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幾多のトラブルに見舞われながらも、桜高軽音部の2度目の学園祭ライブは感動的な形で終わった。 その興奮も冷めやらぬ帰り道。 唯「じゃあね〜」 ムギ「みんなお疲れ様。また明日」 梓「じゃあまた明日の後片付けで!失礼します!」 律「おっつー。…じゃ、私らも帰ろっか?」 澪「うん、そうだな」 しばらくは、先ほどまでかしましく喋りあっていた反動もあって黙ったまま歩く二人だったが、やがて律がぽつりと呟いた。 「終わったんだなあ…」 「そうだな…。唯がギター忘れた時はどうなることかと思ったけど」 「無事に終わったのは、みんなのおかげってことを忘れちゃいけないな」 律は急にしんみりとした口調になった。今日までにあった色々なことを思い出してつい感傷的になっていたのである。 この甘酸っぱいような気分を、一人で持って帰るのはもったいない気がして、律は言った。 「ねえ澪、ちょっと公園に寄らない?」 「うん?…ああ、いいよ」 夕刻の、人気のない公園のベンチに腰掛けて、律は続けた。 「あたしさ。澪にお礼言っとかなきゃなって思って」 「お礼って?」 「あたしが熱出した時にさ、言ってくれたじゃん。走り気味でも律のドラムが好きだ、って。 あの一言があったから自分のドラムに自信がついて、今日のステージでも思い切り叩けたんだと思う。ありがとうな」 「……」 返事がない。 怪訝に思った律が澪の顔を覗き込むと、彼女は惚けたような顔をして頬を赤らめ、律を見つめているのだった。 「どうしたんだよー澪ったら何とか言えよぉ」 ハッと我にかえった澪は、ますます顏を赤くして、 「な、なんでもない!!ただ、ただ急に律が真面目なこと言うから、お、驚いただけ!!」 「……?」 こいつは何だかちょっと風向きがおかしいぞ。なんで澪のやつ急に赤くなったりして。 ん?まさか…。いやそんな…あたしらは親友同士ではあってもそれ以上の 関係じゃ…確かに澪は可愛いと思うけど…。 そこまで考えてから、律は改めて、うつむき加減の澪の横顔をまじまじと見た。 腰の辺りまで伸びた豊かな黒髪、切れ長の瞳、長い睫毛によく整った鼻筋。どこを取ってもなかなかお目にかかれない美少女である。 そんな澪が、自分の言葉を顏を赤らめながら聞いている。この何とも言えない快感はなんだろう。 ちょっと…からかってみちゃおうかな…。 律はそっと、澪の左手の上に自分の右手を重ねて続けた。 「本当に、そう思ってるんだよ」 「!!」 「澪があたしのドラムを好きなのと同じくらい…もしかしたらもっと、澪のベースが好きだし、それにその…澪本人のこともさ」 最後の一言を澪の耳元でゆっくりと囁く。 「あっ…り…律…」 気が付けば二人は、お互いの吐息が感じ合えるくらいの距離にまで近づいていた。重ねていただけの手のひらに少しだけ力を込める。 「手…いや?」 「ううん…いやじゃない…」 ああ、何か本当に変な雰囲気になってきちゃった。 でも…澪くらい可愛い女の子相手ならこんなのも悪くないな。 とりあえず今日はこの辺にしておこう、と律は踏んだ。 「いやあしっかし冷えてきちゃったなあ。そろそろ帰るぞぉ澪〜」 「え、ええっ!?」 ここで真顔ひとつ。 「今日のところは、さ。この辺にしておこうぜ。明日も早いんだからさ」 「……」 家に帰って、律は今日のことを反芻していた。 今日の澪のあの目はマジだったよなあ。って言っても澪だからこそあたしも演技に あれだけ力が入ったわけで…。 そこまで考えてからふと、軽音部の仲間たちの顏が律の脳裏をよぎった。唯、ムギ、梓。いずれも、 澪に負けず劣らずの美少女揃いであり、彼女らのふとした時に見せる愛らしい仕草に心を動かされることは幾度もあった。 (…みんなをあたしだけの女の子に出来たら…) 律の中で、今までに無かったような感情が芽生え初めていた。 そして、この感情が行き着く先にある意外な結末を、彼女は知る由もなかった。 >出展 >【けいおん!】田井中律はLAMY可愛い62【ドラム】 このSSの感想をどうぞ #comment_num2(below,log=コメント/ズルい女)

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