からくりライダー ◆2Y1mqYSsQ.



 運命とは歯車のようなものだ。

 仮面ライダー・本郷猛は改造人間である。
 ショッカーにより連れ去られ、その身に改造手術を受けた。
 己の身体を改造し、多くの人々を悲しませるショッカーを許せず、正義を掲げて戦い続けた。
 やがて、戦いは苛烈さを増していき、彼一人ではどうしようもなくなる。
 ショッカーは潰しても潰しても、トカゲの尻尾のごとく生まれ変わり続けた。
 だが、運命とはよくできているものである。
 悪の組織が新生すると同時に、二号、V3、ライダーマン、X……と、新しい仮面ライダーが現れる。
 バダンに大首領の器という役目を与えられたはずの村雨も、仮面ライダーとなってくれた。
 茂あたりはまだ認めていないのだろうが、共にショッカーライダーと戦った村雨を本郷は認めている。
 悪があるとこに、正義あり。表裏一体。本郷が、仮面ライダーが常に戦い続け、悪を滅ぼし続けてきた。
 だが、悪もまたしかり。
 光あるところには影がつき物。そして、この殺し合いでもそうだ。
 シグマ――許せぬ悪。
 バダンのほかにも、新たな悪の組織の誕生を本郷は予感する。
 ならば、倒さねばならない。
 正義の味方、仮面ライダーは降り立つ。
 正義をシグマに見せ付け、戦いに勝利するために。
 それが終わりのない、戦いであったとしても。
 一人でも救うために。


 フランシーヌ人形は代用品である。
 彼女の創造主、白金はフランシーヌの面影を、彼女の髪に求めた。
 そうして、彼の持つ錬金術と生命の水(アクア・ウイタエ)を使い、フランシーヌ人形は意思を持つ人形となった。
 しかし、いくらフランシーヌの髪を持っているとはいえ、彼女はフランシーヌではない。
 彼の創造主、白金が笑わないフランシーヌ人形に愛想を尽かし、消え去った。
 それから、フランシーヌ人形の長い長い旅が始まったのだ。
 己の生命の水(アクア・ウイタエ)を、自分を笑わせるために作られた自動人形たちに与えて、意思を持たせる。
 彼らを率いて旅をしたのは、ひとえに創造主に振り向いて欲しいから。
 笑えばきっと、戻ってくるからと信じていたゆえ。
 今では、フランシーヌ人形はその選択を後悔している。
 彼女は自分を分解させるために才賀正二に、ギイに、アンジェリーナに会い、エレオノールに愛情を注いだ。
 もっとも、フランシーヌ人形がエレオノールに対して抱いた感情が何か、自身は知らない。
 ただエレオノールが幸せであって欲しい。
 無心にそう思い続けただけだ。
 そのフランシーヌ人形は何の因果か、壊しあいに参加させられている。
 エレオノールを助けるため、溶けていく身体をフランシーヌ人形は実感している。
 だからここは地獄なんだと思った。
 エレオノールのような、儚い命を多く奪ってきた自分に対する罰。
 だから、彼女は目の前の男に問うたのだ。

「私を壊すのですか……?」

 その声色は、諦めの色がある。
 フランシーヌ人形は、目の前の男の顔を見つめた。


 本郷はその問いに、キョトンと女性を見つめる。
 テレビ局の屋上の金網を背にして、感情を隠した瞳がこちらに向けられている。
 夜空の星が瞬き、月光が二人の男女を照らす。強い夜風が彼女の長い髪を嬲り、彼女は手で髪を押さえた。
 やがて、本郷はフッと微笑んで力を抜き、PDAを地面において、危害を加える気がないことを示す。
 本郷が見るに、目の前の女性はある程度修羅場を潜ってきた雰囲気がある。
 身のこなしも軽そうだ。
 だが、その瞳にあるのは後悔の色。
 自分が壊れるのを受け入れようとする、諦観。
 嫌な感情だと本郷は思う。
 まるで、大首領の身体となる運命のために作られた存在だと、村雨が知った時の瞳と似ている。
 自分には茂のように荒療治で立ち直らせるなど無理だ。
 何より、相手は女性だ。そんな真似が本郷にできるはずがない。
 こちらに敵意がないことを示し、近付く。
 女性の表情は微塵にも動かなかった。
 本郷は意を決して、女性に己の決意を語り始める。

「俺はこの壊しあい……いや、殺し合いに乗っていない。君もそうなんだろう?」
「私も…………?」
 フランシーヌ人形が驚いたような様子で俯く。
 少し考え込んで、本郷へ顔を向け、
「そうですね。私は決めました。人間は多くの時間をかけて、たくさんの過程を得て、成長していくもの。
それを一瞬で無に帰すのは、間違いであることを、あの子に学びました……」
 フランシーヌ人形は目を瞑り、シグマが殺した少女を思う。
 身体構成の一部に機械を使っている……シグマの言葉だ。あの少女は機械と共に血を撒き散らしていた。
 つまりは、あの少女もエレオノールと同じく、もっと成長していく余地があったのだ。
 彼女が成長することは、もうない。そのことを考えると、フランシーヌ人形の体内が烈火のごとく燃え上がる。
「私は殺し合いに乗りません。多くの人の命を奪った償いとして、この終わった身体を殺し合いを潰すことに使いましょう」
 フランシーヌ人形は告げて、踵を返す。
 後ろを向いたまま、本郷に声をかける。
「ありがとうございます。名も知らない方。私はフランシーヌ人形。罪深き自動人形です。
シグマに反逆の意を示した私についてきてはいけません。あなたも危険です。ですから…………」
 別れようと告げたフランシーヌ人形の傍に、本郷が立つ。
 フランシーヌ人形は批難の意を持って本郷を見るが、相変わらず本郷は微笑むだけだ。
 『笑う』ということを、過去ではあるが求めたことのあるフランシーヌ人形は、その微笑を持つ本郷が少し羨ましかった。
 フランシーヌ人形に構わず、本郷は言葉を紡ぎだす。
「俺の名前は本郷猛。よろしくな、フランシーヌ」
「……私は本物のフランシーヌではありません」
「俺にとっては君がフランシーヌだ」
 本郷の言葉に、フランシーヌ人形は目を見開く。
 ゆっくりと歯車が回り、首を回転させて本郷の横顔を見つめる。
 揺るぎない表情。強い男の表情。
 才賀正二がアンジェリーナを、エレオノールを守る時にも見せた表情に似ていた。
「それに、自分を人形と呼ぶもんじゃない」
「私は人形です。あなたは私のことを知らないから、そういえるのです。
私は創造主にフランシーヌという少女の身代わりとして作られた、代用品の人形。捨てられた廃棄物。
そして、人間を傷つけてきた、罪深き人形。人の成長に、多くの過程が必要だったことを知らないなんて、理由にならない。
私はただの殺人人形です。ですので、本郷は別の人を救いに行ってください」
 後悔に満ちたフランシーヌ人形の独白を受け、それでも本郷は首を横に振った。
 彼女は知らないが、本郷もまた、彼女と同じ運命を辿ったかもしれないという過去がある。
 そして、彼はフランシーヌ人形と似た人物を知っている。
「君はこの殺し合いを良しとせず、シグマと戦うことを決意した。それは人形にできることではない。
れっきとした、自由と平和を求める人間のものだ」
 力強くフランシーヌ人形が人形でないと宣言する本郷を見つめ、胸の歯車が僅かに軋んだ。
 この軋みは何なのか、疑問に持つが、フランシーヌ人形は本郷と共にいるのも悪くないと考え始める。
「人の話を聞かない人ですね、本郷。たとえ私が共に参ったとしても、私は身体能力を人間並みに落としています。
足手まといになりますよ?」
「構わないさ。俺は…………」
 フランシーヌ人形は、その日に見た光景を一生忘れない。

「一人でも多く守ればそれでいい。そのためなら……俺は戦える」

 力強い、それでいて安心感を与える笑顔。
 フランシーヌ人形が見た最高の笑顔たちに迫る、誇り高い微笑み。
 すがすがしい笑顔にフランシーヌ人形は見惚れて、フッと力を抜く。
(いつか、私もああいう笑顔を浮かべてみたい。そうすれば、もっとエレオノールは笑ってくれる。そんな気がする)
 叶わない夢だろうがと内心呟くフランシーヌ人形の顔に、僅かだが微笑が浮かんでいた。
 彼女自身はそれに気づいていない。
 ただ一人の観客にして、目撃者の本郷は、フランシーヌ人形を優しく見守っていた。
 自動人形と仮面ライダーの歯車が、カチリと合わさった瞬間である。


【C-7 テレビ局屋上/一日目・深夜】



【フランシーヌ人形@からくりサーカス】
[状態]:健康、落ち着いてきた模様。
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、未確認支給品1~3(本人未確認)
[思考・状況]
基本思考:罪滅ぼしのために、主催者を倒す。
1:本郷と一緒に行動する。
2:私は生命の水に溶けて無くなった筈では……
3:いつか、本郷のような笑顔をしてみたい。
※原作死亡後(25巻第32幕微笑(後編))から参戦。


【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
[道具]:支給品一式、トマト×100@THEビッグオー
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:フランシーヌ人形と共に行動する。
2:テレビ局及び電波塔の捜査。
3:殺し合いに乗っていないもの保護、及び合流。
4:風見、敬介、茂、村雨と合流。
※原作8巻(第32話 称号)から参戦。



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017:フランシーヌ、仮面ライダーと出会う フランシーヌ 056:約束をしよう、あなたと
017:フランシーヌ、仮面ライダーと出会う 本郷猛 056:約束をしよう、あなたと





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