白いカラス――はぐれ者 ◆2Y1mqYSsQ.


「ここは……どういうことだ? 俺は、V3と共に大首領の門へと向かっていたはずだが……」
 辺りを見回す青年が思わず呟く。眼に入るのは、ゴミの山。
 長身に肩幅の広い鍛えられた肉体。彼は黒い革ジャンを羽織っており、二本足で地面を踏みしめる。
 パーマのかかった黒髪に、太い眉を持つ青年。彼の名は村雨良。仮面ライダー10号だ。
 彼はここに来る直前の事を思い出す。
 四国がバダンの手に落ち、V3やライダーマンと共にデストロンの怪人と死闘を繰り広げた。
 大首領へと向かうV3。命を懸けた火柱キックを無駄にしないため、ZXも後に続いたのだ。
 その結果、見知らぬ世界に自分はいる。
 そして村雨の胸が締め付けられ、少女の無念な最期を思い出す。
 あのシグマと名乗った男は、自分たちをレプリロイド……ロボットといった。
 死んでいった少女も、自分と同じく改造人間かロボットなのだろう。
 だが、そんなのは関係ない。命が無残にも奪われた。
 バダンに無残に殺された、姉のように。
 シグマは大首領と同じだ。許せない悪。命を弄ぶ外道。
 十人目の仮面ライダーとなった自分が、放っておいてはいけない。
「先輩……」
 いつの間にか手にしていた、携帯端末を操作して名簿を呼び出す。
 自分の知る名は、城茂、本郷猛、神敬介、風見志郎。
 神敬介については、名前しか知らないが、それでも知っている三人の仮面ライダー同様、この殺し合いに反逆を示すのだろう。
 ならば、自分もそれに続く。
「シグマ、俺が……俺たち仮面ライダーが倒す!」
 村雨が決意と共に、歩き出す。
 まずは、殺し合いに参加させられ、戸惑っている人々の保護。
 人を守る……ただそれだけでいい。
 村雨が思考を進めると同時に、口笛が聞こえてきた。

 ―― ♪~~♪♪~♪

 村雨が振り返ると、全身黒尽くめの男がナイフを振り回しながら歩いてきた。
 あのナイフは、村雨の電磁ナイフ。
 あふれ出る殺気から、やる気だと分かった。
 村雨は構えをとって、敵の出方をうかがう。


 全身を黒い衣装に身を包み、首に黄色のマフラーを巻き、額にゴーグルをつけている男がいた。
 怜悧な瞳はゴミの山を映し、豊かな黒髪を揺らして現在の状況を分析していた。
 どういうわけか、血液交換のいらない身体となっている。
 それだけではない。サブローは死んだ……いや、壊されたはずである。
 白骨ムササビによって、キカイダーとの決着をつけることもなく、滅んだ。
 なのに……この殺し合いの場に呼ばれ、戦う事を強要されている。
 おそらく、この殺し合いを円滑に進めるため、あのシグマという男が自分を回収、修理と改造を施して参加させたのだろう。
 そのことに不満はない。自分はキカイダーを破壊するために生まれた。
 キカイダーと戦うことこそ、己の生きがいだ。
 一度終わった生を、もう一度キカイダーとの決着に使えるのなら、悪くはない。
 手にした携帯端末を操作して、名簿を呼び出す。
 キカイダーの名がないことに肩を落とした。ならば、決着をつけるには……
「優勝して、元の世界へと帰るしかないということか。
いいだろう、シグマ。俺はキカイダーと決着をつける。そのためなら、キサマの思惑に乗ってやろう。
ただし…………お前の命をもらうがな!」
 呟く同時に、左足に手を当て、愛用のナイフがないことに気づく。
 この分ではハカイダーショットもないのだろう。
 携帯端末を操作し、武器のデータを呼び出す。テキストファイルにはその武器の使い方があるが……ただのナイフと銃。
 威力が普通のナイフや銃と比べ物にならなく高くても、サブローには関係ない。
 さっそくナイフを転送させ、いつでも取り出せるよう左足にセットする。銃も同様だ。
 機械の目に人影を探してゴミの山を映す。
 やがて、サブローは一人見つけ、そこに向かって歩き出した。


「お前……何者だ!」
「サブロー……またの名をハカイダー。キカイダーを破壊するために生まれた改造人間だ」
「改造……人間? お前は殺し合いに参加するつもりか!?」
「そうだ……と答えたらどうする?」
 静かに微笑むサブローを前に、村雨は右腕を右上の方向に、左腕を右下の方向に真っ直ぐ突き出す。
 右腕を降ろし、左腕は旋回しながら左上の方向へと回転させ、サブローを見つめて正面を睨む。
「変んん……身!!」
 左腕を腰溜めに構え、右腕を左上の方向に真っ直ぐ突き出す。
 嵐のような金属の粒子が、村雨の身体を戦士へと作り変えていく。
 ベルトが光を発し、収まった頃には、赤い仮面に銀のクラッシャー、昆虫の複眼のような、緑の目を持つ戦士へと変身する。
 白いボディアーマーを身に纏い、緑のマフラーを風になびかせ、サブローを倒すために現れたのだ。
 その様子を一部始終見ていたサブローはヒューっと口笛を吹いて、電磁ナイフを構える。
 月光がナイフの刀身に反射して、サブローの顔の前で輝いた瞬間、黒いボディーに剥き出しの脳を透明のフードで包む戦士が姿を見せる。
 一歩一歩ゆっくり進み、赤い瞳でZXを見つめる。
 その無機質な瞳に、どんな感情を宿しているのかZXは知らない。
 だが、これだけは言える。
(バダンが俺の姉さんを殺したように、シグマはあの少女を殺した……)
 思い出すのは、バダンの残忍さ。姉の無念。
 ――そして、自分の無力。
 二度と忘れないと誓った。この殺し合いに反逆するため、乗ったハカイダーを許すわけにはいかない。
「いくぞ! ハカイダー!!」
「こい! いかなる敵でも、俺に勝つことはできん!」
 ZXはハカイダーへと、怒りを込めて突進をした。


 姿を変えたZXに、ハカイダーは興味を持つ。
 自分と同じく、ダークに生み出された改造人間か、人造人間なのだろう。
 いや、見知らぬ科学者が作ったのかもしれない。
 知らず、ハカイダーの心が躍る。
 キカイダーを宿敵と認め、破壊することに拘ったのは自分の存在理由だからというのもある。
 しかし、それ以上に自分に迫る力を持つ者を知らなかったからだ。
 キカイダーを破壊するために存在する力は、キカイダーがいなければ存在価値はない。
 少なくとも、ハカイダーはそう思っている。
 しかし、目の前の男はどうだ?
 キカイダーとの戦いに感じた、高揚感を見出せるのか?
 僅かに、ハカイダーの回路(こころ)が揺れる。
 こいつとの戦いは、キカイダー以外に満足することができる戦いなのかもしれない。
 その期待を込めて、ハカイダーは地面を蹴る。
「いくぞ! ハカイダー!!」
 その言葉が、たまらなく嬉しい。
 キカイダーは自分と戦うのを避けていた節がある。
 だが、目の前の男は違う。
 正面から、正々堂々と自分に立ち向かってくる。
 なら答えねばならない。それが戦士としての礼儀だ。
「こい! いかなる敵でも、俺に勝つことはできん!」
 ハカイダーはZXへと、期待を込めて突進した。


「ゼクロスパァァァンチッ!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 ZXの白い腕が大気を切り裂いて、ハカイダーに迫る。
 ハカイダーの黒い拳が、ZXに向かって放たれる。
 激突する拳と拳。稲妻が落ちたような轟音があたりに響く。
 生み出される衝撃に、ゴミが舞い散る。
 ギシギシと異音を拳がたてるものの、二人は一歩も引かない。
 互いの瞳を交わし、闘志を確認して同時に逆の拳を打ち出した。
 ハカイダーの拳がZXの右胸にヒビを入れる。
 ZXの拳がハカイダーの脇腹を砕く。
 お互いの一撃が決まったのを確認して、すぐに後方へと跳ぶ。
 二人とも制限には気づいた。いつもより、力が、速さが、頑強さが足りない。
 しかし、今お互いしか映さない二人には無意味な事実。
「マイクロチェーン!!」
 ZXの叫び声と共に、右腕のシャッター部からマイクロチェーンが射出され、ハカイダーの右腕に巻きつかれる。
 同時に、高圧電流がハカイダーの身体を焼いた。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!」
「おぉぉぉぉぉぉ!」
 そのままZXはマイクロチェーンを巻き取りながら、ハカイダーに接近しようと迫る。
 しかし、ハカイダーは冷静に電磁ナイフでマイクロチェーンを切り裂いた。
「何ぃ!」
「甘い!」
 ハカイダーの左腕に銃口が二つ装着された、猫サイズの小型の銃、二連キャノンが火を吹いてZXの身体を抉る。
 ZXの右肩が血の花火を吹いた。ZXは身体を傾け……
「……く! 負けるか!」
「ぬ!」
 倒れず、更に加速してハカイダーを掴んだ。
 ZXは痛む右肩にも構わず、身を捻って回転を加える。
 風がZXの周囲に舞い、吹き荒れる。

「ライダーきりもみシュート!!」

 脅威的なスピードで上半身を捻り、竜巻を発生させる。
 その風に巻き込ませるように、ハカイダーを投げ飛ばす。
 ハカイダーはそのまま地面に叩きつけられ………………ない。
 エアークラフトを使いハカイダーは空中で体勢を整え、両腕を前面で交差させる。

「右肩を負傷したのが、運の尽きだな。地獄五段返し!」

 地面を滑るように滑空して、今度はハカイダーがZXの身体を掴まえた。
 そのまま、凄まじい勢いでZXの身体を宙に舞わす。
 一回転させ、再度力を加えて二度目の回転をさせる。そのまま自身も回り、最後にZXを一直線にゴミの山へと投げ飛ばす。
 ZXの身体は砲丸のような勢いでゴミの山を一つ、二つと砕いて、何度もバウンドしながら地面を転がる。
 身体が痺れて、ZXは立ち上がるのも困難。
 後ろから、足音が聞こえ、ハカイダーが迫ってくる。
 早く立ち上がらなければ。そう思うが、身体が脳の命令を拒否する。
 足音が止まり、ZXはやられる!と、覚悟を決めた。
 それから、一秒、二秒と何も起きなかった。ZXは腑に落ちない表情を赤い仮面の下でして、震えながら立ち上がり振り返る。
 ZXの視界に、仁王立ちをするハカイダーが入った。
「……どういうつもりだ?」
「倒れている奴を後ろから撃つなど、卑怯な真似が嫌いなだけだ。さあ、準備はいいか?」
 その言葉にZXは呆気にとられる。
 正々堂々と自分と戦うというのだ。その姿勢、ZXは嫌いじゃない。
「……まだ、名乗っていなかったな。俺は村雨良。またの名を、仮面ライダーZX!」
「ふ……いい名だ。覚えておこう。仮面ライダーZX!」
 またも、二人の全力全開の戦いが再開された。


 ZXの右回し蹴りを右腕で受け止め、その重さにハカイダーは思わず微笑んだ。
 微笑んだといっても、ハカイダーの表情が変化するわけではない。
 あくまで、ハカイダーの回路(こころ)での変化。
 人間で言えば、高揚しているといった状況である。
 キカイダー相手にしても感じた物。ハカイダーがキカイダーを狙う理由。
 その感情の波を、目の前の戦士、仮面ライダーZXは与えてくれる。
 自分の判断は間違いじゃなかった。
 ハカイダーはZXの右脚を掴んで、投げ飛ばす。
 今度はZXも空中で体勢を整えて、ハカイダーへと反撃を果たす。
 ZXも空中をある程度自由に動ける事を知って、嬉しく思いながらZXの拳を受け止めた。
 そのままZXの頬にハカイダーは拳を叩き込む。
 だが、ZXは怯まず、ハカイダーの胸に強烈な膝蹴りを与えた。
 後方に跳びながら衝撃を逃がすが、それでも胸の装甲が歪む。
 追撃してこようとするZXを牽制するため、二連キャノンの引き金を引く。
 地面が爆ぜて、ZXが飛び退いたと同時に、地面にしゃがんで右腕に左手を乗せて、ZXに狙いをつけて銃弾を放つ。
 ハカイダーが狙いを定める体勢だ。
 正確な狙いにZXは追い詰められ、ハカイダーの二連キャノンがようやくZXの脇腹を吹き飛ばす。
「どうした!? 逃げ回ってばかりでは、俺には勝てんぞ! 仮面ライダーZX!!」
「分かっているさ……」
 ZXの両肩より霧が出て、ハカイダーは警戒する。
 すると、霧の向こうより二人のZXが姿を見せた。
「!? 分身か?」
「いくぞ! ハカイダー!!」
 ハカイダーへと迫る三人のZX。
 しかし、二つの銃口は迷わず正面に向いていた。
 銃口が火を吹き、ZXを貫く。同時に、左右の二人のZXが消えた。
 ハカイダーは本物を撃った。確証があったわけではない。
 不思議にも、正面から向かってくるZXを、また正面から向かってくると信じたのだ。
 敵なのに、おかしなことだ。だが、銃弾はZXに届いていない。
 ZXは、虚像を本物にも重ねていたのだ。
 半歩だけ、ずれた虚像。ゆえに正確に頭を狙った銃弾はZXの頬を一センチずれて掠めた。
 二発目を放とうとするが、ZXが衝撃集中爆弾と十字手裏剣を投げる。
 ハカイダーは舌打ちをしながら、十字手裏剣と衝撃集中爆弾を撃ち抜いた。
 一度に四つの標的を撃つという神業により、衝撃集中爆弾が爆発してZXが爆風に紛れる。
 一瞬ハカイダーはZXを見失う。その結果爆風を突き進んだZXに、ハカイダーは接近を許してしまった。
 電磁ナイフを袈裟懸けに振るが、ZXの左腕がハカイダーの手首を掴む。
 ハカイダーの顎に、ZXのアッパーが突き刺ささる。
 ZXはこのチャンスを逃がすつもりはなく、そのままハカイダーへと追撃をする。

 ZXの身体がコマのように回転し、回転蹴りがハカイダーの腹に突き刺さる。
 衝撃を感じながらも、ハカイダーが反撃をしようとナイフを横凪に振る。
 ZXは紙一重で避け、カウンター気味にハカイダーに拳の連打を叩き込む。
 右胸、左脇腹、太もも、と三連打を与え、ハカイダーの頬に狙いを定めて、右腕を大きく振りかぶる。

「ゼクロスパァァァァァンチ!」

 衝撃がハカイダーを襲い、今度はハカイダーがゴミの山を二つ吹き飛ばして、地面に転がる。
 身を震わせるハカイダーの背後で、今度はZXが仁王立ちをして立ち上がるのを待ち続けた。
 ハカイダーは立ち上がり、ZXを睨む。
「どういうつもりだ?」
「俺も嫌いなんだ。倒れている敵の背後から、襲うという卑怯な真似が」
「フ……仮面ライダーZX。お前と出会えた事を、俺は感謝をする」
「俺は遠慮したいな。だが、お前を放っては置けない。ハカイダー、俺の技を受けろ!」
「こい!」
 ハカイダーの言葉を受け、ZXは構えをとる。
 身を捻り、ハカイダーへと向けて上半身を回転、竜巻を起こす。
 空のきりもみシュート。ハカイダーは答えを導きながらも、避ける暇も与えられず暴風に巻き込まれた。
 続けて、ZXは右脚をハカイダーへと向け、身体を回転させながら暴風へと突入した。

「ZX穿孔キック!!」

 仲間と共に生み出した、ZXの新たな技。
 正義を持って、ハカイダーを砕かんと唸らせる。
 ZXの右足が、ハカイダーを貫かんと迫り…………銃声が響いた。
「ガハッ!」
 ZXがクラッシャーより血を吹き出し、回転を中止する。
 その身体に四つの穴が開いており、そこから血が吹きでいていた。
 ZXの視界に、風に飛ばされながらも正確に銃口を向けているハカイダーが眼に入る。
(まさか……回転に巻き込まれながらも、狙いを外さなかったのか!?)
 ハカイダーが短時間で四つの標的を打ち抜いたのを思い出し、ZXは歯噛みする。
 風が弱まり、ハカイダーはまたも滑空してZXへと向かって飛ぶ。

「ギロチン落とし!!」

 ハカイダーは宣言と共に、身体を捻って、両脚でZXの頭を掴む。
 そのまま上昇して、両脚で地面へとZXを投げ下ろした。
 凄まじい勢いで、ZXが地面に叩きつけられ、ゴミが吹き飛んで地面にクレーターが作られる。
 クレーターの淵に降り、ハカイダーはZXを見つめる。
 地面に伏したまま、ピクリともしない。
 もう終わりかと、高揚した気持ちを吐き出すように息を吐く。
 満足したような、物足りないような、複雑な気持ちのまま、ハカイダーはZXを見つめた。


(俺は……このまま終わるのか?)
 全身が痛み、意識がどんどん闇へと落ちていく。
 立ち上がれと強く思うが、身体は応えない。
 無念さを抱えたまま、ZXは……村雨は永久の眠りにつこうとしていた。
 急に村雨の視界が晴れ、目の前に懐かしい光景が広がる。

 ―― 良……これからは私が良を守ってあげるわ……
 ―― ……でもね……あんたは男の子だからいつかは――

 これは、両親の葬式帰りの、姉との会話だ。
 懐かしい。まだ子供だった自分はこの帰り道、姉の手を握って強く決意した。
 村雨は、過去の自分と重なるように口を動かす。

『わかっているよ……。俺だってスグに強くなって……守ってみせるさ……』

 子供の頃の、過去の決意は叶うことはなかった。
 余りにも村雨は無力で、バダンの力は強大すぎたのだ。
 だから、今の村雨が何を言おうと、未来は変わらない。
 そもそも、これは過去の幻影だ。
 だが、村雨は構わず、続きの言葉を告げる。

『姉さんを守ってみせるから――姉さんを……』

 自分の原点を告げた同時に、シグマの前に散る少女が再度登場する。
 あの思いを二度としない。誰にもさせない。
 それが、村雨良にとって、自分が自分である理由。仮面ライダーへとなった理由。
 自分が仮面ライダーである事の意味を噛み締めると、身体が軽くなった気がした。
 ゆっくりとイメージの中で村雨は瞼を開く。やがて、村雨の視界に光が広がった。
 そこにいたのは……


 ハカイダーの目の前で、ZXがゆらりと立ち上がる。
 まだ立ち上がるのか? ZXに期待をして、ハカイダーの心が燃え上がる。
 ZXは顔を上げて、ハカイダーへと闘志を向けた。
 もしハカイダーの表情が変わることができたのなら、ハカイダーの顔に喜びが浮かんだであろう。
 キカイダーに勝るとも劣らぬ敵。
 もしかしたら、キカイダーの存在以上にハカイダーが望んでいたものなのかもしれない。
「どうした? ハカイダー。俺はまだ生きているぞ」
「ああ、そうだな。仮面ライダーZX!」
 いつの間にか、ハカイダーはZXに敬意を払っていた。
 ZXの挑発にあえて乗り、跳躍して拳を振るう。
 腕を交差して受け止めるZXに、ハカイダーは一切遠慮をせず前蹴りで蹴り飛ばす。
 しかし、ZXもただ技を受けているだけではない。
 ハカイダーの電磁ナイフをまたも虚像を駆使して、紙一重で避ける。
 返す刀でハカイダーの首へと手刀を打ち、怯んだ隙に腹を蹴り上げる。
 トンを越える衝撃にハカイダーは身体を浮かばせるが、攻撃の手は緩めない。
 貫き手でZXの左腋を裂いて、胸の中央に拳を叩き込む。
 数歩下がったZXは、跳躍して全身を赤く光らせる。
 莫大なエネルギーをZXから感知して、ハカイダーの心が震える。
「シンクロができた……。いくぞ! ハカイダー!!」
「それはこっちの台詞だ!」
 ZXは左腕を右斜め下、右腕を右斜め上へ伸ばし、全身を赤く光らせる。
 ZXの全力の技が来る。その事を感じ取ったハカイダーは、その闘志に応えるべく、全身に力を込める。
 ハカイダーが跳躍し、ZXはハカイダーへと右脚を向けた。

「ゼクロスキィィィィィィック!!」
「月面飛行蹴り!!」

 ZXが赤く光りながら、稲妻のごとくハカイダーへと爆進する。
 ハカイダーが滑るように空中を旋回しながら、ZXへと両脚蹴りを烈風を越える速さで迫らせる。
 二人の影が激突し、電撃のようなエネルギーが迸り、衝撃にゴミが、地面が、瓦礫が全て砕かれていった。
 やがて爆発が起き、僅かの間夜を照らした。

 空中で、二人の影は激突したまま固まっている。
 短い膠着にも、永久に近い膠着にも感じた頃、やがて影が力を失って地面に落ちる。
 二つの影は地面に着地して、お互いに睨みあう。
 やがて、赤い影が崩れ落ちた。
「ガハッ……」
「俺の勝ちだ……仮面ライダーZX」
 ハカイダーの呟きと共に、ZXが村雨良の姿へと変わる。いや、戻る。
 人間、村雨良の腹には、大きく穴が開いていた。
 変身を司り、機能の大半がつまったベルト。
 そこが破壊されては、脳以外が機械と化した村雨にもどうすることもできなかった。
「運が良かった。あの時、俺が撃った銃の傷がエネルギーの負荷に耐え切れず、爆発を起こして紙一重で蹴りが逸れなければ、倒れていたのは俺かもしれない」
「……勝ったのは……お前だ。ハカイ……ダー……。
クソ……俺は……また…………守れないのか……」
 ハカイダーはサブローへと姿を変え、村雨に近寄った。
 膝をついて、村雨を見下ろす。
「苦しいか? 仮面ライダーZX」
「何が…………言いたい?」
「もし、楽に死にたいというのなら、介錯をしてやる。望みを言え。
最期にお前の願いを、一つだけ叶えてやる」
 その言葉に、村雨は苦笑をする。
 静かに首を振りながら、サブローに村雨は望みを告げる。
「ハカイダー……もし、最期に一つだけ……俺の望みを聞くと言うのなら……」
 殺し合いに乗るなという願いは無駄であろう。
 サブローには何か譲れぬものがある。だから、殺し合いに乗った。
 村雨はサブローに少なからず敬意を払っている。
 正々堂々と、正面から立ち向かう、戦士としての敬意だ。
 だから……
「仮面ライダーは……他にもいる。この会場に、俺の他に四人の……仮面ライダーがいるから……お前は先輩たちに会いに行ってくれ……」
 彼には会って欲しい。自分を変えた、偉大なる先輩に。
 たとえ生き方を変えるのは無理でも、何らかの影響はあるはずだ。
「いいだろう。何か伝言があるなら、伝えてやる」
「そう……だな……。『バダンをぶっ潰してください』……そう伝えて……くれ……」
 そして、村雨はサブローに四人の仮面ライダーの特徴と、名前を教える。
 もっとも、神敬介に関しては、滝から聞かされている特徴を告げるしかなかったが。
 やがて、ぼんやりしていく視界。震える手を伸ばし、何かの幻影が村雨の手を包む。

「姉……さん…………」

 村雨の瞳は、それっきり光を映すことはなくなった。
 崩れ落ちる村雨を前に、風がざわめいた。


 崩れ落ちた村雨を前に、サブローはキカイダーを失った時に感じた、虚無感に似た感情が湧き上がるのを抑えられなかった。
 死体となった村雨を抱え、二連キャノンで地面に大穴を開ける。
 その中央に村雨を置き、土をかけてやる。盛り上がった土に、自らの支給品である電磁ナイフを突き刺した。
 サブローは知らないが、偶然にも村雨の持ち物が己の墓標となったのである。
 機械であるサブローに、このようなことに何の意味があるのかは分からない。
 それでも、唯一の生体部品である脳が刺激を送り、村雨を埋葬したくなったのだ。
 サブローが村雨に抱いた感情、『敬意』をもって、短い黙祷をする。
「仮面ライダーZX、お前の携帯端末はもらっておく。……俺はいく」
 村雨の携帯端末より、バイクを転送させる。
 皮肉にも、村雨良の愛車、スズキGSX750S3 KATANAが現れる。
 サブローはバイクに跨り、エンジンを吹かす。
 仮面ライダーに会うために。
 シグマを倒すために。
 キカイダーと決着をつけるために。
 バトルロワイヤルを破壊せよ! 参加者を破壊せよ! ハカイダー!!



【村雨良@仮面ライダーSPIRITS 死亡確認】
【残り47人】



【H-1 南/一日目・深夜】
【ハカイダー@人造人間キカイダー】
[状態]:全身にダメージ大。エネルギー消耗大。
[装備]:二連キャノン(弾数中消費)@サイボーグクロちゃん。スズキ・GSX750S3 KATANA@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム0~2(村雨の支給品)
[思考・状況]
基本思考:元の世界へ帰ってキカイダーと決着をつける。
1:村雨良の遺言を伝える。そのため、仮面ライダーに会い、破壊する。
2:参加者を全て破壊する。
3:シグマを破壊する。
4:キカイダーに迫る、戦士に敬意。
※電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITSは村雨の墓標としてH-1の中央に突き刺さっています。
※参戦時期は原作死亡後(42話「変身不能!? ハカイダー大反逆!」後)です。
※血液交換が必要のない身体に改造されています。



【支給品紹介】

【二連キャノン@サイボーグクロちゃん】
異世界編(五巻)にて、剛が作ったガトリングに代わる武器。
材質のせいか軽くなっており、威力もロボであるバイスに大穴を開けるなど、かなりある。


【電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS】
ZXの左大腿部に収納されている伸縮自在な万能ナイフ。
超高熱を発し、金属の切断もできる。
磁力を帯びて、金属を呼び寄せることも可能。


【スズキ・GSX750S3 KATANA@仮面ライダーSPIRITS】
村雨の改造される前の愛車。
仮面ライダーSPIRITSでもVS三影戦まで愛用していた。
「3型カタナ」と呼ばれ、コアなファンを持つ。




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GAME START ハカイダー 054:想い人は復讐者?
GAME START 村雨良 GAME OVER





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