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「約束――俺の有用性(後編)」(2009/04/01 (水) 00:14:08) の最新版変更点
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**約束――俺の有用性(後編) ◆V9YQ4knn.A
マスク越しに唇がつり上がる――――いつの間にか笑っているのか。
グレイ・フォックスの眼前には、3人。
タケミ――その手に、あの鼠が変化した銃。
先ほど、虹の軌道を撃って逸らした。今まで足手まといかと思っていたが、なかなかどうして興味深い。
ソルティ――無手を、握りしめる。
先ほど胸に貰った一撃はかなりの威力。装甲が砕けた。
こちらの命を削る打撃――立ち直るのに時間を有した。
先だっての鋭さを感じられないという評価は改めておく必要があるな、と認識する。
ミー――片手にあの棒状、もう片手に籠手。
あの籠手は、自分が使ったレーザーガンや、依然戦ったあの少年のように光線でも撃ち出すのだろうか。
猫のサイボーグには縁がある。発電所で消えそうな意識の中、遭遇した覚えがあった。
その剣の技術は素晴らしいものだと思う。そして、その根性も。
ここで死ぬ気などない。しかし、或いはグレイ・フォックスはここで潰えるやもしれん。
そうだろうが、最後まで自分の意志で、その拳を振り下ろすだけだ。
「……………………」
互いに言葉を交える三人に、無言で剣を構えた。言葉を交わす必要などない。
どちらかが死に、どちらかが生き残る――それだけだ。
そこに奇跡などは存在せず、あるのは己の精神と肉体のみ。
いいだろう。
「武美、君の戦闘能力では相手にならない……だから、後衛で妨害に徹するべきだ。
ミー、君は中距離。場合に応じて接近と射撃を切り替えてくれ。それと奴の斬撃への対処を頼む。
そしてソルティ、君の拳の効果は大きい。一撃でも入れてくればバランスは大きく傾く。
だから、二人の作った隙を利用し、奴に一撃を叩き込んでくれ。
ただしスピードや経験などが大きく違う。攻撃の時以外近づかない、攻撃したらいかんなく距離をとることを心がけるんだ」
「うん」「ああ」「はい!」――皆の応答。
了解=戦意高揚な兵士。
これで倒す。倒さねば――何としても。
ウフコックの内心=苦渋の司令官。
サイボーグが地を蹴った。
武美=ウフコックがゴングを鳴らす。それに合わせてソルティとミーが左右に散る。
ミーがバスターを発射した。その場から木へと跳び上がるフォックス。
待ち構えてたようにソルティが自慢の健脚で距離を詰めると、木を叩き折る。再度跳躍。
そこへ飛来する銃弾。空中では他に手段は無い――切り払う。ここぞとばかりミーがバスターを撃つ。
どうしようもなく、直撃――――否。仰け反って回避。
予想外の動きに、落下点で拳を握って待ち構えていたソルティが硬直する。
マズイ――――グレイ・フォックス以外の誰もが思った。
ミーがバスターを撃つ/武美がウフコックの引き金を引く/ソルティがその場から飛び下がる。
しかし、それらの動き全てを裏切るグレイ・フォックス――――空中で反転。俗に言う月面宙返り。
光弾が空を切り、弾丸が目標を失い、離した間合いが意味を無くす。
勢いを乗せ、着地点を修正したフォックスの右足が、ソルティの体に跡を刻む。
ごふりと、ソルティは口の中を液体が覆うような感触を受けた。
「ソルティ――――――――――ッ!」
ミーが切りかかった。武美が弾丸を放つ――どちらも難なく払いのけられた。
飛ばされても掴みかかる。連射をする――大した攻撃にはならず。時間を稼げるかも危うい。
「だ、大丈夫です」
ソルティが起きて、グレイ・フォックスから距離をとる――鈍い。明らかな影響。
問題だ――動きの弱ったソルティの対応が鈍る=決定力の低下。
それ以上に、彼女が完全に標的にされてしまうこと=生存率の低下。
やはり、はたしてサイボーグがゾルティへと駈け出す。
武美=ウフコックが銃口を向け、発砲する――全弾回避。
ミーが走りながらバスターを撃つ――アクロバティックに全てを無効化。
何たる存在だ――まるで映画やアニメーションの登場人物=でたらめな回避方法。
ウフコックは驚愕した。
ダメージを受けていくとより強くなる――まるでコンピューターゲームのキャラクター。
ウフコックは後悔した。
やはり、あの時点で逃げておくべきだった。
ウフコックは嘆――嘆きは決してしない。
それよりも、一発でも多く、一瞬でも早く弾丸を――
「うく……」
しかし、それも叶わなくなった。武美の腕に限界が訪れた。
そもそも碌に拳銃が扱えなかった武美がここまで保ったことも十分驚異的なのだ。
扱われなければ――せめて持って支えてもらわなければ戦えないウフコック。
武美がグリップの握りの組み合わせを逆にしようとする。
だが――それよりも先にあのサイボーグがソルティに迫るだろう。
頼みの綱は、ソルティを助けられるのはミーだけだった。
ミーは走った。
走りながら光弾を放つ、放つ、放つ!――しかし、どれも全て当たらない。
クソッ!――毒づく暇もなく、撃つ、撃つ、撃つ!――全く手ごたえを感じない。
本当に、まるで忍者だ――発射、発射、発射!――当の一発たりとも命中せず。
それでもバスターへの回避動作を行っているのなら、ソルティに攻撃は及びはしない。
ミーはバスターを撃ちながら、駆けた。
突然、その弾幕があらぬ方向へとそれた。
「え?」
膝が突然力を失い、踏鞴を踏んで木の根に転んでしまったのだ。
不覚――通常なら犯さないミス。
弱っていたから?――言い訳はしたくない。
唯一つ、このミスはソルティの命に関わること。
締め付けられるような思いで、バスターを向け――――ない。
倒れた時の衝撃でどこかへ外れてしまったようだ。
クソ――何たる失態だ。自分自身を罵倒する。
そんな暇があったらさっさと動け!――自分自身を罵倒した自分を罵倒する。
何か――そうだ、チャフ・グレネード。
間に合うのか? ソルティも巻き込んではしないか?――沸き上がる疑問。
でも、そんなことはどうでもよい。無視をする。押し殺す。
爆音が響いた。
ソルティは走っていた。
痛む体を動かし、何とか眼前の敵と間合いを離す。
スピードが違うが、武美やウフコック、ミーが牽制してくれるおかげで何とか距離を保てていた。
しかし、途中で武美の銃撃が止んだ。何かあったのだろうか?
その手からウフコックを落としそうになっていた。
攻撃を受けたわけじゃないんだ――嘆息した。しかし、そうもしてられない状況。
武美を補うようにミーが弾幕を張るが、そのどれもが直撃しない。
段々と、彼我の差が埋まってくる。
そして、ついにミーの援護射撃までが消えた。
ミーを見る。転んだだけで、無事のようだ――――ミーの体が消えた。
違う。あの男が大きくなった――近づいて来たのだ。
このまま、自分は切られて――死ぬのだろうか。
そのあと武美は、ミーは?
エックスは?
ロイさんは? ローズさんは?
いやだ。そんなのは嫌だ。
拳を握り、強く否定の思いを刻む。そんなつもりはないんだと、あきらめる気などはないんだと。
諦めてなどやるものか。死んでなどやるものか。
死んで誰かを悲しませるのも、死んで誰かに会えなくなるのも、死ぬのもいやだ!
拳を繰り出す。跳躍、背後に逃げられる。
まだだ。それはさっき見ている――回し蹴りを放つ。手ごたえはない。
目の端で、虹色の何かが煌いた。
場違いだが、きれいだな、と思った。
爆音が響いた。
爆音の中、誰もがハッキリとその声を聞いた。
「待て」
爆音と聞き紛うエンジン音。ライドチェイサー。
ビームの刃が木々のハイウェイを作り上げる。
その男、本郷猛。
その場にいる誰も――グレイ・フォックスも――が動きを止めた。
右腕は真っ赤に染まり、胸からは火花が迸る、満身創痍の男。
誰がどう見ても戦闘不能、常識ならば死んでいてもおかしくは無いほどの傷。
だが確かに、本郷猛はそこにいた。
シリウスが唸りを上げる。さらに速度が上がる。
吹き飛びそうな風の中、本郷の腹にベルトが発現した。
破損したエネルギーを補うための行動は、奇しくも彼の最初の変身と同じだった。
紅いマフラー。銀のブーツ。白いグローブ。緑のマスク。
仮面ライダー、変身完了!
「トウッ!」
跳び上がると、シリウスの勢いを乗せたキックでグレイ・フォックスを弾き飛ばした。
木々を巻き込み弾け飛ぶフォックス。皆の中心に降り立つ本郷=不死身の男。
「本郷さん!」
武美、ソルティ、ミーの歓声。
「すまない……待たせたな」
悠然と、雄々しく、力強く仁王立つ仮面ライダー。負傷の触りも見せない。
「そんな……死んだはずでは……」
聞けば、誰もが怨嗟と判断するグレイ・フォックスの言葉。
「おまえを苦しみから解き放つと言った……それに」
だが、本郷猛はその真意を理解していた。
「仮面ライダーは不死身だ。悪などに、決して負けはしない!」
「そうだ……いいぞ仮面ライダー」
「みんな…………少し離れていてくれ」
武美たちと本郷は距離を置いた。
グレイ・フォックスと仮面ライダー……二人のモンスターの戦闘に巻き込まないために。
仮面ライダー、グレイ・フォックスが同時に跳躍。空中で拳を交わす。
お互いの五指が、手首が、肘が、肩が軋みをたてた。
反動で真逆の方向へと跳ね返った。
「ぐう…………」
「どうした仮面ライダー……」
胸から血が噴き出る。貫き手で負った傷だ。膝が笑った。かろうじてとどまる。
「俺を失望させる気か?」
違う、とばかり雄々しく一歩を踏み出した。
「そうだ…………それでいい!」
フォックスが飛んだ。宙返りをする。先ほど、ソルティに喰らわせた技だ。
見上げて、拳を作った。グレイ・フォックスが蹴り込んで来る。
避けないで、殴り上げる。
「うぐオオ……」
本郷の胸が足の形に陥没した。対するフォックスにダメージは無い。
競り負けた――パンチ対キックだとしても、完全に本郷が負けたのだ。
「どうした仮面ライダー……これはおまえの技だろう!」
それでも、辛うじて膝だけは着かなかった。
だとしても、それも直ぐに終わるだろう。今の本郷猛――仮面ライダーは立っているのもやっとという状況で、到底迎え撃つ力など確認出来ない。
事実、フォックスの右拳に本郷猛は空を見上げることになった。
苦痛の呻きをもらす仮面ライダーを瞼に収めながら、グレイ・フォックスは言い放つ。
「この程度なのか……貴様の力は!」
「仮面ライダーが……俺が、この程度で悪には屈したりはない…………!」
その息だ――もっと俺を楽しませてくれ。
フォックスが喉を鳴らす。
そこで、影が割り込んだ。
「ボクが相手だ!」
小さな影、猫のサイボーグ、ミーだった。
赤いモノアイがミーを睨んだ。
「何のつもりだ……」
「オマエの相手はボクがするってことだよ」
きらりと、武器を向ける。
「よせ……ミー」
「本郷さん!」
本郷が制して、立ち上がった。
「この男の相手は、俺がする。だから……」
「ダメだ! いくら本郷さんでもその言葉は聞けないね!」
「ミー……」
仮面ライダーの複眼がミーを見据えた。
しかし、ミーも負けじと視線をやった。一歩も引かない。引くつもりもない――確固たる信念。
「ボクは、本郷さんと一緒に戦うと言った! 本郷さんはそれを認めた!」
「……………………」
「一人で戦って、そんな怪我をして……そんなのを、武美さんも、ソルティも、ウフコックも……ボクも黙って見てはいられない!」
「…………………………ミー」
「だから、ボクは本郷さんと一緒に戦う! 絶対に!」
本郷がマフラーを翻した。
「すまない、ミー」
「本郷さん……」
「ああ、一緒に戦おう」
フォックスの目の前に、『一人』の――されど『二人』の戦士が佇んでいた。
「いくぞ、ミー」
「ああ、いつでもいいよ!」
赤いマフラー、青銀のグローブ。マスクもやや青みを帯びている。
胸部のプロテクターはより機械らしいアーマーに変化し、その中央にあった破損も塞がっている。
代わりにその部分には仮面――いや、機械仕掛けの猫の顔があった。
ミーの悪魔チップによる組み換え。
制限からか大して姿は変わらなかったものの、充分すぎる合体である。
「トウッ!」
本郷とミー――即ち仮面ライダーの拳がフォックスの胸部を打つ。
続けて、左、右、左と連打を加える。
そして、浮き上がったフォックスの頭を左の回し蹴りが捉えた。
ここまで、コンマ0.1――0.01秒の早業だ。
「そうだ……俺を、俺を解放してくれ!」
背後の大木へと背中をしたたかに打ちつけたが、ゆらりと立ち上がるフォックス。
負けず劣らず不死身の男――耐久力だけならトップクラス。
本郷が、ミーが、一直線にかける。繰り出す右。それに合わせて繰り出される右。
「ぐ…………ッ」
「が…………ッ」
もう攻撃を合わせてきた――そのセンスに二人は感心する。
それだけではいけない。お互いに交互に付きを繰り出す。双方の胸部が軋んだ。
「う…………」
「大丈夫か?」
殴り合いの衝撃で、双方の体が数メートル後退していた。
当然だが、その分受けた衝撃も大きい。
「この程度……なんともないよ!」
そうか、と本郷も応じ、再び目の前のサイボーグへと向かっていった。
フォックスの攻撃を逸らし、掌底を繰り出す。顔に命中し、マスクが割れた。
しかし怯まずその腕をとってきた。何とかひざ蹴りを喰らわせ、緩んだ手を払い上げると、エルボーをブチ入れる。
曲がった。今度は鳩尾にアッパー。一撃、二撃、揺らいだ体を蹴り飛ばした。
「それが素顔か……」
見開かれた瞳。鋭く突き上げるそれは、どこか狐の瞳を連想させる。
「もう、死んだ男の顔だ………………今の俺は死を求めてさまよう亡霊だ」
すでに割れた、割れかけたマスクが中央へと戻り、再びフォックスの顔を覆った。
鬼火が如き真っ赤なモノアイの点灯。
再度立ち上がった死の亡霊。
「さあ、決着をつけよう、仮面ライダー!」
その言葉を引き金に、二人は空を駆けた。
勢い良く天高く舞い上がると、対象的に円を描いて宙を回る。
月面宙返り。二度目の/三度目の月面キックだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
それがどちらの叫びか分からない。どちらも、全員とも叫んでいた。
拮抗する破壊力――こんな状況でも、まだ終わらない全力。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
やがて、フォックスの装甲が軋み始めてきた。
ここまで闘い続けた、蓄積してきたツケが回ってきたのだ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ミシミシと、装甲が音を立てた。
それでもフォックスは負けずに足を突き出す。
戦士として戦って死ぬ。それには、力を抜くことなど許されない。
自分のためにも、相手のためにも。
はたして――グレイ・フォックスの強化骨格は破壊された。
地に落ちたグレイ・フォックス。空を見上げる。青い空だ。
自分を砕いた男が、男達がそこにいた。
再び、男達が蒼穹に吸い込まれていく。
自分を、この身を砕き解放してくれる。
漸く終わるのだ。この苦しみに、終焉が訪れるのだ。
「ライダ――――ダブルキィィィ――――ック!」
――感謝するぞ、仮面ライダー。
――そして、今度こそさらばだ……スネーク。
◆ ◇ ◆
「結局、何がしたかったのかな……この人は」
本郷の胸部から、眼下の死体を見て呟いた。
ミーからしてみれば、全く読めない人間だ。
自分たちを殺そうとしたかと思えば、殺されようとし。
殺されようとしているのに、その手を休めようとはしない。
周りにかつて一度もいたことがない人間だ。
矛盾しているようで、一貫している。
狂人のようで、悟りきった聖人のようだった。
「さあな……ただ」
「ただ…………?」
「彼はこれで本当に眠ることができるだろう……ようやくな」
「………………………………」
それが救いなのかどうかは、ミーには判断できなかった。
既に死んでいると言って、生き続けた男。
或いは、誰かに生かされ続けたのだろうか。
もしかして本当は死んでいた彼を、シグマが無理やり連れてきたのかもしれない。
何でも願いを叶える――死者をも蘇らせる力によって。
「ただ本郷さん……ボクにもこれだけは言えるよ」
「……なんだ?」
「シグマだけは、絶対に許しちゃいけないって」
「そうだな…………その怒りを決して失ってはいけない」
それから簡易に、死亡したサイボーグの体とクレーターに土を被せた。
襲われはしたし、許せないこともある。
それでも、死んでしまった彼に向ける怒りはない。
ないと言ったら嘘になるが、その矛先は全ての理不尽の大本――シグマへと向けることにした。
(名前も分からないけど……アンタの敵、オレたちがとってやるよ)
心の中で、誓った。
「ところでミー」
「何? 本郷さん」
「この合体をとかないか?」
「なんで?」
「この格好だと、締まらないんでな」
戦闘の影響で離れてしまった武美たちと合流すべく、二人は歩を進めていた。
ブツブツと――ちょっぴりションボリとしながら歩くミーを見て、本郷は思う。
この身の持つ限り、彼を守り、共に戦っていきたいと。
(しかし、どこまで持ってくれるかな……俺の体は)
胸部が破壊され、自己再生能力が芳しくない。
エナジーコンバーターも破損し、変身が自在にとはいかなくなっている。
そして何より、その身を蝕む毒。
ドクターケイト。
茂から話は聞いていた。毒を扱うデルザーの魔人だと。
その杖が――咄嗟に出しやすい位置にあったのだろうか――ミーの体から取り出された時、一瞬驚愕した。
そして、その致命的な隙に杖は破壊され、その毒があの刀に染み込んだ。
ミーを助けることはできたが、自分が代わりに切り裂かれ、毒を受けてしまった。
その毒をミーまで及ばせないために、あんな言い方で合体を解除したのだ。
このまま、弱った体でどこまで持つだろうか。
いいや、持たせて見せる。
セインのためにも、茂のためにも、フランシーヌのためにも、ミーのためにも、武美のためにも、ソルティのためにも――
――いや、この場にいる善良な力もの無き者全てのためにも。
(シグマ、キサマだけは決して許さん。この命――仮面ライダーの名にかけても!)
&color(red){【グレイ・フォックス@メタルギアソリッド 戦死】}
&color(red){【残り18人】}
【F-8 森林東部/一日目・午後】
【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労大、ダメージ大、全身に軽度の火傷、胸部から内部機械が露出、右腕に切創、ドクターケイトの毒、ベルトの一部が破損。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、トマト×97@THEビッグオー、ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
謎の金属片(外装解除。解析は一割程度)、PDA(グレイ・フォックス、ドロシー、草薙素子、ドラ・ザ・キッド)×4。
水消耗。ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、白いカラス(全体に焦げ跡あり)@人造人間キカイダー
ブルースシールド@ロックマン、ジローのギター@人造人間キカイダー、
虹(ドクターケイトの毒が染み込んだ)@クロノトリガー
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催。風見と合流。
1:ソルティの願いを聞き、東へ行きエックスを止める。説得の応じないなら、倒す
2:フランシーヌをハカイダーから助ける。決闘に応じる?
3:殺し合いに乗っていない者の保護、及び合流。
4:武美の寿命タイマーをどうにかする。
5:コロンビーヌにフランシーヌ人形のことを伝える。
6:パンタローネを倒した者を見つけ出し、この手で倒す。
7:シグマに関する情報を集めたい。爆発物の解析。
8:敬介の真意を確認。場合によっては倒す。
[備考]
※原作8巻(第32話 称号)から参戦。
※コロンビーヌの格好を旧式のものと勘違いしています。
※ミーと情報交換をしました。
ただし、彼をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
クロが己と同様の理由でサイボーグとなった事は知りません。
※この会場には、異世界の者達も呼ばれたのではないかと推測しています。
※シグマは参加者達に使われている技術・参加者達の構造そのものに興味があるのではと思っています。
※武美とは、一エリア以内なら通信が取れます。
※ベルト左側エナジーコンバーターが破損し、備蓄エネルギーが失われました。
※ドクターケイトの毒にかかったことを自覚しています。
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:後頭部に足跡、疲労大、シグマへの怒り
[装備]:アームパーツ@ロックマンX
[道具]:PDA(ミー)、青雲剣@封神演義
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:エックスにクロを殺し、武美たちを傷つけたけじめをつけさせる。
2:武美、ソルティを守る。
3:シグマ打倒の為、仲間を集める。
4:風見と合流。敬介は警戒。
5:本郷に対し、少々の罪悪感。
[備考]
※悪魔のチップの制限は精密動作性の低下。他者への使用には遠慮気味になる、です。
※合体による肉体の主導権は、基本的に相手の側にあります。
※アームパーツには『緋色の手』に効果はありません。特殊武器チップのみ。
※ドクターケイトの杖@仮面ライダーSPIRITS(ID未登録)は切断され、E-8に放置されています。
「本郷さん……」
「すごい……」
やっぱり生きていた、不死身のヒーローに。
自分の――皆の絶望の闇を切り裂き、光をもたらしてくれる存在に。
二人は祈るような気持ちで、上空で行われた最後の決戦を見ていた。
そして、決着。
勝利したのはもちろん、本郷たちだ。
本郷達は再び飛び上がり、キックを放って行った。
おそらく、これであのサイボーグは死んだだろう。
しかし、二人は喜びながら、何処となく浮かない顔をしていた。
武美は敵を討たれるちょうどその瞬間を目にできなかったからだろうか、それとも……。
ソルティには、やはり襲いかかってきたサイボーグといえども、その死を割り切ることはできないのだろうか……。
二人の感情を読み取ったウフコックが、何も云わずに“変身”を解除した。
「それにしても……」
「なんですか、武美さん?」
「かよわい女の子二人をこんな所においていくなんてね~」
「武美……自分でそう言える人間はあまりか弱いとは言えない」
「それに、私だってかよわくないです!」
そうして二人と一匹は歩きだした。
【F-8 森林西部/一日目・午後】
【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:腹部にダメージ中、疲労中、深い悲しみ。決意。
[装備]:ミラクルショット@クロノトリガー マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン 紫の仮面@現実 K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発 PDA×2(ソルティ、神 敬介) LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す
1:エックスを止める。
2:武美を守る。
3:ロイさんやローズさんの元に帰りたい
[備考]
※参戦時期はアニメ10話~11話です。
※戦い自体への迷いは消えましたが、相手を躊躇なく殺せるまでには至っていません。
※神敬介が死んでしまっていると考えています。
【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康、頭部に微ダメージ。煤で汚れている。軽い火傷。なれない銃を扱ったことで腕に痺れ。
[装備]:ウフコック@マルドゥックシリーズ
[道具]:PDA(武美、クロ)×2、ランダムアイテム0~1
アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS(弾切れ、発電所内にクロの右手と共に放置)、
ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(クロの死体のなんでも斬れる剣があった場所に収納)、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:本郷たちの行く末を見届ける。
2:クロと素子の仇がとられる様子を見る。
3:シグマの居場所を探る。シャトルの行き先を変更できるように干渉する。
4:軍事基地に行く機会があったら行ってみる。
5:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。
[備考]
※A-1・軍事基地に『何か』があると考えています。
※本郷とは、一エリア以内なら通信が取れます。
※ウフコックは、ターンした物を切り離すこと(反転変身【ターンオーバー】)が出来なくなっています。
※ウフコックの参戦時期は、ボイルド死亡後です。
※『ライドル@仮面ライダーSPIRITS』『トランスメタルドライバー@ビーストウォーズ』がF-5エリアに落ちています。
【支給品紹介】
チャフ・グレネード@メタルギアソリッド
電子妨害手榴弾。監視カメラや無線などの電子機器を一定時間、混乱させる。
原作ではこれらのほか、メタルギアREXやサイボーグ忍者を麻痺させる妨害兵器。
爆発によるダメージはないが、手元で爆発させるとダメージを受けるので注意。
*時系列順で読む
Back:[[約束――俺の有用性]] Next:[[仮面のはがれた殺人機械]]
*投下順で読む
Back:[[約束――俺の有用性]] Next:[[仮面のはがれた殺人機械]]
|130:[[約束――俺の有用性]]|本郷猛| |
|130:[[約束――俺の有用性]]|ミー| |
|130:[[約束――俺の有用性]]|広川武美| |
|130:[[約束――俺の有用性]]|ソルティ・レヴァント| |
|130:[[約束――俺の有用性]]|ウフコック・ペンティーノ| |
|130:[[約束――俺の有用性]]|グレイ・フォックス|&color(red){GAME OVER}|
**約束――俺の有用性(後編) ◆V9YQ4knn.A
マスク越しに唇がつり上がる――――いつの間にか笑っているのか。
グレイ・フォックスの眼前には、3人。
タケミ――その手に、あの鼠が変化した銃。
先ほど、虹の軌道を撃って逸らした。今まで足手まといかと思っていたが、なかなかどうして興味深い。
ソルティ――無手を、握りしめる。
先ほど胸に貰った一撃はかなりの威力。装甲が砕けた。
こちらの命を削る打撃――立ち直るのに時間を有した。
先だっての鋭さを感じられないという評価は改めておく必要があるな、と認識する。
ミー――片手にあの棒状、もう片手に籠手。
あの籠手は、自分が使ったレーザーガンや、依然戦ったあの少年のように光線でも撃ち出すのだろうか。
猫のサイボーグには縁がある。発電所で消えそうな意識の中、遭遇した覚えがあった。
その剣の技術は素晴らしいものだと思う。そして、その根性も。
ここで死ぬ気などない。しかし、或いはグレイ・フォックスはここで潰えるやもしれん。
そうだろうが、最後まで自分の意志で、その拳を振り下ろすだけだ。
「……………………」
互いに言葉を交える三人に、無言で剣を構えた。言葉を交わす必要などない。
どちらかが死に、どちらかが生き残る――それだけだ。
そこに奇跡などは存在せず、あるのは己の精神と肉体のみ。
いいだろう。
「武美、君の戦闘能力では相手にならない……だから、後衛で妨害に徹するべきだ。
ミー、君は中距離。場合に応じて接近と射撃を切り替えてくれ。それと奴の斬撃への対処を頼む。
そしてソルティ、君の拳の効果は大きい。一撃でも入れてくればバランスは大きく傾く。
だから、二人の作った隙を利用し、奴に一撃を叩き込んでくれ。
ただしスピードや経験などが大きく違う。攻撃の時以外近づかない、攻撃したらいかんなく距離をとることを心がけるんだ」
「うん」「ああ」「はい!」――皆の応答。
了解=戦意高揚な兵士。
これで倒す。倒さねば――何としても。
ウフコックの内心=苦渋の司令官。
サイボーグが地を蹴った。
武美=ウフコックがゴングを鳴らす。それに合わせてソルティとミーが左右に散る。
ミーがバスターを発射した。その場から木へと跳び上がるフォックス。
待ち構えてたようにソルティが自慢の健脚で距離を詰めると、木を叩き折る。再度跳躍。
そこへ飛来する銃弾。空中では他に手段は無い――切り払う。ここぞとばかりミーがバスターを撃つ。
どうしようもなく、直撃――――否。仰け反って回避。
予想外の動きに、落下点で拳を握って待ち構えていたソルティが硬直する。
マズイ――――グレイ・フォックス以外の誰もが思った。
ミーがバスターを撃つ/武美がウフコックの引き金を引く/ソルティがその場から飛び下がる。
しかし、それらの動き全てを裏切るグレイ・フォックス――――空中で反転。俗に言う月面宙返り。
光弾が空を切り、弾丸が目標を失い、離した間合いが意味を無くす。
勢いを乗せ、着地点を修正したフォックスの右足が、ソルティの体に跡を刻む。
ごふりと、ソルティは口の中を液体が覆うような感触を受けた。
「ソルティ――――――――――ッ!」
ミーが切りかかった。武美が弾丸を放つ――どちらも難なく払いのけられた。
飛ばされても掴みかかる。連射をする――大した攻撃にはならず。時間を稼げるかも危うい。
「だ、大丈夫です」
ソルティが起きて、グレイ・フォックスから距離をとる――鈍い。明らかな影響。
問題だ――動きの弱ったソルティの対応が鈍る=決定力の低下。
それ以上に、彼女が完全に標的にされてしまうこと=生存率の低下。
やはり、はたしてサイボーグがゾルティへと駈け出す。
武美=ウフコックが銃口を向け、発砲する――全弾回避。
ミーが走りながらバスターを撃つ――アクロバティックに全てを無効化。
何たる存在だ――まるで映画やアニメーションの登場人物=でたらめな回避方法。
ウフコックは驚愕した。
ダメージを受けていくとより強くなる――まるでコンピューターゲームのキャラクター。
ウフコックは後悔した。
やはり、あの時点で逃げておくべきだった。
ウフコックは嘆――嘆きは決してしない。
それよりも、一発でも多く、一瞬でも早く弾丸を――
「うく……」
しかし、それも叶わなくなった。武美の腕に限界が訪れた。
そもそも碌に拳銃が扱えなかった武美がここまで保ったことも十分驚異的なのだ。
扱われなければ――せめて持って支えてもらわなければ戦えないウフコック。
武美がグリップの握りの組み合わせを逆にしようとする。
だが――それよりも先にあのサイボーグがソルティに迫るだろう。
頼みの綱は、ソルティを助けられるのはミーだけだった。
ミーは走った。
走りながら光弾を放つ、放つ、放つ!――しかし、どれも全て当たらない。
クソッ!――毒づく暇もなく、撃つ、撃つ、撃つ!――全く手ごたえを感じない。
本当に、まるで忍者だ――発射、発射、発射!――当の一発たりとも命中せず。
それでもバスターへの回避動作を行っているのなら、ソルティに攻撃は及びはしない。
ミーはバスターを撃ちながら、駆けた。
突然、その弾幕があらぬ方向へとそれた。
「え?」
膝が突然力を失い、踏鞴を踏んで木の根に転んでしまったのだ。
不覚――通常なら犯さないミス。
弱っていたから?――言い訳はしたくない。
唯一つ、このミスはソルティの命に関わること。
締め付けられるような思いで、バスターを向け――――ない。
倒れた時の衝撃でどこかへ外れてしまったようだ。
クソ――何たる失態だ。自分自身を罵倒する。
そんな暇があったらさっさと動け!――自分自身を罵倒した自分を罵倒する。
何か――そうだ、チャフ・グレネード。
間に合うのか? ソルティも巻き込んではしないか?――沸き上がる疑問。
でも、そんなことはどうでもよい。無視をする。押し殺す。
爆音が響いた。
ソルティは走っていた。
痛む体を動かし、何とか眼前の敵と間合いを離す。
スピードが違うが、武美やウフコック、ミーが牽制してくれるおかげで何とか距離を保てていた。
しかし、途中で武美の銃撃が止んだ。何かあったのだろうか?
その手からウフコックを落としそうになっていた。
攻撃を受けたわけじゃないんだ――嘆息した。しかし、そうもしてられない状況。
武美を補うようにミーが弾幕を張るが、そのどれもが直撃しない。
段々と、彼我の差が埋まってくる。
そして、ついにミーの援護射撃までが消えた。
ミーを見る。転んだだけで、無事のようだ――――ミーの体が消えた。
違う。あの男が大きくなった――近づいて来たのだ。
このまま、自分は切られて――死ぬのだろうか。
そのあと武美は、ミーは?
エックスは?
ロイさんは? ローズさんは?
いやだ。そんなのは嫌だ。
拳を握り、強く否定の思いを刻む。そんなつもりはないんだと、あきらめる気などはないんだと。
諦めてなどやるものか。死んでなどやるものか。
死んで誰かを悲しませるのも、死んで誰かに会えなくなるのも、死ぬのもいやだ!
拳を繰り出す。跳躍、背後に逃げられる。
まだだ。それはさっき見ている――回し蹴りを放つ。手ごたえはない。
目の端で、虹色の何かが煌いた。
場違いだが、きれいだな、と思った。
爆音が響いた。
爆音の中、誰もがハッキリとその声を聞いた。
「待て」
爆音と聞き紛うエンジン音。ライドチェイサー。
ビームの刃が木々のハイウェイを作り上げる。
その男、本郷猛。
その場にいる誰も――グレイ・フォックスも――が動きを止めた。
右腕は真っ赤に染まり、胸からは火花が迸る、満身創痍の男。
誰がどう見ても戦闘不能、常識ならば死んでいてもおかしくは無いほどの傷。
だが確かに、本郷猛はそこにいた。
シリウスが唸りを上げる。さらに速度が上がる。
吹き飛びそうな風の中、本郷の腹にベルトが発現した。
破損したエネルギーを補うための行動は、奇しくも彼の最初の変身と同じだった。
紅いマフラー。銀のブーツ。白いグローブ。緑のマスク。
仮面ライダー、変身完了!
「トウッ!」
跳び上がると、シリウスの勢いを乗せたキックでグレイ・フォックスを弾き飛ばした。
木々を巻き込み弾け飛ぶフォックス。皆の中心に降り立つ本郷=不死身の男。
「本郷さん!」
武美、ソルティ、ミーの歓声。
「すまない……待たせたな」
悠然と、雄々しく、力強く仁王立つ仮面ライダー。負傷の触りも見せない。
「そんな……死んだはずでは……」
聞けば、誰もが怨嗟と判断するグレイ・フォックスの言葉。
「おまえを苦しみから解き放つと言った……それに」
だが、本郷猛はその真意を理解していた。
「仮面ライダーは不死身だ。悪などに、決して負けはしない!」
「そうだ……いいぞ仮面ライダー」
「みんな…………少し離れていてくれ」
武美たちと本郷は距離を置いた。
グレイ・フォックスと仮面ライダー……二人のモンスターの戦闘に巻き込まないために。
仮面ライダー、グレイ・フォックスが同時に跳躍。空中で拳を交わす。
お互いの五指が、手首が、肘が、肩が軋みをたてた。
反動で真逆の方向へと跳ね返った。
「ぐう…………」
「どうした仮面ライダー……」
胸から血が噴き出る。貫き手で負った傷だ。膝が笑った。かろうじてとどまる。
「俺を失望させる気か?」
違う、とばかり雄々しく一歩を踏み出した。
「そうだ…………それでいい!」
フォックスが飛んだ。宙返りをする。先ほど、ソルティに喰らわせた技だ。
見上げて、拳を作った。グレイ・フォックスが蹴り込んで来る。
避けないで、殴り上げる。
「うぐオオ……」
本郷の胸が足の形に陥没した。対するフォックスにダメージは無い。
競り負けた――パンチ対キックだとしても、完全に本郷が負けたのだ。
「どうした仮面ライダー……これはおまえの技だろう!」
それでも、辛うじて膝だけは着かなかった。
だとしても、それも直ぐに終わるだろう。今の本郷猛――仮面ライダーは立っているのもやっとという状況で、到底迎え撃つ力など確認出来ない。
事実、フォックスの右拳に本郷猛は空を見上げることになった。
苦痛の呻きをもらす仮面ライダーを瞼に収めながら、グレイ・フォックスは言い放つ。
「この程度なのか……貴様の力は!」
「仮面ライダーが……俺が、この程度で悪には屈したりはない…………!」
その息だ――もっと俺を楽しませてくれ。
フォックスが喉を鳴らす。
そこで、影が割り込んだ。
「ボクが相手だ!」
小さな影、猫のサイボーグ、ミーだった。
赤いモノアイがミーを睨んだ。
「何のつもりだ……」
「オマエの相手はボクがするってことだよ」
きらりと、武器を向ける。
「よせ……ミー」
「本郷さん!」
本郷が制して、立ち上がった。
「この男の相手は、俺がする。だから……」
「ダメだ! いくら本郷さんでもその言葉は聞けないね!」
「ミー……」
仮面ライダーの複眼がミーを見据えた。
しかし、ミーも負けじと視線をやった。一歩も引かない。引くつもりもない――確固たる信念。
「ボクは、本郷さんと一緒に戦うと言った! 本郷さんはそれを認めた!」
「……………………」
「一人で戦って、そんな怪我をして……そんなのを、武美さんも、ソルティも、ウフコックも……ボクも黙って見てはいられない!」
「…………………………ミー」
「だから、ボクは本郷さんと一緒に戦う! 絶対に!」
本郷がマフラーを翻した。
「すまない、ミー」
「本郷さん……」
「ああ、一緒に戦おう」
フォックスの目の前に、『一人』の――されど『二人』の戦士が佇んでいた。
「いくぞ、ミー」
「ああ、いつでもいいよ!」
赤いマフラー、青銀のグローブ。マスクもやや青みを帯びている。
胸部のプロテクターはより機械らしいアーマーに変化し、その中央にあった破損も塞がっている。
代わりにその部分には仮面――いや、機械仕掛けの猫の顔があった。
ミーの悪魔チップによる組み換え。
制限からか大して姿は変わらなかったものの、充分すぎる合体である。
「トウッ!」
本郷とミー――即ち仮面ライダーの拳がフォックスの胸部を打つ。
続けて、左、右、左と連打を加える。
そして、浮き上がったフォックスの頭を左の回し蹴りが捉えた。
ここまで、コンマ0.1――0.01秒の早業だ。
「そうだ……俺を、俺を解放してくれ!」
背後の大木へと背中をしたたかに打ちつけたが、ゆらりと立ち上がるフォックス。
負けず劣らず不死身の男――耐久力だけならトップクラス。
本郷が、ミーが、一直線にかける。繰り出す右。それに合わせて繰り出される右。
「ぐ…………ッ」
「が…………ッ」
もう攻撃を合わせてきた――そのセンスに二人は感心する。
それだけではいけない。お互いに交互に付きを繰り出す。双方の胸部が軋んだ。
「う…………」
「大丈夫か?」
殴り合いの衝撃で、双方の体が数メートル後退していた。
当然だが、その分受けた衝撃も大きい。
「この程度……なんともないよ!」
そうか、と本郷も応じ、再び目の前のサイボーグへと向かっていった。
フォックスの攻撃を逸らし、掌底を繰り出す。顔に命中し、マスクが割れた。
しかし怯まずその腕をとってきた。何とかひざ蹴りを喰らわせ、緩んだ手を払い上げると、エルボーをブチ入れる。
曲がった。今度は鳩尾にアッパー。一撃、二撃、揺らいだ体を蹴り飛ばした。
「それが素顔か……」
見開かれた瞳。鋭く突き上げるそれは、どこか狐の瞳を連想させる。
「もう、死んだ男の顔だ………………今の俺は死を求めてさまよう亡霊だ」
すでに割れた、割れかけたマスクが中央へと戻り、再びフォックスの顔を覆った。
鬼火が如き真っ赤なモノアイの点灯。
再度立ち上がった死の亡霊。
「さあ、決着をつけよう、仮面ライダー!」
その言葉を引き金に、二人は空を駆けた。
勢い良く天高く舞い上がると、対象的に円を描いて宙を回る。
月面宙返り。二度目の/三度目の月面キックだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
それがどちらの叫びか分からない。どちらも、全員とも叫んでいた。
拮抗する破壊力――こんな状況でも、まだ終わらない全力。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
やがて、フォックスの装甲が軋み始めてきた。
ここまで闘い続けた、蓄積してきたツケが回ってきたのだ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ミシミシと、装甲が音を立てた。
それでもフォックスは負けずに足を突き出す。
戦士として戦って死ぬ。それには、力を抜くことなど許されない。
自分のためにも、相手のためにも。
はたして――グレイ・フォックスの強化骨格は破壊された。
地に落ちたグレイ・フォックス。空を見上げる。青い空だ。
自分を砕いた男が、男達がそこにいた。
再び、男達が蒼穹に吸い込まれていく。
自分を、この身を砕き解放してくれる。
漸く終わるのだ。この苦しみに、終焉が訪れるのだ。
「ライダ――――ダブルキィィィ――――ック!」
――感謝するぞ、仮面ライダー。
――そして、今度こそさらばだ……スネーク。
◆ ◇ ◆
「結局、何がしたかったのかな……この人は」
本郷の胸部から、眼下の死体を見て呟いた。
ミーからしてみれば、全く読めない人間だ。
自分たちを殺そうとしたかと思えば、殺されようとし。
殺されようとしているのに、その手を休めようとはしない。
周りにかつて一度もいたことがない人間だ。
矛盾しているようで、一貫している。
狂人のようで、悟りきった聖人のようだった。
「さあな……ただ」
「ただ…………?」
「彼はこれで本当に眠ることができるだろう……ようやくな」
「………………………………」
それが救いなのかどうかは、ミーには判断できなかった。
既に死んでいると言って、生き続けた男。
或いは、誰かに生かされ続けたのだろうか。
もしかして本当は死んでいた彼を、シグマが無理やり連れてきたのかもしれない。
何でも願いを叶える――死者をも蘇らせる力によって。
「ただ本郷さん……ボクにもこれだけは言えるよ」
「……なんだ?」
「シグマだけは、絶対に許しちゃいけないって」
「そうだな…………その怒りを決して失ってはいけない」
それから簡易に、死亡したサイボーグの体とクレーターに土を被せた。
襲われはしたし、許せないこともある。
それでも、死んでしまった彼に向ける怒りはない。
ないと言ったら嘘になるが、その矛先は全ての理不尽の大本――シグマへと向けることにした。
(名前も分からないけど……アンタの敵、オレたちがとってやるよ)
心の中で、誓った。
「ところでミー」
「何? 本郷さん」
「この合体をとかないか?」
「なんで?」
「この格好だと、締まらないんでな」
戦闘の影響で離れてしまった武美たちと合流すべく、二人は歩を進めていた。
ブツブツと――ちょっぴりションボリとしながら歩くミーを見て、本郷は思う。
この身の持つ限り、彼を守り、共に戦っていきたいと。
(しかし、どこまで持ってくれるかな……俺の体は)
胸部が破壊され、自己再生能力が芳しくない。
エナジーコンバーターも破損し、変身が自在にとはいかなくなっている。
そして何より、その身を蝕む毒。
ドクターケイト。
茂から話は聞いていた。毒を扱うデルザーの魔人だと。
その杖が――咄嗟に出しやすい位置にあったのだろうか――ミーの体から取り出された時、一瞬驚愕した。
そして、その致命的な隙に杖は破壊され、その毒があの刀に染み込んだ。
ミーを助けることはできたが、自分が代わりに切り裂かれ、毒を受けてしまった。
その毒をミーまで及ばせないために、あんな言い方で合体を解除したのだ。
このまま、弱った体でどこまで持つだろうか。
いいや、持たせて見せる。
セインのためにも、茂のためにも、フランシーヌのためにも、ミーのためにも、武美のためにも、ソルティのためにも――
――いや、この場にいる善良な力もの無き者全てのためにも。
(シグマ、キサマだけは決して許さん。この命――仮面ライダーの名にかけても!)
&color(red){【グレイ・フォックス@メタルギアソリッド 戦死】}
&color(red){【残り18人】}
【F-8 森林東部/一日目・午後】
【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労大、ダメージ大、全身に軽度の火傷、胸部から内部機械が露出、右腕に切創、ドクターケイトの毒、ベルトの一部が破損。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、トマト×97@THEビッグオー、ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
謎の金属片(外装解除。解析は一割程度)、PDA(グレイ・フォックス、ドロシー、草薙素子、ドラ・ザ・キッド)×4。
水消耗。ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、白いカラス(全体に焦げ跡あり)@人造人間キカイダー
ブルースシールド@ロックマン、ジローのギター@人造人間キカイダー、
虹(ドクターケイトの毒が染み込んだ)@クロノトリガー
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催。風見と合流。
1:ソルティの願いを聞き、東へ行きエックスを止める。説得の応じないなら、倒す
2:フランシーヌをハカイダーから助ける。決闘に応じる?
3:殺し合いに乗っていない者の保護、及び合流。
4:武美の寿命タイマーをどうにかする。
5:コロンビーヌにフランシーヌ人形のことを伝える。
6:パンタローネを倒した者を見つけ出し、この手で倒す。
7:シグマに関する情報を集めたい。爆発物の解析。
8:敬介の真意を確認。場合によっては倒す。
[備考]
※原作8巻(第32話 称号)から参戦。
※コロンビーヌの格好を旧式のものと勘違いしています。
※ミーと情報交換をしました。
ただし、彼をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
クロが己と同様の理由でサイボーグとなった事は知りません。
※この会場には、異世界の者達も呼ばれたのではないかと推測しています。
※シグマは参加者達に使われている技術・参加者達の構造そのものに興味があるのではと思っています。
※武美とは、一エリア以内なら通信が取れます。
※ベルト左側エナジーコンバーターが破損し、備蓄エネルギーが失われました。
※ドクターケイトの毒にかかったことを自覚しています。
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:後頭部に足跡、疲労大、シグマへの怒り
[装備]:アームパーツ@ロックマンX
[道具]:PDA(ミー)、青雲剣@封神演義
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:エックスにクロを殺し、武美たちを傷つけたけじめをつけさせる。
2:武美、ソルティを守る。
3:シグマ打倒の為、仲間を集める。
4:風見と合流。敬介は警戒。
5:本郷に対し、少々の罪悪感。
[備考]
※悪魔のチップの制限は精密動作性の低下。他者への使用には遠慮気味になる、です。
※合体による肉体の主導権は、基本的に相手の側にあります。
※アームパーツには『緋色の手』に効果はありません。特殊武器チップのみ。
※ドクターケイトの杖@仮面ライダーSPIRITS(ID未登録)は切断され、E-8に放置されています。
「本郷さん……」
「すごい……」
やっぱり生きていた、不死身のヒーローに。
自分の――皆の絶望の闇を切り裂き、光をもたらしてくれる存在に。
二人は祈るような気持ちで、上空で行われた最後の決戦を見ていた。
そして、決着。
勝利したのはもちろん、本郷たちだ。
本郷達は再び飛び上がり、キックを放って行った。
おそらく、これであのサイボーグは死んだだろう。
しかし、二人は喜びながら、何処となく浮かない顔をしていた。
武美は敵を討たれるちょうどその瞬間を目にできなかったからだろうか、それとも……。
ソルティには、やはり襲いかかってきたサイボーグといえども、その死を割り切ることはできないのだろうか……。
二人の感情を読み取ったウフコックが、何も云わずに“変身”を解除した。
「それにしても……」
「なんですか、武美さん?」
「かよわい女の子二人をこんな所においていくなんてね~」
「武美……自分でそう言える人間はあまりか弱いとは言えない」
「それに、私だってかよわくないです!」
そうして二人と一匹は歩きだした。
【F-8 森林西部/一日目・午後】
【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:腹部にダメージ中、疲労中、深い悲しみ。決意。
[装備]:ミラクルショット@クロノトリガー マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン 紫の仮面@現実 K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発 PDA×2(ソルティ、神 敬介) LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す
1:エックスを止める。
2:武美を守る。
3:ロイさんやローズさんの元に帰りたい
[備考]
※参戦時期はアニメ10話~11話です。
※戦い自体への迷いは消えましたが、相手を躊躇なく殺せるまでには至っていません。
※神敬介が死んでしまっていると考えています。
【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康、頭部に微ダメージ。煤で汚れている。軽い火傷。なれない銃を扱ったことで腕に痺れ。
[装備]:ウフコック@マルドゥックシリーズ
[道具]:PDA(武美、クロ)×2、ランダムアイテム0~1
アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS(弾切れ、発電所内にクロの右手と共に放置)、
ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(クロの死体のなんでも斬れる剣があった場所に収納)、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:本郷たちの行く末を見届ける。
2:クロと素子の仇がとられる様子を見る。
3:シグマの居場所を探る。シャトルの行き先を変更できるように干渉する。
4:軍事基地に行く機会があったら行ってみる。
5:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。
[備考]
※A-1・軍事基地に『何か』があると考えています。
※本郷とは、一エリア以内なら通信が取れます。
※ウフコックは、ターンした物を切り離すこと(反転変身【ターンオーバー】)が出来なくなっています。
※ウフコックの参戦時期は、ボイルド死亡後です。
※『ライドル@仮面ライダーSPIRITS』『トランスメタルドライバー@ビーストウォーズ』がF-5エリアに落ちています。
【支給品紹介】
チャフ・グレネード@メタルギアソリッド
電子妨害手榴弾。監視カメラや無線などの電子機器を一定時間、混乱させる。
原作ではこれらのほか、メタルギアREXやサイボーグ忍者を麻痺させる妨害兵器。
爆発によるダメージはないが、手元で爆発させるとダメージを受けるので注意。
*時系列順で読む
Back:[[約束――俺の有用性]] Next:[[仮面のはがれた殺人機械]]
*投下順で読む
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|130:[[約束――俺の有用性]]|本郷猛|134:[[彼のいない発電所]]|
|130:[[約束――俺の有用性]]|ミー|134:[[彼のいない発電所]]|
|130:[[約束――俺の有用性]]|広川武美|134:[[彼のいない発電所]]|
|130:[[約束――俺の有用性]]|ソルティ・レヴァント|134:[[彼のいない発電所]]|
|130:[[約束――俺の有用性]]|ウフコック・ペンティーノ|134:[[彼のいない発電所]]|
|130:[[約束――俺の有用性]]|グレイ・フォックス|&color(red){GAME OVER}|
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