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心の扉


ある日、帰ってきた父親はどろどろに酔っていた。
父は酒こそ飲むが、ここまで飲むことは滅多に無い。
あるとすれば会社の忘年会や新年会、正月の親戚の集まりのときくらいのものだ
昔泥酔いして帰ってきて、私や聡に理不尽にあたったことがあり、
そのことを反省して酒は控えていた
その父親があろうことか平日の夜にドロドロに酔って帰ってきた。
そして衝撃的な言葉を発した

「会社をリストラされた」

父親の会社も不景気の煽りを受けたのだろうか
それから父親は毎日職を探すため朝早くから家を出る。
しかし帰ってくると大体暗い顔をしているか、ドロドロに酔っている
1日に吸う煙草の本数も増えた。夫婦喧嘩も・・・増えた
ある夜、聡は怯えるように言った

聡「姉ちゃん・・・・・・怖いよ・・・」
律「大丈夫だよ・・・父さんも母さんも、今はちょっと不安定なだけだよ!」
聡「ほんとう・・・?」
律「本当だよ!」
聡「うん・・・大丈夫だよね・・・・ 姉ちゃん・・・一緒に寝て良い・・・?」
律「うん、良いよ。入りな・・・ ゆっくり寝るんだよ・・・」

夢の中だけでも 平和な家族に戻りたい
そう願って、私も眠った

ある日、父親はやっと一つ仕事を見つけたというが、単なるアルバイトだった
時給は750円
おせじにも家族を引っ張っていける額とはいえない
母親はパートを始め、私もバイトを始めた
必然だ

そうなると、軽音部に顔を出すことも少なくなる
律「澪・・・ごめん、こんなんじゃとても部長なんてやっていけないよ・・・」
澪「律、大丈夫!部長は私が引き受けるから!何か悩みがあったら・・・何でも言って!
私なんかの助言で、少しでも心が安らぐなら・・・いつでも!」

澪は、笑顔で部長を引き受けてくれた

平日は大体バイト、土日もバイト。
その疲れからか、バイトの無い日も部活には行かず、家に帰ってベッドに倒れるだけだった
自分の思いをぶちまけたい・・・だけど、母親も父親も、今もっている悩みで精一杯
聡なんか、私以上に悩んで、苦しんでいることだろう。まだ幼いんだ
ぶちまけたい
全部ぶちまけてしまいたい

澪は、何でも相談に乗ると言ってくれた・・・でも、今の不安定な自分を、澪に見せたくない
澪に・・・心配をかけたくない
その思いで、自分の悩みを胸の奥の扉に無理矢理放り込んでいた

しかし、ある日、その扉は、荒々しく開けられることとなる

バイトの無い日の放課後

律「今日は久々に顔を出そう!皆・・・私が行ったら喜んでくれるかな・・・」
そうやって、部室に向かって廊下を歩いていた
一瞬でも安らぎを得たかった
軽音部が私の安らげる場所なんだ

部室のドアを元気よく開けると、私に気付いた皆が
何かを隠すようにオドオドし始めた

律「おー、みんなひっさしぶりー!・・・なんか隠した・・・?」
紬「いっ、いや何も隠してないわよ!」
唯「うんうん!」
梓「なんでもないですよー」

その言葉を、私は信じられなかった。皆の顔は、引きつっていた。

私を、拒否してるんだ。

気付けば私は自分勝手な判断をしていた
そしてバイトの疲れ、勉強の疲れ、家での疲れ
心の奥底にあった苛立ち
それらをしまっていた扉の鍵が、音を立てて砕け散り、ドアはその内側から強引に開けられた

律「ねえ・・・嘘でしょ?何か隠してるよね・・・・ 何?何?」
澪「り、律・・・それより一緒にお茶・・・」

律「うるさい!!」
澪「!!」

律「みんな・・・私がいないと思って、私の悪口言ってたんだろ!!それで私が急に来たからびっくりしてさ、
だから顔が引きつってるんだよ!!唯も、澪も、梓も、・・・・澪も!!」

澪「ちょっと律・・・」

律「話しかけないでよ!!何がバンドだ、何が軽音部だ、何が放課後ティータイムだ!ガキの遊びじゃん!!
馬鹿じゃないか?!いつまでそんなことやってるつもりだよ!いつまで遊んでるつもりなんだよ!!」

パァンッ


澪の、指が細くて、白くて、きれいな手が、私の頬を弾いた。

澪「なんなんだよ・・・・なんなんだよあんたこそ!なに?私のこと勝手に引き入れて・・・
ムギや唯だって・・・半ば無理矢理入れたようなもんじゃないか!!それでも私たちは楽しくやってたよ・・・
なのに、なのにあんた!急に家の都合で来れなくなった?!バイトしなきゃいけなくなった?!部長なんて出来そうに無い?!
それで急に来たと思ったら皆にあたって・・・・遊び?今までのことが遊びだって?!」

律「そうだよ!!こんなの遊びじゃないか!!」

澪「一番この部を遊び場にしてたのは誰だよ!!」

律「・・・っ!」

澪「あんただよ!あんた!ただ来て、遊んで、ちょっと練習したと思ったらまた遊んで、帰るだけ!それがあんただよ!」

律「だから言っただろ!!遊びなんかもうやめるんだって!いい加減大人になったらどうなんだよ!!」

澪「昔の自分を全否定するのが大人なのか?!」

律「うっ・・・・うるさい・・・うるさい!!」

律はそういうと、カバンの置いてあるソファーに駆け寄り、澪のカバンを乱暴に開けた
澪「律・・・!何を」

カバンの中を漁り、澪の書いた歌詞をとじたファイルを手に取り、歌詞の書いてある紙を取り出した

そして、それをビリビリに破いた

唯「!!」
紬「りっ・・・りっちゃん!!」
梓「な・・・なんてことを・・・」

澪「・・・・・」

律(あれ・・・何やってるんだろ・・・あたし)

律「はぁ・・・はぁ・・・何だよこの歌詞!!小学生の作文かなんかか?!こんなもんで自分は歌詞を書いてるって胸を張ってるのか!!
くそ・・・くそナルシスト!!いい加減にしろよ!!」


澪は、部室から出て行った
涙を流し、嗚咽をあげ、「だいっきらい!!」
そう言いながら

律「そうだよ・・・大嫌いだよ・・・あたしだって!」

次の瞬間、私は胸倉を掴まれた
掴んだのは、ムギだった

紬「最低・・・最低よりっちゃん!!あなた・・・澪ちゃんが・・・あなたのことどれだけ心配してたか知ってるの?!」

律「しっ・・・知らない!!ってか嘘だよ!そんなの嘘に決まってる!!あいつが私の心配なんて」

梓「してました!!」
澪先輩・・・律先輩のことずっと心配してた・・・!!」


澪『最近・・・律痩せた気がする・・・』

澪『また・・・元気にドラム叩く律・・・見れるかな』

澪『私もバイト始めようと思ってるんだ!それで律にちょっと寄付しようと思って・・・
律からしたら不本意かもしれないけど・・・・何でも良い、助けたいんだ!!』

唯「そう言って・・・ずっと心配してたんですよ!」

律「・・・・!!ねっ・・・捏造だよ・・・!!嘘!!ガセ!!デマ!!信じない!!」
私は、ムギの手を振り払い部室を出た

非常階段に出て、一人で泣いた 産まれたとき以来じゃないか、こんなに泣いたのは。
      • あっ、でももう一回あった・・・・・・学園祭のステージのあと、澪と抱き合って、泣きに泣いた。

でも、あの涙とは違う涙・・・これは・・・・何の涙かわからない


唯「・・・りっちゃん」

律「・・・唯・・・・・・許せなんていわないけど・・・私、わからないんだ。もう・・・何がなんだか・・・」

唯「・・・・りっちゃん・・・もうすぐ誕生日だよね?」

律「・・・えっ」

唯「実はね・・・りっちゃんの誕生日に、皆でパーティー開いて、思いっきりりっちゃんを祝ってやろうって・・・準備してたんだ
それが、りっちゃんにとって力になればいいなって・・・」

律「・・・・・」

唯「それで、急にりっちゃん来たからさ・・・皆ビックリしちゃって・・・やる前にばれたら、意味無い・・・と思って
だから私も、ムギちゃんも、あずにゃんも、・・・澪ちゃんもあんな態度になっちゃったんだ・・・」

律「・・・・・・・ぐす・・・」

唯「りっちゃん・・・ほんとは・・・軽音部が、澪ちゃんが、大好きなんだよね・・・私たちの、誰よりも・・・
自分で・・・頑張って立ち上げた部だもんね。」

律「・・・・・うん・・・・大好き・・・だよ・・・・・・唯が、澪が、ムギが、梓が、ドラムが・・・軽音部が・・・大好きだよ・・・
軽音部で、皆で・・・練習して・・・笑って・・・ステージに上って、演奏して・・・泣きたい・・・
なのに・・・・・自分が軽音部に行けないってなると・・・寂しくて・・・楽しそうな皆が恨めしくなって
急に何もわかんなくなって・・・もう・・・戻れないよ・・・」

唯「・・・・謝ろう・・・!皆に・・・」

律「・・・・・・・」

唯「りっちゃんと同じだよ!私たちも、軽音部が・・・りっちゃんが大好きなんだよ!
澪ちゃんも、大嫌いなんて言ってたけど、本当は・・・前のりっちゃんに戻ってほしいだけなんだよ・・・
嫌いになったわけじゃないんだよ!」

律「唯・・・みんな、許して・・・くれるかな・・・」

唯「・・・わからない・・・・・でも、今は謝るしかないよ。」

律「・・・だよね・・・・・わかった・・・!」

私は部室に戻った
ムギも泣いていた、梓も・・・泣いていた
まず二人に謝った・・・心の底から謝れたかはわからないが、
とにかく謝った
ムギも梓も、泣きながら私を抱きしめてくれた

そしてすぐ、私は机の上にあったセロテープを取り、破った澪の歌詞をかき集め、貼り付け始めた

ムギ「りっちゃん・・・私も手伝う!」

律「いや、いいよ・・・私だけで・・・やらないと・・・!」

紙に触ると、そこから澪の歌詞に込めた気持ちが手に染み込んでくるようだった
あの冬の日、澪が私の家のポストに入れた歌詞もあった。
ボーカルを決めようってとき、初めて見せてくれた歌詞もあった、二人で一緒に考えた歌詞もあった
涙が自然とこぼれてきた
紙がにじんでしまう・・・そう思っても涙は止まらなかった

涙でにじみ、セロテープで無理矢理貼り付けた、ツギハギだらけのいびつな歌詞が出来上がった
それを手にすると、唯も、梓も、ムギも、私のほうを見て頷いた

澪を探した、探し回った。見つからない・・・見つからない・・・見つからない・・・・・・
律(澪・・・お願い・・・どこにもいかないで・・・許してくれなくて良い!いいから・・・謝らせて・・・一言だけでも・・・)

屋上に上がると、手すりに手を掛け遠くを見つめている、澪がいた

律「澪・・・澪!!」

澪「律!!」
澪は駆け寄ってきた また叩かれると思った  でも違った
私を、抱きしめてきた
律「・・・澪・・・?!」

澪「なんで・・・なんで相談してくれなかったんだ!!言ったじゃないか、何でも相談しろって!!」
涙を流しながら、私を抱きしめながら、澪は怒鳴った
澪「こんな風になる前に・・・相談してくれれば・・・!」
私も、涙を流した
律「だって・・・だって!そしたら澪が心配すると思って・・・」

澪「いいよ!心配するよ!律のことを心配したいんだよ!!悩みでも愚痴でも小言でもわがままでも、なんでも聞くよ!
律のこと・・・・心配させてよ・・・いっぱい心配させてよ!!」

律「澪・・・ごめん・・・ごめんね・・・!これ、さっきの・・・歌詞・・・・」

澪「律・・・」

律「本当は・・・澪の歌詞が大好きだったのに・・・私じゃあんな歌詞書けないから・・・・あんなことしちゃって・・・
最低だよ・・・」

澪「本当・・・!最低だよ・・・だいっきらいだよ・・・」
私に自分をさらけ出してくれない律なんて、全部ぶちまけてくれない律なんて・・・だいっきらいだよ!」

律「ごめん・・・ごめん・・・」

澪「律・・・律・・・!!」


そのまま二人で、15分ほど屋上で泣いていた
気付くと、私たちは目を腫らしたまま、手を繋いで歩き出していた
そして部室に戻った。二人で・・・
机を見るとケーキが二つ置いてあった

紬「おかえり!二人とも」

律「・・・それは?」

紬「澪ちゃんね・・・りっちゃんが頑張ってるのに、私だけおやつなんか食べてるわけには行かないって・・・ずっとガマンしてたのよ。」

梓「唯先輩は食べてましたけどねー」

唯「むー!あずにゃんだってー」


律「・・・澪」

澪「ち、違うよ!ちょっと・・・体重が気になっただけだよ!!」

律「・・・・・そう・・・」

澪「・・・・」(なんか調子くるうな・・・)

紬「さあ、二人とも座って!美味しいお茶も入ってるわよ!」

律「え・・・食べて良いの?」

紬「当たり前よ!りっちゃんは軽音部なんだから」

律「も・・・戻って良いの?」

梓「何言ってるんですか律先輩!4人じゃ軽音部になりませんよ。軽音部は5人揃って軽音部じゃないですか!唯先輩と」

唯「あずにゃんと、ムギちゃんと」

紬「澪ちゃんと・・・」

澪「・・・律!」

律「・・・みんな!・・・ありがとう」


その日は、澪と二人きりで帰った。今まで当たり前のことだったのに、何か新鮮で、恥ずかしくて、嬉しかった。
別れ際、澪が私に「これで、放課後ティータイム・・・再結成だな!」そういって帰っていった
大人の背中だった

家に帰ると、父親がはしゃいでいた。なんと、会社から呼び戻しがかかったという。
母親も、聡も笑顔で私を迎えてくれた
このまま、あの日の平和な家族に戻れるよう、祈った

1週間後、放課後急に呼び出され軽音部に行くと、そこで私の誕生パーティを開いていた
気付けば、私の誕生日だったのだった
澪「これで、悪ガキの律も大人に一歩近づいたわけだ!」
律「え・・・ああ・・・」
澪(ぎこちない・・・)

ここでも、あの日の楽しい部活に早く戻れるようにと、祈った


律「これ・・・ごめんね」

澪「あっ、私の歌詞・・・これ、どうしたの?」

律「うん・・・あのあと家に持って帰って、パソコンで打ち直して、プリントしたんだ
あれじゃ、澪の考えた歌詞がかわいそうだから・・・」

澪「いいのに・・・ありがと!」

律「そっそんな・・・悪いの私なんだよ!」

澪「ううん、いいんだよ・・・」

律「ごめん・・・」

澪「・・・で、バイトは続けるの?」

律「うん・・・それで少しは大人になれたら良いな・・・って思って・・・」

澪「へー・・・」

律「あのね、わかったんだ。あの日の私、自分はもう大人なんだって・・・錯覚してただけだったんだ」

澪「・・・」

律「大人は・・・自分の悩みや不安を、胸の奥にしまわなきゃいけない・・・私、それが出来てなかった・・・」

澪「・・・・いいんじゃないか?それでも」

律「え?」

澪「閉めてばっかじゃ、心の扉だって錆びちゃうよ・・・たまには開いて、中にいる不安や悩みを解き放ってあげないと・・・
そのぶん、イライラが積もっていくだけだよ。心にも・・・日光浴は必要だよ」

律「・・・・・ぷっ」

澪「?!」

律「あはは・・・心にも日光浴って・・・かゆいかゆい!あはは」

澪「お前・・・・ ぷっ、くくっ・・・あはは!」



心の扉の蝶番は、今日も快調



出典
【けいおん!】田井中律は1234可愛い40【ドラム】

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  • 泣ける -- (聡の後輩) 2010-12-28 20:53:40
  • 不覚にも感動した。゚(p´ロ`q)゚。でもリストラされたらムギになんとかしてもらえるんじゃwww -- (名無しさん) 2010-05-13 01:23:04
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