「紅の戦士達」(2008/09/27 (土) 21:18:03) の最新版変更点
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*紅の戦士達 ◆c92qFeyVpE
一人の男が修理工場の入り口へと歩いてくる。
男が纏った赤いアーマーは全身が傷ついており、破損した左膝と相まって激しい戦いを経験してきたのであろうことを示していた。
ゆっくりと、少しずつ傷だらけで歩いてくるその姿は、気の弱い者なら恐怖さえ感じるかもしれない。
だが、今のこの男にはそんな恐怖を多少和らげるパーツが存在した。
すなわち、彼の腰まで伸びた――三つ編み。
「腕に巻いてはダメなのか……? いや、持ち主がそう言った以上は……」
自分で結った髪を見ながら何やら真剣な表情で呟いている。
チンクから受け取ったリボン、効果を見る限り常に付けておいて損はない。
ただ「身に着ける」というのはどういう状態までを指すのか、リボンの用途から離れても問題はないのかどうかが量りかねない。
素早さにしろ対魔能力にしろ自分だけでは調べようがない。そのため確実に効果が出るであろう、本来の用途……髪を結うという使用法を選んだ。
とはいえ、はっきり言って似合わない。PDAの液晶に自分の顔を写し込んでみるが、端整なその顔を歪めることにしかならなかった。
「大体、こういうのは女がつけるものだろう……む」
言ってから、自分がここで出会った女性二人を思い出して唸る。
ノーヴェとチンクがリボンをつけている姿をどうしても想像できない、エラーが生じる程だ。
女性物といっても、やはりその付ける人間にもよるようだ……などと本人に聞かれたらただではすまないであろう事を考えながら歩き、修理工場の前へとたどり着く。
「……」
カーネルのセイバーを片手に、慎重に扉をくぐり……想像以上に荒れた内部に顔を顰める。
あちこちが焼け焦げ、へこみ、仕舞いには部屋の一つが跡形も無く破壊されている。
チンクから聞いていたとはいえ、ここまで激しい戦闘が行われていたとは……
しかし、話にあった破壊されている部屋のポッドへ目を向けるが、そこには誰もいない。
治療がすんでチンクを追いかけたのだろうか? いや、追いかけるには情報が少ないはず、合流したいならこの場に留まるべきだ。
それよりも遥かに可能性が高いのは「ここから立ち去らなくてはならない状況に陥った」ということ、つまり、何者かの襲撃。
とはいえ血やオイルなどの跡がない事から、最悪の結果は免れたのだろう……とはいえ、今だに交戦中という可能性も捨てきれない。
「しかし、追いかけることもできないか……」
自分の左膝を恨めしそうに見る。
今の自分ではチンクもノーヴェ達も追う事はできない、戦闘さえもままならないだろう。
一刻も早く修理をすませなくては、と顔を上げ、視界の端で何かが光った。
警戒しながらそちらへ近づいていくと、その正体がPDAであることに気づく。
先ほどのは液晶部分に光が反射したのだろう。偶然に感謝しながら拾い上げ、中身を確認する。
……支給品は残されている、風見か凱の物なのだろうか? 思考を巡らせ――
「答えろ、この殺し合いに乗っているか?」
背後に現れた男へとセイバーの切っ先を突きつける。
少し力をこめるだけで男の顔を貫く、そんな状態にありながら男は一歩も動かず、ただゼロの返答を待っていた。
「……乗る気はない」
「その証明は出来るか」
そのやり取りにノーヴェと出会った時の事を思い出し、思わず笑みを浮かべてしまう。
わずかに警戒を高めた男に向かい、表情を消して口を開く。
「シグマについての情報を提供できる」
「……信じよう、俺は風見志郎という、お前の名前は?」
「俺はゼロ……カザミと言ったな、チンクの仲間というのはお前であっているか?」
チンクの名前を聞き、風見から警戒心がようやく薄れる。
信じると言っておきながら……と思わないこともないが、自分でもあの程度の言葉では完全に信用はしないだろう。
現に、まだ互いに牽制し合っている部分がある。
とはいえ動かない事には始まらない、こちらもセイバーを降ろし、話し合う形をとった。
「チンクと会ったのか?」
「ああ、チンクの妹のノーヴェを追っている……俺も着いて行きたっかたんだがな、この足だ。修理できる場所はないか?」
◇
風見に連れられ、凱が眠る部屋へと入る。
その間に放送について聞けなかったという風見へ、たった今拾ったPDAを渡しながら内容を伝えていく。
村雨が死亡したのを聞いた時、風見はただ静かに目を閉じて思いを馳せていた。
「……放送の内容はこれで全部だ」
「助かった、感謝する」
できるだけ感情を出さないようにして返す。
そんな風見の様子にゼロは気づいたが、あえて触れないようにして話を進める。
「後は互いの探し人だが……チンクの探してるノーヴェは恐らく大丈夫だ。仲間もいるし……うまくすればすでに合流できているかもしれない」
そして次の瞬間、ゼロの目つきが鋭くなる。
「……仮面ライダーと言ったな、一人心当たりがある」
「本当か?」
その言葉に顔を上げるが、風見の表情に喜びは見られない。
ゼロの様子から見て、何からしらのトラブルがあったと見て間違いないだろう。
「……何があった」
「ジンという男、そいつに俺とノーヴェは襲われた。変身とやらもしていたから間違いない」
「敬介が……?」
神が理由無く誰かを襲う者ではないということは、改めて言うまでも無く理解している。
だが、ゼロがこの状況で嘘をつくというのも考えにくい、見間違い……もありえないだろう、少なくともゼロから聞かされた情報はXライダーそのものだ。
考え込む風見を見て、ゼロは「やはりか」と呟いて口を開く。
「無差別に殺しにかかる奴じゃ、ないんだな?」
「当たり前だ。確かにその外見、戦い方は敬介そのものだが……あいつは問答無用で誰かを傷つけはしない」
「……チンクの知り合いの一人、スバルという奴にも襲われたんだ」
「何?」
スバルの事はチンクから聞いている、やはり決して人を傷つける人間ではないということだったはずだ。
自分達の知っている人間の豹変……そこで、この殺し合いに参加させられてからずっと頭の隅に引っかかていた物に気づいた。
「……液体金属と言っていたな」
「ああ」
同じ結論に至っていたらしい。風見の言葉にゼロは静かに頷く。
シグマの姿を完全にコピーしていた協力者、あの液体金属が参加者の知り合いを装って暴れている可能性はないだろうか?
……十分にありえる。
この殺し合いの目的がわからない以上断定することはできないが、数名に化けて暴れるだけでその効果はかなりでかい。
知らない者はその仲間へも疑いを持ち、知り合いも何があったのか分からずその情報を広めた者を疑う。
更にメガトロンのが行うような嘘ではない、実際に襲い掛かっているのだからその誤解はより深くなっていく。
そして一度その可能性に気づいてしまったら、よほど信頼している者が相手でなければ、いや、そうであっても化けているのではないかと疑心に陥ってしまう。
これ以上ないほど効果的な殺し合いの促進剤。現に風見とゼロも、目の前の者が本物かどうか確かめる術はないのだ。
だが、風見はそんな事は考えていないかのように振舞う。
「……引き止めてすまなかったな、ポッドに入るといい。俺が見張っている」
風見の言葉にゼロは首を横に振る。
「……信用できないか?」
「そうじゃない。シグマの思い通りになるなんてごめんだ」
ならば何故、と問う風見に対し、ゼロは自分がついさっき渡したPDAを指差す。
「それが落ちていたまま手付かずだったということは、まだこの工場を調べてはいないんだな?」
「ああ……そんな暇がなかったからな」
最初はメガトロンに連れられ、来て早々ポッドへと入り眠りについた。
目覚めた時にはチンクも凱もおらず、すぐさま凱を追って飛び出した。
再度訪れてからは凱とハカイダーの二人をポッドに入れ(ハカイダーはすぐに出て行ったが)自分はその護衛に回っていた。
他の部屋に何があるかまでは調べる余裕がなかったのだ。
「なら、ガイの護衛は俺がする。その間にこの工場の内部を調査してほしい」
「何……? だが、今は早く膝を直してチンクやノーヴェ達を追うべきじゃないのか」
「確かに合流したいところではあるが、ただ集まるだけでも仕方ないだろう?」
自分の胸の辺りを指しながら言うゼロに、風見は何を言いたいのか気づく。
合流するだけならば今の状況はそう悪くない、神やスバルの豹変という気になる点はあれども、相当な人数が集まれる状態にある。
だが、集まるだけではこの殺し合いは止められない。
自分達の体内に仕掛けられた爆弾とやらを何とかしない限り、シグマの手の上のままだ。
「わかった、だがその足だ……無理はするなよ」
「言われるまでもないさ。おっと、その前に他に出会った参加者の情報について交換しておかないとな」
◇
風見は修理工場の二階を調べながら思考を巡らせる。
メガトロンの卑劣な策略への怒りも感じていたが、それ以上にハカイダーに関して思うところが大きい。
溶鉱炉へ落ちそうになったゼロを救ったことといい、凱に奇襲をかけたメガトロンへの怒りといい、決して救えない者じゃないはずだ。
それだけに、最後に告げられた予言が気にかかる。ハカイダーは何をしようと企んでいるのだろうか?
凱に託す……果たしてそんなことを言っていられる状況なのか。
「先輩、茂……奴に出会ったら、道を示してやってくれ……」
そして、敬介。
「液体金属が化けていたのなら打ち砕く。だが、もしも本物のお前に何かあったのなら……」
拳を強く握り、豹変したという後輩の姿を思い浮かべる。
「必ず、止めてみせる……!」
◇
「ハカイダー……お前は何を考えている」
風見と同じように、ゼロがまず考えたこともハカイダーについてだった。
戦わざるを得ない状況に持ち込むのに、最も単純な方法は「人質」だろう。
強者以外と戦う気はないと言っていたが、人質はその枠に適用されるのだろうか?
下手をすればチンクやノーヴェ達も危険な目に可能性が出てきてしまった、思わず顔を顰める。
ノーヴェならそう簡単にやられるとは思わない、メカ沢とロボの二人もそれなりに頼りになりそうだ。
チンクもそうだ、感情的になる部分はあったが、ノーヴェよりも身のこなしは鋭く、そう易々と利用などされるような奴ではないと思えた。
だが――
「無事でいろよ、ノーヴェ……」
何故か、胸の不安が取れることはなかった……
【G-3 修理工場/一日目 午前】
【風見志郎@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:両拳に負傷(小)、頭部と胸部と左肩に弾痕(塞がっている)、右肘に負傷(中)、固い決意、村雨の死に悲しみ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式(メカ沢) 不明支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いを破壊し、シグマを倒す。
1:修理工場を調べ、体内の爆弾を解除する手がかりを探す。
2:凱の回復を待つ。そして、ハカイダーを任せる。
3:チンクと共に本郷・敬介・茂・村雨・スバル・ギンガ・ノーヴェを探し、合流する。
4:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない。
5:敬介に何があったのかを知りたい。いざという時は全力で止める。
6:可能ならば、ボイルドを仮面ライダーにしたい。そのためには、危険は辞さない覚悟。
7:治療が終わった後、ゼロとより深く情報を交換し、シグマの真の目的を探る。
8:弱者の保護。
[備考]
※参戦時期は大首領の門に火柱キックを仕掛ける直前です(原作13巻)。また身体とダブルタイフーンは元通り修復されています
※チンクと情報交換をしました
※なんとなくチンクを村雨、そして昔の自分に重ねている節があります
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました
※ゼロと簡単な情報交換をしました。
【獅子王凱@勇者王ガオガイガー】
[状態]:疲労(小)、全身に中度の打撲、アーマーにひび、背中に数多の火傷と裂傷、気絶、回復中
[装備]:グランドリオン@クロノトリガー、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS(右腕に収納)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒し、この殺し合いを止める。戦う力を持たぬ者、傷ついている達を保護し、守り抜く。
0:気絶。回復中
1:ハカイダーを更正したいが、それが不可能ならば――――?
2:戦闘が終われば、チンクと合流するべく風見と修理工場に戻る。
3:同じ目的を持った仲間を探す。
[備考]
※Zマスター撃破直後からの参戦です。
※チンクから情報を得ました。
※制限の影響により、グランとリオンは出現する事が出来ません
※凱が見た村雨の写真は原作五巻に出てきたものです
※打撲、火傷、裂傷等により、身体の内部に異変が生じているのかは、後続の書き手さんにおまかせします。
【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:左膝を破損、エネルギー消費(大)、全身のアーマーに大きな傷、疲労(大)
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ カーネルのセイバー@ロックマンX4、
トリモチ銃@サイボーグクロちゃん 、アトロポスのリボン@クロノトリガー
[道具]:支給品一式 PDA×2(ゼロ、村雨) 不明支給品0~2(未確認)
空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:シグマを倒す
1:凱の治療が終わるまで護衛
2:治療が終わったら風見とより深く情報交換を行う
3:日付の変わる頃(二日目00:00)にハカイダーと決着をつけるため、スクラップ工場に再度向かう
4:ノーヴェの様子が気になる
5:エックス、ギンガを探す
6:シグマ、何を企んでる?
7:ハカイダーに……
[備考]
※ノーヴェたちを生体パーツを使用したレプリロイド(のようなもの)と解釈しました。
※ノーヴェから時空管理局と平行世界に関する知識を得ました。
※チンクから彼女を襲った参加者の情報を得ました。
※参戦時期はX4のED~X5開始前のようです
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました
※風見と簡単に情報交換しました
*時系列順で読む
Back:[[兄弟/姉弟/家族(前編)]] Next:[[Wake Up . The ヒーロー その1]]
*投下順で読む
Back:[[兄弟/姉弟/家族(前編)]] Next:[[破壊]]
|083:[[破壊戦士物語]]|風見志郎|[[芽生え(前編)]]|
|083:[[破壊戦士物語]]|獅子王凱|[[芽生え(前編)]]|
|081:[[荒野を渡る風]]|ゼロ|[[芽生え(前編)]]|
*紅の戦士達 ◆c92qFeyVpE
一人の男が修理工場の入り口へと歩いてくる。
男が纏った赤いアーマーは全身が傷ついており、破損した左膝と相まって激しい戦いを経験してきたのであろうことを示していた。
ゆっくりと、少しずつ傷だらけで歩いてくるその姿は、気の弱い者なら恐怖さえ感じるかもしれない。
だが、今のこの男にはそんな恐怖を多少和らげるパーツが存在した。
すなわち、彼の腰まで伸びた――三つ編み。
「腕に巻いてはダメなのか……? いや、持ち主がそう言った以上は……」
自分で結った髪を見ながら何やら真剣な表情で呟いている。
チンクから受け取ったリボン、効果を見る限り常に付けておいて損はない。
ただ「身に着ける」というのはどういう状態までを指すのか、リボンの用途から離れても問題はないのかどうかが量りかねない。
素早さにしろ対魔能力にしろ自分だけでは調べようがない。そのため確実に効果が出るであろう、本来の用途……髪を結うという使用法を選んだ。
とはいえ、はっきり言って似合わない。PDAの液晶に自分の顔を写し込んでみるが、端整なその顔を歪めることにしかならなかった。
「大体、こういうのは女がつけるものだろう……む」
言ってから、自分がここで出会った女性二人を思い出して唸る。
ノーヴェとチンクがリボンをつけている姿をどうしても想像できない、エラーが生じる程だ。
女性物といっても、やはりその付ける人間にもよるようだ……などと本人に聞かれたらただではすまないであろう事を考えながら歩き、修理工場の前へとたどり着く。
「……」
カーネルのセイバーを片手に、慎重に扉をくぐり……想像以上に荒れた内部に顔を顰める。
あちこちが焼け焦げ、へこみ、仕舞いには部屋の一つが跡形も無く破壊されている。
チンクから聞いていたとはいえ、ここまで激しい戦闘が行われていたとは……
しかし、話にあった破壊されている部屋のポッドへ目を向けるが、そこには誰もいない。
治療がすんでチンクを追いかけたのだろうか? いや、追いかけるには情報が少ないはず、合流したいならこの場に留まるべきだ。
それよりも遥かに可能性が高いのは「ここから立ち去らなくてはならない状況に陥った」ということ、つまり、何者かの襲撃。
とはいえ血やオイルなどの跡がない事から、最悪の結果は免れたのだろう……とはいえ、今だに交戦中という可能性も捨てきれない。
「しかし、追いかけることもできないか……」
自分の左膝を恨めしそうに見る。
今の自分ではチンクもノーヴェ達も追う事はできない、戦闘さえもままならないだろう。
一刻も早く修理をすませなくては、と顔を上げ、視界の端で何かが光った。
警戒しながらそちらへ近づいていくと、その正体がPDAであることに気づく。
先ほどのは液晶部分に光が反射したのだろう。偶然に感謝しながら拾い上げ、中身を確認する。
……支給品は残されている、風見か凱の物なのだろうか? 思考を巡らせ――
「答えろ、この殺し合いに乗っているか?」
背後に現れた男へとセイバーの切っ先を突きつける。
少し力をこめるだけで男の顔を貫く、そんな状態にありながら男は一歩も動かず、ただゼロの返答を待っていた。
「……乗る気はない」
「その証明は出来るか」
そのやり取りにノーヴェと出会った時の事を思い出し、思わず笑みを浮かべてしまう。
わずかに警戒を高めた男に向かい、表情を消して口を開く。
「シグマについての情報を提供できる」
「……信じよう、俺は風見志郎という、お前の名前は?」
「俺はゼロ……カザミと言ったな、チンクの仲間というのはお前であっているか?」
チンクの名前を聞き、風見から警戒心がようやく薄れる。
信じると言っておきながら……と思わないこともないが、自分でもあの程度の言葉では完全に信用はしないだろう。
現に、まだ互いに牽制し合っている部分がある。
とはいえ動かない事には始まらない、こちらもセイバーを降ろし、話し合う形をとった。
「チンクと会ったのか?」
「ああ、チンクの妹のノーヴェを追っている……俺も着いて行きたっかたんだがな、この足だ。修理できる場所はないか?」
◇
風見に連れられ、凱が眠る部屋へと入る。
その間に放送について聞けなかったという風見へ、たった今拾ったPDAを渡しながら内容を伝えていく。
村雨が死亡したのを聞いた時、風見はただ静かに目を閉じて思いを馳せていた。
「……放送の内容はこれで全部だ」
「助かった、感謝する」
できるだけ感情を出さないようにして返す。
そんな風見の様子にゼロは気づいたが、あえて触れないようにして話を進める。
「後は互いの探し人だが……チンクの探してるノーヴェは恐らく大丈夫だ。仲間もいるし……うまくすればすでに合流できているかもしれない」
そして次の瞬間、ゼロの目つきが鋭くなる。
「……仮面ライダーと言ったな、一人心当たりがある」
「本当か?」
その言葉に顔を上げるが、風見の表情に喜びは見られない。
ゼロの様子から見て、何からしらのトラブルがあったと見て間違いないだろう。
「……何があった」
「ジンという男、そいつに俺とノーヴェは襲われた。変身とやらもしていたから間違いない」
「敬介が……?」
神が理由無く誰かを襲う者ではないということは、改めて言うまでも無く理解している。
だが、ゼロがこの状況で嘘をつくというのも考えにくい、見間違い……もありえないだろう、少なくともゼロから聞かされた情報はXライダーそのものだ。
考え込む風見を見て、ゼロは「やはりか」と呟いて口を開く。
「無差別に殺しにかかる奴じゃ、ないんだな?」
「当たり前だ。確かにその外見、戦い方は敬介そのものだが……あいつは問答無用で誰かを傷つけはしない」
「……チンクの知り合いの一人、スバルという奴にも襲われたんだ」
「何?」
スバルの事はチンクから聞いている、やはり決して人を傷つける人間ではないということだったはずだ。
自分達の知っている人間の豹変……そこで、この殺し合いに参加させられてからずっと頭の隅に引っかかていた物に気づいた。
「……液体金属と言っていたな」
「ああ」
同じ結論に至っていたらしい。風見の言葉にゼロは静かに頷く。
シグマの姿を完全にコピーしていた協力者、あの液体金属が参加者の知り合いを装って暴れている可能性はないだろうか?
……十分にありえる。
この殺し合いの目的がわからない以上断定することはできないが、数名に化けて暴れるだけでその効果はかなりでかい。
知らない者はその仲間へも疑いを持ち、知り合いも何があったのか分からずその情報を広めた者を疑う。
更にメガトロンのが行うような嘘ではない、実際に襲い掛かっているのだからその誤解はより深くなっていく。
そして一度その可能性に気づいてしまったら、よほど信頼している者が相手でなければ、いや、そうであっても化けているのではないかと疑心に陥ってしまう。
これ以上ないほど効果的な殺し合いの促進剤。現に風見とゼロも、目の前の者が本物かどうか確かめる術はないのだ。
だが、風見はそんな事は考えていないかのように振舞う。
「……引き止めてすまなかったな、ポッドに入るといい。俺が見張っている」
風見の言葉にゼロは首を横に振る。
「……信用できないか?」
「そうじゃない。シグマの思い通りになるなんてごめんだ」
ならば何故、と問う風見に対し、ゼロは自分がついさっき渡したPDAを指差す。
「それが落ちていたまま手付かずだったということは、まだこの工場を調べてはいないんだな?」
「ああ……そんな暇がなかったからな」
最初はメガトロンに連れられ、来て早々ポッドへと入り眠りについた。
目覚めた時にはチンクも凱もおらず、すぐさま凱を追って飛び出した。
再度訪れてからは凱とハカイダーの二人をポッドに入れ(ハカイダーはすぐに出て行ったが)自分はその護衛に回っていた。
他の部屋に何があるかまでは調べる余裕がなかったのだ。
「なら、ガイの護衛は俺がする。その間にこの工場の内部を調査してほしい」
「何……? だが、今は早く膝を直してチンクやノーヴェ達を追うべきじゃないのか」
「確かに合流したいところではあるが、ただ集まるだけでも仕方ないだろう?」
自分の胸の辺りを指しながら言うゼロに、風見は何を言いたいのか気づく。
合流するだけならば今の状況はそう悪くない、神やスバルの豹変という気になる点はあれども、相当な人数が集まれる状態にある。
だが、集まるだけではこの殺し合いは止められない。
自分達の体内に仕掛けられた爆弾とやらを何とかしない限り、シグマの手の上のままだ。
「わかった、だがその足だ……無理はするなよ」
「言われるまでもないさ。おっと、その前に他に出会った参加者の情報について交換しておかないとな」
◇
風見は修理工場の二階を調べながら思考を巡らせる。
メガトロンの卑劣な策略への怒りも感じていたが、それ以上にハカイダーに関して思うところが大きい。
溶鉱炉へ落ちそうになったゼロを救ったことといい、凱に奇襲をかけたメガトロンへの怒りといい、決して救えない者じゃないはずだ。
それだけに、最後に告げられた予言が気にかかる。ハカイダーは何をしようと企んでいるのだろうか?
凱に託す……果たしてそんなことを言っていられる状況なのか。
「先輩、茂……奴に出会ったら、道を示してやってくれ……」
そして、敬介。
「液体金属が化けていたのなら打ち砕く。だが、もしも本物のお前に何かあったのなら……」
拳を強く握り、豹変したという後輩の姿を思い浮かべる。
「必ず、止めてみせる……!」
◇
「ハカイダー……お前は何を考えている」
風見と同じように、ゼロがまず考えたこともハカイダーについてだった。
戦わざるを得ない状況に持ち込むのに、最も単純な方法は「人質」だろう。
強者以外と戦う気はないと言っていたが、人質はその枠に適用されるのだろうか?
下手をすればチンクやノーヴェ達も危険な目に可能性が出てきてしまった、思わず顔を顰める。
ノーヴェならそう簡単にやられるとは思わない、メカ沢とロボの二人もそれなりに頼りになりそうだ。
チンクもそうだ、感情的になる部分はあったが、ノーヴェよりも身のこなしは鋭く、そう易々と利用などされるような奴ではないと思えた。
だが――
「無事でいろよ、ノーヴェ……」
何故か、胸の不安が取れることはなかった……
【G-3 修理工場/一日目 午前】
【風見志郎@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:両拳に負傷(小)、頭部と胸部と左肩に弾痕(塞がっている)、右肘に負傷(中)、固い決意、村雨の死に悲しみ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式(メカ沢) 不明支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いを破壊し、シグマを倒す。
1:修理工場を調べ、体内の爆弾を解除する手がかりを探す。
2:凱の回復を待つ。そして、ハカイダーを任せる。
3:チンクと共に本郷・敬介・茂・村雨・スバル・ギンガ・ノーヴェを探し、合流する。
4:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない。
5:敬介に何があったのかを知りたい。いざという時は全力で止める。
6:可能ならば、ボイルドを仮面ライダーにしたい。そのためには、危険は辞さない覚悟。
7:治療が終わった後、ゼロとより深く情報を交換し、シグマの真の目的を探る。
8:弱者の保護。
[備考]
※参戦時期は大首領の門に火柱キックを仕掛ける直前です(原作13巻)。また身体とダブルタイフーンは元通り修復されています
※チンクと情報交換をしました
※なんとなくチンクを村雨、そして昔の自分に重ねている節があります
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました
※ゼロと簡単な情報交換をしました。
【獅子王凱@勇者王ガオガイガー】
[状態]:疲労(小)、全身に中度の打撲、アーマーにひび、背中に数多の火傷と裂傷、気絶、回復中
[装備]:グランドリオン@クロノトリガー、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS(右腕に収納)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒し、この殺し合いを止める。戦う力を持たぬ者、傷ついている達を保護し、守り抜く。
0:気絶。回復中
1:ハカイダーを更正したいが、それが不可能ならば――――?
2:戦闘が終われば、チンクと合流するべく風見と修理工場に戻る。
3:同じ目的を持った仲間を探す。
[備考]
※Zマスター撃破直後からの参戦です。
※チンクから情報を得ました。
※制限の影響により、グランとリオンは出現する事が出来ません
※凱が見た村雨の写真は原作五巻に出てきたものです
※打撲、火傷、裂傷等により、身体の内部に異変が生じているのかは、後続の書き手さんにおまかせします。
【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:左膝を破損、エネルギー消費(大)、全身のアーマーに大きな傷、疲労(大)
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ カーネルのセイバー@ロックマンX4、
トリモチ銃@サイボーグクロちゃん 、アトロポスのリボン@クロノトリガー
[道具]:支給品一式 PDA×2(ゼロ、村雨) 不明支給品0~2(未確認)
空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:シグマを倒す
1:凱の治療が終わるまで護衛
2:治療が終わったら風見とより深く情報交換を行う
3:日付の変わる頃(二日目00:00)にハカイダーと決着をつけるため、スクラップ工場に再度向かう
4:ノーヴェの様子が気になる
5:エックス、ギンガを探す
6:シグマ、何を企んでる?
7:ハカイダーに……
[備考]
※ノーヴェたちを生体パーツを使用したレプリロイド(のようなもの)と解釈しました。
※ノーヴェから時空管理局と平行世界に関する知識を得ました。
※チンクから彼女を襲った参加者の情報を得ました。
※参戦時期はX4のED~X5開始前のようです
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました
※風見と簡単に情報交換しました
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|083:[[破壊戦士物語]]|獅子王凱|097:[[芽生え(前編)]]|
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