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とある朝。
急遽、昼ご飯が作れない、と母さんに言われたので私はコンビニを寄る事にした。
入り口には「ポイントフェア」と張り紙があった。
どうやら一定金額買うとポイントが貰えて、そのポイントで何かが貰えるらしい。
暑めの朝だったので、入ると冷気が身体を包む。
「さぁって今日は和か洋か…」
つまり、ご飯とパンだ。
ご飯といっても、おにぎりだけど。
ポケットに10円玉があったので、指で弾いて手の甲に乗せる。
"10"と浮き出ている方が上だった。「裏か」
私はパンを買う事にして、店の奥に行く。
「あ、ムギ」
そこにはしゃがんでパンを選ぶムギがいた。
「あら、おはよう。りっちゃん」
笑顔で応対してくれた。この笑顔なら暑さは乗り越えられそうだ。
ムギも今日はパンになった、否、パンにしたらしい。
「100円のパンとか、スゴい気になってたの♪」
いや、普通100円前後だと思うんですけど…。言わないけど。
「りっちゃんはどれが美味しいと思う?」
聞かれたので、私的に一番ハマっている中身の詰まったクリームパンを薦めた。
「じゃ、それと、あとはコレとコレにしようっと♪」
ムギは冬に焼き芋でも買ったようなほくほく感と一緒に、パンを抱かかえる。
私も3つパンを買い、レジに並ぶ。
出勤時間と被っていたせいか、2つのレジが展開してても数人の列が両方にあった。
籠を持って来てた方が良かったな、とか言いながら順番を待つ。
「ふざけんじゃねぇ!」
びりっ、と店内に衝撃が走った。
思わず声の大きさに寿命が縮まったかと思った。
叫んだのは、私達の並ぶレジではなく入り口に近い方のレジで会計をして貰ってる男の人だ。
スーツ姿で、頭は少し…寂しい。一般的な目立ちもしない会社員、と予想する。
私もムギも、その他こっちのレジに並ぶ人は何事か、と興味と驚嘆を持ってそっちを見ていた。
「マルボロが切れてるだと!?朝っぱらから何やってんだコラぁ!」
お前も朝なのに元気だな、と突っ込みたくなる。
向こうのレジの後ろに並ぶ人は、みんな不平不満を募らせているように見える。
レジの人は必死に頭を下げている。
「あの人、どうしたの?」
ムギがクエスチョンを浮かべて来た。
「煙草がないんだってさ。店もしっかりしとけ、って話だけど」
困るよね、と呟く。
「そう」と、ムギも呟いた。
こっちのレジは淡々と作業を行っていたが、遂に向こうに行ってしまった。
こっちに並ぶ人の不満も生じる。
「申し訳御座いません。私共のミスです」
「あったりまえだろ!切らしてるとか有り得ない事してんじゃねぇ!!」
相手が頭を下げる度に威勢が増してるんじゃないか?と思う。

「あの…」

罵声も混じり始めた男の怒鳴り声の中、はっきりと清楚な声が聞こえた。
ムギが男性の近くにいた。
「へ、はれっ!?」
横にいたハズのムギがいない。みんなの嫉みの対象に駆け寄っている。
「あんだよ」
男性がムギを見下ろす。
私はムギが何をするのか全く検討がつかない。
「皆さんの迷惑になってますので…」
男性に気圧されてる様子は無かった。穏便に済ましたいらしい。
「ンな事ぁ知るか!こっちは毎朝煙草がねぇと気が散るんだよ!」
なんだ、アレはモンペ……いや、モンスターリーマンか。
ムギを助けないと、と思いつつ足が動かない。
「じゃあ、他のでも…」
「マ・ル・ボ・ロ が無いとダメなんだよ!」
今気付いたが、男性の後ろに並んでる人が圧倒的に減っている。
こっちの列に来たり、購入を諦めて出て行っているようだ。
「お嬢ちゃんには、煙草なんて分かりっこねぇだろ。黙ってろっ!」
一歩間違えたら手出しするんじゃないか、と不安ではあった。
ムギは暫く考えた後、こう言った。
「じゃ…コレをどうぞ♪」
手にしたのは――――抱えた中の、パンだ。
「はぁ?」
この瞬間だけは、全員が男性に同感だった。
意味が分からない。どうしたんだムギ。
「これ、私の友達がオススメしたパンなんです。
   食べた事ないんですけど、友達がオススメするんで、きっと美味しいハズですよ。煙草より」
男性の顔が、緩んだ。
「私からのプレゼントです。煙草じゃなくてすいませんが、是非食べて下さい♪」
財布からパンの代金を払って、レジの小銭皿に入れる。
男性は、流されるようにソレを受け取り眺めている。
「ね?」
ムギがもう1度押す。
男性は不意を突かれたのか、ソレを手にしたまま、
「…お、おう。分かっ…たよ」
と、答えた。
「ホント?良かった♪きっと美味しいですよっ」
ムギに尻尾があったら、きっと今は上下に揺れている。そんな気がした。
「…… これからちゃんと煙草仕入れとけよ」
男性は店員にメンチを切りながら、通常のトーンで"注意"して出て行った。
店員は十何度目かの謝罪で、彼が出て行くのを待った。

その後、小さな歓声が店内で起こった。
ムギはきょとん、と何が起こったのか分からない様子で光景を見ている。
そしてこっちにやって来た。
「ごめんね、りっちゃん。あのパン最後だったのに、オススメしてくれたのに」
「いや、いいよいいよ。また今度食べたらいいしね」
円滑にレジは進み、ムギの番になるとレジの人はお礼を述べた。
「真に有難う御座いました。宜しければ、これをどうぞ」
そしてレジ台の下から、可愛いハンドタオルが出て来た。
「え、わざわざそんな……」
「貰っときなよ、ムギ」
ムギが断ると、店員も気まずくなるだろうから、そう言った。
ムギは少し遠慮がちにそれに手を伸ばす。
「ありがとうございます」と、ムギが言う。
私も支払いを済ませて、店を出た。
冷気になれた体には、外の気温は酷だった。

出典
【けいおん!】田井中律は恋文可愛い33【ドラム】

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  • ムギいい子すぎる -- (上級隊員) 2011-03-22 07:40:25
  • 心洗われる気がした。 -- (名無しさん) 2010-08-04 14:04:56
  • むぎちゃん、本当にいい子……。 -- (紅玉国光) 2009-09-23 15:49:04
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