本件は拉致事件であってゲームではない ◆INXPusdxAI


(困った、やることがない……)
 パンタローネが最初に思ったことはそれだった。
 生き返ったのはこれで二度目。
 どうせ今回も、創造主様の気まぐれで作り直されたのだろう。
 しかし、前回と違って、創造主様は近くにおられないし、やることも何もない。
 フランシーヌ様は100年近く前にお亡くなりになられ、生まれ変わりたるエレオノール様は会心の笑顔を見せられた。
 結果、200年続いたフランシーヌ様に笑顔を、という目的は達せられ、自分には何もやることがなくなったのである。
 強いて言えば、エレオノール様の笑顔を守ることだろうが、それはもう鳴海の任務だ。
 あの男は信頼できる。
 それにそもそも、エレオノール様がこの事件に巻き込まれているとは考えにくいから、今この場には関係ない話だ。
 名簿には、エレオノールではなくフランシーヌの名で記載されているし。
 エレオノール様はお体に機械などを持っておられぬ。
 従って、彼女は今もなお鳴海と共に行動しているはずなのだ。
 だから、エレオノール様の笑顔を守る必要もない。
 それに先ほど、名簿にフランシーヌ様の名があるとは言ったが、本物のフランシーヌ様は100年近く前にお亡くなりになられた。
 偽者のフランシーヌ様を見るのは、これで3度目になるわけだが、いやはや馬鹿にされたものだ。
 一度目は100年近くも騙された、フランシーヌ様お手製の人形。
 ご自身で作られただけあって、精巧でどう見てもフランシーヌ様本人にしか見えぬ外見。
 よく作ったものだと思う。
 二度目はルシールが作った人形。
 正確に言えば、偽フランシーヌ人形ではなくアンジェリーナ人形なのだろうが、自分にとっては同じだ。
 全く、いくら自動人形が単純な作りとは言え三度も騙されると思っているのか。創造主様も冗談が過ぎる。
 アルレッキーノ達も騙されたりはしないだろう。
 さて。それはそうと、やはり……
(何をするかな?)


 当面の問題はこれだ。
 自分は2度死んだ身。別にこのまま自殺しても殺されても構わぬ。
 しかし、だからと言って、ただ死ぬだけなのも詰まらない。
(創造主様から命令があればよいのだが……)
 しかし、全くない。
 それどころか、フェイスレス様はどこにおられるのか全く分からない。
 自分が生き返った以上、彼がどこかにいることは確定なのだが。
 全くお姿が見えないのは、どういう事か。
 まぁ、彼の性格を考えれば単なる遊びであって、それ以上ではないのだろうけど……

 刹那。
 パンタローネの耳に、爆音が届く。
 思案する彼の居場所に、正体不明の弾丸が着弾した……


 R・田中一郎は自分が事件に巻き込まれたことを理解していなかった。
 シグマという人物が何を言ってるのかさえ、分からなかった。
 というより、自分が理解していないことにさえ気付いていなかった。
「要するに、これってゲームなんでしょ」
 もちろん違う。誰もゲームなどと言ってない。
 シグマというテロリストが、自分の悪行を周りに撒き散らしているだけであってゲームでもなんでもない。
 そのような感想を持つ者などここには一人もいないだろう。
 ここに集められたロボットは、全て被害者であり、ゲームの参加者でもプレイヤーでもない。
 至極当然のことなのだが、残念なことにRはその当然が分からない。そして、分からないことに気付かない。
「全員ロボットって事は死なないわけで……」

 だが、下らない事には気付く。
 そうなのだ。仮に全員ロボットだとすれば、被害者は一人もいないことになり、これは事件ですらなくなる。
 厳密に言えば、機械化されただけで元々人間だった者も混じっているのだから、やはり事件なのだけれど。
 その事に気付けというのは無理な話だ。
 従って、R・田中一郎はこれを純粋なゲームだと考えた。自分はプレーヤーであると考えた。
 そして、その考えに基づいて行動しようと思ったのだ。
 どうせ、誰も死なない。
 いつぞやの部室周りの戦争のように、死んだ振りをして倒れるキャラクターが出てくるだけの話である。
 だから彼は、慣れない手つきでPDAを弄り、グロスフスMG42機関銃を取り出す。
 重そうな銃だが、力ならあるので持ち運ぶのに不自由はしない。
 彼は、それを持って獲物を探した。

 暫くして、Rは一人の老人を発見。
 老人はなにやら思索にふけっているが、気にするRではない。
 銃を構え、老人に発砲した。
 じぃぃぃ……という意外に地味な連続音が当たりに鳴り響く。
 物足りないなぁなどと、場違いな感想を抱くR。
 気がつくと、辺りの木々は穴だらけになり、老人は居なくなってしまった。

「駄目じゃないか逃げたりなんかしちゃ……ちゃんと死んだ振りをしてくれないと……」
 老人が居た場所を確認し、誰も居なくなった現状を嘆く。
 昔の戦争ごっこ通りなら、ここで死体の一つも転がってたんだけどな。
「きちんとゲームが出来ない人は、どうかと思うよ」
 と、誰ともなしに呟き、Rは重機関銃を持ったまま、いずこかへと消えていった。


 突然の銃撃だった。
 初撃が外れたおかげで襲撃に気付くことが出来、とっさに避けたのである。
 音速よりも早い銃弾は、音を聞いてからでは避けられない。
 最初の一撃が当たっていれば、パンタローネとて即死だったろう。
「全く何処のどいつだ……」
 緊急脱出したのは、穴だらけになった木の上。
 そこから、犯人を見下ろす。
 ガクラン姿の少年が一人、重機関銃を乱射したらしい。
「駄目じゃないか逃げたりなんかしちゃ、ちゃんと死んだ振りをしてくれないと。
きちんとゲームが出来ない人は、どうかと思うよ」
 場違いな発言をしている。
 お前の方がどうかと思うぞ、とパンタローネは言いたかったが、どうせ死んでも構わぬと思った身。
 当たっても良かったかもな、などと負けずに場違いな思考をしてみた。
 しかし……
「ゲームとか言ってたな」
 よく考えてみれば、自分が生き返った以上、この件に創造主様が絡んでいることは間違いなく。
 彼が絡んでいるということは、これがゲームである可能性は極めて高い。
 何を考えているのか分からない拉致事件だと思っていたが、どうやら自動人形たちを集めて楽しむゲームだったらしい。
「なるほどね……」
 そうすると、ここにいる者たち全員を破壊することこそプレーヤーたる我々の役目。
 ゲームの最終目的は、他者を全員排して自分自身が最後の一人になること。
「面白そうではある」
 元々、ゲームを断ることが出来ない自動人形のパンタローネ。
 その彼が、これを事件ではなくゲームと認識した。
「やることもないし、楽しんでみるかな」
 そして、パンタローネは木の上で一人。ゲーム参加を決意する。
 どうせ一度死んだ身。何が起こっても構わぬ。
 どうせ200年来の目標は達した身。同僚を殺しても構わぬ。
 どうせフランシーヌ様は偽者。殺しても構わぬ。
 ゲームというなら、とことん楽しんでやろう。





【H-6 林(南部)/一日目・深夜】
【R・田中一郎@究極超人R】
[状態]:健康
[装備]:グロスフスMG42(予備弾数不明:本人も未確認だが、まだ十分あると認識)
[道具]:支給品一式、不明支給品(確認済み)
[思考・状況]
基本思考:事件をゲームと勘違い。最後の一人を目指す。誰も死なないと思っている。
1:他のプレーヤーを探して攻撃。

※原作3巻終了時からの登場です。
※この事件を3巻冒頭のサバイバルゲームのようなものだと勘違いしています。


【H-7 林(東部)/一日目・深夜】
【パンタローネ@からくりサーカス】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品(確認済み)
[思考・状況]
基本思考:事件をゲームに見立て精一杯周囲を楽しませる。
1:他のプレーヤーを探して攻撃。

※原作終了時からの参戦です。
※この事件の首謀者をフェイスレスだと勘違いしています。


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GAME START パンタローネ 052:決意をこの胸に――(前編)
GAME START R・田中一郎 048:あ~る君の作戦?の巻





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