「決意をこの胸に――(後編)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「決意をこの胸に――(後編)」(2009/03/27 (金) 23:00:53) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
**決意をこの胸に――(後編) ◆14m5Do64HQ
◇ ◆ ◇
未だ、続くパンタローネとロックマン、そしてキッドの闘い。
奇しくも三人とも互いに得意な獲物は遠距離射撃が可能なもの。
また、ロックマンは本来、打撃武器を用いた接近戦闘を得意としない。
そのため、今はスレッジハンマーをPDAに再転送しているため、ブルースシールドとロックバスターを主軸に戦闘を行っている。
キッドのガトリング砲にも充分な弾数は残っているので、戦闘には支障はない。
だが、戦況は五分ではなかった。
「うわぁッ!!」
「クソッ! ロック、大丈夫か!?」
ロックマンの身体を大規模な火力を含んだ爆発が包む。
ロックマンの後方で、相変わらず後方支援を行っていたキッドが吼える。
ブルースシールドでは防ぎきれずに、衝撃によりブルースシールドが弧を描きながらクルクルと宙を浮く。
原因は一体何か?
勿論、深縁の手には火など一切関与する事はなく、ブルースシールドが吹き飛ばれたのはそれによるものではない。
「気を抜くな。未だ、私の番だ」
「ッ!!」
そもそも、深緑の手はブルースシールドを手放したロックマンに、今現在撃ちこまれている。
接近を行いながら、パンタローネの右腕から撃ちだされる深緑の手。
五本の指から一発、掌から連続して四発といった計九発の連射。
崩れた体勢を必死になおしながらも、ロックマンは深緑の手から身体を離すように、捻る。
だが、タイミングが遅すぎた。
半数程度であるが、深緑の手を全身に受け止めた衝撃によりロックマンの身体が派手に後方へ飛び退く。
確かな嗚咽を漏らしながら吹き飛ぶロックマンを、キッドは横目で眺める事しか出来ない。
「ッ! このヤローがぁッ……! 何ッ!?」
ロックマンの身を案じながらも、キッドがガトリング砲を構える。
今までロックマンとパンタローネが重なり、満足に連射が出来なかった。
その分を取り返すために、ロックの痛みを返してやるためにも構えを取ったキッドは、あるものを見て驚く。
キッドの視界には左腕を此方に向けるパンタローネの姿。
かと思いきや右腕と同じく深緑の手を発射し、キッドの身体を食い破らんと迫りくる。
(なっにー! 左手でも撃てるのかよ……右手で撃てるんだから、別に可笑しくはないか。クソッ! だけど……負けるかよッ!)
今更愚痴を言っても意味はない。
今まで左腕を使っていなかったパンタローネを見て、勝手にキッドが勘違いしただけだ。
あまりにも短すぎる、両脚をフルに活用し、キッドは深緑の手を避ける。
予想外の攻撃のために、回避する事以外には頭が回らない。
ガトリング砲による掃射は一旦取り止め、回避行動に全ての労力を注ぐキッド。
撃ち出された深緑の手は二発、一直線にキッドのボディ、頭部を狙い撃つ。
銃弾の少なさもあり、キッドは回避する事に成功するが体勢を崩し、一時の抵抗も虚しく地面に顔面から倒れこむ。
その時、パンタローネの口元が不気味に釣り上がるのをキッドは確かに見た。
「貰ったぞ! 不気味な自動人形め!!」
深緑の手は所謂フェイクに過ぎなかった。
パンタローネの身体から、いや、両肩から何かが飛び出す。
その飛び出したものにキッドは思わず全身が強張っていく事を感じた。
そう。その物体こそが先ほどロックを襲った爆発の正体。
パンタローネの両肩に装備された支給品から発射されたもの。
「ゆけい! 『開天珠』ッ!!」
開天珠。
殷の王朝時代の中国、九竜島の四聖の一人、王魔が使用した宝貝(パオペエ)といわれる武器。
両肩に装備された装甲から発射される数珠を相手にぶつけ、対象を粉砕し、爆破する特性を持つ。
本来宝貝は仙人骨という特殊な骨を持つ人間、仙道にしか扱えない。
だが、人間でさえもないパンタローネも今、開天珠を扱える事に成功している。
恐らく、シグマがこの殺し合いのために、なんらかの加工を加えたのだろう。
その事に気づく者はおらず、刻一刻と開天珠が計二つ、回転を起こしながらキッドを襲う。
「まだだぁッ!」
開天珠の速度は速い。
回避は無理だと断念したキッドは倒れこみながらも、ガトリング砲をぶっ放す。
一瞬で狙いをつけ、あとは自動によるフルオート射撃。
不規則な軌道を描き続ける開天珠を銃弾が捉え、着弾、一瞬の間を置き爆発。
だが、爆発を起こし、パンタローネの元へ戻る開天珠は一つだけ。
距離、時間、開天珠の速度と軌道、体勢の悪さが重なり、いくら射撃の名手であるキッドでも一つだけが限界であった。
苦虫を潰したような顔で開天珠を睨みつけるキッド。
とっさに後ろへ飛び退くキッドだが、最早遅い。
遅すぎた。
「キッドーーーーーッ!!」
開天珠がキッドのボディに直撃。
これまた、先ほどの開天珠と同じように爆発。
爆発に巻き込まれ、非常にゆっくりとした速度で、宙を漂う形となったキッド。
朦朧とする意識の中、キッドは自分を呼ぶ叫び声をぼんやりと聞いていた。
「キッド! 大丈夫かい!?」
ガランと変な音をたて、地へ叩きつけられたキッドへロックマンが慌てながら駆け寄る。
ブルースシールドがあった自分とは違い、もろに開天珠の爆発を受けたキッド。
そのダメージはわざわざ確認しなくても、深刻なものだとロックマンにも理解できる。
こんな時にE缶があれば今すぐにでも、キッドの傷が癒す事は出来るのに。
残念ながら今直ぐには叶いそうにない希望。
だが、今はいつまでもその希望にすがるわけにもいかない。
キッドをかかえ、一刻も早くこの場から逃走を図ろうとするが――
咄嗟に何かが迫りくる事を感じたロックマンはブルースシールドを構える。
小さな衝撃と共に、ロックマンにわかったのは数発の深緑の手が撃ち込まれた事だ。
「どこへゆく? まさかこのまま、逃げるわけではないだろうな?」
「くっ! よくも、よくもキッドを! 僕はあなたを許さないッ!!」
深緑の手を放ちながら、接近するパンタローネ。
立ち止まる気配は見せない。
キッドへの手打ちに対する怒りと憤りを燃やし、ロックマンがロックバスターで応戦する。
依然、キッドの身体は未だ動こうとはしない。
「ロックバスターーーッ!!」
倒れこんだキッドを庇う形で、銃撃戦を行っていたロックマンが叫ぶ。
五光石という武器もある事はあるが、相手の顔を濃ゆくする事しか書いていない。
そんなものを使うくらいなら、ロックバスターを使用する方が有効であるとロックマンは考え、五光石は使用していなかった。
そして、現状はブルースシールドもあり、何故かパンタローネも開天珠を連発する事もなく、ロックマンにはさしたる損傷はなし。
だが、それはパンタローネも同じ。
ロックバスターで武装し、ブルースシールドで身を守るロックマンは最早、観客ではない。
黄金律が何故か微妙に働いているらしいが、それでもパンタローネが人間以上の速度を出せる事に変わりはない。
双方、碌なダメージを与えられない中、遂にパンタローネが再び開天珠を二発発射。
二発とも一直線に、併走しながら開天珠が空を切って、ロックマンに迫る。
「そのくらい!」
ロックバスターでワイリーの造り出したロボット軍団と闘いを繰り広げたロックマン。
そのため、ロックバスターの扱いは身体に慣れ染み込んでおり、狙った対象を撃つ事は得意中の得意である。
狙いを定め、ロックバスターを連射。
幾ら不規則な軌道で迫るといっても、所詮はロックマンの元へ向かう軌道を描く開天珠。
狙いやすい前方から向かってきた事もあり、難なくロックマンは撃ち落す事に成功する。
そんな時、更に巻き起こる爆煙の中から一発の深緑の手が迫る。
多少驚いたものの、ブルースシールドを持つ左腕を左のほうへ動かし、防御を取るロックマン。
だが、迫りくる影は一つではなかった。
「ふん! なにも距離を取って闘うしか出来ない事はない!」
爆煙の中から、姿を現したのはパンタローネ。
爆煙に隠れ、ロックマンがブルースシールドを向けた方向とは別の方向から飛び出す。
腰の捻りを加え、充分に勢いを乗せた左脚がロックマンの右脇腹に当たる部分に、異質な音を交えて食い込む。
ブルースシールドで防御を行おうとしたが、間に合う事はなかった。
「ガハッ…………!」
湧き上がる衝撃、やがて苦痛に移り変わる感覚にロックマンはたまらず嗚咽を漏らす。
自分の身体がフワリと浮いたとロックマンが思ったのはわずか一瞬。
自動人形の強靭な脚で繰り出される打撃で、ロックマンの身体がパンタローネの視界から逃げるように離れていく。
辛うじて、ブルースシールドを手放さずに済んだが、倒れこんだキッドがパンタローネにがら空きになってしまった。
このままでは不味い。
キッドに危険が及ばないように、自分が何としてでもパンタローネの注意を引かなければ。
地へ投げ出され、うずくまる事を余儀なくされた身体に力を入れ、ロックマンは懸命に思考を走らせる。
「パンタローネ! あなたにもう一度、聞きたいコトがあるッ!!」
気が付けばロックマンは叫んでいた。
此方を訝しげな表情で眺めるパンタローネを。
そして、依然としてピクリとも動かないキッドに視線を投げ掛けながら。
◇ ◆ ◇
夜かな?
目の前が真っ暗で何も見えない。
やっぱり今は夜なんだな。
夜はおとなしく寝る時間だから、このまま眠っちまおうか。
うん、それがいいや。
だってなーんか疲れちまったもんなぁ。
その内、王ドラにも、ドラえもんズのあいつらにも、へちゃむくれにも会えるさ。
あれ?そういえば、俺なにやってたんだっけ?
結構重要な事だった気がするんだけどな……なんだっけ?
『あなたは、あのシグマという人が言っていた壊し合いに乗ったんですか!? 理由を教えてください!』
あれ?こいつの声は聞いた事があるな。というか壊し合いってなんだよ。
『まァ、今良いだろう。私は既に、死んだ身。別に壊し合いなどには興味はない』
ん?こいつの声も聞いた事あるな。なんかとてつもなく、ムカつく記憶が……。
『だったら、僕達と一緒にシグマを倒しましょう! 興味がなければ、あなただってあの男のやっているコトは許せないハズだ!』
シグマ? 待てよ、確かそいつは……そいつはこの壊し合いとやらに関係していたハズじゃなかったけ?
おい! どっちでもいいから俺の疑問に……。
『別にお前達と群れ合うつもりはない。私は一人で行動し続けるだけだ。ある目的のために』
『それなら、僕達を襲い、キッドをこんな目に合わせた理由。そこにどんな理由があったっていうんだ!?』
キッド? それは俺の名前……ああ、そうだ。なんで忘れかけたんだろうな。
そうだ。こいつは俺を……きっと譲れない理由のために、俺をやったんだ。
そのハズだろ?そうでなけれりゃ、何もやっていない、ケンカも吹っ掛けていない俺がこんな目には……。
『私はこの壊し合いをゲームとして見立て、受け入れた。
私は只の参加者。勝ち上がる者が優勝出来るというゲームならば、それに乗るだけ。
理由はそれだけだ』
『なっ! そんな、そんな理由で……あなたって人はぁぁぁぁぁッッッ!!』
あるわけ……ねぇ…………だろッッッ!!!
◇ ◆ ◇
「話はそれだけか。ならば、ゲームの再開といこうではないか!」
「僕は……僕はあなたには、絶対に負けないッ!」
一歩一歩踏み歩き、距離を詰めてくるパンタローネ。
歩みの先に居る人物はキッドではなく、ロックマン。
既にキッドは虫の息。
放っておいても害はないとパンタローネは判断したのだろう。
てっきりキッドのトドメを刺すつもりだと思っていたロックマンは僅かな喜びを感じる。
だが、喜びは一瞬の内に泡となって消えゆく。
もう一度パンタローネの標的となったため、ロックマンは彼に対し何らかの対抗策を用いなければならない。
頬に嫌な汗が流れながら、依然起き上がれないままもロックバスターを構えるロックマン。
歩みが更に速くなり、再び疾走を開始したパンタローネ。
ロックマンとキッドの間、丁度中間の位置までパンタローネが走り切った瞬間。
――再びガトリング砲が火を吹き、パンタローネの背中に着弾する。
「ぬっ、貴様!!」
「ああ……本当に、良かった!」
二者二様による感想を含んだ言葉。
いうまでもない。
その言葉の先に居る人影。
パンタローネに銃弾を浴びせ、ロックマンの嬉しさに満ちた表情を一身に浴びる影。
「待たせたなロック……ドラ・ザ・キッド! 復活だぜ! それと――」
ガトリング砲を構え、起き上がったキッドがパンタローネに言葉を叩きつける。
再び望まない闘いに身を投じる事となっても、キッドにはどうしても我慢ならない事があった。
それは先程、薄れ行く意識の中で聞いた言葉。
「礼を言うぜ、パンタローネ! お前のバカげた言葉ではっきりと気を取り直せたからなッ!」
パンタローネがロックマンに言い放った言葉がキッドの闘志を駆り立てていた。
開天珠の爆発により、既にボロボロな身体を引きずってでも。
キッドはガトリング砲を構えながら、立ち続ける事が出来た。
燃え滾る意思を宿し、キッドはガトリング砲を構え続ける。
「ほぅ、私の言葉が馬鹿げていると? 理由を教えて貰おうか?」
「言うまでもねぇ! お前が言ったゲームってやらが気に食わねぇんだッ!!」
パンタローネが走りを止め、一瞬の内に方向転換。
一直線にキッドの方へ向かう。
偉そうな口を叩くが所詮壊れかけで、パンタローネの目からすればいつ機能が停止しても可笑しくなさそうなキッド。
深緑の手が再び発射。
キッドの身体へ無数の空気を圧縮した弾丸、深緑の手が殺到する。
だが、キッドは今までのように避けるどころか、逆にパンタローネと同じように走り出す。
キッドの行動に驚きの表情を見せた、パンタローネに向かって。
「こんなふざけたコトはゲームなんかじゃねぇ! それに、素直に受け入れたお前にもムカッ腹がたつんだ!」
「ムカッ腹? それは私に怒るというコトか? 何故だ? このパンタローネが何をしようとも、お前には関係はないハズだ」
数発の深緑の手がキッドの右肩に直撃。
幾ら頑丈なキッドの身体といえども、度重なる衝撃には耐えられない。
右肩ごと腕をえぐられ、火花を散らしながら機械の部分が露となる。
だが、キッドは止まらない。
表情をしかめる事も一瞬。
欠損した右腕の事を惜しむよりも、今この場で最優先にやるべき事がある。
王ドラ、そして未だ見ぬ仲間への危険を取り除くためにパンタローネを倒す。
そのためにもキッドの左腕に備え付けられたガトリング砲が再び――
「そんなコトは当たり前だ! 俺だってお前がどうなろうと知ったこっちゃねぇ! だけどよ……お前を放っておいたら……このまま見逃したらッ!!
お前は王ドラも襲うかもしれないだろ! そんなコト、そんなコトは許さねぇ!
親友テレカで結んだ……最高の友人は誰一人だってお前なんかに壊させはしないぜ! 絶対になッ!」
爆音を撒き散らし、火を、ありったけの銃弾をぶち撒ける。
残りの弾数など最早、気にはしていない。
只、一意専心の心得でパンタローネにあるだけの銃弾を叩き込む。
そう。たった今、新たな新緑の手で左目の部分ごと、左側頭部の辺りが破壊されたが気にしない。
キッドのあまりのしぶとさに驚くのもつかの間、パンタローネの身体になだれ込む銃弾。
ギシギシと自動人形の身体が軋む音、破片を飛び散らせながらパンタローネ。
ロックマンのロックバスター、キッドのガトリング砲、そして使い慣れない開天珠の使用によりパンタローネの体勢が大きく崩れる。
だが、完全には崩れ切れない。
今まで何百年にも渡ってしろがね(人形破壊者)と闘ったパンタローネにも意地がある。
「もしや友情というものか!? 確か人間が持つ感情の一つだったハズだが……何故、人間ではないお前がそんな感情を持つ!? 恐怖という感情はないのか!?」
「お前なんかに……お前なんかに理解してもらってたまるかよッ! 俺と王ドラやドラえもんズの皆、それにロックとの間を結ぶ絆。
この絆が俺に勇気を与えてくれるんだ! お前なんかにビビッてたまるかぁぁぁぁぁッ!!」
パンタローネの右手に収束する大気の流れ。
キッドとロックマンとの闘いの中でみせた中で、最大出力の深緑の手が唸る。
圧縮に圧縮を重ねた空気の弾丸が、今もなお、ガトリング砲を撃ち続け、走り来るキッドを砕かんと迫る。
「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!」
「ぬううううううおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!」
――刹那
キッドとパンタローネの叫び声、深緑の手が直撃したのとほぼ同時刻。
何かが音をたてて砕け散った。
砕け散った物体。
その物体は黒々とした大地が抉れた事によるもの。
そしてその破片の中には、キッドの身体の一部分と思われる破片が混入している。
だが、あまりにも少ない。
そう、少なすぎる――その疑問への答えはあまりにも簡単だ。
「へっ! ざまぁみろッ!!」
「ぬぅ! おのれッ!!」
キッドの達成感に満ちた声、そして頭上から聞こえてきたその声にパンタローネが歯軋りをしながら、答える。
キッドは両脚で地を蹴り飛ばす事で、パンタローネの頭上を飛び越えていた。
しかしキッドとパンタローネの身長はあまりにも違い、幾ら深緑の手による衝撃によって補助されたといっても、そう易々と頭上を取れるものではない。
そのため、キッドは限界以上の付加を両脚に掛ける必要があり、地を蹴り飛ばす時に両脚を潰してしまう結果となった。
だが、今のキッドには後悔はない。
この先、修理を受けるまで碌に歩行は出来ないかもしれない。
それでも、キッドは受け入れる。
「そうだ、さっきなんで人間じゃない俺がそんな感情を持つかって聞いたな? 確かに俺はしがないお手伝いロボットさ。
けどな……そんな俺でもな……」
もう直ぐだ。
どこか観念した様子で自分に手を向けるパンタローネ。
どうやらあの奇妙な肩に付いた武器も使わないらしい。
好都合だ。
後は、ちょっと腕に力を込めて……あいつをぶっ倒せば……俺の……勝ちだ。
あれ?
でも、ロックが立ち上がってこっちに駆け寄ってきてるな。
もう少し休んどけって。
本当にしょうがないヤツだなぁ……もう直ぐ終わるからよ。
「仲間を、友人を思う気持ちは人間にも負けねぇ! そうさ!それがネコ型ロボット、ドラえもんズの一員! ドラ・ザ・キッドの一生モンの誇りだッ!!」
これで俺の勝ちだ。
後はこのガトリング砲の引き金を引くだけ。
ざまぁみろ……パンタローネ……!
◇ ◆ ◇
パンタローネが走る。
ダメージは大きい。
一度死んだ身ではあるもののまさか、自分が短時間でここまで損傷を貰うとは考えなかった。
支給品の開天珠は強力ではあるが使用するたびに、身体が鉛のように重く感じてしまい、多用は出来ない。
そのため、飛行も出来るらしいが今はやめておこう。
それにどうやら深緑の手の威力や連射速度も落ちている。
これも造物主、フェイスレスの仕業なのかもしれないが、自分にはどうする事も出来ない。
そのため、パンタローネは一時撤退を決めた。
何故なら、自分はこの壊し合いというゲームに乗ったからだ。
乗ったからには最期まで、役を演じきる。
だから、パンタローネは走り続ける。
「…友情か、覚えておこう。まァ、嫌でもいつかまた闘う事になるだろう……あの『二人』にはな」
頭にこびりついた一つのキーワードを抱えながら。
ロックマンが息も絶え絶えに走り続ける。
パンタローネに蹴られた痛みが今頃になって引いてくる。
もっと早く引く事が出来たなら。
もっと早く自分が立ち上がる事が出来たら。
もっと早くロックバスターを構える事が出来たら。
今更言っても、もう遅すぎる事はわかっている。
――あの時、自分があの奇妙な物体を撃ち落していれば。
突如として、パンタローネとキッドへ投げられた物体。
見たこともない、爆弾のようなものが自分の後方から二人へ投げ込まれた。
あまりにも早い、自分が感じる時間の流れを遅くされたかのように突如として現れた物体にロックマンは反応出来なかった。
そして、その物体はキッドに直撃。
瞬く間に大きな爆発を起こしてしまった現実。
「待っていてくれ、キッド。絶対に戻ってみせるから……、だからありがたく使わせてもらうよ。君とまた、会う時まで」
ロックバスターを展開していない腕に付けられたものはガトリング砲。
先程、キッドが使用しており、譲り受けた武器。
大切な友達の武器をロックマンはある目的のために、キッドから頼まれた願いのために使う事を決意する。
このままでは放置しては危険を齎すと思われるパンタローネの打倒。
そして――
「わざとじゃない、何かの間違いだったと思いたい。でも、もし本当にあの栗色の男の子が、初めからキッドを狙っていたのなら……」
ロックマンの脳裏に浮かぶ一人の青年。
栗色の髪の毛、黄色いマフラー、赤い制服を纏った男。
キッドの方へ何かを投げつけた張本人。
ロックマンは知るよしもない、島村ジョーという男。
彼に――
「僕は彼を許さない……!」
かすかな疑惑と敵意を燃やしていた。
◇ ◆ ◇
数分前、僕は偶然走りこんだ森林で、倒れこむ青い少年を見た。
どこか負傷しているのかもしれない。
そう思い、僕は彼に走り寄ろうとした。
だが、僕は更に見つけてしまった。
黄色いネコのようなサイボーグに老人のようなサイボーグが襲い掛かる光景を。
思わず、考える間もなく、動いた身体。
――あのネコ型サイボーグを助けなければ!
ドロシーを救えなかったからせめてもの罪滅ぼしにと思ったのかもしれない。
だが、僕はもうこれ以上、誰かが壊れるのを見るのはたくさんだった。
只、彼を救いたい。
たとえ、ドロシーを殺した罪を一生背負う事になっても、これ以上取り零したくはない。
もう一度、胸を張ってブラックゴーストの、シグマの野望を潰すためにこの身を行使させる資格を得るためにも。
衝撃集中爆弾。
先程僕がドロシーの命を奪った代物。
そのため衝撃集中爆弾を手に取った瞬間、ドロシーの顔を思い出し、少し身震いを起こした。
僕は一瞬の躊躇を起こしたが、あれを老人型サイボーグの頭部に投げつけた。
焦っていた気持ちもあり、少し上気味に投げてしまったかもしれない。
だが、老人型サイボーグに避けられる事がないように加速装置を作動しながら――僕は彼を救おうとした。
『へっ! ざまぁみろッ!!』
『ぬぅ! おのれッ!!』
でも、予想外な事が起こった僕が衝撃集中爆弾を投げた瞬間、彼が跳んだ。
まさかあんな体型からあそこまで跳躍出来るとは思わなかった。
しかも、彼は目の前の老人型サイボーグに夢中で衝撃集中爆弾に気づいていない。
加速装置を作動させながら投げたため、気づいた時にはきっと手遅れだ。
だから僕は大声を上げて、彼に気づいて貰おうとした――したハズだった。
そう。何故か、あの時僕の声は出なかった。
この光景をついさっき、嫌というほど記憶に染み込んだ光景とどことなく似ていた。
もう繰り返さない。
そう願ったはずなのに……また同じことを繰り返した自分。
そんな自分がどうしようもなく、嫌で思考が止まってしまった。
『仲間を、友人を思う気持ちは人間にも負けねぇ! そうさ!それがネコ型ロボット、ドラえもんズの一員! ドラ・ザ・キッドの一生モンの誇りだッ!!』
やがて、彼に、キッドというサイボーグに衝撃爆弾が当たってしまった。
また、僕の目の前で起きた、僕のせいで起きてしまった爆発に巻き込まれたキッド。
老人型サイボーグは爆発の余波を受けただけで、殆どダメージはなさそうだ。
『くっ! キッドーーーーーーーーーーッ!!』
衝撃集中爆弾を投げつけた僕を非難の目で睨みつけてから、青い少年がキッドの元へ向かった。
すぐさまキッドの元へ向かったから察するに心優しい少年だ。
きっと、友達になれそうな、優しい少年。
でも、僕が……僕がキッドをあんな目にあわせたからもう…………。
ごめん……ごめんなさい。
悲しみと自分自身への怒りでどうにかなりそうな自分を抑え、僕は直ぐにキッドの元へ向かおうとした。
そんな時だ。
聞こえたんだ。
悪魔の声が。
『礼を言っておこう、名も知らない自動人形よ』
自動人形という単語は知らない。
只、すれ違いざまにそう言って、どこかへ走り去っていった老人型サイボーグ。
僕はそんなあいつをずっと見送っていた。
礼を言う?
結果的にそう見えたかもしれない
僕に? 僕がお前を助けたと……そんなこと、そんなこと僕は……僕は……!
気が付けば僕は走っていた。
目的地はない。
目的地はあいつが決めてくれる。
名前は知らない老人型サイボーグ。
僕にお礼を言ったあのサイボーグ。
僕が破壊してしまったキッドと闘っていたサイボーグ。
もう僕にはキッドに、ドロシーにしてあげる事は何も出来ない。
だから……だから僕は……この身がたとえ……粉々になってでも……
――あいつを倒す。
キッドと闘っていたパンタローネを倒す。
そして、その後ドロシーを埋葬する。
それが……それだけがドロシーとキッドへの償いになる。
もう僕には……この罪に塗れ、汚れきった僕には……
「……加速装置ッ!」
それしかないから。
◇ ◆ ◇
自然公園に植えられた大木。
そこに全身のボディが黒こげになった一つの物体がもたれ掛かっている。
いうまでもなく、それはキッドのなれの果て。
すぐさま、ロックマンにより火は消してもらったため、火は消えている
また、僅かにチカチカと目にあたる部分は点滅して、完全に活動は停止していない。
だが、誰の目からみても明らかだ。
既に、超技術の結晶、お手伝いロボットなどではない事を。
――やっと行ったか。緊急時に自動的に修理するシステムが働くから大丈夫だ!って行ったら上手くいったな。
キッドは自分の心配するロックマンに嘘をつき、パンタローネを追うように頼んだ。
にわかには信じられない話だったが、キッドはロックマンより一世紀も未来の世界の住人。
キッドが自分に嘘をつくハズもないと思っていたため、ロックマンはその話を信じてしまった。
また、パンタローネに集中していたため、ジョーの姿は見えなかったキッド。
そのため、キッドはパンタローネの隠し技のよって負けたのだとおぼろげに思う。
だが、不思議と後悔はなかった。
きっとロックマンがパンタローネを倒し、王ドラと合流し、シグマを倒す。
そんな絵が不思議とキッドには想像できたから。
――へちゃむくれ……ドラミ、また会おうな……
想いを寄せる人の声を、姿を、顔を浮かべながら――
キッドの機能は停止した。
&color(red){【ドラ・ザ・キッド@ザ・ドラえもんズ破壊確認】}
&color(red){【残り42人】}
【F-5とG-5の境界 西部/一日目・黎明】
【パンタローネ@からくりサーカス】
[状態]:中程度の疲労、全身、特に背中に銃弾やロックバスターによるダメージ、また全身に爆発の余波による焦げあり。
[装備]:開天珠@封神演義
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]
基本思考:事件をゲームに見立て精一杯周囲を楽しませる。
1:他のプレーヤーを探して攻撃。
2:取り敢えず、この場を離れ体勢を整える
3:ロック(ロックマン)と栗色の髪、黄色のマフラーの少年(ジョー)とはまた闘いたい。
4:友情という感情に僅かな興味
[備考]
※原作終了時(実質原作42巻でも大丈夫)でからの参戦です。
※この事件の首謀者をフェイスレスだと勘違いしています。
※自分の身体能力の低下や異変に気づきました。
※パンタローネが何処へ向かうか次の方にお任せします
※別にジョーにこれといって感謝したわけではありません
※開天珠(宝貝)の使用には疲労が伴います。
【G-5 中部/一日目・黎明】
【009(島村ジョー)@サイボーグ009】
[状態]:全身打撲。ダメージ大。疲労大。ドロシーとグレイ・フォックス、キッドを殺したことによる、罪悪感。
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~2(確認済。少なくとも、ジョーには武器には見えなかった)
[思考・状況]
基本思考:????
1:パンタローネを倒し、キッドへの償いを行う
2:1が終わった後、F-5に戻り、ドロシーを埋葬する。
3:1と2が終わったら……?
[備考]
※ブラックゴースト編終盤(平成アニメ版・第16話)からの参戦です。
※ドロシーとはほとんど情報交換をしていません。
※00ナンバー強化服は、同デザインの通常の服と交換されています(加速に耐えられる素材のようです)。
※グレイ・フォックス、キッドを殺したと思い込んでいます。
※パンタローネ(名前は知らない)が行った方向へ進んでいます。
※ロックマン(名前は知らない)に罪悪感
【G-5とH-5の境界 /一日目・黎明】
【ロックマン@ロックマン】
[状態]:全身にダメージ、右脇腹に打撲(痛みは引いている)
[装備]:ブルースシールド@ロックマン 、ガトリング砲@サイボーグクロちゃん(弾薬三十~四十パーセント消費)
[道具]:支給品一式、ダンボール@メタルギアソリッド、大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険 五光石@封神演義
[思考・状況]
基本思考:自分は壊しあいには絶対にのらない。
1:パンタローネとジョー(名前は知らない)を追いかけ、パンタローネを倒す。その後キッドの元へ戻る。
2:キッドの親友の王ドラを探す
3:エックスと赤いヘルメットのロボット(ゼロ)を捜して、シグマについて聞く
4:壊しあいを止めるための仲間を集める
5:ロボット同士の壊しあいを止める
6:ジョー(名前は知らない)に事の真相を突き止める
[備考]
※キッドの言葉は真実だと思っています(キッドは死んでいなく、自動的に修理される)
※ジョー(名前は知らない)については半信半疑です。
※自分達がタイムマシンのようなもので連れてこられたと推測しています
【支給品紹介】
【開天珠@封神演義】
備え付けられた無数の数珠を飛ばし、対象を粉砕する爆破系の宝貝。
また数珠自身の推進力を使い、飛行する事も可能。
*時系列順で読む
Back:[[決意をこの胸に――(前編)]] Next:[[未知数の邂逅]]
*投下順で読む
Back:[[決意をこの胸に――(前編)]] Next:[[とっても嫌な聞き間違い]]
|052:[[決意をこの胸に――(前編)]]|009(島村ジョー)|057:[[LOVE DESTINY]]|
|052:[[決意をこの胸に――(前編)]]|パンタローネ|057:[[LOVE DESTINY]]|
|052:[[決意をこの胸に――(前編)]]|ロックマン|057:[[LOVE DESTINY]]|
|052:[[決意をこの胸に――(前編)]]|ドラ・ザ・キッド|&color(red){GAME OVER}|
**決意をこの胸に――(後編) ◆14m5Do64HQ
◇ ◆ ◇
未だ、続くパンタローネとロックマン、そしてキッドの闘い。
奇しくも三人とも互いに得意な獲物は遠距離射撃が可能なもの。
また、ロックマンは本来、打撃武器を用いた接近戦闘を得意としない。
そのため、今はスレッジハンマーをPDAに再転送しているため、ブルースシールドとロックバスターを主軸に戦闘を行っている。
キッドのガトリング砲にも充分な弾数は残っているので、戦闘には支障はない。
だが、戦況は五分ではなかった。
「うわぁッ!!」
「クソッ! ロック、大丈夫か!?」
ロックマンの身体を大規模な火力を含んだ爆発が包む。
ロックマンの後方で、相変わらず後方支援を行っていたキッドが吼える。
ブルースシールドでは防ぎきれずに、衝撃によりブルースシールドが弧を描きながらクルクルと宙を浮く。
原因は一体何か?
勿論、深縁の手には火など一切関与する事はなく、ブルースシールドが吹き飛ばれたのはそれによるものではない。
「気を抜くな。未だ、私の番だ」
「ッ!!」
そもそも、深緑の手はブルースシールドを手放したロックマンに、今現在撃ちこまれている。
接近を行いながら、パンタローネの右腕から撃ちだされる深緑の手。
五本の指から一発、掌から連続して四発といった計九発の連射。
崩れた体勢を必死になおしながらも、ロックマンは深緑の手から身体を離すように、捻る。
だが、タイミングが遅すぎた。
半数程度であるが、深緑の手を全身に受け止めた衝撃によりロックマンの身体が派手に後方へ飛び退く。
確かな嗚咽を漏らしながら吹き飛ぶロックマンを、キッドは横目で眺める事しか出来ない。
「ッ! このヤローがぁッ……! 何ッ!?」
ロックマンの身を案じながらも、キッドがガトリング砲を構える。
今までロックマンとパンタローネが重なり、満足に連射が出来なかった。
その分を取り返すために、ロックの痛みを返してやるためにも構えを取ったキッドは、あるものを見て驚く。
キッドの視界には左腕を此方に向けるパンタローネの姿。
かと思いきや右腕と同じく深緑の手を発射し、キッドの身体を食い破らんと迫りくる。
(なっにー! 左手でも撃てるのかよ……右手で撃てるんだから、別に可笑しくはないか。クソッ! だけど……負けるかよッ!)
今更愚痴を言っても意味はない。
今まで左腕を使っていなかったパンタローネを見て、勝手にキッドが勘違いしただけだ。
あまりにも短すぎる、両脚をフルに活用し、キッドは深緑の手を避ける。
予想外の攻撃のために、回避する事以外には頭が回らない。
ガトリング砲による掃射は一旦取り止め、回避行動に全ての労力を注ぐキッド。
撃ち出された深緑の手は二発、一直線にキッドのボディ、頭部を狙い撃つ。
銃弾の少なさもあり、キッドは回避する事に成功するが体勢を崩し、一時の抵抗も虚しく地面に顔面から倒れこむ。
その時、パンタローネの口元が不気味に釣り上がるのをキッドは確かに見た。
「貰ったぞ! 不気味な自動人形め!!」
深緑の手は所謂フェイクに過ぎなかった。
パンタローネの身体から、いや、両肩から何かが飛び出す。
その飛び出したものにキッドは思わず全身が強張っていく事を感じた。
そう。その物体こそが先ほどロックを襲った爆発の正体。
パンタローネの両肩に装備された支給品から発射されたもの。
「ゆけい! 『開天珠』ッ!!」
開天珠。
殷の王朝時代の中国、九竜島の四聖の一人、王魔が使用した宝貝(パオペエ)といわれる武器。
両肩に装備された装甲から発射される数珠を相手にぶつけ、対象を粉砕し、爆破する特性を持つ。
本来宝貝は仙人骨という特殊な骨を持つ人間、仙道にしか扱えない。
だが、人間でさえもないパンタローネも今、開天珠を扱える事に成功している。
恐らく、シグマがこの殺し合いのために、なんらかの加工を加えたのだろう。
その事に気づく者はおらず、刻一刻と開天珠が計二つ、回転を起こしながらキッドを襲う。
「まだだぁッ!」
開天珠の速度は速い。
回避は無理だと断念したキッドは倒れこみながらも、ガトリング砲をぶっ放す。
一瞬で狙いをつけ、あとは自動によるフルオート射撃。
不規則な軌道を描き続ける開天珠を銃弾が捉え、着弾、一瞬の間を置き爆発。
だが、爆発を起こし、パンタローネの元へ戻る開天珠は一つだけ。
距離、時間、開天珠の速度と軌道、体勢の悪さが重なり、いくら射撃の名手であるキッドでも一つだけが限界であった。
苦虫を潰したような顔で開天珠を睨みつけるキッド。
とっさに後ろへ飛び退くキッドだが、最早遅い。
遅すぎた。
「キッドーーーーーッ!!」
開天珠がキッドのボディに直撃。
これまた、先ほどの開天珠と同じように爆発。
爆発に巻き込まれ、非常にゆっくりとした速度で、宙を漂う形となったキッド。
朦朧とする意識の中、キッドは自分を呼ぶ叫び声をぼんやりと聞いていた。
「キッド! 大丈夫かい!?」
ガランと変な音をたて、地へ叩きつけられたキッドへロックマンが慌てながら駆け寄る。
ブルースシールドがあった自分とは違い、もろに開天珠の爆発を受けたキッド。
そのダメージはわざわざ確認しなくても、深刻なものだとロックマンにも理解できる。
こんな時にE缶があれば今すぐにでも、キッドの傷が癒す事は出来るのに。
残念ながら今直ぐには叶いそうにない希望。
だが、今はいつまでもその希望にすがるわけにもいかない。
キッドをかかえ、一刻も早くこの場から逃走を図ろうとするが――
咄嗟に何かが迫りくる事を感じたロックマンはブルースシールドを構える。
小さな衝撃と共に、ロックマンにわかったのは数発の深緑の手が撃ち込まれた事だ。
「どこへゆく? まさかこのまま、逃げるわけではないだろうな?」
「くっ! よくも、よくもキッドを! 僕はあなたを許さないッ!!」
深緑の手を放ちながら、接近するパンタローネ。
立ち止まる気配は見せない。
キッドへの手打ちに対する怒りと憤りを燃やし、ロックマンがロックバスターで応戦する。
依然、キッドの身体は未だ動こうとはしない。
「ロックバスターーーッ!!」
倒れこんだキッドを庇う形で、銃撃戦を行っていたロックマンが叫ぶ。
五光石という武器もある事はあるが、相手の顔を濃ゆくする事しか書いていない。
そんなものを使うくらいなら、ロックバスターを使用する方が有効であるとロックマンは考え、五光石は使用していなかった。
そして、現状はブルースシールドもあり、何故かパンタローネも開天珠を連発する事もなく、ロックマンにはさしたる損傷はなし。
だが、それはパンタローネも同じ。
ロックバスターで武装し、ブルースシールドで身を守るロックマンは最早、観客ではない。
黄金律が何故か微妙に働いているらしいが、それでもパンタローネが人間以上の速度を出せる事に変わりはない。
双方、碌なダメージを与えられない中、遂にパンタローネが再び開天珠を二発発射。
二発とも一直線に、併走しながら開天珠が空を切って、ロックマンに迫る。
「そのくらい!」
ロックバスターでワイリーの造り出したロボット軍団と闘いを繰り広げたロックマン。
そのため、ロックバスターの扱いは身体に慣れ染み込んでおり、狙った対象を撃つ事は得意中の得意である。
狙いを定め、ロックバスターを連射。
幾ら不規則な軌道で迫るといっても、所詮はロックマンの元へ向かう軌道を描く開天珠。
狙いやすい前方から向かってきた事もあり、難なくロックマンは撃ち落す事に成功する。
そんな時、更に巻き起こる爆煙の中から一発の深緑の手が迫る。
多少驚いたものの、ブルースシールドを持つ左腕を左のほうへ動かし、防御を取るロックマン。
だが、迫りくる影は一つではなかった。
「ふん! なにも距離を取って闘うしか出来ない事はない!」
爆煙の中から、姿を現したのはパンタローネ。
爆煙に隠れ、ロックマンがブルースシールドを向けた方向とは別の方向から飛び出す。
腰の捻りを加え、充分に勢いを乗せた左脚がロックマンの右脇腹に当たる部分に、異質な音を交えて食い込む。
ブルースシールドで防御を行おうとしたが、間に合う事はなかった。
「ガハッ…………!」
湧き上がる衝撃、やがて苦痛に移り変わる感覚にロックマンはたまらず嗚咽を漏らす。
自分の身体がフワリと浮いたとロックマンが思ったのはわずか一瞬。
自動人形の強靭な脚で繰り出される打撃で、ロックマンの身体がパンタローネの視界から逃げるように離れていく。
辛うじて、ブルースシールドを手放さずに済んだが、倒れこんだキッドがパンタローネにがら空きになってしまった。
このままでは不味い。
キッドに危険が及ばないように、自分が何としてでもパンタローネの注意を引かなければ。
地へ投げ出され、うずくまる事を余儀なくされた身体に力を入れ、ロックマンは懸命に思考を走らせる。
「パンタローネ! あなたにもう一度、聞きたいコトがあるッ!!」
気が付けばロックマンは叫んでいた。
此方を訝しげな表情で眺めるパンタローネを。
そして、依然としてピクリとも動かないキッドに視線を投げ掛けながら。
◇ ◆ ◇
夜かな?
目の前が真っ暗で何も見えない。
やっぱり今は夜なんだな。
夜はおとなしく寝る時間だから、このまま眠っちまおうか。
うん、それがいいや。
だってなーんか疲れちまったもんなぁ。
その内、王ドラにも、ドラえもんズのあいつらにも、へちゃむくれにも会えるさ。
あれ?そういえば、俺なにやってたんだっけ?
結構重要な事だった気がするんだけどな……なんだっけ?
『あなたは、あのシグマという人が言っていた壊し合いに乗ったんですか!? 理由を教えてください!』
あれ?こいつの声は聞いた事があるな。というか壊し合いってなんだよ。
『まァ、今良いだろう。私は既に、死んだ身。別に壊し合いなどには興味はない』
ん?こいつの声も聞いた事あるな。なんかとてつもなく、ムカつく記憶が……。
『だったら、僕達と一緒にシグマを倒しましょう! 興味がなければ、あなただってあの男のやっているコトは許せないハズだ!』
シグマ? 待てよ、確かそいつは……そいつはこの壊し合いとやらに関係していたハズじゃなかったけ?
おい! どっちでもいいから俺の疑問に……。
『別にお前達と群れ合うつもりはない。私は一人で行動し続けるだけだ。ある目的のために』
『それなら、僕達を襲い、キッドをこんな目に合わせた理由。そこにどんな理由があったっていうんだ!?』
キッド? それは俺の名前……ああ、そうだ。なんで忘れかけたんだろうな。
そうだ。こいつは俺を……きっと譲れない理由のために、俺をやったんだ。
そのハズだろ?そうでなけれりゃ、何もやっていない、ケンカも吹っ掛けていない俺がこんな目には……。
『私はこの壊し合いをゲームとして見立て、受け入れた。
私は只の参加者。勝ち上がる者が優勝出来るというゲームならば、それに乗るだけ。
理由はそれだけだ』
『なっ! そんな、そんな理由で……あなたって人はぁぁぁぁぁッッッ!!』
あるわけ……ねぇ…………だろッッッ!!!
◇ ◆ ◇
「話はそれだけか。ならば、ゲームの再開といこうではないか!」
「僕は……僕はあなたには、絶対に負けないッ!」
一歩一歩踏み歩き、距離を詰めてくるパンタローネ。
歩みの先に居る人物はキッドではなく、ロックマン。
既にキッドは虫の息。
放っておいても害はないとパンタローネは判断したのだろう。
てっきりキッドのトドメを刺すつもりだと思っていたロックマンは僅かな喜びを感じる。
だが、喜びは一瞬の内に泡となって消えゆく。
もう一度パンタローネの標的となったため、ロックマンは彼に対し何らかの対抗策を用いなければならない。
頬に嫌な汗が流れながら、依然起き上がれないままもロックバスターを構えるロックマン。
歩みが更に速くなり、再び疾走を開始したパンタローネ。
ロックマンとキッドの間、丁度中間の位置までパンタローネが走り切った瞬間。
――再びガトリング砲が火を吹き、パンタローネの背中に着弾する。
「ぬっ、貴様!!」
「ああ……本当に、良かった!」
二者二様による感想を含んだ言葉。
いうまでもない。
その言葉の先に居る人影。
パンタローネに銃弾を浴びせ、ロックマンの嬉しさに満ちた表情を一身に浴びる影。
「待たせたなロック……ドラ・ザ・キッド! 復活だぜ! それと――」
ガトリング砲を構え、起き上がったキッドがパンタローネに言葉を叩きつける。
再び望まない闘いに身を投じる事となっても、キッドにはどうしても我慢ならない事があった。
それは先程、薄れ行く意識の中で聞いた言葉。
「礼を言うぜ、パンタローネ! お前のバカげた言葉ではっきりと気を取り直せたからなッ!」
パンタローネがロックマンに言い放った言葉がキッドの闘志を駆り立てていた。
開天珠の爆発により、既にボロボロな身体を引きずってでも。
キッドはガトリング砲を構えながら、立ち続ける事が出来た。
燃え滾る意思を宿し、キッドはガトリング砲を構え続ける。
「ほぅ、私の言葉が馬鹿げていると? 理由を教えて貰おうか?」
「言うまでもねぇ! お前が言ったゲームってやらが気に食わねぇんだッ!!」
パンタローネが走りを止め、一瞬の内に方向転換。
一直線にキッドの方へ向かう。
偉そうな口を叩くが所詮壊れかけで、パンタローネの目からすればいつ機能が停止しても可笑しくなさそうなキッド。
深緑の手が再び発射。
キッドの身体へ無数の空気を圧縮した弾丸、深緑の手が殺到する。
だが、キッドは今までのように避けるどころか、逆にパンタローネと同じように走り出す。
キッドの行動に驚きの表情を見せた、パンタローネに向かって。
「こんなふざけたコトはゲームなんかじゃねぇ! それに、素直に受け入れたお前にもムカッ腹がたつんだ!」
「ムカッ腹? それは私に怒るというコトか? 何故だ? このパンタローネが何をしようとも、お前には関係はないハズだ」
数発の深緑の手がキッドの右肩に直撃。
幾ら頑丈なキッドの身体といえども、度重なる衝撃には耐えられない。
右肩ごと腕をえぐられ、火花を散らしながら機械の部分が露となる。
だが、キッドは止まらない。
表情をしかめる事も一瞬。
欠損した右腕の事を惜しむよりも、今この場で最優先にやるべき事がある。
王ドラ、そして未だ見ぬ仲間への危険を取り除くためにパンタローネを倒す。
そのためにもキッドの左腕に備え付けられたガトリング砲が再び――
「そんなコトは当たり前だ! 俺だってお前がどうなろうと知ったこっちゃねぇ! だけどよ……お前を放っておいたら……このまま見逃したらッ!!
お前は王ドラも襲うかもしれないだろ! そんなコト、そんなコトは許さねぇ!
親友テレカで結んだ……最高の友人は誰一人だってお前なんかに壊させはしないぜ! 絶対になッ!」
爆音を撒き散らし、火を、ありったけの銃弾をぶち撒ける。
残りの弾数など最早、気にはしていない。
只、一意専心の心得でパンタローネにあるだけの銃弾を叩き込む。
そう。たった今、新たな新緑の手で左目の部分ごと、左側頭部の辺りが破壊されたが気にしない。
キッドのあまりのしぶとさに驚くのもつかの間、パンタローネの身体になだれ込む銃弾。
ギシギシと自動人形の身体が軋む音、破片を飛び散らせながらパンタローネ。
ロックマンのロックバスター、キッドのガトリング砲、そして使い慣れない開天珠の使用によりパンタローネの体勢が大きく崩れる。
だが、完全には崩れ切れない。
今まで何百年にも渡ってしろがね(人形破壊者)と闘ったパンタローネにも意地がある。
「もしや友情というものか!? 確か人間が持つ感情の一つだったハズだが……何故、人間ではないお前がそんな感情を持つ!? 恐怖という感情はないのか!?」
「お前なんかに……お前なんかに理解してもらってたまるかよッ! 俺と王ドラやドラえもんズの皆、それにロックとの間を結ぶ絆。
この絆が俺に勇気を与えてくれるんだ! お前なんかにビビッてたまるかぁぁぁぁぁッ!!」
パンタローネの右手に収束する大気の流れ。
キッドとロックマンとの闘いの中でみせた中で、最大出力の深緑の手が唸る。
圧縮に圧縮を重ねた空気の弾丸が、今もなお、ガトリング砲を撃ち続け、走り来るキッドを砕かんと迫る。
「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!」
「ぬううううううおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!」
――刹那
キッドとパンタローネの叫び声、深緑の手が直撃したのとほぼ同時刻。
何かが音をたてて砕け散った。
砕け散った物体。
その物体は黒々とした大地が抉れた事によるもの。
そしてその破片の中には、キッドの身体の一部分と思われる破片が混入している。
だが、あまりにも少ない。
そう、少なすぎる――その疑問への答えはあまりにも簡単だ。
「へっ! ざまぁみろッ!!」
「ぬぅ! おのれッ!!」
キッドの達成感に満ちた声、そして頭上から聞こえてきたその声にパンタローネが歯軋りをしながら、答える。
キッドは両脚で地を蹴り飛ばす事で、パンタローネの頭上を飛び越えていた。
しかしキッドとパンタローネの身長はあまりにも違い、幾ら深緑の手による衝撃によって補助されたといっても、そう易々と頭上を取れるものではない。
そのため、キッドは限界以上の付加を両脚に掛ける必要があり、地を蹴り飛ばす時に両脚を潰してしまう結果となった。
だが、今のキッドには後悔はない。
この先、修理を受けるまで碌に歩行は出来ないかもしれない。
それでも、キッドは受け入れる。
「そうだ、さっきなんで人間じゃない俺がそんな感情を持つかって聞いたな? 確かに俺はしがないお手伝いロボットさ。
けどな……そんな俺でもな……」
もう直ぐだ。
どこか観念した様子で自分に手を向けるパンタローネ。
どうやらあの奇妙な肩に付いた武器も使わないらしい。
好都合だ。
後は、ちょっと腕に力を込めて……あいつをぶっ倒せば……俺の……勝ちだ。
あれ?
でも、ロックが立ち上がってこっちに駆け寄ってきてるな。
もう少し休んどけって。
本当にしょうがないヤツだなぁ……もう直ぐ終わるからよ。
「仲間を、友人を思う気持ちは人間にも負けねぇ! そうさ!それがネコ型ロボット、ドラえもんズの一員! ドラ・ザ・キッドの一生モンの誇りだッ!!」
これで俺の勝ちだ。
後はこのガトリング砲の引き金を引くだけ。
ざまぁみろ……パンタローネ……!
◇ ◆ ◇
パンタローネが走る。
ダメージは大きい。
一度死んだ身ではあるもののまさか、自分が短時間でここまで損傷を貰うとは考えなかった。
支給品の開天珠は強力ではあるが使用するたびに、身体が鉛のように重く感じてしまい、多用は出来ない。
そのため、飛行も出来るらしいが今はやめておこう。
それにどうやら深緑の手の威力や連射速度も落ちている。
これも造物主、フェイスレスの仕業なのかもしれないが、自分にはどうする事も出来ない。
そのため、パンタローネは一時撤退を決めた。
何故なら、自分はこの壊し合いというゲームに乗ったからだ。
乗ったからには最期まで、役を演じきる。
だから、パンタローネは走り続ける。
「…友情か、覚えておこう。まァ、嫌でもいつかまた闘う事になるだろう……あの『二人』にはな」
頭にこびりついた一つのキーワードを抱えながら。
ロックマンが息も絶え絶えに走り続ける。
パンタローネに蹴られた痛みが今頃になって引いてくる。
もっと早く引く事が出来たなら。
もっと早く自分が立ち上がる事が出来たら。
もっと早くロックバスターを構える事が出来たら。
今更言っても、もう遅すぎる事はわかっている。
――あの時、自分があの奇妙な物体を撃ち落していれば。
突如として、パンタローネとキッドへ投げられた物体。
見たこともない、爆弾のようなものが自分の後方から二人へ投げ込まれた。
あまりにも早い、自分が感じる時間の流れを遅くされたかのように突如として現れた物体にロックマンは反応出来なかった。
そして、その物体はキッドに直撃。
瞬く間に大きな爆発を起こしてしまった現実。
「待っていてくれ、キッド。絶対に戻ってみせるから……、だからありがたく使わせてもらうよ。君とまた、会う時まで」
ロックバスターを展開していない腕に付けられたものはガトリング砲。
先程、キッドが使用しており、譲り受けた武器。
大切な友達の武器をロックマンはある目的のために、キッドから頼まれた願いのために使う事を決意する。
このままでは放置しては危険を齎すと思われるパンタローネの打倒。
そして――
「わざとじゃない、何かの間違いだったと思いたい。でも、もし本当にあの栗色の男の子が、初めからキッドを狙っていたのなら……」
ロックマンの脳裏に浮かぶ一人の青年。
栗色の髪の毛、黄色いマフラー、赤い制服を纏った男。
キッドの方へ何かを投げつけた張本人。
ロックマンは知るよしもない、島村ジョーという男。
彼に――
「僕は彼を許さない……!」
かすかな疑惑と敵意を燃やしていた。
◇ ◆ ◇
数分前、僕は偶然走りこんだ森林で、倒れこむ青い少年を見た。
どこか負傷しているのかもしれない。
そう思い、僕は彼に走り寄ろうとした。
だが、僕は更に見つけてしまった。
黄色いネコのようなサイボーグに老人のようなサイボーグが襲い掛かる光景を。
思わず、考える間もなく、動いた身体。
――あのネコ型サイボーグを助けなければ!
ドロシーを救えなかったからせめてもの罪滅ぼしにと思ったのかもしれない。
だが、僕はもうこれ以上、誰かが壊れるのを見るのはたくさんだった。
只、彼を救いたい。
たとえ、ドロシーを殺した罪を一生背負う事になっても、これ以上取り零したくはない。
もう一度、胸を張ってブラックゴーストの、シグマの野望を潰すためにこの身を行使させる資格を得るためにも。
衝撃集中爆弾。
先程僕がドロシーの命を奪った代物。
そのため衝撃集中爆弾を手に取った瞬間、ドロシーの顔を思い出し、少し身震いを起こした。
僕は一瞬の躊躇を起こしたが、あれを老人型サイボーグの頭部に投げつけた。
焦っていた気持ちもあり、少し上気味に投げてしまったかもしれない。
だが、老人型サイボーグに避けられる事がないように加速装置を作動しながら――僕は彼を救おうとした。
『へっ! ざまぁみろッ!!』
『ぬぅ! おのれッ!!』
でも、予想外な事が起こった僕が衝撃集中爆弾を投げた瞬間、彼が跳んだ。
まさかあんな体型からあそこまで跳躍出来るとは思わなかった。
しかも、彼は目の前の老人型サイボーグに夢中で衝撃集中爆弾に気づいていない。
加速装置を作動させながら投げたため、気づいた時にはきっと手遅れだ。
だから僕は大声を上げて、彼に気づいて貰おうとした――したハズだった。
そう。何故か、あの時僕の声は出なかった。
この光景をついさっき、嫌というほど記憶に染み込んだ光景とどことなく似ていた。
もう繰り返さない。
そう願ったはずなのに……また同じことを繰り返した自分。
そんな自分がどうしようもなく、嫌で思考が止まってしまった。
『仲間を、友人を思う気持ちは人間にも負けねぇ! そうさ!それがネコ型ロボット、ドラえもんズの一員! ドラ・ザ・キッドの一生モンの誇りだッ!!』
やがて、彼に、キッドというサイボーグに衝撃爆弾が当たってしまった。
また、僕の目の前で起きた、僕のせいで起きてしまった爆発に巻き込まれたキッド。
老人型サイボーグは爆発の余波を受けただけで、殆どダメージはなさそうだ。
『くっ! キッドーーーーーーーーーーッ!!』
衝撃集中爆弾を投げつけた僕を非難の目で睨みつけてから、青い少年がキッドの元へ向かった。
すぐさまキッドの元へ向かったから察するに心優しい少年だ。
きっと、友達になれそうな、優しい少年。
でも、僕が……僕がキッドをあんな目にあわせたからもう…………。
ごめん……ごめんなさい。
悲しみと自分自身への怒りでどうにかなりそうな自分を抑え、僕は直ぐにキッドの元へ向かおうとした。
そんな時だ。
聞こえたんだ。
悪魔の声が。
『礼を言っておこう、名も知らない自動人形よ』
自動人形という単語は知らない。
只、すれ違いざまにそう言って、どこかへ走り去っていった老人型サイボーグ。
僕はそんなあいつをずっと見送っていた。
礼を言う?
結果的にそう見えたかもしれない
僕に? 僕がお前を助けたと……そんなこと、そんなこと僕は……僕は……!
気が付けば僕は走っていた。
目的地はない。
目的地はあいつが決めてくれる。
名前は知らない老人型サイボーグ。
僕にお礼を言ったあのサイボーグ。
僕が破壊してしまったキッドと闘っていたサイボーグ。
もう僕にはキッドに、ドロシーにしてあげる事は何も出来ない。
だから……だから僕は……この身がたとえ……粉々になってでも……
――あいつを倒す。
キッドと闘っていたパンタローネを倒す。
そして、その後ドロシーを埋葬する。
それが……それだけがドロシーとキッドへの償いになる。
もう僕には……この罪に塗れ、汚れきった僕には……
「……加速装置ッ!」
それしかないから。
◇ ◆ ◇
自然公園に植えられた大木。
そこに全身のボディが黒こげになった一つの物体がもたれ掛かっている。
いうまでもなく、それはキッドのなれの果て。
すぐさま、ロックマンにより火は消してもらったため、火は消えている
また、僅かにチカチカと目にあたる部分は点滅して、完全に活動は停止していない。
だが、誰の目からみても明らかだ。
既に、超技術の結晶、お手伝いロボットなどではない事を。
――やっと行ったか。緊急時に自動的に修理するシステムが働くから大丈夫だ!って行ったら上手くいったな。
キッドは自分の心配するロックマンに嘘をつき、パンタローネを追うように頼んだ。
にわかには信じられない話だったが、キッドはロックマンより一世紀も未来の世界の住人。
キッドが自分に嘘をつくハズもないと思っていたため、ロックマンはその話を信じてしまった。
また、パンタローネに集中していたため、ジョーの姿は見えなかったキッド。
そのため、キッドはパンタローネの隠し技のよって負けたのだとおぼろげに思う。
だが、不思議と後悔はなかった。
きっとロックマンがパンタローネを倒し、王ドラと合流し、シグマを倒す。
そんな絵が不思議とキッドには想像できたから。
――へちゃむくれ……ドラミ、また会おうな……
想いを寄せる人の声を、姿を、顔を浮かべながら――
キッドの機能は停止した。
&color(red){【ドラ・ザ・キッド@ザ・ドラえもんズ破壊確認】}
&color(red){【残り42人】}
【F-5とG-5の境界 西部/一日目・黎明】
【パンタローネ@からくりサーカス】
[状態]:中程度の疲労、全身、特に背中に銃弾やロックバスターによるダメージ、また全身に爆発の余波による焦げあり。
[装備]:開天珠@封神演義
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]
基本思考:事件をゲームに見立て精一杯周囲を楽しませる。
1:他のプレーヤーを探して攻撃。
2:取り敢えず、この場を離れ体勢を整える
3:ロック(ロックマン)と栗色の髪、黄色のマフラーの少年(ジョー)とはまた闘いたい。
4:友情という感情に僅かな興味
[備考]
※原作終了時(実質原作42巻でも大丈夫)でからの参戦です。
※この事件の首謀者をフェイスレスだと勘違いしています。
※自分の身体能力の低下や異変に気づきました。
※パンタローネが何処へ向かうか次の方にお任せします
※別にジョーにこれといって感謝したわけではありません
※開天珠(宝貝)の使用には疲労が伴います。
【G-5 中部/一日目・黎明】
【009(島村ジョー)@サイボーグ009】
[状態]:全身打撲。ダメージ大。疲労大。ドロシーとグレイ・フォックス、キッドを殺したことによる、罪悪感。
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~2(確認済。少なくとも、ジョーには武器には見えなかった)
[思考・状況]
基本思考:????
1:パンタローネを倒し、キッドへの償いを行う
2:1が終わった後、F-5に戻り、ドロシーを埋葬する。
3:1と2が終わったら……?
[備考]
※ブラックゴースト編終盤(平成アニメ版・第16話)からの参戦です。
※ドロシーとはほとんど情報交換をしていません。
※00ナンバー強化服は、同デザインの通常の服と交換されています(加速に耐えられる素材のようです)。
※グレイ・フォックス、キッドを殺したと思い込んでいます。
※パンタローネ(名前は知らない)が行った方向へ進んでいます。
※ロックマン(名前は知らない)に罪悪感
【G-5とH-5の境界 /一日目・黎明】
【ロックマン@ロックマン】
[状態]:全身にダメージ、右脇腹に打撲(痛みは引いている)
[装備]:ブルースシールド@ロックマン 、ガトリング砲@サイボーグクロちゃん(弾薬三十~四十パーセント消費)
[道具]:支給品一式、ダンボール@メタルギアソリッド、大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険 五光石@封神演義
[思考・状況]
基本思考:自分は壊しあいには絶対にのらない。
1:パンタローネとジョー(名前は知らない)を追いかけ、パンタローネを倒す。その後キッドの元へ戻る。
2:キッドの親友の王ドラを探す
3:エックスと赤いヘルメットのロボット(ゼロ)を捜して、シグマについて聞く
4:壊しあいを止めるための仲間を集める
5:ロボット同士の壊しあいを止める
6:ジョー(名前は知らない)に事の真相を突き止める
[備考]
※キッドの言葉は真実だと思っています(キッドは死んでいなく、自動的に修理される)
※ジョー(名前は知らない)については半信半疑です。
※自分達がタイムマシンのようなもので連れてこられたと推測しています
【支給品紹介】
【開天珠@封神演義】
備え付けられた無数の数珠を飛ばし、対象を粉砕する爆破系の宝貝。
また数珠自身の推進力を使い、飛行する事も可能。
*時系列順で読む
Back:[[決意をこの胸に――(前編)]] Next:[[噛み合う歯車……?]]
*投下順で読む
Back:[[決意をこの胸に――(前編)]] Next:[[とっても嫌な聞き間違い]]
|052:[[決意をこの胸に――(前編)]]|009(島村ジョー)|057:[[LOVE DESTINY]]|
|052:[[決意をこの胸に――(前編)]]|パンタローネ|057:[[LOVE DESTINY]]|
|052:[[決意をこの胸に――(前編)]]|ロックマン|057:[[LOVE DESTINY]]|
|052:[[決意をこの胸に――(前編)]]|ドラ・ザ・キッド|&color(red){GAME OVER}|
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: