笹の葉嬉遊曲その1

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好きだー! 最短の告白文であろう三文字を叫び、彼は彼女を力いっぱい抱きしめた。 ありふれた1日― 大人になるにつれ、特別な日ではなくなる今日 それでも、彼女たちの心には― 『笹の葉嬉遊曲』 その一 7月、期末テストを間近に控え、テスト範囲の効率的なカバー方法を考えていたのだけれど、白紙ノートではどの道カバーしようがないことを私自身が分かり切っている。それならば、ギリギリまでテストなどという存在はこの世から抹殺しておくべきであり、ノートまとめはパトロンにでも任せておこう。ちなみにパトロンというフレーズは今日の授業で覚えたほやほやの知識である。 「さっきのとこ、憂に聞こーっと」 出来る妹という強力なパトロンを従える天然娘、姉というプライドを捨てた平沢唯が理解に至らなかった難解英作文を妹に託した。 「りっちゃんだって聞くくせにー」 「私は最初から諦めてはいないぞー?諦めたらそこで試合終了ですよ。」 「りっちゃん!バンドがしたいです!」 ほっほっほ…などと唯とふざけながら部室に顔を出す。 「おっす」 パトロンその一、秋山澪が普段通りの口調で挨拶してきた。 「いつ私がお前のパトロンになった?」 仲良くなったその日からだ。 「こんにちはー!」 「会いたかったよ〜♪あずにゃーーん!」 未公認種目5m走の日本新を出したであろうダッシュ力で、唯は軽音部ただ1人の一年生部員、中野梓に体当たり攻撃をしかけていた。 「あら、ムギちゃんは一緒じゃないの?」 退屈そうに某ヘヴィメタ漫画の最新刊を読んでいる顧問、山中さわ子が練習後の宿舎のご飯が期待外れだった運動部ご一行様みたいな表情を浮かべた。 「さわちゃん残念だったなー。ムギは遅れるって言ってたよー。」 私の放課後ティータイムを早くなどとのたうち回るさわちゃんはほっとくとして、私は窓から見える空をぼんやりと眺め… 「…」 「  …」 囁くような声が聞こえた気がして我に返った。澪…なわけないよな。 停止していた思考を再開させる。やめやめ、キャラじゃねーし!悶々とした気分を封じ込めつつ 「っしゃー!いっちょ練習はじめるか!」 と、私は部活の号令をかけた。 「えームギちゃん来るまで待ってよーよぉ」 「ようやく律先輩にも部長としての自覚が芽生えたんですね!」 「紅茶、ケーキ、私のオアシス…」 待っていたのは三者三様の反応…うんたんとメタラーはともかく、私はもともと部長として自覚しているし「え?部長って澪先輩じゃなかったんですか!?」っていつぞや言われた傷跡は癒えてないんだぞー梓。 「まあ、律がやろうって言ってるんだ。部長の話は聞くものだぞ。」 いつもよりか幾分温和な澪が、諭すような口調で助け舟を出してくれた。 「仕方ないかー…しょぼーん」 「さすが澪先輩です!説得力あります!先生も諦めてください!!」 「わかったわよぅ梓ちゃん。」 なぜ私が言っても聞かないのに、澪が言ったらキクンダ?私が納得する答えを400字詰め原稿用紙2枚分にまとめてきてもらいたい気分である。それと梓、今のは私に説得力がないと遠まわしに言っていると解釈していいんだよな…? そうこうしていると、ザリガニちゃんとエロ教師が待ち望んでいた人物、琴吹紬が遅れながら部室にやってきた。しかし、その手に握られていたものはいつものティーセットではなく、青々と茂るこの日ならではのものであった。 「みんな遅れてごめんね。用意に時間かかっちゃって。」 にこにこと両手で抱き抱えていたそれを立て掛けながらムギは私たちに遅れたことを謝罪したが、それより先に教えてほしいことがある。 「あっあのう…それは…?」 梓が先陣を切って誰もが思ったことを口にした。 「うふふ、ジャーン!笹でーす!」 それは見ればわかるのだが 「そういえば今日は七夕ね。」 さわちゃんが、もらったプレゼントが実はあまりうれしくなかった的な表情とトーンで既成事実を述べる。 7月7日 今日は七夕である。一般的にはただ雨が降る蒸し暑い平日でしかないが。 七夕かぁ〜などと間延びした口調の唯にムギが嬉しそうに 「うん!短冊も持ってきたし、みんなで願い事書こっ♪」 と言いながら手際よく人数分のサインペンと大量の短冊を机に並べた。 「短冊か。なんか懐かしいな。」 澪は短冊を指でなぞりながら大切そうにつまみ上げる。 「私も小学校以来です。でもどうして急に?」 「部活のみんなとやったら楽しいかなって思ったの!」 はつらつと梓に答えるムギ。そういえばムギは、こうやって何気ない日常を楽しく過ごしたいって言ってたっけ。 「それにしても立派な笹ねぇ。」 「斎藤に頼んで持ってきてもらったんです。もっと大きいのもあったんですけど、部室に入らないと困りますので…」 びっくりだーなんてどこぞのお姉さん風に驚くことはないさわちゃんだったが、せっかくだからと七夕会には参加するようだ。 [[笹の葉嬉遊曲その2]]  
好きだー! 最短の告白文であろう三文字を叫び、彼は彼女を力いっぱい抱きしめた。 ありふれた1日― 大人になるにつれ、特別な日ではなくなる今日 それでも、彼女たちの心には― 『笹の葉嬉遊曲』 その一 7月、期末テストを間近に控え、テスト範囲の効率的なカバー方法を考えていたのだけれど、白紙ノートではどの道カバーしようがないことを私自身が分かり切っている。それならば、ギリギリまでテストなどという存在はこの世から抹殺しておくべきであり、ノートまとめはパトロンにでも任せておこう。ちなみにパトロンというフレーズは今日の授業で覚えたほやほやの知識である。 「さっきのとこ、憂に聞こーっと」 出来る妹という強力なパトロンを従える天然娘、姉というプライドを捨てた平沢唯が理解に至らなかった難解英作文を妹に託した。 「りっちゃんだって聞くくせにー」 「私は最初から諦めてはいないぞー?諦めたらそこで試合終了ですよ。」 「りっちゃん!バンドがしたいです!」 ほっほっほ…などと唯とふざけながら部室に顔を出す。 「おっす」 パトロンその一、秋山澪が普段通りの口調で挨拶してきた。 「いつ私がお前のパトロンになった?」 仲良くなったその日からだ。 「こんにちはー!」 「会いたかったよ〜♪あずにゃーーん!」 未公認種目5m走の日本新を出したであろうダッシュ力で、唯は軽音部ただ1人の一年生部員、中野梓に体当たり攻撃をしかけていた。 「あら、ムギちゃんは一緒じゃないの?」 退屈そうに某ヘヴィメタ漫画の最新刊を読んでいる顧問、山中さわ子が練習後の宿舎のご飯が期待外れだった運動部ご一行様みたいな表情を浮かべた。 「さわちゃん残念だったなー。ムギは遅れるって言ってたよー。」 私の放課後ティータイムを早くなどとのたうち回るさわちゃんはほっとくとして、私は窓から見える空をぼんやりと眺め… 「…」 「  …」 囁くような声が聞こえた気がして我に返った。澪…なわけないよな。 停止していた思考を再開させる。やめやめ、キャラじゃねーし!悶々とした気分を封じ込めつつ 「っしゃー!いっちょ練習はじめるか!」 と、私は部活の号令をかけた。 「えームギちゃん来るまで待ってよーよぉ」 「ようやく律先輩にも部長としての自覚が芽生えたんですね!」 「紅茶、ケーキ、私のオアシス…」 待っていたのは三者三様の反応…うんたんとメタラーはともかく、私はもともと部長として自覚しているし「え?部長って澪先輩じゃなかったんですか!?」っていつぞや言われた傷跡は癒えてないんだぞー梓。 「まあ、律がやろうって言ってるんだ。部長の話は聞くものだぞ。」 いつもよりか幾分温和な澪が、諭すような口調で助け舟を出してくれた。 「仕方ないかー…しょぼーん」 「さすが澪先輩です!説得力あります!先生も諦めてください!!」 「わかったわよぅ梓ちゃん。」 なぜ私が言っても聞かないのに、澪が言ったらキクンダ?私が納得する答えを400字詰め原稿用紙2枚分にまとめてきてもらいたい気分である。それと梓、今のは私に説得力がないと遠まわしに言っていると解釈していいんだよな…? そうこうしていると、ザリガニちゃんとエロ教師が待ち望んでいた人物、琴吹紬が遅れながら部室にやってきた。しかし、その手に握られていたものはいつものティーセットではなく、青々と茂るこの日ならではのものであった。 「みんな遅れてごめんね。用意に時間かかっちゃって。」 にこにこと両手で抱き抱えていたそれを立て掛けながらムギは私たちに遅れたことを謝罪したが、それより先に教えてほしいことがある。 「あっあのう…それは…?」 梓が先陣を切って誰もが思ったことを口にした。 「うふふ、ジャーン!笹でーす!」 それは見ればわかるのだが 「そういえば今日は七夕ね。」 さわちゃんが、もらったプレゼントが実はあまりうれしくなかった的な表情とトーンで既成事実を述べる。 7月7日 今日は七夕である。一般的にはただ雨が降る蒸し暑い平日でしかないが。 七夕かぁ〜などと間延びした口調の唯にムギが嬉しそうに 「うん!短冊も持ってきたし、みんなで願い事書こっ♪」 と言いながら手際よく人数分のサインペンと大量の短冊を机に並べた。 「短冊か。なんか懐かしいな。」 澪は短冊を指でなぞりながら大切そうにつまみ上げる。 「私も小学校以来です。でもどうして急に?」 「部活のみんなとやったら楽しいかなって思ったの!」 はつらつと梓に答えるムギ。そういえばムギは、こうやって何気ない日常を楽しく過ごしたいって言ってたっけ。 「それにしても立派な笹ねぇ。」 「斎藤に頼んで持ってきてもらったんです。もっと大きいのもあったんですけど、部室に入らないと困りますので…」 びっくりだーなんてどこぞのお姉さん風に驚くことはないさわちゃんだったが、せっかくだからと七夕会には参加するようだ。 [[笹の葉嬉遊曲その2]]  

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