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《注意》
  • 俺×律ものです。苦手な方はバック!
  • 『俺』はりっちゃんと幼稚園くらいから友達でした。いわゆる幼なじみです。ありがち設定です。




「ここにも久しぶりにきたけど、これはまた、なんというか‥‥」
「ふふん、予想どーり、だろっ!」
「あ〜うん‥‥そうだな」
「なんだよぉ、まさかお前キレイになってる私の部屋とか想像してたのかぁ?」
「いや、仮にも彼氏を部屋に招くんだからさ・・・」

なんというか、だ。

俺はつい一ヶ月前から、この元気ばっかりがあり余ってそーな女‥‥田井中律と付き合ってる。
まぁ律とは小さい頃からの幼馴染みで、当然こいつの親友である澪のこととかもよーく知っていて。
付き合うキッカケすら、ヒマしてた時に二人で飯を食いに行って、帰ってきたらいつの間にか付き合う事態になっていた、という馴れ合いっぷりだ。
いまだにどういう流れで付き合うことになったのか、サッパリ思い出すことが出来ない。

まぁ・・・・うん、要は会話の流れでそうなったんだろ。
こんな大雑把な風に見えても、意外と可愛いトコがあるかもしんないし・・・

「あっ、こんなところにポカリはっけーん!飲むか?ぬるくなってるけど」

‥‥多分。きっと。


無気力で飲み干したぬるいポカリは、今の俺の怠惰な気持ちを表してるかのようだった。

「あーあとさ〜」
「・・・ぷはっ。ん?」
「今日は両親不在だからさ。泊まってけよな!」

含んだポカリを思わず吹いてしまいそうになった。
どうするんだよ、コレ・・・。







「おじさんとおばさん、なんだってー?」
「あぁ〜うん、泊まってけって。それだけ」

唯一の頼みの綱だった両親も、こともなげにアッサリと律の家での宿泊を許してくれた。
両親の中では、まだ2人は子供のままなんだろう。確かに昔からよく遊びに行った流れで泊まっていったり、逆にアイツが俺の家に泊まっていったことも数え切れない。
高校が別になって1年ほどはそんなこともなかったんだけど、ひょんなことで彼氏彼女のつながりが出来てしまって、挙句がこの事態だ。

でも実際、分かりきってることだけど‥‥もう昔とは違う。しっかり男と女の違いも把握できる年頃だ。
そして彼氏彼女という関係と、そいつの家で2人きりになって『起こるかもしれない』ことだってわかってる。
女と付き合うこと自体が初めてだし、そういうことはまだ経験がないからよくわかんないけれど‥‥


‥‥うん。なんとなくだけど、分かったことがある。
俺は・・・・今、コイツと付き合いはじめたことを後悔してるんだ。

だってそうだろ?
別に何とも思ってない幼なじみなのに、会話の流れだけで付き合うことになって。
そいつの家に泊まることになって、俺は人生の中でも忘れることが出来ないであろう『初めての体験』を『好きでもない』ヤツと過ごすことになるかもしれない、と思うと・・・。

「はぁ・・・」
「どうしたんだよ、ため息なんかついて。私の作った飯がそんなにマズかったかー?!」
「いや、旨いんだけど、なぁ・・・」
「もしかして、悩み事か何かか?ホラ、この律お姉さんに話してみ?」
「いや、だからお前は彼女だろ・・・・」

あーぁ、なんでこんなヤツと付き合ってるんだろーなぁ、俺は・・・。

失礼とは思いつつ、こんな言葉を思いつかずにはいられない。
しかもテンションダダ下がりな自分を元気付けようとしているみたいに、とんかつ、フライドポテトなどの揚げ物料理が目の前にはズラリと並んでいる。
カロリー計算をするとどれくらいになるんだろうなぁ。考えただけで恐ろしくなる・・・。

「お前さぁ、いっつもこんな揚げ物ばっかり食ってんのか?」
「ん〜どうだったかなぁ?特に好き嫌いはないから気にしてないや。いつも3食美味しく頂いております」
「じゃあ昨日の夕食は?」
「天ぷら!」
「思い出すまで2秒か。よし、まだボケてないみたいだな!」

いやいやそうじゃなくて。
何か、一緒にいるといつもコイツのテンションに巻き込まれてる気がするなぁ・・・今更っちゃ今更だけど。

「そんなんじゃ太るぞ!メタボ野郎め!」
「そりゃお前だろーがっ!!」
「顔にそう書いてあったんだよーん!へへっ♪」
「お前の腹がぷよぷよになったら『妊婦さんですか?』とか言ってやるからな!覚えとけよ!」
「そーだっ、久々に『ぷよぷよ』やろうぜ、『ぷよぷよ』!」

あぁ、なんて不毛な会話なんだ。

たぶんコイツとこんなテンションで会話できるのは、コイツの両親か俺くらいだろう。澪はツッコミ一辺倒だしなぁ。俺も大概ツッコミだけど。
ゲームのソフトを取り出して屈託なく笑うそいつとは反対に、俺はこの状況に切なさを覚えずにはいられなかった。







「うしゃー、じゅーれんしょおー!!!」
「つ、つええ・・・」

夕食を終えて、後片付けや宿題など諸々が終わってしばらく経った頃。
俺はコイツとの『ぷよぷよ勝負』にて連敗につぐ連敗を重ね、遂には10連敗の大台に達してしまった。

そういえば一時期、『どうやったらぷよぷよで強くなれるか?』という研究という名の拷問に付き合わされたこともあったっけ。
10時間ブッ通しでぷよぷよとか、徹マンやってんじゃねーぞ!

お陰でその拷問が終わった頃にはヤツは見違えるほど強くなっていて、今となってはほとんど手も足も出なくなってしまった。
俺?5時間も過ぎた頃からとっくに半分夢の中でしたが何か??


「っていうか、なんか前より弱くなってないかー?操作ミスとかもメチャクチャ多いしさぁ〜」

そりゃそうだ。
ただでさえ実力差がある上に、この憂鬱な気持ちを抱いたままでゲームに集中出来るわけがない。
オマケに、少し前から徐々に睡魔が俺の意識を蝕んできている。

もうすぐ12時。じきに寝る準備をしなければいけないだろう。明日は2人とも学校があるし。
そうなるとより一層、内心ビクビクしながら眠りにつかなければいけない。まるで13の階段を登る死刑囚のような気持ちだった。

「でもこれじゃー勝負にならないなぁ〜。あ〜ぁ、退屈だなぁ〜?」


そう言いながら、目をいやらしく細めてこっちを見てくる律。
その一言で、俺の顔はピシッ、と固まった。

こいつ・・・上手くなれたのは誰のお陰だと思ってるんだよ・・・!
何度も「寝かしてくれ」って言ったのを無理に付き合わされて、その犠牲の上に成り立っている強さだろ・・・!
つーか、人が憂鬱な気持ちで悶々としてるのに、コイツは平気な顔してヘラヘラ笑いやがって・・・!

む、ムカつく・・・・!!!


昔のことなんか思い出してなければ、こんな風には思わなかったかもしれない。
今ならこんな強引なことはしないだろう。そもそも中学生の時の話だし。


でも思い出してしまったモンはしゃーないし、そんなタイミングでこんなことを言うコイツもコイツだ。

何とかしてコイツのムカつくヘラヘラ笑いを止めてやる・・・!
俺の前で二度とそんな風に笑えないようにしてやる・・・!!

自分のために犠牲になった仲間の死体にツバを吐きつけるような律のセリフが、俺の闘争心に火をつけた。

「・・・じゃあさ、これで最後な。勝った方は・・・そうだな、1つだけ何でも命令できるっていうのはどうだ?もちろん拒否権はナシで」
「ほぉ〜?いいのかい?連戦連勝のこのワタクシに・・・うっしゃ!後で泣くなよっ!?」
「そりゃーこっちのセリフだ!で、律はどうする?」
「そぉだな〜‥‥ちょっと小腹が空いてきたし、アイスでも買ってきてもらおうかな〜?もちろん自腹、そしてハーゲンダッツ!中身はマルチパックとクリスピーサンドにアイスバー、計3000円程度で!
 あとは溶けるとイヤだから行きも帰りも全力ダッシュでよろしくー!」
「おい、帰りはともかく行きはダッシュする意味ねーだろがっ!ていうかそんなに食うな!」
「たまには走らないと太るぞ、このメタボ野郎め!」
「俺のセリフを取るなっ!!」

さすが律だ。こういうことになると容赦がない。

でも今の俺は残念ながら、慈悲のかけらすらも持ち合わせていない。
正直、この『勝ったら1つだけ命令できる』っていうのは俺にとって前座に過ぎない。
問題は、『命令の内容』によって律のニヤニヤ笑いを止めることが出来るかどうかだ。

‥‥‥今思えば、表には出していなくても相当頭に来ていたんだろう。

「ソッチはどうすんだ?腹筋30回とかか??」
「それはさすがに甘すぎだろ・・・ん〜、そうだな・・・」
「ふっふー、なんでもかかってこいっ♪」

気付けば俺は、こんなことをのたまっていた。

「じゃあもし俺が勝ったら・・・今日は2人で寝る」
「は??どっちみち今日は同じ部屋で寝るだろ〜?」
「違うって。俺が言ってるのは、律と同じ布団で、一緒に寝る、って言ってんの。もう高校生なんだし、どーゆーことか‥‥さすがに分かるよな?ドゥーユーアンダスタン?」
「・・・・はっ?はあっ?!ちょ、何でそーなる・・・・」
「はーいゲームスタート〜」

普段からひょうひょうとしててめったなことじゃ動じないこいつのことだから、正直この作戦の成功率は半々ってとこだろうと思っていたけど・・・何だかんだでこいつもいっぱしに『女』をやってるみたいで。
ムカつくヘラヘラ笑いが一気に崩れ、一転して、律の顔色が動揺一色に染まったことを確認すると、ゲームのスタートボタンを押した。







「おい」
「なんだよ・・・」
「あのな、そんな目いっぱい端によることないだろ。別に取って食おうっちゅーわけじゃないんだから」
「うるさい」

結論から言うと、楽勝だった。

律は終始動揺しっぱなしで凡ミス操作ミスのオンパレード。そんな状態でパズルゲームに勝てるわけがない。
俺はというと、右の3段を全て埋めてから崩していく一か八かの戦法で、これまた上手い具合に大当たりしてくれた。
余裕の7連鎖で、10連勝でノリにノッている律をあっちゅー間に伸したのだ。ばよえ〜ん!


その後の律の様子はというと、なんというか‥‥十何年付き合ってきた俺でもみたことのない律だった。
動揺、という二文字じゃ足りない。まるで別人だった。

風呂に駆け込んだかと思うと、いつもカラスの行水だったアイツが1時間もの長風呂。いい具合に身体をふやけさせて出てきた。
さすがに気を使って冷やしたポカリを差し出すと、後ろから声をかけられたことがそんなにビックリしたのか‥‥ビクッとしてから後ずさり、カベに頭をぶつけてひっくり返る始末。
さすがにそこまでされると、いくら俺でも傷つくぞ・・・。


それで、今に至ります。
えぇ。思いっきり拒絶されとります。
例によって、いっぱいいっぱいまで布団の端によって、俺に背を向けて丸くなっております。なんですか、おまーは冬眠中のクマか何かですか。

「別に『襲う』なんて言ってないだろ〜。昔みたいに『一緒に寝る』ってだけで、それしか言ってないし。何の問題があんだよ〜」
「‥‥‥」

まぁ、その前後にソレを臭わすような言葉は吐きましたが。

でもここまでの反応はさすがに予想外だった。いやだって皆さん、あの律が、田井中律がですよ?
あの男勝りボーイなあの律くんが、まるでウブな女の子みたいに・・・



‥‥あぁ、そっか。

コイツ・・・『女の子』だったっけ。

「・・・お前な、これ以上シカトするようだったら・・・」
「‥‥‥」

ヤバい。
自分でもわかる。コイツが『女の子』なんだって。
しかも目の前で小さくなっている、こんな愛らしい『女の子』が、自分の彼女なんだって。

そう思った時点で、ある意味俺の負けだった。

「本当に、襲うぞ」
「‥‥‥」

本気だった。
コイツに抱くなんて思いもしなかった欲望が、鎌首をもたげてくるのがわかる。
眠気なんてとっくに吹っ飛んじゃってる。

俺の意識の全ては、目の前で小さく丸くなっている『女の子』に注がれていた。

「‥‥襲えばいいじゃん」

ぼそり。
暗い部屋の中で、数十秒の沈黙を破った一言がそれだった。

「襲えよ」

背を向けたままで、いつもにも増して、風当たりの強い言葉が投げかけられる。
こいつとの会話の節々から出てくる男言葉。もしかすると、幼なじみだった俺の影響もあるのかもしれない。

でも、言葉なんてどうでもよかった。
どんな形にせよ『了承』を意味する言葉を受け取ったことによって、ゆっくりと律の方へと移動する。

そっと・・・その肩に手をやる。

「・・・ッ!!」

1回だけじゃなかった。
びくびくびくっ!って、3回くらい大きく痙攣した気がする。

その痙攣はまだ止まってない。ってゆーか・・・・

「・・・おい!メチャメチャ震えてるぞ!大丈夫かっ?!」
「うるさいっ!!」

暗がりの部屋に、叫び声が響き渡った。
いつものふざけた声じゃなく、これ以上ないくらいの悲痛な叫び声。

依然としてがくがくがくがく、と震えている肩は、気付かぬうちにいつの間にか、丸みのある『女の子』の肩になっていた。
ってゆーか、もしかして・・・下手すると、布団に入ってからはずっとこんな状態だったのか・・・?

「うるさ・・・いっ・・・」
「お、おい律・・・」
「なんでこーなるんだよ・・・こういう雰囲気になるのが嫌で、踏み込まれて今まで知らなかった私を知られると、嫌われるんじゃないかって、怖くて・・・・。
 だから部屋の掃除もせずに、何も考えずに自然体でいようって、そう思って、上手く行ってたと思ったのに・・・なんで、何でなんだよぉ・・・!」

恋人に、いつもとは違う自分の一面を知られたり。はたまた、一歩踏み出すことを極端に恐れたり。
その姿は、まさしく『女の子』そのものだった。

そんなか弱い『女の子』を、俺はないがしろにして・・・
あまつさえその繊細な心を傷つけるために、あんな作戦まで練ったりして・・・


「‥‥あのさ、律。やっぱ違う命令に変えてもいいか?」
「・・・なんだよ」

震える肩にやっていた手を、今度は頭の上に持っていく。
触り心地のいい髪質と、シャンプーのいい匂いが漂ってくる。

「気の済むまで、頭をなでさせてくれたら‥‥それでいいから」
「・・・っ!」

今までの行為で傷つけてしまった心をいたわるように、やさしくやさしく頭を撫で始めた。

頭に触れた瞬間、またぴくっ、と身体が跳ねる。
なでなでするためにより近づいたことで、律の顔が見える。その顔は、これ以上ないくらいに赤く染まっていた。

「俺さ、ぶっちゃけノリで律と付き合い始めたみたいなもんだから、ちょっと後悔しはじめてたんだ。なんでこんなヤツと付き合ってるんだろう、一緒に居てドキドキなんて微塵もしないのに・・・って。
 でもさ、今・・・すごくドキドキしてる。律が『女の子』なんだって、すごくわかる」
「‥‥‥」

そう。
いつも元気で屈託なく笑い、男勝りな性格の田井中律は‥‥気がつかないようなところで気配りをするような、とても女の子らしい『女の子』でもあったのだ。

ふと、撫でる手を止める。
いつの間にか律は顔を伏せていて、どんな表情をしているか分からなかったから。

「‥‥‥」
「おっ、お前‥‥」
「・・・ぷっ!ぷくくくくっ!」

‥‥‥訂正。
やっぱりコイツは、ただの生意気なガキだ!

「おっまえなぁ!人が珍しく真面目に話してやってんのに・・・!!」
「あははははっ!ひーっ、お前、私といてドキドキしてんのか!うい奴うい奴〜♪」
「うっさい!マジで襲うぞコイツ!!」
「だから〜さっきから襲ってみろって言ってんだろ〜?」
「あのなぁ、いまだに身体ブルブル震わしてるよーな奴にそんなセリフ言われたくねえんだけど?」
「‥‥わかりますか?」
「よーくわかりますとも」

この生意気なガキを『本当の女』にするのは、また今度の楽しみにしておくか。
そう思いながらまた頭をくしゃりと撫でると、律は幸せそうな顔でこっちに擦り寄ってきた。


「律、可愛い」
「ん〜、ありがと」






出展
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