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律「…だったら、外バンでも何でも勝手にやればいいだろ!」


静まり返った部室に響く自分の声。
その声の先には、長いツインテールを震わせ、
大きな目に涙をいっぱい溜めている、少女。


梓「もう、今日は…っ、帰ります…。」
か細い声で呟き、梓はギターを背負って音楽室を出た。


紬「りっちゃん…。」

ムギも唯も、呆然とした顔でこちらを見ている。

律「…ゴメン、私も今日は帰るわ。戸締りよろしく。」

スティックを乱暴に鞄に突っ込み、開きっぱなしのドアから逃げるように外に出る。

入部して2ヶ月にもならない、たった一人の新入部員を怒鳴りつけてしまった。
でも、アイツの言い方だって良くなかっただろ。
イライラと自己嫌悪が混ざりあい、何色なのかも分からないような
気持ちのまま、律は家路についた。


   ◆


4月から新しく軽音部に入部してくれた梓。
ジャズを趣味に持つ両親の影響で、小4からギターを始めた彼女は、
可愛らしい外見からは想像もつかないほどギターが上手い。

聞いている音楽のジャンルも、ロックからジャズまで幅広く、
4歳からクラシックピアノを習ってたムギを除けば、
うちの部の中でもかなり豊富な音楽経験を積んできた子だ。
…まぁ、ムギを除いたら4人しかいないんだけどね。


そんな彼女は、人一倍の努力家で、練習熱心。
だからこそ、うちの軽音部の空気に違和感を感じていたようで、
それが今回の一件のそもそものきっかけとなってしまったのだ。


梓『律先輩!またお茶飲んでるんですか!?
  いい加減ちゃんと練習しましょうよ!』

律『おー梓。まあまあそう言うなって…』

梓『先輩はいつもそう言ってますけど、ここ軽音部でしょう!?
  もっともっと練習して上手くなろうって思わないんですか!?』

唯『あずにゃ~ん、落ち着いて。またいい子いい子してあげるから…』

梓『その手にはもう乗りませんっ!』

律『ちょ、ちょっと落ち着けって梓、私の話を…』

梓『みんなの仲を深める為にこういう時間も必要だ、でしょ!?
  もうその言葉は聞き飽きましたっ!』

律『いや、そうじゃなくて話を…』

梓『ライブハウスに行けば、ここの軽音部より上手いバンドが
  いっぱいいるんですよ!悔しくないんですか!?』


律『…だったら』


で、冒頭の言葉を言い放ってしまったわけだ。
正直に言うと、カッとなった。小学生じゃあるまいし。

梓が、本当に辞めてしまったらどうしよう。
私達の演奏を聴いて、感動して、一緒に演奏したいって言ってくれた梓。
部長としての責任、なんてことより、私達の仲間である梓に
あんな表情をさせてしまったことの責任を取らなきゃ。


~♪

澪からの着信だ。

律「もしもし?」

澪「もしもし、律?」

律「うん。…ゴメンな、今日は。」

澪「どう考えたって梓の方が正しいもんな。」

律「…わかってるよ。」

澪「でも、梓も一方的だったよな。律の話を聞こうともしないで。」

律「日頃の行いの悪さのせい…かな?」

澪「…まぁ、私も最近はあの雰囲気、嫌いじゃないけどね。
  やる時はちゃんとやる、ってのが条件だけど。」

律「そうだな。…梓、怒ってるかな。」

澪「それより、あの子は律にまくし立ててしまったことを
  今頃後悔してると思うよ。」

律「…そうだよな。あいつは、そういうヤツだもんな。」

澪「後輩に先に謝らせてしまったら、部長の名が廃るぞ?」

律「わかってるよ。明日、梓とちゃんと話す。」

澪「そうだな。ちゃんと放課後に、全員揃って練習できるようにな。」

律「うん、任せといて。電話くれてありがと。」


   ◆


梓「憂、ご飯たべよー。」

憂「あ、ゴメン梓ちゃん、私今日お姉ちゃんと食堂で食べる約束してるんだ。」

梓「あ、…そうなんだ。」

お昼はいつも憂と食べているから、憂がいないと一人で食べる羽目になる。
昨日は律先輩にあんなこと言っちゃって自己嫌悪だし、なんか良い事ないな…。
ゆうべはずっと律先輩との事を考えてて眠れなかったせいか、今も
廊下から見える人影が律先輩に見えてくる。

って、あれ?

梓「…律先輩?」

律「梓、お昼一緒に食べようぜ。」

梓「…いいですよ。」


律先輩は購買のパンを、私はお弁当箱を片手に、音楽室へと足を運ぶ。


梓「お昼に勝手に音楽室使っていいんですか?」

律「細かいことはいいんだよ。ここだったらムギのお茶も飲めるしな。」

梓「…でも、ムギ先輩が淹れたお茶じゃないと美味しくないんじゃないですか?」

律「ほー、言うようになったなこの小娘が。うりうり」

梓「きゃーやめてくださーい」


昨日の一件が嘘のように、いつも通りに接してくれる律先輩。
このまま仲直り、っていうことでいいのかな?でも、ちゃんと謝らなきゃ。


梓「あ、あの…」

律「梓、昨日はゴメンな。心にもないこと言っちゃって。」

梓「え…?い、いや、私の方こそ、偉そうなことばかり言って…」

律「梓さ、初めてFが弾けた時のこと、覚えてる?」

梓「へ?どうしたんですか急に。」

律「ほら、ギタリスト初心者にはFの壁って言うのがあるんだろ?
  私はギター弾いたことないから、よく分かんないんだけど…。」

梓「そうですね…。私がFを弾けるようになったのは、始めて3ヶ月くらいの時でした。
  親からは、梓は手が小さいからまだ無理だろう、って言われてて、悔しくて
  ずっと練習してたんです。それで弾けるようになって、親に見せたら
  びっくりしてて、でも、すごいって褒めてくれて…とっても嬉しかったです。」

律「そうなんだ。唯もFが弾けるようになったのはそれくらいだったな。
  あいつ、よっぽど嬉しかったみたいでさ。私たちにはもちろん、
  家に帰ってからも憂ちゃんにずっと見せびらかしてたらしいぜ。
  憂ちゃん、ギターのことなんて全然分かんないのにな。」

梓「ふふっ、唯先輩らしいですね。」

律「だろ?私も、ドラム始めた頃は、ハイハットとバスドラのペダルを
  両足でコントロールするのが出来なくてさ、バスドラを踏もうと思ってるのに
  ハイハットのペダルを踏んでしまったりで、すげーイライラしたなー。
  で、やっと出来るようになった時はさ、嬉しくて澪に抱きついて、
  澪は鬱陶しそうにしながらも、よかったな、って笑ってくれたんだよな。」

梓「そんな澪先輩も目に浮かびます。お二人はホント仲がいいですよね。」

律「うん。澪とは幼馴染だけど、楽器をやってなかったらここまで仲良くは
  なってなかったんじゃないかな。違う楽器だけど、少しずつ上達していく喜びを
  共有出来たから、アイツとは今みたいな関係を作ってこれたんだと思う。」


その言葉を聞いて、私はハッとした。

私は、隣で演奏してる人に対して、そんな気持ちを抱いたことがあっただろうか。
始めたての頃、私にとって一番身近な楽器仲間は両親だった。二人の演奏はとても上手く、
初心者の私が到底敵うような相手じゃなかったけど、いつか追いつきたいという気持ちでいっぱいだった。

中学に入ってからのバンド仲間も、私にとってはライバルだった。
もちろんいつもは友達だし、バンド活動以外で遊びに行ったりしていたけど、
練習の時は”どちらがより上手くなれるか”しか考えていなかった。


私には、律先輩にとっての澪先輩のような、そんな絆で結ばれた楽器仲間が、いない。


律「…だから、私は梓ともそんな関係になりたいんだよ。私だけじゃなくて、
  澪も、唯も、ムギも、みんなそう思ってる。」

私の向かいに座ってパンを頬張っていたはずの律先輩は、
今は座っている私の横にしゃがみ込んで、私の頭を撫でてくれている。

いつの間にか泣いてしまっていた私を、優しく慰めるように。



梓「…っ、りつ、せんぱい…っ」

律「…だからと言って、ずっと練習もせずにお喋りばっかりじゃダメだよな。
  そこは部長として、反省してる。だからもう泣くなよ。」

梓「…ちがうん、ですっ。わたし、には、そんなふうに…おもえる、なかまが、
  いなかっ、たから…うれしくて…っ」

律「…もう、梓は私たちの仲間だよ。これから、いっぱい練習して、いっぱい遊ぼう。
  上手くなっていく喜びは、皆で分かち合ってさ。」

梓「っ、…はいっ、ありがとう、ございますっ……ごめんなさい…うあぁぁぁん」


我慢できなかった。頭を撫でてくれる律先輩にしがみ付いて、
音楽室中を震わせるような大声で、私は泣いていた。
こんなに、部の皆のことを、私のことを、考えてくださっている律先輩に、
あんなにひどいことを言ってしまった。
でも、律先輩は全部許してくれて、私のことを、”仲間”だと言ってくれた。


いつも練習せず、お茶ばかり飲んでる律先輩。
真面目にやろうって言ってる澪先輩を茶化してばっかりの律先輩。
リズムパートの癖に、誰よりも演奏が走ってる律先輩。
部活の届出や申請の書類を、いつも出し忘れている律先輩。


いつも笑顔で、部の雰囲気を明るくしてくれる律先輩。
繊細で壊れそうな澪先輩のことを、誰よりも理解している律先輩。
走り気味だけど、パワフルなドラムで演奏を引っ張ってくれる律先輩。

…誰よりも部のことを思っている、律先輩。


軽音部に入って本当によかった。
先輩方に出会えて、本当によかった。

律先輩に出会えて、本当によかった。


律「そろそろ落ち着いたか?」

梓「…はい。シャツ、濡らしちゃってすみませんでした。」

律「気にすんなって。それより、昼休みが終わらないうちに、顔洗っとけよ。
  そんな真っ赤な目で部活に来たら、私が澪に怒られるんだからさ。」

梓「ふふっ、そうですね。」



そんな光景が、目に浮かびます。


   ◆


憂「ふーん、そんなことがあったんだ。」

唯「そうそう、だから憂を食堂に誘ったんだよ。」

憂「え、じゃあお姉ちゃんは、律さんが梓ちゃんを誘いに来ること知ってたの?」

唯「んーん。でも、りっちゃんなら絶対そうすると思ったからさ。」


…さすがお姉ちゃんだ。律さんのこと、よく分かってる。


唯「んー、でもりっちゃんとあずにゃん、ちゃんと仲直り出来てるかなー。」

憂「大丈夫だよ、あの二人なら。」

唯「そうだよね!んー今日のケーキは何かなあ~♪」



終わり


出典
【けいおん!】田井中律は病ンデレ可愛い22【ドラム】

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  • これは泣ける -- (聡の後輩) 2011-01-24 16:36:22
  • 唯はやっぱ天才なのか・・・ -- (名無しさん) 2010-11-12 06:04:34
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