WE HAVE CAME TO TEAM? ◆F4.EWurSRc


吹きすさぶ風に、山吹色のマフラーがたなびく。
闇に閉ざされた岩肌に、戦闘服の赤が浮き立つ。
彼、【黒い幽霊団(ブラックゴースト)】によって改造されたサイボーグ計画のプロトタイプ、
00ナンバーサイボーグの九人目、コードネーム“009”――島村ジョーは、自然公園エリアの岩山で一人立っていた。
彼はブラックゴーストに反旗を翻した正義のサイボーグ戦士である。
こんな馬鹿げた試みに訳がないというのは、ジョー本人にとっても考えるまでもないことだ。
しかしそれでも、栗色の前髪の隙間からのぞくその瞳には哀しみの色が宿っていた。

(……何も、できなかった)

ジョーの脳裏に、つい先刻の惨劇が去来する。
あの水色の髪の少女。果敢にシグマという男に奇襲を掛け……惨たらしく殺された少女。
もしもあの時、咄嗟に自分が動いていれば、彼女を救うことは出来たのではないか?
自分には加速装置がある。瞬時に対応して装置を起動していれば、なんとかすることも……
……いや、結局は不可能だったろう。彼女は内部から爆破されたのだ。
恐らくはあの場所で目覚める前に、自爆装置を組み込まれていて……彼女だけでなく、自分を含めた全員が。
そして、あのシグマという男は、その絶対的な優位を示すためだけにあのデモンストレーションを行った。
誰でもいい。自分、いや自分の写し身に攻撃を仕掛けてくる者がいればそれでいい。
あえて奇襲を受けたふりをして、そのものの勇気を嘲笑いながら破壊する。
それがたまたま彼女だった。運が悪かった? 馬鹿な。
奴にとっては、すべてがただのモノに過ぎないのだ。命も、心も、存在そのものさえも。



「……そんなことが、あってたまるか……許されてたまるか……!」

拳をぎりぎりと握り締める。
喰いしばった歯の隙間から聞こえるのは、怒りと憤りと、そして決意。

「あの娘にだって心があったんだ……大切な人がいたんだ!
 それを平然と踏みにじるなら……シグマ、僕はお前を許さない!」

ジョーは視線を上げる。
闇を貫くその眼光には、もはや一片の迷いも残されていなかった。


  ▽ ▽ ▽

PDAを器用に片手で操作しながら、ジョーは岩の斜面を縫うようにして跳ぶ。

「まずはこの岩山を下って……それから、どうしようか」

マップによると、ここは4基の宇宙コロニーのうち、もっとも自然豊かなコロニーであるらしい。
ジョーはコロニーになど来たことは無かったが、それでもここが地上と変わらないほどに精巧に造られていることは分かった。
このコロニーは殆どが森林と河川で占められ、めぼしい施設と言えば発電所と宇宙港ぐらいだ。
鬱蒼とした木々ばかりで、戦闘になればゲリラ戦の様相を呈するだろう。
殺しはしたくない。それでも、戦いは避けられないのは分かる。
だったら、少しでも危険の少ない場所に移るべきだろう。
それに、他の人達(純粋な意味でのロボットもいるのだろうが)とも接触したい。

「隣の工業コロニーに移るのが一番かな、少なくともここに留まるよりはマシだろう」

呟きながらも、岩から岩へ飛び移るその足取りは止めない。
ジョーはPDAの機能を、マップ表示から支給品データファイルへと切り替える。
その一覧に目を通す前にふと顔を上げて……そのままジョーの視線は前方の一点に縫い付けられた。

黒い服の少女が、崖のそばを歩いていた。

足取りこそ確かだが、その斜面は一歩踏み外せば転がり落ちてしまうほどに急だ。
事実、彼女の細い体は幾度となくぐらりと揺れていた。

(まずい、あのままだと……!)

ジョーの頭が危険信号を発したその時、少女の足元が音を立てて崩れた。
少女の華奢な体が大きく傾き、そのまま斜面から放り出される。
少女は虚空をつかむように手を伸ばすも自らを支えることなどできず、そのまま真っ逆さまに崖下へと――


「加 速 装 置 !」


ジョーを取り巻く世界が、その時を止める。
いや、正確には動きがほとんど認識できないほどに『遅く』見えているのだ。
奥歯の内側に存在するスイッチを舌で押し込むことで発動する、009の能力『加速装置』。
009自身の動きを最大でマッハ5まで加速し、驚異的な戦闘機動を発揮する切り札だ。
空中でその落下運動を止めている少女の元へ、ジョーは加速状態のまま一足飛びに向かう。
少女が立っていた斜面に立ち、相対速度に気を払いながら少女の手を掴む。
そのまま加速状態で引っ張れば楽そうだが、実際はそうもいかない。
普通の物体はマッハ5に達する加速に耐えられず、大抵は空気摩擦によって燃え尽きてしまうからだ。
両足で踏ん張り、引っ張り上げる体勢を整えて、ジョーは加速装置のスイッチを切り、

「!? 重い!?」

想定外の重さに斜面側によろめいた。
本来なら支えられない重さではないのだが、どう考えても予想の3倍近い重量が掛かっている。
だいたいだが、百二、三十キロはあるんじゃないだろうか?
完璧に不意を突かれたジョーはそのまま自分ごと落ちないように必死でふんばり、

「はぁ、はぁ……助かった……」

辛くも二人揃っての落下を免れたのだった。


  ▽ ▽ ▽


「危なかったね、大丈夫?」
「助けてくれと頼んだ覚えはないけど、感謝するわ。ありがとう」

息を整えたジョーの呼びかけに対して帰ってきたのは、あんまりと言えばあんまりな礼だった。
人によっては怒る場面なのかもしれないが、あいにくジョーはそう短気な方ではない。
たぶん普段からこういう喋り方をする娘なんだろうと頭の中で折り合いをつけて、少女のほうへ目をやる。
遠目で見たときも思ったが、線の細い印象の少女だ。
黒一色のワンピースは、自分のようなサイボーグでなければこの闇夜では認識できなかっただろう。
その整った顔には、今はなんの表情も浮かべてはいない。
今は、と言うよりさっきからずっとだ。自分が生命の危機に晒されたというのに、顔色一つ変えていない。
と、顔ばかり見ていたのに気付いたのか、彼女がこっちを向いた。
その時ジョーの耳に飛び込んできたのは、かすかな駆動音だった。
その音とさっき感じた体に似合わない重さとが繋がった時、ジョーは思わず彼女に問いかけていた。

「君は、アンドロイド?」
「そうよ。あなたはそうではないの?」
「いや、僕はそうじゃない。サイボーグだよ」
「そう」

会話は途切れ、そのまま続かない。
それでも、彼女が気分を害したようではないのを見て(そもそも気分が表に出てないのだが)、ジョーは安堵した。
彼女がアンドロイドなら、あながちシグマの言うことも嘘ではないとふと思う。
いや、実際真実なのだろう。この場にはサイボーグやアンドロイドばかりが集められ、壊し合いを強いられている。
その現実に、改めて嫌悪感が募る。
知らず知らずのうちに険しい表情になっていたのだろうか。気が付くと、彼女が真っ直ぐこちらを見つめていた。
なんの感情も映さない黒の双眸が、真っすぐジョーの瞳を覗きこむ。
そして彼女の繊細な唇から、問いが投げられた。

「なぜ、助けたの?」

その問いに、ジョーは面食らう。

「なぜって、それは君が落ちそうになってたから……」
「あなたには、私を見殺しにする理由があるわ」

当り前のことを返したつもりだったが、それに対しての彼女の言葉にジョーは慄然とする。
「死にそうな人を助けるのは当然」という考えが、この状況にふさわしくないと気付いたからだ。
彼女の言う通り、ジョーには彼女を「見殺しにする理由がある」。
この趣味の悪い殺人ゲームの最後の一人になりたいのなら、不運な死を遂げようとする者は見殺しにしたほうが早い。
勝手に死んでくれるのなら、そのほうが都合がいい。
なぜなら、わざわざ壊してやる必要が無いからだ。労力を省いて数を減らせるのなら、そのほうが――

「駄目だッ!!!」

思わずジョーは大声を上げた。
もっとも特に驚いたようでもなく、少女は真っ直ぐにこちらを見つめている。

「僕は絶対に見捨てない! 目の前でみすみす命を失わせはしない!
 人を傷つけるのが正当化されるようなことが、あっていいはずがないんだ!」

口に出すたびに、決意が形を帯びていく。
言ってみればこの壊し合いで真っ先に壊れるのは、心だ。
積極的に戦うにせよ、傷つけるのを忌避するにせよ、いずれはこの現実に適応せざるを得ない。
戦わざるを得ない。疑わざるを得ない。
そうしてこの過酷な戦いに『慣れて』しまったとき、それは心が捻じ曲げられることと同じだ。
なにより、そういった展開を誰よりも望んでいるのはシグマだろう。
水色の髪の少女がゴミのように殺されたのを思い出し、ジョーの心に静かな怒りが燃えた。

「とにかく、君もそういう考え方をしちゃ駄目だ。
 認めたくはないけど確かに君の死を願う人もいると思う、それでもみんながそうじゃないはずだ」
「あなたは違うのね?」
「ああ。違う」
「そう。分かったわ」

ジョーの返答に満足したのか、彼女は無造作に立ち上がった。
そのまま斜面を下る方向へ歩き出したのを見て、ジョーは慌てて呼び止める。

「危ないだろ、もしさっきみたいに落ちたら……」
「この岩山を降りなければ話にならないわ」
「それはそうだけど」
「それとも、あなたがおぶってくれるの?」
「……なんだって?」

振り向いた彼女の瞳は、冗談を言っているようには見えなかった。


  ▽ ▽ ▽


少女をおぶったまま、サイボーグ009は軽快に岩肌を駆け降りる。
さっきはバランスを崩したが、実際これくらいの重さならサイボーグ戦士にはなんでもない。
山を下ること自体にはなんの問題もなかった。
岩間を縫うように跳びながら、ジョーは彼女に話しかける。

「あの、さ」
「なに?」
「名前、聞いていいかな?」
「R・ドロシー・ウェインライトよ」
「R・ドロシー?」
「ドロシーでいいわ」
「僕はゼロゼロ……いや、ジョー、島村ジョーだ。よろしく、ドロシー」
「よろしくされるいわれはないわ。今だってあなたが好きでおぶっているんだもの」
「君がおぶれって言ったような……」
「おぶれとは言ってないわ」
「はは、そりゃそうか」

彼女――ドロシーの歯に衣着せぬ物言いにも、だんだん慣れてきた。
とはいえ、さすがに意表を突かれることも多々あるのだが。
今度はドロシーが、背中越しに話しかける。

「ねえ、ジョー」
「なんだい?」
「あなたが着ているその服のことだけど」
「これかい? これはギルモア博士が作ってくれた、00ナンバー専用の戦闘服だよ。
 もっとも、今着ているのは強化服でもなんでもない、ただの同じデザインの服みたいだけど」
「あなたの仲間も、みんなこの服を着ているの?」
「そうだけど……それがどうしたんだい?」

ジョーが返した疑問を、ドロシーはただの一刀で切り返した。

「あなたたちの服の趣味、サイテーだわ」

これにはさすがのジョーも、苦笑せざるを得なかったのだった。



バトルロワイアル開始から30分。夜明けはまだ遠い。




【G-5 岩山中腹/一日目・深夜】

【009(島村ジョー)@サイボーグ009】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3(未確認)
[思考・状況]
基本思考:殺し合いを止め、シグマを倒す。
     例え戦闘になっても、相手を破壊することだけはしたくない。
1:岩山を下り、その後工業コロニーへと移動する
2:とりあえずドロシーと情報交換がしたい

※ブラックゴースト編終盤(平成アニメ版・第16話)からの参戦です。
※ドロシーとはほとんど情報交換をしていません。
※00ナンバー強化服は、同デザインの通常の服と交換されています(加速に耐えられる素材のようです)。


【R・ドロシー・ウェインライト@THEビッグオー】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3(未確認)
[思考・状況]
基本思考:パラダイムシティへ戻る。
1:帰るための手がかりを探す。
2:壊し合いには興味がない

※第1シーズン終盤からの参戦です。
※ジョーとはほとんど情報交換をしていません。
 また、特に一緒に行動するつもりがあるわけではないようです。
※下山後の目的地はお任せします。



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