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◆ボクノート◆

梅雨。耳を澄ますと、外では雨がポツポツと音を立てている。
この季節のジメッとした空気が嫌いな私は、何を思ったのか
机に向かってシャーペンを握り、一枚の便せんと睨めっこをしていた。

律(くっそ〜・・・言葉なんて全然出てこねえよぉ・・・)

私をこんな行動に走らせたのは、澪との何気ないやり取りがきっかけだった。

              ***

『キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKI 揺れる思いはマシュマロみたいにふわ☆ふわ』

律「しっかし・・・」
澪「・・・」
律「何度聞いても、澪の書く詞の内容はぶっ飛んでるなぁ(笑)」
澪「だから嫌だって言ったのに・・・」
律「まあまあ。でもさ・・・」
澪「何よぉ・・・?」

律「澪は結果的に、この詞を短期間のうちに作り上げて来たわけじゃん?」

澪「うん・・・。まあ、あの時はそんなに時間はかからなかったけど・・・
  本当のトコは、ムギのメールからヒントを貰ったって感じかな」

律「なるほどねぇ〜。インスピレーションって奴か・・・
  やっぱ・・・そういうのってさ、凄い才能だと思うんだよな」

澪「え・・・何言うのよ、急に・・・」
律「ほら、澪は小学校の頃も作文で賞を貰ったりとかさ?」
澪「う、うん・・・」
律「色んな言葉がパッと浮かぶなんて、なかなか凄いと思うぜ」

澪「・・・じゃあ、律も一度書いてみなよ」
律「へ?わ、私が!?」
澪「そう。難しく考えないでさ・・・詞なんて、ありのままで良いんだよ」
律「うぅ・・・。よし!じゃあ、澪がそこまで言うならやってやらあ!」
澪「ふふっ。そうこなくっちゃな!」

              ***

そんな調子の良い事を言ってみたはいいものの、一向にペンは進んでいかない。
元々ガサツで澪のように"これぞ"っていう特技も無い私にとって、
こういう作業は無理難題としか言いようが無かった。

律(ありのまま・・・か。ありのままの私・・・)

考えれば考えるほど、想いはどんどん膨らむもの。
だけど、それは膨らんでく一方で言葉にして吐き出すことすらできない。

律「うえ!もうこんな時間かよ・・・!」

十数時間経っても、書いて消して・・・の繰り返し。
私の周りには、紙くずばかり散らばっていた。

イスの背もたれに寄りかかり天井を眺めていると、澪の言葉が頭のなかをよぎる。

澪『ありのまま・・・というかさ、"綺麗に書こう"とか"格好良く見せよう"とか
  詞ってそういう事じゃないと思うんだ。なんだろう・・・自分が胸の奥で想ってること。
  大切なものだとか、好きな人だとか・・・少しずつ言葉を紡いでいくのが良いんじゃないか?』

そういえば、学園祭や新歓のライブで披露した曲の詞を振り返ってみると
なんだか背中が痒くなるような・・・そんな甘酸っぱい片想いの様相が浮かんでくる。
"澪のヤツ、誰かに恋でもしてるのか?"と私が疑ってしまう程だった。

もう一度、辺りに投げ捨てた紙くずを手にとってみる。
今こうして、もがきながら言葉を紡いでるのも全部"ありのまま私の姿"なんだろうか・・・

律「よし!もういっちょやってみっか!」

              ***

次の日、私はやっとの思いで詞を書き上げた。
他のみんなにバレないよう、こっそりと紙を澪のベースケースのポケットに忍ばせる。
あまり慣れない事をやった気恥ずかしさなのか、この日はずっと胸の動悸が激しかった。

律(どんな反応すんのかなぁ、アイツ)

多少面白半分で書いたものとは言え、期待は増していく。

その時、携帯に着信があった。澪からだった。

律「もしもし?読んでくれた?」
澪「りつぅ〜」
律「ん、どした?」
澪「律まで私のコト馬鹿にするんだなぁ〜(泣)」
律「え?な、なにが?なんかマズかった・・・か?」
澪「こんなんじゃお嫁に行けないよぉ・・・グスン」

なんの事だかサッパリわからず、
私は澪に渡した紙と全く同じコピーを手に取って読み返してみる。


大きな手を握る 無邪気で小さな手


笑顔の君が見たいから ボクはずっと笑った


君の涙すくえるほど 大きくないけれど


この広い真っ白な世界 ずっと歩こう


(澪のやつ、そこまで自分の手が大きいこと気にしてたのか・・・?)

出典
【けいおん!】田井中律はドスコイ可愛い34【ドラム】

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  • ↓いい考えですね! -- (名無しさん) 2010-03-07 03:14:28
  • お嫁に行けないなら、律のダンナさんになっちゃいなyo! -- (名無しさん) 2010-02-14 00:05:40

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最終更新:2009年07月15日 20:32
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