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393 名前:SS「雨の夜に」[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 01:47:52 ID:XaaljPIa
 「あっちゃー。雨ひどくなってきたなー」
 澪の家から律の家までは、そう遠くないが、
日も落ちきって、表はもうほとんど人通りがない。
さっきから雷も聞こえ始めた。夜中にかけて天気は荒れるだろう。
 「もうそろそろ帰るか」
 「今日はもう泊まっていきなよ。明日は休みだしさ」
 「んー、そうだなあ」
 窓から澪の方へ振り向いたとき、
稲妻とほとんど同時にひときわ大きな雷鳴が響いた。
 澪はぎゅっと目を閉じて拳を握りしめている。
律はまた窓へ向き直って言った。
 「泊まってくか」


 床に入るまで何をするともなく時間を過ごす。
何回となく繰り返してきた時間だった。
 「おやすみ」
 どちらからともなくそう言って、明かりを消すと、雨の音が大きく聞こえる。
雷はまだ鳴り続けていて、ときおり稲光が部屋を照らした。


 少したってから、小さく声をかけた。
 「澪」
澪はまだ眠っていない。気配でわかる。
 「みーおー」
頑なに狸寝入りを続ける澪に、そっと近寄る。
耳元に近づけた口をすぼめると、ふーっと息を吹きかけた。
 「ひゃうっ!!」
 「やっぱ起きてんじゃん」
 「何すんだよ!」
予想以上の反応に満足しつつ、切り出す。
 「雷、怖いのか?」
 「……しかたないじゃないか」
 「泊まってけって言ったのも、雷がひどかったからだろ?」
 「……おやすみ」
それだけ言ってそっぽを向いてしまう。
 すかさず律はベッドに滑り込んだ。
 「何してるんだ」
 「んー? 怖いときはさ、抱き枕って落ち着くらしいじゃん?」
 「だから?」
 「澪専用抱き枕がここに」
掛け布団の中から神速の左フックが飛び出す。
 「……お、おお……」
 「バカ言ってないで早く寝ろ」
それでも、ベッドから追い出されることはなかった。

 ひとしきりゴソゴソして仰向けに落ち着くと、
右手を伸ばして澪の左手をとる。
 きゅっと握ると、軽く握り返してくれた。
 ”おやすみ”の代わりに。

495 名前:SS「雨の夜に 番外編」[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 03:51:15 ID:XaaljPIa
 「前はさ、雷、もっと怖がってたよね。声あげたりとかしてさ」
 「……」
 「澪は変わったね。昔は背だって同じくらいだったのにね」
かっこよくなったし、頼られる人になったし……それに、キレイになった。
 喜んでいいはずなのに、どこか寂しい。
 「変わってないよ」
 「え?」
 「変わらない。今までも、これからもずっと……律が好きだよ」
うれしい。とても、うれしいのに、鼻の奥がつんとして、涙がにじんでくる。
 今までだったら、澪はこんなふうに、まっすぐに気持ちを言葉にすることなんてなかった。
わたしの知らないうちに澪は変わっていく。それが寂しい。
 そんな、エゴイスティックな感情を悟られたくなくて、澪に背中を向けた。


 「律?」
 「いきなり恥ずかしいこと言うなよ」
 「律? こっち向いて」
澪は律の肩をおさえて、覆い被さるようにして表情を確かめる。
 「どうして泣いてるの?」
 「……澪は、いつかわたしから離れていく」
 「……」
 「わかっていたつもりだったけど、やっぱり……」
 「そんなことない」
 「澪。でも……」
言いつのる言葉をとめられる。優しい口づけで……。
 「……澪?」
 「私専用なんだろ? 目、閉じて」
 「んっ……」
今度は澪の舌が唇を割って入ってくる。
強引に、犯すように……。
 「……ん、はぁ……はぁ……」
 「ふふ。律、かわいい。……最初から、こうしていればよかったんだ」
頭のどこかかが麻痺していて、まともに考えることができない。
馬乗りになった澪のなすがまま、律のほっそりした体が露わになっていく。

濡れた唇が雷の光にうつって見えた。

それより後はよく思い出せない。

出展
【けいおん!】田井中律の前髪可愛いーし51【ドラム】

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  • 良作 -- (聡の後輩) 2011-01-16 05:41:43

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最終更新:2009年08月01日 02:30
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