「呼びたかった名前」(2009/07/15 (水) 23:22:23) の最新版変更点
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ウイングロードの上でスピードを可変させながら、スバルは左の拳を繰り出す。
ドラスの裏拳で腕の軌道をずらされて舌を打つも、冷静にデバイスの操作に集中する。
ひゅう、と僅かに吐息。ふっ、と軽く吸気。
続いて勢いよく見開かれる双瞳――展開していたウイングロードのさらに先に奔る淡い蒼光。
虚空に新たなる足場を構築していく。
空中の陸路完成を見届けたのと同時に、スバルは加速しながら右ストレートを放つ。
顔を顰めつつもドラスは首を捻って何とか回避、逃れ切れなかった青い毛髪が数本宙を舞う。
「っやぁ――――っ、せぃっ!」
ドラスが認識するよりも早く、スバルからハイキックが放たれる。
元より拳は布石、二撃目の蹴りが本命であったのだ。
首元にもろに衝撃を受けて吹き飛ぶドラス。その進行方向には、先刻作り出されたばかりのウイングロード。
よってドラスは体勢を立て直す前に、加速していたスバルにすぐさま追いつかれてしまう。
「はっ!」
「があッ」
アッパーがかったスバルの拳が鳩尾に突き刺さり、僅かな静止の後にドラスは上方へと飛来する。
短く整えた深青の髪に付着した緑色の血液を不快そうに拭いつつ、ゴシックロリータを纏う少年が上昇していくのを見据えるスバル。
少し前のやり取りで、相手の防護障壁が脆弱なことは既に分かっていた。
だからこそ、両腕に魔力を集中させる。
狙うのは、最も尊敬する恩人が愛用するのと同じ名を持つ『あの魔法』。
幼き日に自分を救ってくれた恩人が見せた、スバルの夢のきっかけともいえる『あの魔法』。
詳細や術式こそ違えど、恩人への憧れから自己流で編み出した――――『あの魔法』。
「一撃必殺ァァアツ! ディバイィィィン――!」
ドラスへと向けた左腕、その前方に魔力の塊が出現。
肥大化するそれ目掛け、スバルが回転音を鳴らすギアを装着した右の拳を叩き付け――
――BANG!
ようとした瞬間に銃声が響き、スバルの動作がピタリと止まる。
蒼い粒子と霧散していく魔力の向こうに、鋭く首を動かしたスバルは見た。
「ボブ……さん……?」
この壊し合いにおいて最も信頼できる仲間であり、現在最も来て欲しくなかった相手の姿を。
高鳴る動悸と伝う冷や汗を自覚しながら、スバルは上昇していたはずのドラスを見やる。
飛行する術を所持しているらしく、空中で留まっている。
その視線がT-800に向いているのに気付き、スバルは意を決する。
ディバインバスターで体力を削ってからのつもりだったが、そんな暇はない。
そう判断したスバルが拳を握り締めると、手首に嵌められたナックルスピナーという名の歯車が回転を開始した。
「――――殺す」
己の覚悟を吐き捨てたスバルの両瞳は、金色に染まっていた。
『先天固有技能』=『inherent skill』――ISと略される機能を行使することで身体に漲る振動エネルギー。
それをデバイス操作で外部放出させることなく、右拳へと集束させる。
手首付近で回転するギアの動力音が増大しているのを実感して、未だ上空でT-800を見ているドラスを刺し抜くようにウイングロードを発現。
一撃必殺ならぬ一撃必壊の意思を胸に、スバルはマッハキャリバーのローラーを駆動させた。
◇ ◇ ◇
スピードを上下させながら機敏な動きで攻撃を放つスバルと、その猛攻を捌いているドラス。
その戦場付近まで辿り着いたミーは、思わず開けてしまった口を直さないままで一言。
「……まいったね」
「あれだけ動かれてしまえば、こちらは近付きようがないな」
スタンドを立てることでハーレーという名のオートバイを停車させ、T-800が冷静に状況を見極める。
靴に装着されたローラーから生み出される甚大な運動エネルギーでもって、スバルは高速で疾走している。
そのために戦場は一箇所に留まらず、一瞬の内に離れたポイントへと移動してしまうのだ。
とは言っても、それだけならば接近することはどうにか可能なのだが、問題は別にある。
――――戦闘が行われている舞台が、空中なのだ。
大気中に出現した蒼色の道を踏み締めて駆けるスバルに対し、飛行能力でも有するかのようにドラスは宙で体勢を崩さない。
T-800が操縦していたハーレーのエンジン音にも気付かずに、戦闘を続けている両者。
思案する機械猫とターミネーターの見つめる中、見舞ったアッパーカットの影響でドラスが浮上――戦局が大きく傾いた。
「飛行は可能か?」
「うん、無理だね」
ていうか飛べるならもうやってるだろ、などとミーが騒いでいるのを無視してT-800は再び尋ねる。
「ならば、あの高度まで跳躍は」
「それなら何とかなるけど、あんなに動かれちゃあ……厳しいな」
「止めればいいのだな。ならば注意を引く」
黒いライダースーツのポケットに収納したハンドガンを取り出すと、T-800はあらぬ方向へ銃口を向ける。
「動きが止まるだろうから跳べ。捕まえられる速度の内に取り押さえろ」
頭上に疑問符を浮かべるミーの前で、引き金に指をかけた。
銃声が響く寸前で、ようやくT-800の策を理解したミー。
先に説明しとけよ、とぼやきながらスバルが向かうであろう地点の真下へと急行して跳躍。
その場所、ドラスの目前――――繰り出された振動拳の射線上。
ドラスは危険人物であると聞いていたが、攻撃を仕掛けていないのでミーは庇うことにした。
一撃くらい受けても何とかなる。
スバルから彼女のISについて聞かされていないミーはそのように考えて、ウイングロードへと足を付けた。
◇ ◇ ◇
「何で、アイツが……?」
金蛟剪の飛行能力を用いて空中で体勢を立て直したドラスは、銃声の主を確認して目を見開いた。
T-800――ゼロから伝え聞いた話では、獅子王凱を殺した男。
そいつが、なぜか全く関係のない場所を射抜いたのである。
打ち抜くことだって可能だったはずなのに、まるで注意を惹き付けるかのように。
はっきり言って、ドラスには状況を理解することができなかった。
「ドォラァァアアアスッ!!」
ゆえに反応が遅れる。
金色の瞳に青い魔方陣。スバルのISについての知識を持つドラスは、迷わず回避を選択する。
対抗手段自体は持っているが、食らえば幾らか隙が生まれる。
束の間とはいえ、殺意に満ちたスバルの前で無防備になるのは危険。命を奪われかねない。
そう憶測したドラスは金蛟剪の飛行能力でもって、自身に向かって伸びるウイングロードから外れた。
「え?」
その後で、スバルの眼前に横合いから飛び出してきた猫型サイボーグに気付いた。
最高速に達したと思われるスバルは、おそらく止まれない。
「ま、ず……まずい――――!」
このままではミーは粉砕され、姉を殺害してしまったスバルに新たな罪を被せることになる。
ドラスにとっては、そのどちらもあってはならない事態。
空中で踵を返してミーを抱えて再び回避――案自体は即座に浮かんだが、とても間に合わない。
攻撃を掻い潜るどころか、スバルの拳がミーに接触するのにすら遅れるのは必至。
一瞬にも満たない思考の末、ドラスは決意を固めた。
歯を噛み締めて、全身に力を篭めるドラス。
少女ほどの肉体は成人男性以上のサイズに。
人間のようだった体躯は、さながら昆虫のように変化。
巨大な瞳は黒ずみ、口にはクラッシャーのようなものが展開。
短い触角を生やし、ボディは血管を思わせる真紅。
怪人態になってしまえば、スバルに全てを説明するのが困難になることは予想済みだった。
それでも、ドラスは身体を変化させる。
己がどう思われてもミーを守りたかったし、スバルに余計な後悔をさせたくなかったから。
「うっおおおおおおあっ!!」
声を張り上げながら、ネオ生命体の姿となったドラスが腕を伸ばす。
宝貝を操るのに使うエネルギーがネオ生命体の力とはまったく別物である以上、金蛟剪による飛行速度は変わらない。
変わったのはリーチの長さだけ。
それだけであるのだが――――何とか、ドラスはミーを守ることができた。
伸ばしきったドラスの左腕。
その掌がスバルの拳を押さえ込み、スバル自身の勢いすらも止めたのだ。
ミーとスバル、そして地上のT-800が、割り込んできたドラスの姿に呆然とする。
三者からの視線を浴び、ドラスは己の姿についてどうにか説明しようと頭脳を回転させる。
咄嗟に適切な言葉を見つけられずに焦りが生まれ――ぐじゃり、という音。
「グがァアあああああ!?」
続いて、裏返った叫び声。
ドラスはかつて一度振動破砕を食らった時のように、身体を構成する金属の硬度を液体同然まで下げた。
そのまま振動を受け流そうとしていたのだが、簡潔にいえば失敗した。
スバルの拳に触れた掌から侵攻するように、螺旋状の亀裂が走っていく。
顔面を苦痛に染め上げながらも、ドラスは左肩口から先を分離させる。金属生命体だからこその荒業。
しかしそれでも微細な振動がコアに到達し、力なく地上へと落下するドラス。
ネオ生命体の姿を保つことも出来ず、少女を模した姿に戻ってしまっていた。
スバルが使った技の名は、振動破砕をさらに応用させたものである。
振動破砕のエネルギーを制御して圧縮。
さらにデバイスによる回転を上乗せして放つ、一撃必壊の拳――振動拳。
振動破砕の威力しか知らないドラスには、受け流すことなどできる道理がなかった。
「ミーくん!? 何で――」
唖然としていたスバルは我に返り、ウイングロードに飛び込んできたミーを問いただそうとしてやめる。
それよりも優先すべきことが他にあるから。
「今は、アイツを!」
仰向けに倒れたドラスへと視線を投げるスバル。
その眼差しは冷酷。
ドラスが怪人態を隠していたという事実が、スバルの殺意をさらに加速させた。
地上のドラスへとウイングロードを展開させ、ミーの静止も聞かずにスバルは駆け出した。
両脚に装着されたマッハキャリバーの四つの車輪がさらなる回転。
金属の軋む音と共に、車輪から飛び散る火花――生み出される運動エネルギー、上昇するスピード。
繰り出される右ストレートには、振動エネルギーとデバイスの旋回が上乗せされる。
すなわち、二度目の振動拳。
「ッああっ、やぁあああああッ!!」
ドラスを貫くように展開されたウイングロードを、一陣の疾風となったスバルが走り抜けた。
◇ ◇ ◇
「どう……して……?」
少しずつ車輪の回転が緩まり、当然ながらスバルの速度も落ちていき――ついには静止する。
わなわなと震わせた身体から漏れた言葉もまた、微かに揺れていた。
そのことに気付いたスバルは唇を噛み締めて、無理矢理に震えを消し去って甲高い声を上げた。
「ボブさん!?」
勢いよく振り向いたスバルの瞳に映ったのは、彼女がこの地で最も心を許していた相手。
そして、そのハーレーに跨るT-800が小脇に抱えている――最も憎い存在であるドラス。
スバルの振動拳が命中する寸前で、ハーレーを駆動させたT-800がドラスを掬い取ったのだ。
黒いライダースーツとサングラスが怪しく月光を照り返す中で、T-800が静かに口を開く。
「落ち着け、スバル・ナカジマ」
「でも!」
「頭冷やしなって言ってるのさ。
そのドラスって子は、スバルちゃんに全然攻撃してなかったでしょ。それどころか僕を守りに来たように見えたけど?」
納得できない様子のスバルがT-800に掴みかかろうとするが、メタルボディを輝かせたミーが間に入る。
スバルが地上目掛けて発進した時点で、ウイングロードから飛び降りていたミー。
着地したと同時に全速力でスバルを止める――という考えは失敗に終わったのだが、結果としてドラスが攻撃を受けなかったことに安堵していた。
「そっ、そいつは平気で嘘を付くんだよ! どうせ何か企んで――」
「ドラスが、俺の救助を推測できたとは思えない。それくらい君も理解可能なはずだ」
言い返す途中で自分の考えを切り捨てられ、スバルは言葉を詰まらせる。
反論のしようがなくなり、瞳が金色から普段通りの濃いブルーへと戻る。
戦闘機人モードでなくなっても未だに自身を貫くスバルの視線には、ドラスはあえて反応しない。
己の罪を認めているからこそ、睨まれるくらいでへこたれるワケにはいかなかった。
ドラスはゆっくりと自身を掴む腕の主へと視線を流すと、コアに負ったダメージのせいで呼吸が乱れたままで尋ねる。
「何、で……? 凱兄ちゃん、を……殺、した……お前、が……」
「その件に関しては、のっぴきならない事情があった。おいおい説明しよう。
こちらも誤解をしていた、君たちがギンガ・ナカジマを盾にしたものとな。それゆえに先ほどは距離を取った。理解できたか?」
「そう……勘違い、か。全、部……
悪かっ、た……のは、結局……僕、一人だ……ったの、か…………」
T-800の言葉は、実際のところ事実ではない。立場を危うくしないための虚構だ。
だがドラスは気付かなかった。否、気付けなかったというのが正しいか。
自らの目的のために、他者を不幸にする嘘を吐く。
かつて平然と行った行為であるが、ドラスはそんな行動に出る者がいるとは思えなかった。
本当に欲しかったものを知る前の自分を、誰より嫌悪するからこそ。
自分の罪に対して、誰より許せないと思っているからこそ。
己以外にそんな悪行を行う相手がいるなどと、無意識のうちに考えようとしなかった。
◇ ◇ ◇
コアへのダメージは回復できないものの、ドラスは数分かけて呼気を整える。
T-800に下ろされ、ミーが回収した切り落とした左腕を取り込む。
かつて腕を喰らわれた光景が蘇り、スバルの表情が憎悪に染まる。
自身の罪を再認識しながら、ドラスは左腕を再構成。
「落ち着いたのなら、説明してもらいたい。
実際の君が、なぜスバル・ナカジマから伝え聞いた話と異なっているのか」
こくりと頷いて、ドラスは切り出した。
まず当初の目的と、タチコマやスバルに接触した理由――かつて明かした全てを肯定する。
そして、タンクローリーを操縦した三体と同行した際の思惑。
無意識のうちに、スバルが拳に篭める力が強くなる。
赤い液体が滲み出ているのに気付いたミーが、話の腰を折らないように忍び足で彼女に歩み寄った。
「気持ちは分かるけど、今は話を聞こう。ね?」
四体でシャトル発着場へと到着したところまで説明を終え、急にドラスが黙する。
だんまりを決め込もうとしているのではなく、数時間前の約束を守るために。
一息付いてから、再びドラスは口を開く。
自分が欲していたものを知ることになる事件についてを詳細に打ち明けて、体内からあるPDAを取り出す。
数回ボタンを操作してから手渡されたPDAを見て、スバルは絶句した。
映し出されていたのは、ノーヴェという少女からの遺言。
高鳴る動悸を沈めようと説明を中断するドラスを急き立てる者は、この場にはいなかった。
そこから先については、もう止まらなかった。
小さな姉に連れて行かれた先で出会った戦士たち。
その地を襲撃してきながら、『育てる』などと言ってのけた蓮の化身。
黒ずくめの男とのキャッチボール、問い掛け。
暴れていた青い女性を止めるための戦い――起こってしまったすれ違い。
第五の仮面戦士との再会と誓い。
白い鎧を着込んだ青鬼の強襲、その結果。
理解し得ない破壊者の行動に、全てを洗い流すかのような銀の自動人形の歌。
何もかもを話し終え、ドラスは呆然としているスバルに視線を合わせる。
そして勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい。許されることじゃないのは分かってるけど、言わせて欲しいんだ……
こんな僕の言うことなんて信用できないと思う。でも、それでも……本当にごめんなさい!」
ノーヴェの残したテキストを目にしてからは、スバルはドラスの様子を食い入るように見ていた。
家族や戦士たちとの触れ合いについて話していた時、ドラスの表情はとても暖かかった。
彼らとの別れについて説明する際、涙こそ零れていなかったが瞳は赤く染まっていた。
(ああ、そうだったのか……)
スバルの脳内に、金色の勇者の姿がフラッシュバックする。
彼は本当のことを言っていたのに信じられずに、自分は何度も殴り付けてしまっていたのだ。
今になって、スバルはその事実に気付いた。
「恨まれるだけのことをしたと思う。だから……許せなかったら僕を殺して」
「ちょっ、ドラス君!?」
ドラスが纏うゴシックロリータを通して、激しい光が放たれた。
身体を構成する金属を操作して、ネオ生命体の中枢であるコアを露にしたのである。
意を決したかのような表情のドラスに、ミーが裏返った静止の声を上げながら飛び掛る。
しかしドラスに触れることなく、ミーは丸太じみたT-800の腕に掴まれた。
「何してんだ、お前ェェーーーッ!」
「彼らの決着は、彼ら自身に任せるべきだ」
声を荒げるミーに対して、T-800が冷静に告げる。
――が、これもまた嘘。
スカイネットからの命令に従うべき彼からすれば、ドラスの戦闘力は邪魔でしかない。
先刻ドラスを救助したのは、あのまま殺させてしまえば己の立場が危うかったためだ。
ただでさえ、ドラスはスバルに攻撃を加えていなかった。
そんなドラスを助けられる位置にいたというのに手を出さなかった、などとミーから他の参加者に漏れてしまえば一巻の終わりだった。
ゆえに助けたのだが、今回は別である。
ドラスが自ら殺されても構わないと言っているのだ。
スバルが殺すところを見ていても、何ら問題はない。
「アンタ、バッカじゃねーか!? 確かにいろいろあったのは分かるけどな!
今はどっちもいいヤツだし、誤解も解けたとこじゃねーか! 殺すのも殺されるのも止めるんだよッ! いいヤツが死んでいいワケがないだろ!」
両腕を掴まれていてはウィル・ナイフを取り出すことができず、ミーは足を激しく動かす。
ミーの決して弱くはない蹴りを何度も胸に受けても、T-800は掴む力を緩めない。
真意など知る由もないドラスは、T-800に頭を下げてスバルに向き直る。
「さっきの攻撃をここに受ければ、僕は死ぬから。気にしないで……悪かったのは全部僕なんだ……」
「…………もういいんだよ」
「え?」
予想していなかった返答に呆けた声をあげたドラスの視界が、急に暗くなった。
自身が抱き締められていることに気付いたのは、包み込む温もりが伝わってからだった。
「何で……?」
「もういいよ、ドラス君。もういい……分かったから。
私が諦めたことを……ノーヴェたちがやってくれたんだって。全部噛み合わなかっただけだって……」
スバルの顔を見ることはできなかったが、服の隙間に水滴が入り込むのをドラスは感じ取っていた。
しかし、ドラスはあえてそれには触れなかった。
瞳から涙が溢れそうになるのをこらえて、今までスバルを前にして告げることができなかった呼び名を口にした。
「スバル……お姉ちゃん、ごめん……なさい。スバルお姉ちゃん……
そして、本当に……本当にありがとう、スバルお姉、ちゃん……スバルお姉ちゃん…………!」
何度も、何度も、弟は姉の名前を呼んだ。
何度も、何度も、姉は弟の呼びかけに頷いた。
◇ ◇ ◇
――――抱き合うスバルとドラスの横で、ひそやかに問答が繰り広げられていた。
「……なあアンタ、もしかしてこれ予想してたの?」
(事実を言ってしまえば、ミーが俺に対して抱いていた怒りはそのまま残るだろう。
しかし肯定しておけば、ある程度は緩和されるだろうと推測される。ならば……)
「ああ」
「マジすか」
「ああ」
「何かもう……その、早とちりしちゃってすんません」
「気にするな」
ちなみに、この会話は抱き合っている姉弟の耳には入っていない――――
◇ ◇ ◇
「じゃあ先に行くね、お姉ちゃん」
「うん、私たちも遅れるけど向かうよ」
所持する大量のPDAの一つから転送したテントローに跨り、ドラスがスバルに一時の別れを告げる。
テントローの後部座席には、ミーがしがみ付いている。
せっかく誤解が解けたというのにすぐに離れるのには、きちんと理由がある。
スバルが落ち着いてから、ミーが別の戦場へと向かった本郷たちについてを話したのだ。
その戦場というのが、ドラスがゼロとフランシーヌ人形を置いてきた地点。
一刻も早く向かおうという結論になったのだが、彼らが所持する移動手段には性能に差がありすぎた。
テントローという名のモンスターマシン、それには適わないがかなりの速度が出るマッハキャリバー、性能はいいが小型なライドチェイサー、どうしても前三つにはスペック負けしてしまうハーレー。
四人全員が乗れるタンクローリーもあったのだが、性能ではテントローやライドチェイサーに劣る。
暫し思案した後に、スバルが提案した。
ドラスとミーがテントローを駆り、T-800とスバルはハーレーで向かう――と。
戦闘能力が最も高いドラスの最速到着。
残った移動手段のうち、T-800とスバルが二人で乗れるのはハーレーだけ。
マッハキャリバーを駆動させればスバル単独でT-800よりも先に到着可能だが、二人ならともかく一人で行動するのは危険。
上記三つの理由が至極理に適っていたので、否定意見が出ることなく採用となった。
「よし……手を離さないでね?」
「はいよー」
短くミーに確認して、ドラスがアクセルを捻った。
「……ッ、速!?」
ミーが驚愕の声を漏らした時には、既に雪原地帯は突破済み。
足場はアスファルトとなっていた。
落ちたら傷つきそうだなーと考えてから、ミーは下を見てしまったことを後悔するのだった。
【D-3 路上/二日目 黎明】
【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:右腕がスバルのもの、自分が求めていたものが『家族』と自覚、ナタク@封神演義を吸収、疲労小、コアにダメージ
セインを四、五歳幼くした状態に擬態(ただし生えている)、テントローを運転中
[装備]:ラトゥーニのゴスロリ服@スーパーロボット大戦OG、メカ沢の学ラン@魁クロマティ高校、オルゴール付き懐中時計@仮面ライダーZO
混天綾@封神演義(マントとして)、乾坤圏@封神演義(左腕の方は修理が必要)、カセットアーム@仮面ライダーSPIRITS(体内)
金蛟剪@封神演義(体内のナタクと付属)、テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:PDA(ドラス、マルチ、ノーヴェ、ロボ、アラレ、シュトロハイム、城茂、エックス、あ~る、バロット、チンク、メカ沢、灰原、ロックマン)
荷電磁ナイフ@マルドゥックスクランブル(D-3基地に放置。呼び出し可)
スタームルガー レッドホーク、装弾数0/6@ターミネーター2(D-3基地に放置。呼び出し可)
ぎんのいし@クロノトリガー、液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 (D-3基地に放置) タイムストッパー@ロックマン2(メカ沢の胴体部):ロボのPDA
はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置) 拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。
転送可能 スモールライト@ドラえもん(残り四回):城茂のPDA
クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校 、グロスフスMG42(予備弾数20%)、 NIKU・Q・マックス@サイボーグクロちゃん、
ナイスなグローブ×2@パワポケシリーズ、ダンボール@メタルギアソリッド、
大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険、アトロポスのリボン@クロノトリガー、高性能探知機(バッテリー切れ)
[思考・状況]
基本思考:二度と家族を失わない。
1:D-3のシャトル基地へと向かう。
2:仲間の死にショック……だが、泣かない。
3:家族と殺しあうハカイダーを認めない。
4:放送がないのに疑問。
[備考]
※自分が未完成品、仮面ライダーが完成品だと勘違いしています。
※チンクを姉として強く慕っています。
※無意識の内に罪悪感が芽生えつつあります。
※志郎の言った10人ライダーの中に仮面ライダーZOがいると思い込んでいます。
※他人の肉体を吸収すると取り出せなくなっています。
※金蛟剪@封神演義に『使用者の資格がある』と認められましたが、龍を発現させるまでには至っていません。
※赤ドラスに変身可能になりました。
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康、仲間を失った悲しみとやるせなさ、シグマへの怒り、爆弾解除、テントローの後部座席に座っている
[装備]:アームパーツ@ロックマンX、ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(何でも切れる剣のあった場所に収納)
[道具]:PDA(ミー)、青雲剣@封神演義、ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催。
1:D-3のシャトル基地へと向かう。
2:武美、ソルティを守る。
3:シグマ打倒の為、仲間を集める。
4:本郷に対し、少々の罪悪感。
5:T-800に対して疑心。
6:放送がないのに疑問。
[備考]
※悪魔のチップの制限は精密動作性の低下、他者への使用には遠慮気味になる、支給品と合体するとやや疲労する、です。
※合体による肉体の主導権は、基本的に相手の側にあります。
※ドクターケイトの杖@仮面ライダーSPIRITS(ID未登録)は切断され、E-8に放置されています。
※バトル・ロワイアルにおけるドラスの動向を、細かく聞きました。
◇ ◇ ◇
「スバル・ナカジマ、なぜ来ない。本郷らの許に向かうのではないのか?」
ハーレーのエンジンを温めたものの、なかなか後部座席に衝撃が加わらないのでT-800が腰掛けたまま首を後ろに回す。
そのカメラアイが映し出したのは、バリアジャケットを解除したスバルの姿だった。
T-800には装備を剥ぐ真意が見出せず問おうとするが、その前に歩み寄ってきたスバルからPDAを手渡される。
「これは?」
「ドラス君に渡してください……私が彼にできるのは、この程度だから」
首を傾げるT-800に意図せず口元を緩めてから、スバルはハッとする。
適わないなと小声で呟いてから、T-800から距離を取って簡潔に一言だけ。
「ボブさん、今までありがとうございました…………ごめんなさい」
言い終える頃にはスバルの瞳は金色に変わっており、そしてこめかみに押し当てた左拳が青い魔方陣を纏う。
――ぶちゃり。
樹から落ちた熟れた果実のような音を立てて、彼女自身のISによりスバルは粉砕された。
苦しむこともなく一瞬の内に、肉も骨も皮も毛も脳も全てがミックス。
奇しくも最後の言葉は、彼女が敵だと思い込んでいた少年にかけられた言葉によく似ていた。
スバル・ナカジマは強い少女だったが、それはあくまで戦闘という観点で見たらの話にすぎなかった。
いきなり呼び出されて壊し合えと命じられる。そんな異常事態は、歳相応の彼女の精神を磨耗させた。
信じた少年に裏切られ逃亡し、いきなり二者に襲い掛かられて暴走。そしてその後、錯乱。
数時間かけて頭を冷やしたが、それはただ己の中に作り出した強大な敵に全ての罪を押し付けたに過ぎなかった。
――――しかしその強大な敵は、もはや敵ではなかった。
知ってしまったゆえに、これまでの罪がスバルに圧し掛かった。
こんな時に頼るべき人間は、スバルの周りにはもう誰もいなかった。
尊敬する恩人も、共に夢を目指した親友も、同じ部隊の同志たちもいない。
距離を縮めようとしていたはずのナンバーズは拒絶し、大切な姉は……――――
自らが、今の状況を作ったのだ。
罪を背負ったまま生きるほどの意思を固める要素もなく、彼女は終わりを選んだ。
ドラスがいる前で行わなかったのは、ショックを与えたくなかったから。
本当はT-800にも見せたくはなかったが、本郷たちと合流してしまえば一人になれる状況はないと判断して踏み切ったのだ。
彼女にはデッドエンド以外の選択肢を与えてくれる人物がいなかった。
いたにはいたが、自らその手を払いのけた。あるいは距離を置いた。
ただ、それだけの話。
【D-3 雪原/二日目 黎明】
【T-800@ターミネーター2】
[状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出、シグマウィルス感染。爆発物解除。
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)
[道具]:HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS、
PDA(凱、村雨、T-800、スバル)、打神鞭@封神演義、グランドリオン@クロノトリガー、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん
生活用リゼンブルパーツ(左腕)@SoltyRei、コルトS.A.Aの弾丸(12/30発)
ラブラブビッグバンの音楽ファイル@パワポケシリーズ、サブタンク(満タン)@ロックマンX
滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS、ナックルの弾薬(25/30発)@仮面ライダーSPIRITS
テキオー灯@ザ・ドラえもんズ、ライディング・ボード@リリカルなのはStrikerS、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考・状況]
基本思考:スカイネットの使命通り、全ての者を破壊する。
1:どうするか。
2:スバル、本郷らを利用して人間及び、人間側のサイボーグとロボットを始末する。
3:時間を稼ぐ。必要ならゼロチームの消耗を待つ。
4:発見した音楽ファイルに秘められたメッセージを本郷と共に解読。
5:用が済めば、スバル達を破壊する(しかし、ノイズが発生。それを心地よく思っている?)。
6:放送がないのに疑問
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。
※バトル・ロワイアルにおけるドラスの動向を、細かく聞きました。
◇ ◇ ◇
「――ふふっ」
不意に、ドラスの顔がほころぶ。
零れた声が届いたらしく、後部座席のミーもうっすらと笑みを浮かべた。
ドラスは嬉しかった。
罪が許されたのがではなく、スバルを再び姉と呼ぶことができたことが。
ハンドルを掴むドラスの心は、幸せで満たされていた。
&color(red){【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS:死亡確認】}
&color(red){【残り9体】}
※D-3雪原上に、首から上は粉微塵の状態で横たわっています。
右腕は今のところリゼンブルに換装されていますが、T-800に再転送される可能性があります。
*時系列順で読む
Back:[[血塗れの指先1]] Next:|[[NEXT LEVEL]]|
*投下順で読む
Back:[[血塗れの指先1]] Next:|[[NEXT LEVEL]]|
|148:[[閉幕と始まり1]]|スバル・ナカジマ|&color(red){GAME OVER}|
|148:[[閉幕と始まり1]]|T-800| |
|148:[[閉幕と始まり1]]|ドラス|152:[[そして終焉【フィナーレ】へ……]]|
|148:[[閉幕と始まり1]]|ミー|152:[[そして終焉【フィナーレ】へ……]]|
**呼びたかった名前 ◆hqLsjDR84w
ウイングロードの上でスピードを可変させながら、スバルは左の拳を繰り出す。
ドラスの裏拳で腕の軌道をずらされて舌を打つも、冷静にデバイスの操作に集中する。
ひゅう、と僅かに吐息。ふっ、と軽く吸気。
続いて勢いよく見開かれる双瞳――展開していたウイングロードのさらに先に奔る淡い蒼光。
虚空に新たなる足場を構築していく。
空中の陸路完成を見届けたのと同時に、スバルは加速しながら右ストレートを放つ。
顔を顰めつつもドラスは首を捻って何とか回避、逃れ切れなかった青い毛髪が数本宙を舞う。
「っやぁ――――っ、せぃっ!」
ドラスが認識するよりも早く、スバルからハイキックが放たれる。
元より拳は布石、二撃目の蹴りが本命であったのだ。
首元にもろに衝撃を受けて吹き飛ぶドラス。その進行方向には、先刻作り出されたばかりのウイングロード。
よってドラスは体勢を立て直す前に、加速していたスバルにすぐさま追いつかれてしまう。
「はっ!」
「があッ」
アッパーがかったスバルの拳が鳩尾に突き刺さり、僅かな静止の後にドラスは上方へと飛来する。
短く整えた深青の髪に付着した緑色の血液を不快そうに拭いつつ、ゴシックロリータを纏う少年が上昇していくのを見据えるスバル。
少し前のやり取りで、相手の防護障壁が脆弱なことは既に分かっていた。
だからこそ、両腕に魔力を集中させる。
狙うのは、最も尊敬する恩人が愛用するのと同じ名を持つ『あの魔法』。
幼き日に自分を救ってくれた恩人が見せた、スバルの夢のきっかけともいえる『あの魔法』。
詳細や術式こそ違えど、恩人への憧れから自己流で編み出した――――『あの魔法』。
「一撃必殺ァァアツ! ディバイィィィン――!」
ドラスへと向けた左腕、その前方に魔力の塊が出現。
肥大化するそれ目掛け、スバルが回転音を鳴らすギアを装着した右の拳を叩き付け――
――BANG!
ようとした瞬間に銃声が響き、スバルの動作がピタリと止まる。
蒼い粒子と霧散していく魔力の向こうに、鋭く首を動かしたスバルは見た。
「ボブ……さん……?」
この壊し合いにおいて最も信頼できる仲間であり、現在最も来て欲しくなかった相手の姿を。
高鳴る動悸と伝う冷や汗を自覚しながら、スバルは上昇していたはずのドラスを見やる。
飛行する術を所持しているらしく、空中で留まっている。
その視線がT-800に向いているのに気付き、スバルは意を決する。
ディバインバスターで体力を削ってからのつもりだったが、そんな暇はない。
そう判断したスバルが拳を握り締めると、手首に嵌められたナックルスピナーという名の歯車が回転を開始した。
「――――殺す」
己の覚悟を吐き捨てたスバルの両瞳は、金色に染まっていた。
『先天固有技能』=『inherent skill』――ISと略される機能を行使することで身体に漲る振動エネルギー。
それをデバイス操作で外部放出させることなく、右拳へと集束させる。
手首付近で回転するギアの動力音が増大しているのを実感して、未だ上空でT-800を見ているドラスを刺し抜くようにウイングロードを発現。
一撃必殺ならぬ一撃必壊の意思を胸に、スバルはマッハキャリバーのローラーを駆動させた。
◇ ◇ ◇
スピードを上下させながら機敏な動きで攻撃を放つスバルと、その猛攻を捌いているドラス。
その戦場付近まで辿り着いたミーは、思わず開けてしまった口を直さないままで一言。
「……まいったね」
「あれだけ動かれてしまえば、こちらは近付きようがないな」
スタンドを立てることでハーレーという名のオートバイを停車させ、T-800が冷静に状況を見極める。
靴に装着されたローラーから生み出される甚大な運動エネルギーでもって、スバルは高速で疾走している。
そのために戦場は一箇所に留まらず、一瞬の内に離れたポイントへと移動してしまうのだ。
とは言っても、それだけならば接近することはどうにか可能なのだが、問題は別にある。
――――戦闘が行われている舞台が、空中なのだ。
大気中に出現した蒼色の道を踏み締めて駆けるスバルに対し、飛行能力でも有するかのようにドラスは宙で体勢を崩さない。
T-800が操縦していたハーレーのエンジン音にも気付かずに、戦闘を続けている両者。
思案する機械猫とターミネーターの見つめる中、見舞ったアッパーカットの影響でドラスが浮上――戦局が大きく傾いた。
「飛行は可能か?」
「うん、無理だね」
ていうか飛べるならもうやってるだろ、などとミーが騒いでいるのを無視してT-800は再び尋ねる。
「ならば、あの高度まで跳躍は」
「それなら何とかなるけど、あんなに動かれちゃあ……厳しいな」
「止めればいいのだな。ならば注意を引く」
黒いライダースーツのポケットに収納したハンドガンを取り出すと、T-800はあらぬ方向へ銃口を向ける。
「動きが止まるだろうから跳べ。捕まえられる速度の内に取り押さえろ」
頭上に疑問符を浮かべるミーの前で、引き金に指をかけた。
銃声が響く寸前で、ようやくT-800の策を理解したミー。
先に説明しとけよ、とぼやきながらスバルが向かうであろう地点の真下へと急行して跳躍。
その場所、ドラスの目前――――繰り出された振動拳の射線上。
ドラスは危険人物であると聞いていたが、攻撃を仕掛けていないのでミーは庇うことにした。
一撃くらい受けても何とかなる。
スバルから彼女のISについて聞かされていないミーはそのように考えて、ウイングロードへと足を付けた。
◇ ◇ ◇
「何で、アイツが……?」
金蛟剪の飛行能力を用いて空中で体勢を立て直したドラスは、銃声の主を確認して目を見開いた。
T-800――ゼロから伝え聞いた話では、獅子王凱を殺した男。
そいつが、なぜか全く関係のない場所を射抜いたのである。
打ち抜くことだって可能だったはずなのに、まるで注意を惹き付けるかのように。
はっきり言って、ドラスには状況を理解することができなかった。
「ドォラァァアアアスッ!!」
ゆえに反応が遅れる。
金色の瞳に青い魔方陣。スバルのISについての知識を持つドラスは、迷わず回避を選択する。
対抗手段自体は持っているが、食らえば幾らか隙が生まれる。
束の間とはいえ、殺意に満ちたスバルの前で無防備になるのは危険。命を奪われかねない。
そう憶測したドラスは金蛟剪の飛行能力でもって、自身に向かって伸びるウイングロードから外れた。
「え?」
その後で、スバルの眼前に横合いから飛び出してきた猫型サイボーグに気付いた。
最高速に達したと思われるスバルは、おそらく止まれない。
「ま、ず……まずい――――!」
このままではミーは粉砕され、姉を殺害してしまったスバルに新たな罪を被せることになる。
ドラスにとっては、そのどちらもあってはならない事態。
空中で踵を返してミーを抱えて再び回避――案自体は即座に浮かんだが、とても間に合わない。
攻撃を掻い潜るどころか、スバルの拳がミーに接触するのにすら遅れるのは必至。
一瞬にも満たない思考の末、ドラスは決意を固めた。
歯を噛み締めて、全身に力を篭めるドラス。
少女ほどの肉体は成人男性以上のサイズに。
人間のようだった体躯は、さながら昆虫のように変化。
巨大な瞳は黒ずみ、口にはクラッシャーのようなものが展開。
短い触角を生やし、ボディは血管を思わせる真紅。
怪人態になってしまえば、スバルに全てを説明するのが困難になることは予想済みだった。
それでも、ドラスは身体を変化させる。
己がどう思われてもミーを守りたかったし、スバルに余計な後悔をさせたくなかったから。
「うっおおおおおおあっ!!」
声を張り上げながら、ネオ生命体の姿となったドラスが腕を伸ばす。
宝貝を操るのに使うエネルギーがネオ生命体の力とはまったく別物である以上、金蛟剪による飛行速度は変わらない。
変わったのはリーチの長さだけ。
それだけであるのだが――――何とか、ドラスはミーを守ることができた。
伸ばしきったドラスの左腕。
その掌がスバルの拳を押さえ込み、スバル自身の勢いすらも止めたのだ。
ミーとスバル、そして地上のT-800が、割り込んできたドラスの姿に呆然とする。
三者からの視線を浴び、ドラスは己の姿についてどうにか説明しようと頭脳を回転させる。
咄嗟に適切な言葉を見つけられずに焦りが生まれ――ぐじゃり、という音。
「グがァアあああああ!?」
続いて、裏返った叫び声。
ドラスはかつて一度振動破砕を食らった時のように、身体を構成する金属の硬度を液体同然まで下げた。
そのまま振動を受け流そうとしていたのだが、簡潔にいえば失敗した。
スバルの拳に触れた掌から侵攻するように、螺旋状の亀裂が走っていく。
顔面を苦痛に染め上げながらも、ドラスは左肩口から先を分離させる。金属生命体だからこその荒業。
しかしそれでも微細な振動がコアに到達し、力なく地上へと落下するドラス。
ネオ生命体の姿を保つことも出来ず、少女を模した姿に戻ってしまっていた。
スバルが使った技の名は、振動破砕をさらに応用させたものである。
振動破砕のエネルギーを制御して圧縮。
さらにデバイスによる回転を上乗せして放つ、一撃必壊の拳――振動拳。
振動破砕の威力しか知らないドラスには、受け流すことなどできる道理がなかった。
「ミーくん!? 何で――」
唖然としていたスバルは我に返り、ウイングロードに飛び込んできたミーを問いただそうとしてやめる。
それよりも優先すべきことが他にあるから。
「今は、アイツを!」
仰向けに倒れたドラスへと視線を投げるスバル。
その眼差しは冷酷。
ドラスが怪人態を隠していたという事実が、スバルの殺意をさらに加速させた。
地上のドラスへとウイングロードを展開させ、ミーの静止も聞かずにスバルは駆け出した。
両脚に装着されたマッハキャリバーの四つの車輪がさらなる回転。
金属の軋む音と共に、車輪から飛び散る火花――生み出される運動エネルギー、上昇するスピード。
繰り出される右ストレートには、振動エネルギーとデバイスの旋回が上乗せされる。
すなわち、二度目の振動拳。
「ッああっ、やぁあああああッ!!」
ドラスを貫くように展開されたウイングロードを、一陣の疾風となったスバルが走り抜けた。
◇ ◇ ◇
「どう……して……?」
少しずつ車輪の回転が緩まり、当然ながらスバルの速度も落ちていき――ついには静止する。
わなわなと震わせた身体から漏れた言葉もまた、微かに揺れていた。
そのことに気付いたスバルは唇を噛み締めて、無理矢理に震えを消し去って甲高い声を上げた。
「ボブさん!?」
勢いよく振り向いたスバルの瞳に映ったのは、彼女がこの地で最も心を許していた相手。
そして、そのハーレーに跨るT-800が小脇に抱えている――最も憎い存在であるドラス。
スバルの振動拳が命中する寸前で、ハーレーを駆動させたT-800がドラスを掬い取ったのだ。
黒いライダースーツとサングラスが怪しく月光を照り返す中で、T-800が静かに口を開く。
「落ち着け、スバル・ナカジマ」
「でも!」
「頭冷やしなって言ってるのさ。
そのドラスって子は、スバルちゃんに全然攻撃してなかったでしょ。それどころか僕を守りに来たように見えたけど?」
納得できない様子のスバルがT-800に掴みかかろうとするが、メタルボディを輝かせたミーが間に入る。
スバルが地上目掛けて発進した時点で、ウイングロードから飛び降りていたミー。
着地したと同時に全速力でスバルを止める――という考えは失敗に終わったのだが、結果としてドラスが攻撃を受けなかったことに安堵していた。
「そっ、そいつは平気で嘘を付くんだよ! どうせ何か企んで――」
「ドラスが、俺の救助を推測できたとは思えない。それくらい君も理解可能なはずだ」
言い返す途中で自分の考えを切り捨てられ、スバルは言葉を詰まらせる。
反論のしようがなくなり、瞳が金色から普段通りの濃いブルーへと戻る。
戦闘機人モードでなくなっても未だに自身を貫くスバルの視線には、ドラスはあえて反応しない。
己の罪を認めているからこそ、睨まれるくらいでへこたれるワケにはいかなかった。
ドラスはゆっくりと自身を掴む腕の主へと視線を流すと、コアに負ったダメージのせいで呼吸が乱れたままで尋ねる。
「何、で……? 凱兄ちゃん、を……殺、した……お前、が……」
「その件に関しては、のっぴきならない事情があった。おいおい説明しよう。
こちらも誤解をしていた、君たちがギンガ・ナカジマを盾にしたものとな。それゆえに先ほどは距離を取った。理解できたか?」
「そう……勘違い、か。全、部……
悪かっ、た……のは、結局……僕、一人だ……ったの、か…………」
T-800の言葉は、実際のところ事実ではない。立場を危うくしないための虚構だ。
だがドラスは気付かなかった。否、気付けなかったというのが正しいか。
自らの目的のために、他者を不幸にする嘘を吐く。
かつて平然と行った行為であるが、ドラスはそんな行動に出る者がいるとは思えなかった。
本当に欲しかったものを知る前の自分を、誰より嫌悪するからこそ。
自分の罪に対して、誰より許せないと思っているからこそ。
己以外にそんな悪行を行う相手がいるなどと、無意識のうちに考えようとしなかった。
◇ ◇ ◇
コアへのダメージは回復できないものの、ドラスは数分かけて呼気を整える。
T-800に下ろされ、ミーが回収した切り落とした左腕を取り込む。
かつて腕を喰らわれた光景が蘇り、スバルの表情が憎悪に染まる。
自身の罪を再認識しながら、ドラスは左腕を再構成。
「落ち着いたのなら、説明してもらいたい。
実際の君が、なぜスバル・ナカジマから伝え聞いた話と異なっているのか」
こくりと頷いて、ドラスは切り出した。
まず当初の目的と、タチコマやスバルに接触した理由――かつて明かした全てを肯定する。
そして、タンクローリーを操縦した三体と同行した際の思惑。
無意識のうちに、スバルが拳に篭める力が強くなる。
赤い液体が滲み出ているのに気付いたミーが、話の腰を折らないように忍び足で彼女に歩み寄った。
「気持ちは分かるけど、今は話を聞こう。ね?」
四体でシャトル発着場へと到着したところまで説明を終え、急にドラスが黙する。
だんまりを決め込もうとしているのではなく、数時間前の約束を守るために。
一息付いてから、再びドラスは口を開く。
自分が欲していたものを知ることになる事件についてを詳細に打ち明けて、体内からあるPDAを取り出す。
数回ボタンを操作してから手渡されたPDAを見て、スバルは絶句した。
映し出されていたのは、ノーヴェという少女からの遺言。
高鳴る動悸を沈めようと説明を中断するドラスを急き立てる者は、この場にはいなかった。
そこから先については、もう止まらなかった。
小さな姉に連れて行かれた先で出会った戦士たち。
その地を襲撃してきながら、『育てる』などと言ってのけた蓮の化身。
黒ずくめの男とのキャッチボール、問い掛け。
暴れていた青い女性を止めるための戦い――起こってしまったすれ違い。
第五の仮面戦士との再会と誓い。
白い鎧を着込んだ青鬼の強襲、その結果。
理解し得ない破壊者の行動に、全てを洗い流すかのような銀の自動人形の歌。
何もかもを話し終え、ドラスは呆然としているスバルに視線を合わせる。
そして勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい。許されることじゃないのは分かってるけど、言わせて欲しいんだ……
こんな僕の言うことなんて信用できないと思う。でも、それでも……本当にごめんなさい!」
ノーヴェの残したテキストを目にしてからは、スバルはドラスの様子を食い入るように見ていた。
家族や戦士たちとの触れ合いについて話していた時、ドラスの表情はとても暖かかった。
彼らとの別れについて説明する際、涙こそ零れていなかったが瞳は赤く染まっていた。
(ああ、そうだったのか……)
スバルの脳内に、金色の勇者の姿がフラッシュバックする。
彼は本当のことを言っていたのに信じられずに、自分は何度も殴り付けてしまっていたのだ。
今になって、スバルはその事実に気付いた。
「恨まれるだけのことをしたと思う。だから……許せなかったら僕を殺して」
「ちょっ、ドラス君!?」
ドラスが纏うゴシックロリータを通して、激しい光が放たれた。
身体を構成する金属を操作して、ネオ生命体の中枢であるコアを露にしたのである。
意を決したかのような表情のドラスに、ミーが裏返った静止の声を上げながら飛び掛る。
しかしドラスに触れることなく、ミーは丸太じみたT-800の腕に掴まれた。
「何してんだ、お前ェェーーーッ!」
「彼らの決着は、彼ら自身に任せるべきだ」
声を荒げるミーに対して、T-800が冷静に告げる。
――が、これもまた嘘。
スカイネットからの命令に従うべき彼からすれば、ドラスの戦闘力は邪魔でしかない。
先刻ドラスを救助したのは、あのまま殺させてしまえば己の立場が危うかったためだ。
ただでさえ、ドラスはスバルに攻撃を加えていなかった。
そんなドラスを助けられる位置にいたというのに手を出さなかった、などとミーから他の参加者に漏れてしまえば一巻の終わりだった。
ゆえに助けたのだが、今回は別である。
ドラスが自ら殺されても構わないと言っているのだ。
スバルが殺すところを見ていても、何ら問題はない。
「アンタ、バッカじゃねーか!? 確かにいろいろあったのは分かるけどな!
今はどっちもいいヤツだし、誤解も解けたとこじゃねーか! 殺すのも殺されるのも止めるんだよッ! いいヤツが死んでいいワケがないだろ!」
両腕を掴まれていてはウィル・ナイフを取り出すことができず、ミーは足を激しく動かす。
ミーの決して弱くはない蹴りを何度も胸に受けても、T-800は掴む力を緩めない。
真意など知る由もないドラスは、T-800に頭を下げてスバルに向き直る。
「さっきの攻撃をここに受ければ、僕は死ぬから。気にしないで……悪かったのは全部僕なんだ……」
「…………もういいんだよ」
「え?」
予想していなかった返答に呆けた声をあげたドラスの視界が、急に暗くなった。
自身が抱き締められていることに気付いたのは、包み込む温もりが伝わってからだった。
「何で……?」
「もういいよ、ドラス君。もういい……分かったから。
私が諦めたことを……ノーヴェたちがやってくれたんだって。全部噛み合わなかっただけだって……」
スバルの顔を見ることはできなかったが、服の隙間に水滴が入り込むのをドラスは感じ取っていた。
しかし、ドラスはあえてそれには触れなかった。
瞳から涙が溢れそうになるのをこらえて、今までスバルを前にして告げることができなかった呼び名を口にした。
「スバル……お姉ちゃん、ごめん……なさい。スバルお姉ちゃん……
そして、本当に……本当にありがとう、スバルお姉、ちゃん……スバルお姉ちゃん…………!」
何度も、何度も、弟は姉の名前を呼んだ。
何度も、何度も、姉は弟の呼びかけに頷いた。
◇ ◇ ◇
――――抱き合うスバルとドラスの横で、ひそやかに問答が繰り広げられていた。
「……なあアンタ、もしかしてこれ予想してたの?」
(事実を言ってしまえば、ミーが俺に対して抱いていた怒りはそのまま残るだろう。
しかし肯定しておけば、ある程度は緩和されるだろうと推測される。ならば……)
「ああ」
「マジすか」
「ああ」
「何かもう……その、早とちりしちゃってすんません」
「気にするな」
ちなみに、この会話は抱き合っている姉弟の耳には入っていない――――
◇ ◇ ◇
「じゃあ先に行くね、お姉ちゃん」
「うん、私たちも遅れるけど向かうよ」
所持する大量のPDAの一つから転送したテントローに跨り、ドラスがスバルに一時の別れを告げる。
テントローの後部座席には、ミーがしがみ付いている。
せっかく誤解が解けたというのにすぐに離れるのには、きちんと理由がある。
スバルが落ち着いてから、ミーが別の戦場へと向かった本郷たちについてを話したのだ。
その戦場というのが、ドラスがゼロとフランシーヌ人形を置いてきた地点。
一刻も早く向かおうという結論になったのだが、彼らが所持する移動手段には性能に差がありすぎた。
テントローという名のモンスターマシン、それには適わないがかなりの速度が出るマッハキャリバー、性能はいいが小型なライドチェイサー、どうしても前三つにはスペック負けしてしまうハーレー。
四人全員が乗れるタンクローリーもあったのだが、性能ではテントローやライドチェイサーに劣る。
暫し思案した後に、スバルが提案した。
ドラスとミーがテントローを駆り、T-800とスバルはハーレーで向かう――と。
戦闘能力が最も高いドラスの最速到着。
残った移動手段のうち、T-800とスバルが二人で乗れるのはハーレーだけ。
マッハキャリバーを駆動させればスバル単独でT-800よりも先に到着可能だが、二人ならともかく一人で行動するのは危険。
上記三つの理由が至極理に適っていたので、否定意見が出ることなく採用となった。
「よし……手を離さないでね?」
「はいよー」
短くミーに確認して、ドラスがアクセルを捻った。
「……ッ、速!?」
ミーが驚愕の声を漏らした時には、既に雪原地帯は突破済み。
足場はアスファルトとなっていた。
落ちたら傷つきそうだなーと考えてから、ミーは下を見てしまったことを後悔するのだった。
【D-3 路上/二日目 黎明】
【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:右腕がスバルのもの、自分が求めていたものが『家族』と自覚、ナタク@封神演義を吸収、疲労小、コアにダメージ
セインを四、五歳幼くした状態に擬態(ただし生えている)、テントローを運転中
[装備]:ラトゥーニのゴスロリ服@スーパーロボット大戦OG、メカ沢の学ラン@魁クロマティ高校、オルゴール付き懐中時計@仮面ライダーZO
混天綾@封神演義(マントとして)、乾坤圏@封神演義(左腕の方は修理が必要)、カセットアーム@仮面ライダーSPIRITS(体内)
金蛟剪@封神演義(体内のナタクと付属)、テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:PDA(ドラス、マルチ、ノーヴェ、ロボ、アラレ、シュトロハイム、城茂、エックス、あ~る、バロット、チンク、メカ沢、灰原、ロックマン)
荷電磁ナイフ@マルドゥックスクランブル(D-3基地に放置。呼び出し可)
スタームルガー レッドホーク、装弾数0/6@ターミネーター2(D-3基地に放置。呼び出し可)
ぎんのいし@クロノトリガー、液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 (D-3基地に放置) タイムストッパー@ロックマン2(メカ沢の胴体部):ロボのPDA
はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置) 拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。
転送可能 スモールライト@ドラえもん(残り四回):城茂のPDA
クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校 、グロスフスMG42(予備弾数20%)、 NIKU・Q・マックス@サイボーグクロちゃん、
ナイスなグローブ×2@パワポケシリーズ、ダンボール@メタルギアソリッド、
大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険、アトロポスのリボン@クロノトリガー、高性能探知機(バッテリー切れ)
[思考・状況]
基本思考:二度と家族を失わない。
1:D-3のシャトル基地へと向かう。
2:仲間の死にショック……だが、泣かない。
3:家族と殺しあうハカイダーを認めない。
4:放送がないのに疑問。
[備考]
※自分が未完成品、仮面ライダーが完成品だと勘違いしています。
※チンクを姉として強く慕っています。
※無意識の内に罪悪感が芽生えつつあります。
※志郎の言った10人ライダーの中に仮面ライダーZOがいると思い込んでいます。
※他人の肉体を吸収すると取り出せなくなっています。
※金蛟剪@封神演義に『使用者の資格がある』と認められましたが、龍を発現させるまでには至っていません。
※赤ドラスに変身可能になりました。
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康、仲間を失った悲しみとやるせなさ、シグマへの怒り、爆弾解除、テントローの後部座席に座っている
[装備]:アームパーツ@ロックマンX、ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(何でも切れる剣のあった場所に収納)
[道具]:PDA(ミー)、青雲剣@封神演義、ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催。
1:D-3のシャトル基地へと向かう。
2:武美、ソルティを守る。
3:シグマ打倒の為、仲間を集める。
4:本郷に対し、少々の罪悪感。
5:T-800に対して疑心。
6:放送がないのに疑問。
[備考]
※悪魔のチップの制限は精密動作性の低下、他者への使用には遠慮気味になる、支給品と合体するとやや疲労する、です。
※合体による肉体の主導権は、基本的に相手の側にあります。
※ドクターケイトの杖@仮面ライダーSPIRITS(ID未登録)は切断され、E-8に放置されています。
※バトル・ロワイアルにおけるドラスの動向を、細かく聞きました。
◇ ◇ ◇
「スバル・ナカジマ、なぜ来ない。本郷らの許に向かうのではないのか?」
ハーレーのエンジンを温めたものの、なかなか後部座席に衝撃が加わらないのでT-800が腰掛けたまま首を後ろに回す。
そのカメラアイが映し出したのは、バリアジャケットを解除したスバルの姿だった。
T-800には装備を剥ぐ真意が見出せず問おうとするが、その前に歩み寄ってきたスバルからPDAを手渡される。
「これは?」
「ドラス君に渡してください……私が彼にできるのは、この程度だから」
首を傾げるT-800に意図せず口元を緩めてから、スバルはハッとする。
適わないなと小声で呟いてから、T-800から距離を取って簡潔に一言だけ。
「ボブさん、今までありがとうございました…………ごめんなさい」
言い終える頃にはスバルの瞳は金色に変わっており、そしてこめかみに押し当てた左拳が青い魔方陣を纏う。
――ぶちゃり。
樹から落ちた熟れた果実のような音を立てて、彼女自身のISによりスバルは粉砕された。
苦しむこともなく一瞬の内に、肉も骨も皮も毛も脳も全てがミックス。
奇しくも最後の言葉は、彼女が敵だと思い込んでいた少年にかけられた言葉によく似ていた。
スバル・ナカジマは強い少女だったが、それはあくまで戦闘という観点で見たらの話にすぎなかった。
いきなり呼び出されて壊し合えと命じられる。そんな異常事態は、歳相応の彼女の精神を磨耗させた。
信じた少年に裏切られ逃亡し、いきなり二者に襲い掛かられて暴走。そしてその後、錯乱。
数時間かけて頭を冷やしたが、それはただ己の中に作り出した強大な敵に全ての罪を押し付けたに過ぎなかった。
――――しかしその強大な敵は、もはや敵ではなかった。
知ってしまったゆえに、これまでの罪がスバルに圧し掛かった。
こんな時に頼るべき人間は、スバルの周りにはもう誰もいなかった。
尊敬する恩人も、共に夢を目指した親友も、同じ部隊の同志たちもいない。
距離を縮めようとしていたはずのナンバーズは拒絶し、大切な姉は……――――
自らが、今の状況を作ったのだ。
罪を背負ったまま生きるほどの意思を固める要素もなく、彼女は終わりを選んだ。
ドラスがいる前で行わなかったのは、ショックを与えたくなかったから。
本当はT-800にも見せたくはなかったが、本郷たちと合流してしまえば一人になれる状況はないと判断して踏み切ったのだ。
彼女にはデッドエンド以外の選択肢を与えてくれる人物がいなかった。
いたにはいたが、自らその手を払いのけた。あるいは距離を置いた。
ただ、それだけの話。
【D-3 雪原/二日目 黎明】
【T-800@ターミネーター2】
[状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出、シグマウィルス感染。爆発物解除。
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)
[道具]:HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS、
PDA(凱、村雨、T-800、スバル)、打神鞭@封神演義、グランドリオン@クロノトリガー、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん
生活用リゼンブルパーツ(左腕)@SoltyRei、コルトS.A.Aの弾丸(12/30発)
ラブラブビッグバンの音楽ファイル@パワポケシリーズ、サブタンク(満タン)@ロックマンX
滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS、ナックルの弾薬(25/30発)@仮面ライダーSPIRITS
テキオー灯@ザ・ドラえもんズ、ライディング・ボード@リリカルなのはStrikerS、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考・状況]
基本思考:スカイネットの使命通り、全ての者を破壊する。
1:どうするか。
2:スバル、本郷らを利用して人間及び、人間側のサイボーグとロボットを始末する。
3:時間を稼ぐ。必要ならゼロチームの消耗を待つ。
4:発見した音楽ファイルに秘められたメッセージを本郷と共に解読。
5:用が済めば、スバル達を破壊する(しかし、ノイズが発生。それを心地よく思っている?)。
6:放送がないのに疑問
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。
※バトル・ロワイアルにおけるドラスの動向を、細かく聞きました。
◇ ◇ ◇
「――ふふっ」
不意に、ドラスの顔がほころぶ。
零れた声が届いたらしく、後部座席のミーもうっすらと笑みを浮かべた。
ドラスは嬉しかった。
罪が許されたのがではなく、スバルを再び姉と呼ぶことができたことが。
ハンドルを掴むドラスの心は、幸せで満たされていた。
&color(red){【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS:死亡確認】}
&color(red){【残り9体】}
※D-3雪原上に、首から上は粉微塵の状態で横たわっています。
右腕は今のところリゼンブルに換装されていますが、T-800に再転送される可能性があります。
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|148:[[閉幕と始まり1]]|スバル・ナカジマ|&color(red){GAME OVER}|
|148:[[閉幕と始まり1]]|T-800|153:[[あなたはここにいますか? 前編]]|
|148:[[閉幕と始まり1]]|ドラス|152:[[そして終焉【フィナーレ】へ……]]|
|148:[[閉幕と始まり1]]|ミー|152:[[そして終焉【フィナーレ】へ……]]|
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