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298 虹が消えた日-1- sage New! 2009/06/10(水) 01:54:03 ID:+vdABUvp
高校2年生。17歳。夏。
いつまでも子供のままではいられない。
かと言って大人というのはまだ早すぎる、最も心が不安定な時期。

(なんだか気持ちが落ち着かない。モヤモヤする。ムシャクシャする)
(これが何かに憤りを感じているのか、それともただの焦りなのか・・・)

律「ああ~!くっそ!もう、なんなんだよ・・・」

届出は忘れる。新入部員にまで説教される。
部長として部員として、私はしっかりやれているんだろうか?

自問自答ばかりの毎日で、ここ数日の私は絶対おかしい。

律「はあ・・・」
澪「どうしちゃったのさ、律。溜め息なんかついて」
律「なんでもないって・・・なんでもない・・・」

せっかく心配してくれた澪。
どうしても冷たく当たってしまう自分が嫌い。

唯「今日は憂が起こしてくれなかったら、危ないところだったんだよお~」
紬「ふふふ・・・もう、すっかりお母さん代わりなのねぇ」

澪や梓が言うとおり、部内の空気が緩みがちなのは否めない。
もし万が一のことがあれば、部長の私の責任になる事もあるかもしれない。

だけど、今までこの軽音部はこの調子でやってきたんだ。

今さらやり方を変えるわけにもいかないだろ・・・?

(どうすりゃいいんだぁ・・・)
気持ちだけが先走ってしまったのか、私は口々に叫んでしまった。


299 虹が消えた日-2- sage New! 2009/06/10(水) 01:54:59 ID:+vdABUvp
律「みんな、ちょっと聞いてくれ」

いつもの能天気な面持ちでこちらを見つめる唯とムギ。
少し驚いた表情の梓。そして、アイツだけは何かを悟ったような顔をしていた。

律「みんな・・・私達の目標、何だったか覚えてる?」
唯「なんだったっけ?・・・はははぁ♪」

(ドンッ!)

梓(ビクッ!)
律「もっと真剣にさ!もっと・・・目的持ってやろうよ!楽しくやるのは良いけど・・・」

ついに言ってしまった。みんなの呆気に取られたような視線が痛い。

唯「なに言ってんのさぁ♪りっちゃんだって・・・」
澪「お、おい・・唯!」
律「私だって、楽しくやりたいさ・・・だけど・・・」
紬「り、りっちゃん・・・?」
律「こんな調子じゃ、武道館なんて行けやしないよ!!!」

部長は私。メンバーを纏めるのも私。
何よりも、軽音部をやろうと言い出したのも私。

そんな人間が、自分の言いたい事だけを吐き捨てて、部室を出て行くなんて・・・

でも、でも・・・

梓「律先輩・・・」

300 虹が消えた日-3- sage New! 2009/06/10(水) 01:56:03 ID:+vdABUvp
その夜、私は特に何をする訳でもなく部屋のベッドに寝転がっていた。
何も考えずに、ただ天井を見ながらボーっとしていた。

律「息抜きが必要なのはわかってる・・・私だって今のままで充分楽しくやれてると思ってるよ!?
  だけど・・・もっと、それ以上にさ!・・・これじゃ、ダメ・・・だよ・・・ぐすっ」

もしかしたら、私にも潜在的にそんな気持ちがあったのかもしれない。
だけど、あの和やかだった空気を壊してまで言ってしまった自分が腹立たしかった。

そんな気持ちとは裏腹に、モヤモヤしていた心が少しだけ晴れていく。とても皮肉に感じた。

携帯が鳴った。アイツからだった・・・

律「もしもし・・・」
澪「おっす、なにしてた?」
律「い、いや・・・なにも・・・」
澪「そっか」

他愛のないやり取りだったけど、今日はいつもに増してそれが心地良かった。
でも、澪はそう返したっきり何も言おうとしない。

律「・・・それだけ?」
澪「律のほうが言いたい事はあるんじゃないの?」
律「へ・・・?う、う・・・」

俯きながら、私は恐る恐る口を開いた。
今まで溜め込んでいた事。膨らみきって、破裂しそうだった気持ち。
澪にその全てを打ち明けた。暫くすると滝のように涙が零れてきた。

律「ぐすっ・・・でも、唯に・・・ぐすっ、みんなになんて・・・謝れば・・・ううう
  なんで・・・あんな酷いこと・・・ううう・・・ぐすっ・・・うう」

やっぱり、みんなの事が頭から離れない。
いくら自分の思いの丈をぶつけても、私はみんなの事が好き。

軽音部の部長である以上、みんなと過ごせる時間を大事にしなきゃ。

301 虹が消えた日-4- sage New! 2009/06/10(水) 01:57:05 ID:+vdABUvp
(あんな事言っちゃった後だしなぁ・・・)

あれから私が言葉を交わしたのは澪だけ。
もしかしたら、部内の空気が変わってしまっているかもしれない。

不安ばかりが募っていった。

でも、普段と同じように時は過ぎていく。同じスピードで。だから・・・

律「おっす、みんな!おっはよ~!」
唯「りっちゃん♪」

唯だった。いつもの弾けるような笑顔でこちらを向いていた。
絆創膏だらけの指を見せながら、唯は精一杯練習したという曲を聞かせてくれた。

私の不安は一気に吹き飛んでいってしまった。

唯「あのね、私もっと頑張らなきゃって♪昨日りっちゃんに言われてね!」
紬「私も、あの後はすごく考えさせられて・・・本当にごめんなさい」
梓「先輩方には負けてられないですっ」

律「み、みんな・・・」

澪「心配する事なんてなかったのかもな」

澪が優しく私の肩を抱いてくれた。自然と目頭が熱くなった。

律「ずっと不安だったんだ。自分は何がしたいのか、もっとやる事があるんじゃないかって・・・
  だけど、みんなの顔見てたら・・・ぐすっ、ゴメン・・・私のほうこそ・・ホントにゴメン」

(よし、それじゃ早速練習に取り掛かるとするか!)

いずれやってくる明日、叶えたい夢。
だけど"今"がなきゃ、何も始まらないんだ。

やってやる。いつか私たちの未来に向かって、大きな虹を架けられるように・・・


出典
【けいおん!】田井中律は蒟蒻可愛い19【ドラム】


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  • 感動した -- (聡の後輩) 2010-12-29 02:54:29
  • りっちゃんの気持ちといまの自分の気持ちは似ているから感動 -- (Dr。) 2009-09-13 21:57:48

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最終更新:2009年07月13日 22:23
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