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//以下スペースにSSをコピペ //――――以下SS―――― ***ずっと変わらない 学園祭も終わり、秋も深まったある日。 いつものように放課後部室で勉強した後、校門前でみんなと別れた。 もうすっかり暗くなっていて、空には白い月がこうこうと光っている。 風も、もうずいぶん冷たい。 「また明日ねー」 街灯に照らされた横断歩道を渡りながら、唯が笑顔で手を振る。 梓は私たちに向かって、小さく頭を下げた。 ムギも振り返り、おっとりとした笑顔を浮かべる。 「おー、また明日なー!」 律が手を振り返し、3人が横断歩道を渡り終えるのを見届けて、私たち2人も歩き出した。 いつもと同じ光景。 (でも、これも・・卒業したらなくなってしまうんだ。) ふと足を止めた私を、不思議そうに律が振り返った。 「どーした?澪。忘れ物でもしたか?」 「いや・・何でもない」 私は自分に言い聞かせるようにそう言って、歩みを速めた。 「・・それにしても、律まで進学に決めるとはなー」 とりあえず何か言おうとして、出てきたのはそれだった。 すると、 「それを言うなら、澪だって、まさか公立の推薦蹴って、私大受けるとはな!」 もっともな律の言葉に、私は少しあわてる。 「だって・・」 「一人がそんなに嫌だったのか~?」 からかうような口調で、律が言う。 その明るい笑顔を見た途端、胸がチクリと痛んだ。 そして反射的に・・ ”ゴンッ” 「あ痛ーッ 暴力はんたーい!」 「律がふざけるからだっ」 「・・澪?なーに怒ってんだよー」 「ふんっ」 私はすたすたと早足で歩き出す。 「みおー?」 律はぱたぱたと軽い足音を立ててついてくる。 私は、ふと、既視感を覚えた。 (何か、昔似たようなことが・・) そうこうしているうちに律の家に着く。 「じゃ、8時に」 夕ご飯を食べたら、どっちかの家で勉強する。 それが最近の日課になっていて、今日は私の部屋に律が来ることになっていた。 「また後でなー」 律はまだ何か言いたそうだったけれど、とりあえず家に入っていった。 私も家に向かって歩き出す。 「律の・・バカ」 小さくつぶやいた言葉は、冷たい空気の中に白く浮かび、すぐに消えた。 律は8時ちょうどにやって来た。 私の部屋に連れて入る。 部屋には、いつも私が使っている学習机とは別に、座卓が用意されていて、座布団も二組敷かれている。 その上にはお盆に載った二人分のマグカップと、紅茶のティーバッグ。 隣には、缶に入ったクッキーまで。 ママ・・いや、母が用意してくれたものだ。 律は部屋に入るなり、何の遠慮もなく、私のベッドに寝転がった。 「こら、律!勉強しに来たんだろ!」 「いやー、お腹いっぱいだと眠くなっちゃってさぁ」 いやがる律を引き起こし、机の前に座らせる。 私は律の向かい側に座った。 机の上に、バッグから出した教科書やノート、ペンケースを並べる。 律はぶぅぶぅ言いながら、座布団の上にあぐらをかいて、ペンケースからシャーペンを取り出した。 私は律がペン回しをして遊んでいるのを尻目に、参考書をめくった。 しばらくして。 (あれ、静かになった・・?) さっきまで目の端でチラチラと動いていた律が、いつの間にかうつむいてじっとしている。 まさか寝てるんじゃ、と顔を上げると、なんと律は、ノートに目を落とし、勉強中だった。 私が顔を上げたことにも気付かず、集中している様子で、問題集を解いている。 (いったんこうなると、ものすごい集中力なんだよなぁ、律は・・) 真剣な律の顔を盗み見る。 (・・こうやって律と一緒にいられるのは、あと、どれくらいだろう) ふっと、心に暗い影が落ちた。 同じ大学に入れるだろうか。入れたとしても、同じようにいられるのだろうか。 押し寄せる不安。 その時ふと、下校の時の既視感を思い出した。 (ああ、そうだ、あれは、小学生の時・・) ---- 私たちの通っていた小学校では、2年に一度クラス替えがあった。 律とは3年生から同じクラスになり、4年生の初夏の、作文の事件がきっかけで、どんどん仲良くなった。 そして、4年生の終わり頃にはもう、2人でいることが当たり前になっていた。 それまでの私は、人見知りで引っ込み思案な性格のせいで、一人でいることの方が多くて。 だから、律は、私にとって初めての、ちゃんとした友達だったのだ。 律は逆に、男女問わず誰とでも屈託なく話すため、それまで特定の友人というのがいなかったようだった。 律は、私をクラスに溶け込ませてくれた。 そのおかげで、私はとても楽しい1年をおくることができた。 子どもの頃の1年は、長い。 だから、5年生になる直前、4年生の春休みは、私にとって、とても不安な時期だったのだ。 (りっちゃんとクラス離れちゃったら、どうしよう・・) りっちゃんはきっと平気だ。 だって誰とでもすぐ仲良くなれる。 でも、私は・・ ある肌寒い春の日。 いつものように遊んでいた公園で。 暗い顔をしている私に、律が言った。 「どうしたの、みおちゃん。今日、なんだか元気ないね?」 「・・りっちゃん、私・・次のクラス替えで、りっちゃんとクラス離れちゃったら、どうしよう・・」 律は、一瞬動きを止めて、それから、すぐに明るく言った。 「きっと大丈夫だよ!だって、クラスは4つしかないんだから・・」 「だけど、4つもあるんだよ!大丈夫じゃないかもしれないじゃない・・っ」 私は不安で、悲しくて、何に対してかも分からずに、怒っていた。 律が悪いんじゃないのに。 律はひどく悲しそうな顔をしていた。 「大丈夫だよ・・」 弱々しく笑って、そう言ってくれる。 でも、私は。 「りっちゃんは大丈夫だよ、だって、明るくて、誰とでも話せるもん・・。でも、私は違うもん。りっちゃんは平気でも、私は、怖いの!」 「みおちゃん・・」 行き場のない感情を律に投げつけて、私は走り出した。 律が追いかけてきてくれるのは、分かっていた。 ぱたぱたと後ろをついてくる、軽い足音。 でも私は、止まれなくて。 律を困らせたい気持ちも手伝って、どんどん走った。 律は足が速い。本気で走らないと、軽く追いつかれてしまう。 「みおちゃあん!待ってよー!」 (あんまり走ると、あぶないよぉ・・) 私は無心に走った。 律の声が遠くなる。 どれくらい走っただろうか。 私はようやく足を止めた。 途端に、周りの風景が目に入ってくる。 (ここ・・どこ?) 田んぼに囲まれた広い道だった。 大きな車が轟音を立てて走っていく。 見知らぬ場所。太陽はもうだいぶ傾いている。 息が上がっていて、足も痛かった。 (こわい・・。りっちゃんは?) 見回すが、律の姿は見えない。 (どうしよう・・) わたしはようやく自分の置かれた状況を理解した。 (私・・迷子になっちゃった) とにかく来た道を戻ろう、と思った。 でも、無我夢中で走ってきた私は、自分の来た道を覚えていなかった。 漠然と、こっちかな、と思った方へ歩き出す。 しばらく歩いてみたけれど、全然わからない。 パニックになって、呼吸が浅くなった。 (どうしよう・・パパ、ママ・・ りっちゃん・・!) その時。 ふらふらとした足取りで歩いていた私は、道ばたの段差に足を取られた。 (あっ) 体が傾く。 隣には、1メートルほどの深さのコンクリートの側溝が口を開けていた。 何を考える暇もなく、私は倒れて側溝に落ち---------- コンクリートの地面にしたたかに体を打ち付ける・・はず、だった。 (あれ、痛くない・・?) 落ちた地面に、何か柔らかくて暖かいものが敷かれていることに気付き、私は目を開けた。 「り、りっ・・ちゃん・・?」 そこにいたのは、いるはずのない彼女だった。 「みおちゃん・・よかった、間に合って・・」 弱々しくほほえむ律。 私はあわてて立ち上がった。 律のおかげで、私の体には、擦り傷一つついていない。 「でも・・っなんで・・?」 「みおちゃんが見えて、呼んだんだけど、車の音がうるさくて、聞こえないみたいで・・。ふらふら歩いてたから、危ないと思って一生懸命走ったんだ・・」 そうして追いつき、倒れる私を抱きかかえるようにして、下敷きになって倒れたらしい。 「よかったよぉ、みおちゃん。間に合って・・」 へにゃっと笑う。心からホッとしたような暖かい笑顔。 「よ、よくないよ・・だって、りっちゃんが・・っ」 その時、気付いた。 律の手も、足も、擦り傷だらけで、血が滲んでいる。 「・・っ・・!」 私の顔が引きつったことに気付いたのだろう。 「みおちゃん、大丈夫?」 心配そうに律が私の顔をのぞきこんだ。 「大丈夫じゃないのはりっちゃんだよぉ・・」 私はほとんど泣きそうになっていた。 律はにっこり笑い、何事もなかったかのように立ち上がった。 服の汚れをパンパン!と払い、ついでに私のも払ってくれる。 そうして手を差し出して、言った。 「みおちゃん、帰ろ!」 私と律は手をつないで歩く。 律は心なしか右足を引きずっているようだった。 「でも、道が・・」 「大丈夫、来る途中に大きいお店があったから、そこで電話を借りよう!」 律の言うとおり、少し歩いたところに国道沿いの大きなショッピングセンターがあった。 公衆電話で家に電話をする。 母は遅くなった私を心配しており、すぐに車で迎えに来てくれた。 「みお・・!どうしてこんな所まで来ちゃったの?」 「ママ!ごめんなさい・・」 「あなたが、みおがいつも話してくれる、”りっちゃん”ね。・・まぁ、傷だらけじゃない!一体どうしたの?」 私が何と言っていいか分からずにもごもごしていると、律が、 「私が寄り道しようって言って・・ふざけていたら、転んじゃったんです」 と言った。 私が、違う、と言おうとするのを、しーっというポーズで制する。 母はそんな私たちを困った顔で見つめ、 「とりあえず、お家に帰りましょう。車に乗って?」 と言った。 私の家に行き、律の擦り傷の手当をした。 律はずっと顔色が悪かった。 どうしたの?ときいても、首を振る。 見ると、律の右の足首がひどく腫れていた。 「ねんざみたいね。お医者さんに行かなくちゃ。律ちゃん、お家の電話番号教えてくれる?」 「あの・・今、誰もいないんです。うち、共働きなんで・・」 母の車で病院に連れて行った。 律が手当をしてもらう間に、私は母にすべて話した。 母は、ほほえんで、 「だったら、ちゃんとりっちゃんに謝らなきゃね。・・良いお友達が出来て、良かったわね、みお。」 と言った。 家に帰って、母が律の家に電話して律の親が迎えにくるまでの間、私と律は私の部屋にいた。 「りっちゃん、ごめんね・・」 「大丈夫だよー」 泣き顔で床に座り込んでいた私の頭を、ベッドに座った律が、ぽんぽん、と優しくたたいてくれる。 「私ね・・りっちゃんと同じクラスになれなかったらって、考えて、怖くて・・ でもりっちゃんは、きっと、全然平気なんだって思って、さびしくて・・ 本当に、ごめんなさい・・」 「ううん、みおちゃん!私こそ、ごめん・・。でも・・あのね、みおちゃん。もし、一緒のクラスになれなくても、私たちは大丈夫なんだよ!だって、私たちは、もう、”親友”なんだから!」 「しんゆう?」 「そう、誰よりもいちばん仲良しで、大好きな、友達!どんなに遠くにいても、私は絶対、みおちゃんを守ってあげる。」 「・・ほんとに・・?」 「うん!ぜったいぜったい、ぜーったい!約束するっ!」 「・・ありがとう、りっちゃん。」 それから律は、少し考えて、ぱっと顔を輝かせた。 「だから、その印に、これから私のこと、”りつ”って呼んで!私も、みおちゃんのこと、”みお”って呼ぶから!」 「・・りつ・・?」 「みお!」 ---- 「・・お・・みおー」 「・・りつ?」 気付くと、律が私をのぞき込んでいた。 「おー、みお、よく寝てたなー」 「あれ・・」 いつの間にかうたたねしてしまっていたらしい。 「私に寝るなっていったくせにー」 律はにやにやしている。 「ね、寝てなんてないっ」 そう言って、落ちていたペンを握り直す。恥ずかしい。 「・・りつ」 「んー?」 「何でもない」 「なんだそりゃ」 律はぐっと体を伸ばして、私の頭に顔を寄せた。 「どーした、澪、熱でも出したか?」 「な・・なんで」 「だって、顔が赤・・ うわっ」 その途端、私の顔がぱっと上気したのを、律は私が怒ったと勘違いしたらしい。 殴られると思ったのか、律は、さっと両手を上にあげた。 私はゆっくりと手を振り上げる。 律は目をつぶっている。 そのままふわり、と手を律の頭に下ろした。 ぽんぽん、と優しく、軽く叩く。 あのとき、律が私にしてくれたみたいに。 「・・ふぇ?」 マヌケな声を出す律。 「や、やっぱり熱あるんだろ、澪!?」 私は何も言わずに、参考書に目を戻した。 (ありがと。・・りっちゃん。) 心の中で、つぶやく。 大丈夫、私たちはきっと、何があっても変わらない。 だって、あのころからずっと、変わってない。 私も、律も。 律は長いこと首をかしげていた。 ☆☆☆ おまけ・・台詞のみ。 その後、おやつ休憩にて。 「そういえば、みおー、今日帰るとき、何怒ってたんだ?」 「・・律が、何で公立の推薦蹴ったんだ、なんて言うから」 「いや、だって気になるだろ、ふつー」 「分かるだろ!」 「いーや、言わなきゃ分からん!」 「・・律がいない学校なんて、考えられなかったんだ」 「澪・・?」 「・・り、律こそ、勉強嫌いなくせに、なんで進学にしたんだよっ」 「私だって、こう見えていろいろ考えたさ! ・・けど、進学だったら、まだみんなと一緒に音楽やれるし・・それに」 「・・それに、何?」 「澪と、少しでも長く、一緒にいられたらいいなって・・」 「律・・。昔からそうだけど、律ってさ、全然平気そうに見えるから・・ だから、私ばっかさびしいのかなって、思っちゃって・・」 「それで怒ってたのか?」 「・・・・」 「何年の付き合いだと思ってるんだよー。私が平気じゃないことくらい、わかるだろ・・?」 「・・うん」 「大丈夫、私は澪のそばにいるから。ずっと、ずーっとな!」 「・・じゃあ、ちゃんと勉強しないとなっ!」 「・・え”・・」 「よし、休憩終わりっ!やるぞーっ!律は、次は問題集29ページから120ページまで!」 「み、みーおー・・」 おしまい このSSの感想をどうぞ #comment_num2(below,log=コメント/ずっと変わらない)

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