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681 名前:SS[sage] 投稿日:2009/09/09(水) 19:11:43 ID:hCT/8F0T
>>603に触発されて書いてみた。
603 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/09/09(水) 15:06:26 ID:qTeZfTch
なごり雪をモチーフにある冬の日のりっちゃんを書いたらノーベル文学賞を間違いなし!

「澪、行っちゃうんだな」
啓蟄も終わろうという空は暗く淀んでいる。その空が見下ろす小さな駅のホームのベンチで、一人の少女が隣の少女に声をかけた。
声をかけた少女は小柄で短い茶髪、声をかけられた少女は対照的に背が高く、長い黒髪のストレートがよく似合っている。
黒髪の少女は隣の少女を一瞥したが、何も答えず、視線を戻した。今、二人は空の気持ちを代弁するように列車の車輪を眺めていた。
少女達は子供のころからの友人だ。幼稚園から高校までずっと一緒に過ごしてきた竹馬の友だ。
一緒にいるときはいつも笑い合っていた。怖がりで恥ずかしがり屋だった少女は、いつも守られてきた。
小柄な少女は昔のことを思い返し、小さく白い息を吐いた。
小さなホームで二人っきり少女達は、ただ虚空を見つめるだけだった。
「あ、雪・・・」
黒髪の少女が空を見、小さく呟いた。それに合わせて小柄な少女も空を見上げる。空には季節はずれの雪が舞っていた。
「うん・・・」
「この町で見る雪も、これが最後なんだな」
小柄な少女は何も答えない。ただ視界を落としながらチラリと時計を見やるだけだった。
少女にとってその時計はまるで時限爆弾のようだ。あと少し時が進めば全てが破壊される、そう少女には思えた。
ホームの空気がまた淀む。何事もないかのように雪だけが降り続いている。
これは幾度目の沈黙であろうか。今までそれを破ってきた少女達の口は動く気配がない。だが、それは破られた。
爆弾が爆発した。車掌の声がホームに響き渡る。黒髪の少女は立ち上がり、列車の入り口に向かった。
「澪っ・・・」
小柄な少女も立ち上がり、後を追う。二人の距離は先よりも近づいている。だが、その間には一枚のドアがあった。
窓越しに何か言おうとする。だが、少女達の声はもう届かない。
ガタン、ゴトンとゆっくりと列車が動き出す。小柄な少女は白線の外側で俯いていた。
二人の距離が今まで一番遠くなってゆく。少女はすっかり冷たくなったベンチに座った。
地面に雪が落ちていく。その光景を見つめる少女の頬もまるで雪が落ちたようだ。
ベンチは、また、少しずつ、温かくなっていった。


出典
【けいおん!】田井中律はミノムシ可愛い87【ドラム】

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