには舞波ちゃんの友達の僕がそうはさせない。

「今言ったのだって、桃ちゃんと会った話のついでなんだからね。他の人に言っちゃダメだよ」
「はいはい。わかってますって。今更他の人に話しても、そうだったんだで終わりだよ」
「だとしても、他の人には内緒にしてくれるって約束だよ」
「じゃあ、約束ね。私はこの事を誰にも言いません。そのかわり、もっとお話しを聞かせて」

 ダメだ、この笑顔に騙されたらいけないぞ。
いくら愛理の笑顔に癒されるからって、僕が舞波ちゃんとの事をもっと話したら本人を知らないところで裏切ったことになる。
これは僕と桃ちゃんしか知らなかったことなのに、口べたな僕はあっさりと愛理に漏らしてしまった。
どうしてここまで守ってこられた秘密を、今になって漏らしたりなんかしたんだ。
一発でいいから、自分の頭をぶん殴ってやりたい気分になる。

「ちっさー、聞かせて。いいでしょ。もうここまで話したんだから、あとは大したことでもないじゃん」
「そ、それはその・・・で、でも、これ以上は話したらいけないんだ」
「千聖君、大事なのは舞波ちゃんが実は男の子だったって点でしょ。なら、あとはおまけじゃない。それなら他のこと打ち明けたって構わないと思うな」
「うぅ・・・そ、それは、そうなんだろうけど・・・あぁ~ダメったらダメだってば」

 後悔しても遅すぎるくらいに遅かった。
大事なのは愛理の言う通り、舞波が”男の子”だった点なのだから、僕とのエピソードなんかおまけもいいところだ。
僕がもう大事に守れるものなんてないんだ。
観念した僕は、愛理に聞かれたことは全て話してしまった。

 ちっさーを口説き落すのは、実に簡単だ。
彼の場合、大抵口をうっかり滑らせてしまったことが多い。
今回もまさにそうだったのだけど、中身がそれはもう三年以上前に明らかになっていたらとんでもない話だった。
公になれば、前代未聞の例として今でも語り草になっていただろう、衝撃的事実だ。
あの石村舞波が男の子だった、とはね。
私は授業中にもかかわらず、頬杖をつきながらそればかりを考えてしまい、黒板に先生が何を書いても頭に入らない。
二人が仲が良かったとは聞いていたけど、二人だけ男の子だったのだから仲間意識を持って当然だ。
う~ん、今度の同人誌で書く小説のいいネタがみつかったかもしれない。

「鈴木さん、今の話聞いてましたか?」
「え!?」

 先生からの突然の呼びかけに私は一瞬パニックになった。
しまった、授業中に同人誌のことで頭がいっぱいになりすぎていた。
この先生は授業中の態度もよく見ていてうるさい、って評判なのだった。

「えじゃありません。ぼぉ~っとなんかしてるからです。テストに出る重要なポイントですよ」
「す、すみません」

 顔を真っ赤にさせ、私は慌てて黒板の文字をノートにとりだした。
隣の席の友達に、「愛理が考え事なんて珍しいね」と笑われてしまったし、最悪な気分だ。
もう、せっかく膨らみかけた同人誌のアイディアが台無しじゃない。
私はちょっぴり苛立ちながら、ノートに写した。

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