『共鳴者~Darker than Darkness~』



 『共鳴者~Darker than Darkness~』は、リゾスレ内ペンネーム「共鳴者作者」によって書かれた長編小説である。全17回(+番外編1回)。
 本スレへの投稿は 第1回が2008/05/16(金) 00:23:36.94、最終回が2008/09/11(木) 19:11:45.31(ただし代理投稿)となっている。


↓まとめサイトリンク先 (※左下の[+]をクリックすると本文が開きます)
+...

  • (13)547『共鳴者~Darker than Darkness~ 番外編』





あらすじ

不定期に現れ、世界を侵食する“異界”――。
古来より必ず“闇(ダークネス)”を伴ない現れるそれと、生涯闘う宿命を背負った者たちがいた。
その者たちの名は“共鳴者(リゾナンター)”。
“闇”と“共鳴者”たちの闘いは現代も続いている・・・・・・

宿命に、そして時の為政者に弄ばれる、現代の“共鳴者”である少女たちの物語。


  (※以下の内容にはネタバレ等を含みますので、未読の方はご注意ください。)



登場組織・人物等


共鳴者(リゾナンター)

 古来より“闇”を祓い、“異界”の侵食から人々を守る者として存在してきた異能力者。古くは古代シャーマニズムを始め、平安の世の陰陽師、神道や仏教、民間呪術などにその足跡らしきものが見られる。
 その素質は主に遺伝によって直系に受け継がれることが多く、共鳴能力(リゾナントスキル)と呼ばれる異能を保持している。その種類は個々によって違っており、能力の強さにも個人差がある。
 “異界”内部にあってその瘴気に侵されずに活動できる唯一の存在であるが、それは「“闇”に共鳴する者」に由来するその呼び名の通り、“闇”に近しい存在であることを示している。それ故に現界においては永くその身を保てない宿命を負っており、寿命は20~30年程度しかない(現代ではほんのわずかながら寿命を延ばすことのできる薬が開発されているようである)。
 歴史において常に国家の中心の傍らに在った“共鳴者”は、現代でもその例に漏れず、行政府(防衛省)に所属している。ただし、古代とは違い、ごく一部の者しかその存在自体を知らされておらず、そのことも“悲劇”を招く原因の一つであったと言えるかもしれない。 

 本物語中に登場する“共鳴者(リゾナンター)”は、九人の若い女性や少女(「比較的容姿の良い面子」らしい)のみで構成されている。彼女らは通称“黎明”(下記※参照)の呼称を持つ部隊に所属しており、平素は「喫茶リゾナント」の店員として日常生活を送っている。彼女らは共鳴能力のみならず、銃器の取り扱いや格闘系体術においても一定以上の技量を有しており、個人差はあるにせよ能力だけに頼らない戦闘を行うこともできる。
以下にその構成員を挙げる。


●高橋愛
 共鳴者(リゾナンター)の現リーダーであり、五番目(フィフス)被験者の一人。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は瞬間移動(テレポート)・精神感応(テレパシー)。

 強力な共鳴能力と強いリーダーシップで現在の“共鳴者”をまとめる頼もしい存在。
しかし、人間としての扱いすらされず、傲慢で無知な人間たちを守るために人知れず闘い死んでゆく自分たち“共鳴者”の運命に疑問を抱き始める。また、かつて政府の“暴挙”によって友人を喪ったことが、彼女の心に暗い影を落としているようである。そしてそれはやがて“共鳴者にとっての理想社会”を創り上げんとする具体的な構想へと変わり、遂にそれを実行に移す決意をしたことで“共鳴者”たちの運命は大きく動いてゆくことになる。
 先述のように、かつて政府による人体実験・「五番目(フィフス)」の被験者にさせられたことで、圧倒的な力を手にした。しかし、その反動でただでさえ短い寿命はさらに縮み、人知れず激しい発作に苦しむ日々を送っている。
 今作における「闇」側の主人公と言えるかもしれない。

 共鳴能力は上記の通りで、能力名自体はリゾスレ内の設定を踏襲しているが、その捉え方に関しては全く独自のものであるといえる。

  • 瞬間移動(テレポート)
 正確には空間制御の能力であり、自身の瞬間移動はその能力の一部に過ぎない。
 作中では以下のような使われ方をしている。
  ・仲間を連れて瞬間移動
  ・銃口から飛び出した直後の銃弾を空間の歪みに取り込み、対象者の直前で歪みから出すことで照準不要の射撃
  ・空間の歪みを何度も経由してワープさせることによる、銃弾の半永久的ループ攻撃
  ・制御した空間上にある全ての物質を破壊する
  ・体の一部のみを中空に移動・出現させ、攻撃を行なう
  ・空間に断層を作ることで、物質・現象の連続性を断ち切り、攻撃を遮断
  ・離れた場所にいる人間を空間の歪みを介して自分の下に召喚する
  ・対象者を空間の歪みに取り込み、別の場所に出現させる(遥か上空等)

  • 精神感応(テレパシー)
 当初は単に他人の思考や心理を識別する能力であった。
 しかし、「五番目(フィフス)」被験後は、他人の脳(3人まで)を用いた演算処理が可能になった。
 作中では以下のような使われ方をしている。
  ・視界の外の情報を、他人の意識を通じて知る(「不可視の触手を伸ばし」と表現されている)
  ・対象者の思考を読み取る(“共鳴者”には精神干渉系能力への耐性があるため使用できない)
  ・他人の脳にアクセスすることで、スーパーコンピュータをも凌ぐ演算を行なう


●田中れいな
 共鳴者(リゾナンター)の一員。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は共鳴増幅(リゾナント・アンプリファイア)。

 どこまでも純粋で理想的な「正義」を掲げる“共鳴者”。
 その真っ直ぐな想いはどのような状況に置かれても決して曲がることはなく、高橋愛は彼女のそんな姿にかつての小川麻琴の面影を見る。
 自分の掲げる「正義」を貫きたい思いはあるが、絶対的に力が不足していることを少し歯痒く思っている。それ故、自らの共鳴能力が単体では使用できないことをもどかしく思い、高橋愛に「能力の種類を変える方法はないか」と相談する。そしてそのことが皮肉にも高橋愛の離反への契機となった。
 今作における「光」側の主人公と言えるかもしれない。

 共鳴能力は上記の通りで、その設定はほぼリゾスレ内のものと類似しているように思われる。
 能力の効果は絶大で、高橋愛をもってしても自己の能力を完全に抑制できなくなるほどに増幅させる力を持っている。


●新垣里沙
 共鳴者(リゾナンター)の一員であり、五番目(フィフス)被験者の一人。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は洗脳能力。

 高橋愛に先立って“共鳴者”から離反し、紺野あさ美の組織したダークネスに所属。しかしその後も表向きは“共鳴者”のメンバーとして活動し、スパイ活動を行なっていた。高橋愛のみはその裏切りを知っていながらも、(おそらく)様々な理由からずっと沈黙を貫いていた。後に高橋愛が離反を決意した際に、名実共にダークネスへと走った。
 高橋愛同様、かつて五番目(フィフス)の被験者とされて圧倒的な能力を得た。直接的な描写はないが、当然彼女も寿命は大幅に縮み、延命の薬に頼りながら発作に苦しんでいると思われる。
 今作中においては心情描写はほぼないと言ってよく、その内心を正確に窺い知ることはできない。ただ、小川麻琴の死が心に影を落としていることは疑いなく、それ故政府・・・ひいては人類そのものに復讐心を持っていることは間違いない。また、復讐を実行するに当たって障害となる者を躊躇なく取り除こうとする姿勢は高橋愛や紺野あさ美と同様である。ただし、かつての仲間である“共鳴者”のメンバーに対してはやはり気遣うような心情が見られる。

 共鳴能力は上記の通りで、スレ内で見られる「精神干渉」とは異なり、いわゆる「マインドコントロール(精神支配)」と言うべきものである。対象者の精神を完全に制御して自らの意のままに操ることができ、その“洗脳”が一度に及ぶ数は、画一的な命令ならば千人を越える。ただし、“共鳴者”には精神干渉系能力への耐性があるため使用できない。
 作中では、“恐怖を感じない兵隊”を組織して防衛省の制圧に使用したり、また、(計画段階であり実際には使用されていないが)上層部の人間を洗脳して操るなどといった使い方が為されている。


●亀井絵里
 共鳴者(リゾナンター)の一員。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は傷の共有(※作中に能力名及びその詳細は明記されていない)。

 「本編」における出番は非常に少なく、台詞も1度出てくるだけである。それ故その性格や心情については明確ではない。また、能力についての描写も詳しくはなされていないが、「他人の傷を自らが請負う」といった能力のようである。
 ただし、(13)547『共鳴者~Darker than Darkness~ 番外編』において、その人となりを窺い知ることができる。他人の傷を躊躇なく引き受け、そのせいで重傷を負った苦しい息の中で「後方支援部」に向けて言った言葉は、彼女の全てを表していると言ってもいいのかもしれない。


●道重さゆみ
 共鳴者(リゾナンター)の一員。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は治癒能力(※作中に能力名及びその詳細は明記されていない)。

 「本編」における出番は亀井絵里同様少なく、台詞は3回。人物描写もほとんど為されておらず、性格や心情は明確ではない。能力は上記の通りであるが、どれほどの威力を持つかは不明である。
 (13)547『共鳴者~Darker than Darkness~ 番外編』において、他者を庇い、自らの傷よりも先に他人の傷を癒そうとする優しい性格と、あまりにも重傷は治せないらしいという、能力の断片的な設定が明らかになっている(自分が重傷を負っていたため能力を発動できなかったという可能性もある)。


●久住小春
 共鳴者(リゾナンター)の一員。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は念写(※作中に能力名及びその詳細は明記されていない)。

 「本編」における出番は少なく、台詞は1度。「番外編」に登場することもない。それ故性格や心情の詳細は明確ではないが、勝気な性格がやや覗いているとは言えるかもしれない。また、芸能人であるという“共鳴者”として以外の設定があるのは彼女1人である。能力が戦闘向きでない故か、銃器を使用する場面が多い。

 共鳴能力は上記の通りであるが、その詳細は不明。ただ、恐らく“異界”(“闇”)に関する情報の予見としての念写能力であるらしいことは窺い知ることができる。


●光井愛佳
 共鳴者(リゾナンター)の一員。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は予知能力(プリコグニション)。

 「本編」における出番は少なく、台詞は1度。「番外編」に登場することもない。しかし、その台詞から関西出身であるらしいことは分かる。高橋愛がスカウトしてきたらしいが、その経緯は不明。
 高橋愛と新垣里沙が“共鳴者”の下から去る際の戦闘において、「部分瞬間移動」による攻撃で頸部を蹴り抜かれて気絶させられた。それ故、高橋愛の去り際の言葉「あーしは、共鳴者としてみんなのために頑張るから」は聞いていなかったはずで、後の「高橋さんは、うちらの為に頑張るって言うてはりましたよね?」の台詞は他メンバーから聞いた話に拠ると思われる。

 共鳴能力は上記の通りで、かなりのレアスキルであるという描写がある。予知の対象が“闇”に特定されているという点で、リゾスレ内において独自のものであると言えるだろう。


●李純(リー・チュン)
 共鳴者(リゾナンター)の一員。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は念動力(サイコキネシス)・獣化能力(セリアンスロピィ)。

 中国人であり、防衛省によって見出されて“共鳴者”に加えられたようだが、その経緯は「国家機密」であるらしく不明。『本編』においての性格は、直情的であり即断即行・・・と感じるが、場面があまりにも特殊であるためにそれは正確とは言えないだろう。(13)547『共鳴者~Darker than Darkness~ 番外編』においては、その優しさや礼儀正しさが伺える。あだ名はジュンジュン。

 共鳴能力は上記の通りであるが、高橋愛曰く「あれだけ攻撃に特化したスキルは前代未聞」。おそらくは中国政府による薬物投与や脳手術によるものと想像される。その意味では五番目(フィフス)被験者と同じであると言えるかもしれないが、実力に関しては相手にならず完敗を喫した。


●銭琳(チエン・リン)
 共鳴者(リゾナンター)の一員。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は念動力(サイコキネシス)・発火能力(パイロキネシス)。

 李純と同じく中国人であり、防衛省によって見出されて“共鳴者”に加えられた。性格は即断即行を旨とし、敵と看做した相手には冷徹であると感じるが、李純の場合同様それだけが全てとは言えない。(13)547『共鳴者~Darker than Darkness~ 番外編』において、また別の一面が伺える。

 共鳴能力は上記の通りであり、それを得た経緯や高橋愛の感想は李純と同様である。殺傷能力に優れた強力な能力ながら、やはり高橋愛の前には無力も同然だった。
 発火能力(パイロキネシス)は純粋な燃焼現象であるようで、また、他作品で見られる「緑炎」ではなく、普通の赤い炎である。また、念動力(サイコキネシス)は精神力により対象物そのものに物理的干渉を引き起こすものとして捉えられている。


○黎明
 正式名称は、“防衛省外局 共化防衛委員会代執行機関 共化特務機関所属 特殊強襲部隊1号”であり、「黎明」はその通称。先述の通り、作中の“共鳴者(リゾナンター)”九名が所属している部隊である。(ただし所属先を認識している者とそうでない者がいる)
 “共鳴者”は、かつては宮内省により管理・管轄されてきたが、戦中・戦後の混乱及び宮内省の権限の縮小などによりその体制は完全に瓦解した。そのことにより、現代では“共鳴者”に関する知識の多くは失われ、往時のような統制は困難になっていた。しかし、依然として“異界”―“闇”は存在し続けており、その脅威の大きさに危惧を抱いた政府が新たに組織し、管理体制を敷く中で興った一つが「夜明け」の通称名を冠するこの部隊である。正式名称から分かるように防衛省の管轄下に存在し、常に“闇”との戦いにおける最前線にある。ただし、公には「存在しない」機関である。
 現在は先述の九名のみが在籍しているが、かつては後述の紺野あさ美や小川麻琴、後藤真希らもこの部隊の一員であった。
 作中には登場しないが、“黎明”以外にも全国各地に“共鳴者(リゾナンター)”部隊が配置され、それぞれに“闇”との死闘を日々繰り広げている。



後方支援部

 防衛省外局、陸上自衛隊所属扱いになっているが、公には「存在しない」部署。その名の通り“共鳴者(リゾナンター)”の後方支援――具体的には現場への人員の輸送や、弾薬供給、負傷者の手当て、交通警察と連携した周辺道路の封鎖、緊急時には避難誘導などが主任務である。その性質上、配属される人員は最低限であり、職務に関する厳重な緘口令が敷かれている。また、配属される者の多くは以前に何か問題を起こしたものが多く、本人たちは「左遷先」として捉えているようである。命を懸けて人智を超えた“異常”と直接対峙している“共鳴者(リゾナンター)”に比べて、安全地帯で地味な仕事をしていることを自嘲し、いつしか誰ともなく自らのことを“ただ現場を保全するだけの力なき者(ホゼナンター)”と呼称するようになった。しかし、“共鳴者”の中には「彼らの存在があればこそ戦闘に集中できる」と常に感謝の念を抱いている者もちゃんとおり、事実、彼らの存在なくしては、“共鳴者”たちの迅速かつ確実な任務の遂行は困難になるだろう。また、物語の終盤において、彼ら“ホゼナンター”は重要な役割を担うこととなる。
 本物語中に登場するのは“黎明”専属の後方支援部である。構成員として登場するのは以下の通り。

○准尉(名無し募集中)
 物語登場者の中では唯一階級が示されている後方支援部所属者であり、おそらく後方支援部の部隊長を務めていると思われる。微かな違和感から異変を察知し迅速な処置を取ったり、現場では的確で冷静な指示で集団をまとめるなど、指揮官として非常に優秀な人物。“黎明”所属の“共鳴者(リゾナンター)”たちに対して、職務を越えた慈愛の感情を抱いているようにも思われる。

○准尉の部下(名無し募集中)
 寮住まいの“ホゼナンター”であり、高橋愛と新垣里沙の防衛省制圧時に、省内に違和感を感じた准尉から携帯電話で指示を受けた人物。おそらく彼が准尉の命を受け、“黎明”の“共鳴者”との接触を図る手はずを整えたと推察される。もしかすると「番外編」に登場する“ホゼナンター”(下記参照)なのかもしれず、それとも、読んでいるあなたのことなのかもしれない。

○隊員(名無し募集中)
 (13)547『共鳴者~Darker than Darkness~ 番外編』に登場する、以前の職場で問題を起こして現在の部署に「左遷」されてきたらしい人物。ただでさえ存在意義が自分の中でもあやふやな自衛隊の中の、さらに意味を見出せない部署での職務で日々を終える自らに半ば自嘲、半ば諦観していたが、ある日の任務での出来事が、彼の職業意識に変化をもたらすこととなる。
自らを卑下しているが、迅速で的確な判断や処置、冷静で明確な指示など優秀な後方支援部隊員である。



防衛省(本省)

 国の行政機関たる中央省庁の一。その名の通り国家の安全を保つことを目的とし、陸上・海上・航空各自衛隊の管理・運営、並びにこれらに関する事務を行なうことを主任務としている。1954年に総理府(現内閣府)の外局の防衛庁として創設され、2007年1月に省に移行した。
 ただし上記は“現実の日本における防衛省”の説明であり、物語中のものと完全に同一とは限らない。物語中における防衛省は、先述の通りかつては宮内省の任務であった“共鳴者”の管理・管轄を行なっており、“黎明”および“後方支援部”等はすべてその管轄下にある。
 物語中、登場する所属人物は以下の通り。

○つんく♂(寺田光男)
 防衛省官僚であり、“黎明”所属の“共鳴者”への直接連絡を行なう「代行者」。メンバーに対しては本名(寺田光男)を明らかにしていない。また、その正体もリーダーである高橋愛以外には公式に知らされていない。外見に関しては、「金髪にサングラス、よれたスーツに身を包んだその姿は暴力団関係者のよう」との描写がある。
 “共鳴者”に対しては、他の行政府の人間同様おそらく「使い捨ての対“異界”用兵器」程度にしか思っておらず、その内心は隠すこともなく言動に顕れている。ただ、高橋愛と新垣里沙の造反後に情報を提供しに来てくれた後藤真希の口にした言葉からは、それでもなにがしかの情を抱いていたのかもしれない様子が垣間見える。
 “五番目(フィフス)”による防衛省制圧の際には、新垣里沙によって“洗脳”され、木偶人形となった。その後は不明。
 ちなみに、“黎明”が可愛い女の子だけで構成されているのは、プロデューサーである彼の趣味というどうしようもない理由からである・・・という裏設定が作者本人の口から語られている。(※はっきり登場はしないが、物語中の世界においては男性の“共鳴者”も存在している)

○矢島舞美
 梅田えりかと共につんく♂の護衛を務める共鳴者。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は時空操作であり、梅田えりかと対になっている(時間の流れを矢島が止め、その影響化でも自由に動けるのが梅田の能力)。
 “五番目(フィフス)”計画の失敗を下敷きに実施された“子供達(キッズ)”の被験者であり、忠実で従順な僕として政府に奉仕している。しかしその忠誠は政府の“教育”に因るものであり、政府に最も近いところにいる“共鳴者”ながら、国家の身勝手による一番の被害者であると言えるかもしれない。

○梅田えりか
 矢島舞美と共につんく♂の護衛を務める共鳴者。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は時空操作であり、矢島舞美と対になっている(時間の流れを矢島が止め、その影響化でも自由に動けるのが梅田の能力)。
 矢島舞美と共に、防衛省本省に侵入した高橋愛と新垣里沙を迎え撃つ。



ダークネス(反政府組織)

 “闇”の名を冠する結社であり、“黎明”を始めとする公的な“共鳴者”関連機関の敵対勢力。組織を作り上げたのは元“共鳴者(リゾナンター)”の紺野あさ美であり、同時にその構成員の多くは“共鳴者”の遺族によって占められているようである。当然トップに立つのは紺野あさ美であったが、その後実質の主導者は高橋愛へと移行する。
 組織名に、“共鳴者”が本来闘い殲滅すべき対象である“闇”の名を敢えて冠しているのが紺野あさ美らしいと言える。彼女が論文で考察していた“闇”の発生原因から鑑みて、おそらくは「この組織が生まれたのは誰のせいだと思われますか?」という、政府・人類への痛烈な皮肉が込められているのではないかと思われる。
 「結社」と表記はあるものの、本来的な意味でそうであるかどうかは不明。組織として過去、及び現在、具体的にどのような犯罪に手を染めているのかも明らかにはされていない。
 組織本部は、意表を突く形で喫茶リゾナントのテナントが入っているビルの真向かいの地下に置かれ、新垣里沙を通じて逐一“共鳴者”の動向を把握していた。それを知った高橋愛曰く「相変わらず趣味がいいとは評しがたい」、それに対する紺野あさ美の返答は「褒め言葉として受け取っておくよ?」であった。

 作中に登場する所属者は以下の通り。

○紺野あさ美
 元共鳴者(リゾナンター)の一員であり、五番目(フィフス)被験者の一人。
 後に造反し、反政府勢力「ダークネス」を組織する。
 共鳴能力(リゾナントスキル)は並列演算(パラレルコンピューティング)。

 類い稀なる明晰な頭脳と、その思考を行動に移せるだけの実行力を兼ね備えた鬼才の持ち主であり、上記の通り元“黎明”所属の“共鳴者(リゾナンター)”でありながら、反政府勢力「ダークネス」を組織した張本人。目的達成のためには手段を選ばない冷酷な面が覗いているが、それでも元仲間のことは気遣うような素振りは垣間見える。最終目的は“共鳴者”及びその遺族以外の人類の大虐殺、殲滅であり、すなわち人間という種族に対する復讐である。その思いは自分たち“共鳴者”への政府の仕打ち、そして何より小川麻琴の死に起因している。復讐の実現のために完璧な計画を立案し、実行に向けて着々と進めていたが、高橋愛に論破されて軍門に降り自らの計画を破棄。高橋愛の計画を全面的に支持、バックアップしていくこととなる。 
 五番目(フィフス)被験の結果得た共鳴能力は並列演算(パラレルコンピューティング)。最大3つのコンピュータと自らの脳を共鳴させリンクさせることで、常人離れした演算能力、知識共有を可能とする能力であり、元々持つ頭脳と合わせて世界最高峰の処理回路を有することとなった。・・・だが、それを上回る能力の持ち主が現れたのは先述の通りである。
 戦闘シーンの描写はないが、元“共鳴者”であることやその立ち居振る舞いから、それなりの戦闘能力を有していることは推察できる。

○高橋愛
 造反の後、紺野あさ美を論破し、実質上の「ダークネス」首領となる。

○新垣里沙
 組織における立場は明確にされていないが、おそらくは2トップの直下に位置すると考えられる。



その他

○後藤真希
 現在の“共鳴者”の「先輩」にあたり、現役時代は歴代最強クラスの戦闘力を誇ったようである。「"リゾナンター"達にとっての生ける伝説」「戦場の"戦乙女(ワルキューレ)"として名を馳せた歴戦の勇者」「カリスマ」等の描写から、“共鳴者”にとっても憬れの存在であったことが伺える。物語中の九人の“共鳴者”の中では、高橋愛と新垣里沙だけが戦いを共にしたことがあり、彼女の名を口にする時は夢見るような表情を象っていたらしい。実際に会ったことのない者でも会った気になるほど、“共鳴者”の誰もが彼女の往年の雄姿を語っていたようである。
 しかし宿命には抗えず、現在は車椅子での移動を余儀なくされ、点滴や呼吸補助チューブなしには延命が不可能であるほどに衰弱している。
 つんく♂の依頼を受け、高橋愛と新垣里沙造反後の“黎明”メンバーに「真実」を伝えに喫茶リゾナントへ出向く。

○小川麻琴
 故人。元“黎明”所属の“共鳴者(リゾナンター)”であり、“五番目(フィフス)”被験者の一人。
 「正義の味方になって、一人でも大勢の人を救いたい。」という理想を胸に“リゾナンター”としての道を歩んでゆくことを決意。それを叶えるための強い力を欲していた彼女は、人権や倫理を国家自ら踏みにじる暴挙と言える“五番目(フィフス)”計画ですらどこか望んで受け入れているふしがあった。だが、結果的にその被験が元で死亡する。
 そのどこまでも理想的な正義を掲げる想いは、どのように不条理な現実を見せつけられ、どのように残酷な仕打ちを受けようとも決して揺らぐことはなく、死の間際まで彼女の心は「正義の味方」でありたいという理想を抱き続けた。
 彼女が抱き続けた想いとそれが叶えられないままの無念の死は、高橋愛、紺野あさ美、新垣里沙、そして田中れいなに大きく影響を与えることとなる。特に、高橋愛にとっての小川麻琴の存在はこの物語のテーマそのものとさえ言ってもいいかもしれず、故人でありながら非常に重要な位置を占める人物である。

○麻琴の母
 夫と娘を共に若くして亡くし、現在は一人で淋しく暮らしている。目元の辺りが在りし日の小川麻琴に似ていると、高橋愛が懐かしく思い出すシーンがある。高橋愛にとって、彼女の元を訪れ、小川麻琴の仏壇に手を合わせる時間は、数少ない安らぎを得ることのできる一瞬であった。
 「しばらくはこちらへ顔を出すこともできなくなる」と別れを告げ、同時に決意の言葉を述べる高橋愛を黙って送り出す。おそらくは、彼女の中でも何らかの予感はあったのに違いない。

○麻琴の父
 故人。元“共鳴者(リゾナンター)”であり、小川麻琴が生まれてすぐに死亡したようである。殉職であったのか寿命であったのかは不明。物語中で語られる唯一の“男性の共鳴者”である。



用語集

◆異界
 現界とは空間位相の異なる、十一次元の異様なる空間。発生は不定期。発生時刻は夜間に集中することが多く、また人口の密集した都心部への出現率の高さが顕著な数字として表れている。「闇」の項目で述べたように、核となっている"闇"を排除することにより消し去ることができる。
 その内部には瘴気が渦巻いており、あらゆる生物の生存は不可能。内部にあって平時と変わらぬ活動を許されるのは共鳴者だけであり、それ故“闇”の排除は共鳴者の手によってのみ為しえる。
 古来より現代に至るまで、生物の絶滅に関わる大きな脅威として存在してきたが、その発生原因については明確ではない。ただし、過去のデータや統計から類推をしている者もいる。

  • 以下は紺野あさ美による研究論文からの引用
異界とはそのもの人間の内に潜む何かに呼応して現れる。仮に異界を独自の生態系を持った生命体として考えてみよう。この仮説に則れば、確かに餌となる人間の密集した地域への発現率の高さの裏付けともなりうる。だがここで問題なのは、異界は発展途上国より先進国での発生数が人口ひとり当たりに対して大きいことだ。ゆえに、異界を単純な生命体として捉える先の見解には疑問を呈さざるを得ない。途上国より先進国に高い異界発生率。類似するものとして連想されるのは精神病発症率、自殺率、異常犯罪率だった。陳腐な表現を用いるなら「人間の心の闇」。具体的にはうつ、悲嘆、絶望、嫉妬、憎悪、破壊衝動、敵意、そして殺意。異界の発生率はこれらの人間の感情と密接に関わっている。

 また、紺野あさ美は"共鳴能力"の使用法次第では、異界の人為的発生、拡大は可能であると結論付けている。


◆闇(ダークネス)
 “異界”の内部に在り、同時にその核となっていて、これを排除することでしか“異界”の侵食を留めることはできない。排除は銃火器等を用いた物理的手段によって行なわれる。
 生きた人間の養分を糧としており、養分を吸い尽くされた人間は死に至る。その形態は様々であるようで、本作中に登場するのは「広範囲に渡って自らの半身を配置し、そこから供給された養分を糧とするタイプ」であり、高橋・田中・久住のチームによって本体を斃されると、分身もすべて消滅した。
 やや余談であるが、闇を打ち払う“共鳴者”の部隊名が、通称“黎明”であることは先に述べた。これは当然その名の通り、闇を払い「夜明け」をもたらす部隊・・・という連想からきているのだと思われるが、それと同時に「黎明」→「夜明け」→「朝」→「モーニング」という作者の洒落た遊び心とも思われる。


◆共鳴能力(リゾナントスキル)
 共鳴者が持つ異能。いわゆる「超能力」に類するものが多い。人間の精神、肉体に働きかけるものが主であり、文字通り外部と「共鳴」することによって現象を引き起こす。それ故非殺傷系の能力者が大半であるが、例外は存在する。
 ※物語中に登場する能力は登場人物の項を参照。


◆五番目(フィフス)
 厚生労働省による計画であり、名目上は、他のメンバーに比較して極端に共鳴能力の質が悪かった高橋愛、紺野あさ美、小川麻琴、新垣里沙の4名の能力改善を目指した臨床試験。しかし、その実は人権や倫理を無視した非人道的な人体実験。「薬を打たれ、頭蓋を切開して脳をいじられ、身体中に二度と消えない手術痕を刻まれ」た結果、高橋愛、紺野あさ美、新垣里沙の3名は寿命の短縮や副作用と引き換えに絶壁の力を得たが、小川麻琴はこの被験が元で死亡する。
 政府がこの計画を断行したことが、後の悲劇に最も直結していると言っていいかもしれない。


◆子供達(キッズ)
 “五番目(フィフス)”計画の“失敗”を受けて、政府が後に行なったまだ幼い十歳前後の共鳴者を対象に行われた計画。被験者を未熟な子供に限定した理由は、上からの“教育”がしやすく、政府に従順な存在に仕立て上げやすいためで、その思惑通りの結果が得られていたようである。
 離反を防ぐためや、前回のような実験時の事故恐れたこともあって、個々の能力は“五番目(フィフス)”に及ぶべくもない。そのこともあり、4人のみの被験だった“五番目(フィフス)”に対し、圧倒的に多人数が被験している(正確な人数は不明)。それには「質より量」で“五番目(フィフス)”を凌駕しようという思いがあったようだが、結局“五番目(フィフス)”たった2人の手であっけなく殲滅された。

◆喫茶リゾナント
 「一般社会に溶け込み、それを守るという己の役割を自覚する」という目的の下、“黎明”所属の“共鳴者”により運営される喫茶店。上からの指示による副業ではあるが、緊張の日常を強いられる“共鳴者”たちにとっては安らぎの場となっており、それ故大切に思う者も多いようで、高橋愛でさえ例外ではなかった。おそらくは歴代リーダーが同時に店主を務めていると思われる。
 オフィス街に面しているという立地的な好条件と容姿のいい若い女子店員の存在により、料理やコーヒーの味はさほどでもない(高橋愛談)ながら、多くの常連客を抱えそれなりに繁盛していたが、高橋愛の離反を境に休業状態となり、最後は元店主の手により瓦礫の山に埋まった。

◆常連客
 利便性ゆえか、料理やコーヒーの味に惹かれてか、それとも若くてかわいい女の子に囲まれたいがためかはおそらく人それぞれながら、喫茶リゾナントを愛して頻繁に訪れる人たち。休業時には多くの常連客がため息をつき、「ここ来ないと調子出ないんだけどなぁ」とさえ思っている者もいるようである。

◆89式自動小銃
 主に日本の自衛隊や警察のSATに配備、運用されている自動小銃。強化プラスチック製の部品を多く用い、軽量化されている。
 “黎明”の“共鳴者”も(任務遂行時は)標準装備しており、“闇”の殲滅に使用されている。

◆ミネベア9mm自動拳銃
 ミネベア社開発の9mm口径短機関銃。通称はM9。自衛隊の標準装備の一つ。
 田中れいなはこれを向けることで最後の答えを表明した。

◆カラシニコフ自動小銃
 ロシアのミハイル・カラシニコフが開発した歩兵用突撃銃(アサルトライフル)、「AK-47」の別名。
 新垣里沙の共鳴能力により操られた「兵隊」が手にしていた。

◆手榴弾
 いわゆる「手投げ弾」であり、歩兵の標準装備の一つ。小型であることもあって爆発の威力はさほどない。
 高橋愛はこれと自身の共鳴能力の併用により、喫茶リゾナントの入る雑居ビルを倒壊させた。

◆特殊警棒
 伸縮式の警棒であり、警察官などが主に護身用具として装備している。ちなみに「特殊警棒」という名称はノーベル工業の商標登録。
 “共鳴者”も装備しており、クライマックスの戦闘場面でも使用される。

◆国道
 最終決戦の場。“黎明”の拠点である「喫茶リゾナント」と“反政府組織ダークネス”の拠点である地下アジトの間に横たわる道路であり、「光」と「闇」が鬩ぎあう境界線の象徴と言える。ちなみに何号線かは不明。

◆黄昏
 夕方の、日が暮れる直前の薄暗い時間。「誰そ、彼は」と、人の顔の見分けがつき難くなる刻限であることに由来する。それ故、怪しいモノに出逢いそうな時間――「逢魔が時(おうまがとき)」とも呼ばれ、「大禍時」の音にも通ずるところから、古来から不吉な時間帯とされた。

 本物語はまさにその不吉な時間帯に幕を開ける。家路につく人々の流れに逆らって進む“共鳴者”、そしてその任務終了後に高橋愛が見上げる月のない闇夜の空は、その後の展開を暗に示していると言えるかもしれない。
 ラストシーンもまた「逢魔が時」の中で描かれる。闇よりもなお暗い正義と、理想のような蒼く輝ける正義がぶつかり合う刻限。無窮の闇に覆われた「夜」と蒼く輝く空に抱かれた「昼」を分かつこの時間帯もまた、「光」と「闇」が鬩ぎあう境界線の象徴と言えるだろう。


番外編

  • (13)547『共鳴者~Darker than Darkness~ 番外編』(※左下の[+]をクリックすると本文が開きます)
+...
陸上自衛隊に入隊してから、何度目かの転属で今の部署に入った。
防衛省の外局。
公にはされていない機関の、後方支援人員。
与えられる仕事は地味なものだった。
都心部を中心に発生する何らかの"異常"に際し、
その対処に回る人員の輸送や、弾薬供給、負傷者の手当て、
交通警察と連携した周辺道路の封鎖、緊急時には避難誘導などが主任務だ。
要するに現場の保全と、"異常"に直接対峙する彼女らへの微々たる支援。
彼女達は俗に"リゾナンター"、辞書を紐解けば「共鳴する者」と呼ばれている。
それに習ってか、同僚達の間からは誰ともなく自嘲気味に自らをこう呼称する者が現れた。
ただ現場を保全するだけの力なき者、"ホゼナンター"と。


――― 共鳴者~side story~『保護の全う』―――


"異常"から遠く離れた安全区域で、今日も彼は現場の保全に勤めていた。
対処人員、リゾナンターに新人が入る頃には負傷者の救護に借り出されることも
何度かあったが、最近ではそれもめっきり減っている。
噂では今のリゾナンターの面子には軽傷の怪我人程度なら治癒できる超能力者がいると聞く。
もしそれが本当なら負傷者の応急処置と救急車の手配に備えてこうして
じっと待ち構えている彼の存在は、本当に万が一の確率に備えただけの限りなく意味なきものだ。

(ほんと、自衛隊員なんて何処にいても一緒だよな)

暇にまかせて、彼はそんな自嘲的な評価を胸中で呟いた。
彼も自衛隊員だ。戦争なんて起きる筈がないなどという幻想は抱いていない。
現実に隣国や半島からは常にミサイルを照準されているし、
北海道ではロシア機の領空侵犯に年何度も空自が緊急出動させられている。
それでも、平和ボケした国民はそんなことなど知りもせず安穏とした毎日を送っている。
その平和ボケが自分達の職務の成果であるのなら彼がこれほどやさぐれることもなかっただろう。
けれど現実に有事の際、この国は間違いなく米国の庇護なくしてその有事をやりすごせない。
国防費が世界有数の額に上るとは言われていても、
そのほとんどが自衛隊員の人件費に消えているのが現実だ。

左翼勢力に先導された平和を唱える団体は日夜自衛隊の存在に抗議を示し、
その追い風の影響で彼も、駐屯地の外で職業を訊かれれば「公務員」としか答えられない。
税金ドロボー。有事には役立たず。
そんな罵詈雑言に、彼は確固とした信念を以って反論することができない。
災害出動の時にのみ評価される自分達の存在に、
ああ日本が地震の多い国で良かったなどと、
あまりにも不謹慎な考えをよぎらせたことすら経験がある。

ねじれている。
自分達は、きっと何処かが致命的にねじれている。

羨ましいと、"異常"の最前線で日夜命がけで戦う年端もいかぬ少女達に
何度羨望の眼差しを向けたことだろう。
超能力と呼ばれる力の存在を、彼はこの職場に来て肌で実感している。
"異常"の内側には何があっても踏み入るなと、上からは厳命されていた。
そんな危険な筈の空間に、小銃を抱えて迷い無く飛び込んでいく少女達の存在。
自分にはない、特別な何かを彼女達が持っていることは容易に推測できた。

そんな非科学的な存在に、何かとんでもなく大きな国防の前線を任せているのだ。
上からの緘口令も厳重だ。
この職場に回されてくる人員は必要最低限の数だったし、
その誰もが自分のように以前の職場で何らかの問題を起こした者だった。
要するに左遷先なのだ。
おそらく自分が辞職して世間にこの事実を口外しても、
その身分や退職の経緯と、あんまりにあんまりな話の内容に、信じる者など皆無だろう。

名もない彼は、そんな憂いに埋没しながらその日の職務も全うしていた。
ただ、待機するだけという職務を。
やがて警戒態勢は解除され、今日も事後処理と要救助者の搬送で彼の一日は締めくくられる。

その、筈だった。

『こちらC班より後方支援部へ。A班に負傷者が発生しました。
 負傷者は二名、現在B班の一名とA班の残りの人員が非戦闘区域まで搬送中です』

突然の声に、それが自身が耳に嵌めている無線からの報告だと彼は一瞬認識できなかった。

『…? 応答願います。こちらC班、班長の高橋です。
 A班に負傷者、現在そちらへ搬送中ですので――』
「し、失礼しました。こちら後方支援部医療班、現在予定通りポイントαにて待機中です。
 これより救急車を要請、負傷者は到着次第こちらで応急処置を施します。
 上層部への報告その他は全てこちらで引き受けます。各班はそのまま状況を続行願います」
『了解。迅速な判断、感謝します。通信終了』

血管に冷水を流し込まれたような感覚を伴い、視界が急激に広がっていくのを感じる。
まずは救急車の要請。そして周囲に展開中の後方支援部員に状況を通達する。
間もなく負傷者が二名、ここまで運ばれてくる。
報告には具体的な負傷状況などは含まれていなかった。
無線の背後には断続的な銃声が木霊していた。
そこまでの判断をその状況下で求めるのは酷というものだろう。
状況を改めて俯瞰し、自身にできる最前の行動を模索する。
医療キットを開き、ピンセット、止血帯や消毒液、捻挫や打撲用の氷に、骨折に備えた添え木の準備も整えておく。
アスファルトにビニールシートを広げ、その上に毛布を二人分敷いておく。
失血による体温の低下も懸念される。毛布はさらにもう数枚ミニバンから取り出しておいた。

「フショウシャのハンソウでス!」
「オネガイしまス!」

中国人独特のイントネーションの声が届き、
その肩にはそれぞれ一人ずつ負傷者が支えられている。
身振りをまじえ毛布に二人を寝かせることを指示し、早速負傷状況の確認に入った。

名前は確か…道重さゆみと、亀井絵里だ。
事前に預かっていた保険証に記載された名前を記憶から紐解きながら、傷の具合を確かめる。
妙な傷だった。
どちらも腹部や腕に獣の爪で抉られたような傷がある。
さらに、その箇所がどちらの二名もまるで同じなのだ。
違いと言えば亀井絵里の傷の方が若干道重のものより浅いことだろうか。

「あのっ、道重サンがワタシをかば、かばっテ、それで亀井サンがその傷共有シテ、
 それで、道重サンは亀井サンの傷治ソウト、でもダメデ、全部ワタシが――」

李純がパニックを起こした蒼白な表情でまくし立てている。
内容は要領を得ないが、どうやらこの事態は自分のせいで起こったのだと考えているらしい。
9人で構成される作戦で4人も人員を欠いているというのはかなり危険だ。
先決なのは彼女を落ち着かせ可能なら現場に戻すことだと判断する。

「落ち着いて。大丈夫、この傷なら命に別状はない筈です。後はこちらで引き受けます。
 お二人は早く現場へ。敵は強力、4人も欠いた状態では状況が厳しい筈です」

銭琳が彼の言った内容を咀嚼するようにゆっくりと李純に説いている。
次第にその表情から蒼白さが抜け、いま自分がすべきことを悟った真摯な顔つきに戻る。
これなら前線に戻しても問題はないだろう。
そう判断し、律儀に頭を下げる二人を見送りながら、目の前の要看護者に視線を戻す。
二人にはああ言ったが、失血量次第では命に別状がないなどとは言えない。
救急車の到着まではあとおよそ10分弱といったところか。

「道重さん、亀井さん。意識はありますか? 
 ありましたら右手の人指し指を軽く動かしてください」

漂白したタオルを腹部の傷にあてがい、止血処置を施しながら意識の有無を確かめる。
幸いどちらの右手もかすかにだが動きを見せた。
瞼はうっすらとしか開いていないが意識はあるらしい。
口元に掌を当てる。幸い呼吸にも異常はない。

「大丈夫ですよー。すぐに救急車が来ますからね。
 呼吸はゆっくり、何か違和感があったらまた右手の人差し指を動かして教えてください」

両腕は肘のあたりできつく縛り、傷口はこれもタオルで塞ぐ。
傷の具合からして肋骨の損傷も心配されるが、
少なくとも横隔膜や内臓に支障を与えるレベルには至っていない。
これだけ大きな傷だと消毒液はまずい。
余計なショックと痛みを与えないことだけを最優先に考える。

自分にできる処置はこの程度が限界だ。
後は救急車を待つのみだが――不意に、比較的(あくまで比較的にだが)傷の軽い亀井絵里が口を動かした。
何かを呟いている。
視線がこちらを向いていることから、何かを伝えたがっているようだ。
何らかの異常を覚えたのかと焦りつつも、表面上は平静を装って耳を彼女の口元へ持っていく。
一言一言を区切りながら紡がれる言葉の内容を理解し、――彼の表情はピタリと止まった。

救急車が来た。
二人は無事にタンカに乗って搬送されていく。
前線の状況の方もなんとかその後重傷者は出さず終息して、
普段とは少しだけ違う彼の任務は全うされた。

所属の駐屯地へと戻る輸送車内で、彼は同僚に肘で脇腹をつつかれた。

「なんだよお前、何かいいことでもあったのか」
「……いや、まあな。職務意識にちょっとした変化が起きただけさ」

後で、この件は他の同僚達にも伝えてやるべきだろう。
些細な、実に些細な言葉だったが、きっと何かを変えてくれる筈だ。
あの時、亀井絵里が耳元で囁いた言葉。

――い…つも、ありがとう、ござい、ます…。
  後方、支援部の、方々の…おかげで、私達、安心して、戦えるん、です――

それが彼女達の総意なのか、はたまた彼女個人の思いなのかはわからない。
重要なのはあの状況で、出てきた言葉が誰かへの遺言でも無念でもなく、
自分達後方支援部、"ホゼナンター"への感謝だったということだ。

自分達の存在は実に些細だ。
あまりに些細で、ともすれば不必要なのではないかと、自分でも疑いたくなってくる。
けれど違った。
意味ならあった。
必要としてくれる人が、誰よりも近くに、最前線の現場にいてくれたのだ。
その事実が、あの言葉が、ねじれていた自身の心をゆるやかに、
しかし確実にほどいていくのを実感する。

あの瞬間、きっと自分は彼女達に"共鳴"できたのだ。

できることには限界がある。
限界があるのなら、最低限その限界を維持し続けよう。
それが彼女達を少しでも危険から救うなら。
きっと、自分は自分に誇りを持てる。

"ホゼナンター"の出動は不規則だ。
今日も疲れた。
有事の保全に備え、今夜はゆっくり眠ることにしよう。


















T - Y -
-