モバイル・レディ ◆2kGkudiwr6


先ほど自ら破壊した寸胴の小型自律行動メカには目も繰れず、先ほど発射した武器を付け直す。
乾坤圏というこの武器、予想以上に体力を消耗する。威力こそあるが乱用は避けるべきだろう。
一応、回復する手立てはある。先ほど破壊したメカの所持品であったエリクサーと呼ばれる薬品だ。
説明によれば、これは体力と魔力ともに全快する薬品だと言う。しかし、これに頼るのは危険が過ぎる。
一回で全回復できるが、それが一本しかない。つまり、回復は一回しかできない。
魔力が全快のときに、傷の回復のため飲むのはベストかベターか悪手か。出来うる限りタイミングを計らねばならない。
その点から考えても、乾坤圏はここぞという場面でのみ使うべきである。先ほどのように。
幸い、補助の武器はある。倒した相手の支給品の一つには質量兵器があった。
文字通りの拳銃だがサイボーグ対策のために設置された機関が使用する特殊仕様であり、
多少の装甲は撃ち抜ける程度の威力だと言う。補助には問題ない。
また、生体センサーという有用なアイテム――こちらは元々持っていたものだが――もある。
所持者以外の生体が接近した場合、振動して知らせるものだ。不意打ちはある程度これで防げるだろう。
ただ、先ほど破壊したメカには反応していなかった。生体でなければ反応しない、ということだ。
結論。有用な装備・道具に恵まれてはいるが、確実な戦果を期待できるものはない。
任務続行に関しては今後も警戒を払って行うべきだろう。

私――タイプ・ゼロはそう結論し、歩き出した。



ともかく、オイラは武美とか言う女と組む事になった。
コイツは戦えないそうだし、見る感じ普通の女と変わんない以上オイラが頑張るしかないだろ。
……だから、もしコイツがいい武器を持っていたら是非とも譲ってほしいもんだ。暴れたいし。
ちなみに、オイラに支給されたもので他に武器と呼べるものはウィルナイフなるナイフ一本。
なんでも切れる剣がある以上いらないけど……まぁ、予備にはなるか。

「武美はなんか武器ねえのか?」
「ええっと……」

言われてPDAをいじり出す武美。どうやらまだ確認してなかったらしい。
……土壇場慣れしてねえな、こいつ。

「なになに、るがーみにじゅうよん? ……セミオートライフルだって」
「ライフルねぇ……悪くはねえんだけどなー。
 やっぱオイラには連射して弾をばら撒く方があってるぜ」

オイラとしては一気に広範囲をぶっ飛ばせる銃の方がいい。
ガトリングがあるのにわざわざ普通のライフルを持つ必要があるものかと言えば、疑問だ。
それに、アポロマグナムとやらは二十二口径にも関わらず戦車をぶち抜ける威力らしい。
わざわざライフルも持つ必要はねえだろ。


その後も色々と聞いてはみたが、結局オイラの好みに合うようなものはなかった。ちっ。
とりあえず武美の希望で市街地(つまり西のコロニー)へと歩き出すことになったものの、
黙ってるのもあれなので互いの生い立ちとかそういったことを話す事になった。
武美から先に話すことになったが、コイツは自分を作ったとこから逃げ出して普通に暮らしているらしい。
もっとも、こっそり自分の能力を使って金稼ぎしてるらしいけど。
株で儲けたりクイズでカンニングしたりしてる辺りちゃっかりしてやがる。
ネットでロボットが暴れるのを観測したって記録を見つけたこともあるとか。それ、なんてガン○ム?
……まあ、オイラたちがやってたことを考えればそんなのあっても不思議じゃない。
案外、オイラ達がやってた騒ぎもコイツに知られてたりするのか?

「ま、せっかくおかしな力を持っちまったんだからそれを使って楽しく暮らすのは悪くないだろ?」
「へへ、ありがと。
 そういうクロちゃんはどんな風に使ってるの?」
「そりゃあ、街中でガトリングぶっ放したりとか。生身の頃から銃は撃ってたけど」
「…………」

呆れられたのは気のせい……じゃねえな。
さて、流れとしてはそろそろオイラの番なわけだけど……どっから話すか?
そう思った、矢先だった。

オイラにとっては聴きなれた音が鳴って、地面が抉れた。

「……え?」
「隠れろ!」
「わ、わわ!!」

呆然としてた武美を蹴飛ばして木の影に隠れさせる。
二発目着弾。幸いなことにこっちも外れた。オイラもすぐさま同じ木の後ろに隠れる。

「なに、なになに!?」
「敵だろ、どう見ても!」
「猫なのに気付かなかったの!?」
「夜目は利かないんだよ!」

文句を言う武美に怒鳴り返しながら、アポロマグナムを構えつつ銃声の方を確認。
相手は撃つのはへたっぴらしい。らしいが……夜目は恐ろしく効いている。
オイラには相手がどこにいるか全然見えねえのに、相手はオイラ達がいる場所を完全に把握して撃ってやがる。
オマケに、銃声からすれば相手の得物は拳銃らしいのに。

「うおっ!」
「きゃあ!?」

背にしていた木があっさり砕けやがった。普通の拳銃じゃねえ。
幸いなことは、射程は大して無さそうなこと。実際弾も逸れまくってる。その辺は普通の拳銃らしい。
だが生憎、夜目が利かないオイラじゃここから狙う……てか、相手を見つけるのはムリ。と、なれば……


「武美、遠くに離れてろ。邪魔だ」
「え……クロちゃんは?」
「決まってんだろ? 暴れに行くのさ!」

ニヤリと笑みを浮かべて、一気に飛び出した。
見えないなら、近づいて相手を見つければいいだけの話。
それに、相手が銃を撃ったこともないようなド素人なのはとっくに分かってる。
なら、オイラが相手を見つければそれで終わり。銃の腕でも威力でも負ける気はしない。
突っ走るオイラは相手には丸見えなんだろう。乱射してきたが……ほとんど当たってない。やっぱ素人だな。
が、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。右腕に一発当たったのに気付いて、顔を顰めた。

「ったく、効くぜ……」

予想通り、普通の拳銃じゃなかった。少し装甲がへこんでやがる。さすがに喰らい続けるのはお断りだ。
けど、それだけの成果はあった。おぼろげに相手の輪郭が見え始めて……

「ってオイ、待てコラ!」

相手はあっさり逃げ出した。しかも予想以上に速い。足につけてる変なパーツのせいか?
張り合いがねえなぁ……そう呟いてから気付いた。逃げるには足音のする方向がおかしい。
遠ざかるというよりは、まるで迂回しているような。
そのまま僅かに響き続ける足音……その方向に気付いてぞっとした。

「……んのヤロー!」

慌てて追いかける。遮蔽物を使って身を隠す、なんて余裕はない。
足音が聞こえる方向は横へと変わっていた。相手は、オイラを無視して武美へと向けて走ってやがった。
……これも、狙い通りだったんだろう。
待ってましたと言わんばかりに相手が拳銃を乱射してくる。とっさに避けたが反撃する余裕は無い。
そうしてなんとか姿勢を直した時には、相手はまた夜闇に隠れている。

「ったく、これだから一緒に行くのは嫌だったんだ!」

吐き捨てる。
相手の戦い方はどこまでも合理的で冷静で、だからこそ腹が立つ。
オイラが狙いに乗って不利な戦い方をしなければ、武美を狙うってわけだ。
相手は武美どころかオイラより足が速い。夜目も利く。完全にあっちのペースだ。
ついでにいえば、後ろを気にしながら戦うこと自体性に合わねえ。好き勝手暴れたい。
せっかく三連射できる武器だってのにまだ一発も撃ってねえぞ畜生。
アポロマグナムとガトリングを連射してそこらへんの木を全部無くすことも考えたけど、
どっちみち夜目が利かない以上相手を見つけられない。オイラが隠れられなくなるだけだ。
……そうこうしている間にも相手は走り出してやがる。多分狙いは同じ。
ごていねいに足音を響かせているのは脅迫ってことか。
相手の速さを考えれば、音だけ頼りにして適当に撃っても当たるとは思えない。
いくら威力が高くても三連射が限界の二十二口径であることは変わらない。弾をばら撒ける範囲が狭すぎる。
ガトリングはその点なかなかだが……もっとわかりやすいやり方がある。

――要するに。この辺全部明るくしちまえばいい。

走り出す。
再び相手が乱射してきた、が。オイラは回避行動を取らず、後ろを向いた。


「こなくそっ!」
「…………!」

そのまま銃弾を喰らいながらも、尻尾ミサイルをぶちかます!
狙い通り盛大に爆発。放っておくと火事になりそうだが無視だ。というか、火事になっちまえ。
爆発はそれほど相手にダメージを与えなかったらしいが、それもいい。
一瞬だが爆炎に照らされた青色の髪の女をオイラの目は見逃さない!
すぐに暗くなっちまったが構うもんか、適当にアタリをつけてアポロマグナムを三連射。
同時に全力で走り出して……やっと見つけたぜ。
見る限りマグナムは当たらなかったみてえだが牽制にはなったらしい、
ようやく顔を拝むことになった相手は回避行動のために体勢を崩し、銃を構えていない。
ならやることなんて決まってる。アポロマグナムをぶちこもうとして……

「いっ!?」

いきなり相手が腕輪を撃ち出した。しかもオイラのロケットパンチとは威力が違うってレベルじゃねーぞ!
幸い少し右腕を掠めた程度だ、大した怪我はない。
……いや、オイラ自体は無事だったけれど。つけていたアポロマグナムが取れた。すぽんと。
そのまま遠くに落ちるアポロマグナムを見て、ここはボンボンじゃないからか?なんて考えが一瞬掠める。
が、今はそんなことを気にしている場合じゃない。のんびりしていたら追撃されて終わりだ。
回収している余裕は無い。もう一つの武器、なんでも切れる剣を取り出そうとして――

「な、ない!?」

腹に入れた手がスカっと空を切った。あんのクソハゲ、盗んでやがった……!
ウィルナイフを入れておけばよかったと思うが後の祭り。
相手の女が他の腕輪を撃ち出そうとして……

今までとは違う、銃声が響いた。


木を背後の支えにし、立膝姿勢をとる。変形膝射の形。
森林、夜闇。この条件ならばこの距離でもそうそう見つからないものだが、高低差がない。
さらに相手の視力が――自分のように――異常ではない保証もない。
すぐに木の影に隠れられるような形を取るほうがベストだろう。
できるだけ木や骨に上手く体重を掛けられる姿勢を探りながら、銃を構える。
スコープなしのライフルで狙撃するなど通常行うことではない。
しかしこれ以上の狙撃向きな武器はここにない。土嚢すらない。
そもそもこれは自分のものではないのだから、高望みすべきではないだろう。

「ねえ……大丈夫なの? クロちゃんに当てたりとか」
「黙っていろ」

脇にいるモノも観測手の役を成すには無能すぎる、と断言できる。これは高望みしても罰は当たるまい。
狙撃を行う際に雑音は邪魔でしかない。それこそ、狙撃の際は心臓の音でさえ雑音になりうるのだ。
全身全霊をスコープ(もっともルガーにスコープはないので、この場合照星になる)に集中し、
ターゲットとスコープの十字(ルガーにおいては照門)の一致を待ち、維持する。それが基本。
通信などそういった雑音を処理してくれる観測手は優秀だが、それどころか雑音を作るような観測手はお断りだ。

……もっとも。自分を殺す術にならば長けている。

照門と照星を一致させる。そして支点を大事にしつつ銃を微妙に動かし、相手の姿が一致するのを待つ。
距離はかろうじて頭が判別できる程度。紫、あるいは青色の髪が視認できるだけだ。
夜の暗さを考えれば、距離は恐らく200m前後。ヤードに直せば約220。
今が昼で尚且つ静止目標ならば、それこそ十発撃って十回当てる自信がある。
しかしこの夜闇、そして森林は実際の距離以上に狙撃手の発見及び狙撃の成功を難しいものとする。
更に、相手である人間(である保証はないが)は通常のそれより遥かに機動性がある。
しかも小刻みに多方向へ動いている以上、クレー射撃とはレベルが違う。当てるのは間違いなく難しい。

しかし、プラス要因も相応にあるのも事実。
一つ、自分は通常の人間より遥かにいい視力をしている。特に動体視力は、銃弾を切り払えるほどに。
二つ、ここは宇宙空間の中の密閉コロニー。ゆえに、風に左右される心配が少ない。
三つ、クロなる猫型サイボーグは遠距離戦が得意ゆえか射撃戦を重視しあまり動かない。誤射の心配を減らしてくれる。
そして四つ――

脳よりむしろ脊髄が命令を下した。
指が引き金の遊びを無くす。銃身から放たれた銃弾は――果たして、相手の腕を掠めただけだった。
致命傷どころか、腕を動かすことさえ仔細あるまい。

――だが、失敗ではない。ベストではないが、ベターだ。

そのまま素早く木の影に隠れる。しかし……隠れる寸前、僅かに見えた相手の顔の動きを見て、オレは状況を察した。

「……位置を勘付かれたか」
「え、うそ!?」

脇にいるものはいちいち声を上げる。もっとも、彼女にはともかく自分にとって別段不思議なことではない。
この距離、夜闇でも容易く視認できる機能を持っているのだろう。現行技術でも可能なことだ。
しかし――オレにとっては予測どおりに、だが――向こうで戦闘が再開された。

「……でもこっち来る様子ないけど」
「当然だ。主目的は威嚇に過ぎん」

彼女の言葉に、短い言葉のみを返す。恐らく、相手は撤退を開始したはずだろう。
四つ目、無理に致命傷とする必要はない。
致命傷でなくとも、当てることで――隙さえあれば、容易く射殺できるのだと相手に思わせられる。
むしろ、遠くから狙われているということを示すことこそが本義なのだ。
警戒する対象を二つに増やすことになった相手は、前衛のみに集中することができなくなる。
撹乱・士気低下という狙撃手の主任務は十分に果たした。とはいえ、第二撃も準備しておく必要はあるだろうが。

「……よくわかんないけど、クロちゃんはもう大丈夫なの?
「戦闘力から考えれば、恐らく」
「よかった。ありがと、プロフェッショナルさん」
「……なんだ、それは」
「だってまだ名前聴いてないじゃん。いかにもって感じでしょ。
 こう呼ばれるのが嫌だって言うんなら、名前教えて欲しいな。そうそう、あたしは武美」

不快ではないが嬉しくもない。
自分がプロフェッショナルとして任務を果たすのは当然であり、そうでなければ存在する意義がない。
相手は名前を名乗ったが、本名を知っている以上偽名を名乗られても意味はない。
顔を見た時点で、彼女の本当の名前は知識から呼び起こしている。
……気配を感じ、予定を変更して追跡するにはあまり価値のないものだ。
もっとも、オレが興味を抱いたのはむしろ猫型サイボーグのほうだが。
ともかく、自分の名を名乗り返しておく。

「……灰原だ」
「灰原さんね、うんうん。それにしても、あっさり信用してくれたね。あたしとは初対面なのに」
「経歴から考えればお前が殺し合いに乗っている可能性は低いだろう、モバイルレディ」

脇にいる女性――脱走したアンドロイドのうちの一人――に、オレは平坦にそう告げた。


「……逃がしちまったか」

舌打ちした。
よく分かんねえが、途中で放たれた援護射撃はオイラへと放たれたものじゃねえ。
これ幸いと追撃をかけたが、相手も不利だと感じたらしい。数分近くかけて結局逃げられちまった。
まあ、アポロマグナムが遠くに落ちたせいでウィルナイフで戦うしかなかったのも原因だけど……
誰もいなくなった森でしぶしぶアポロマグナムを回収しながら、周囲を警戒する。
狙撃した奴が武美じゃないことは確実だ。あいつにそれだけの腕があるとは思えねえ。
できるんならもっと早くそれだけの実力を発揮してる。明らかに他の奴の仕業だ。
もっとも、そんなことをしていたのは……結果から言えば無駄だった。

「やっほー! 無事だった、クロちゃん!」

この辺にいるのは、武美一人だけ。第三者の気配はない。
舌打ちしたものの、とりあえず問いただしてみる。

「それより、さっき狙撃した奴はどこにいったんだ?」
「え? な、なんのことだか……」
「……どう聞いても銃声はお前が来た方向からしたぞオイ」
「えっと、風来坊……
 そう、灰原さん、あ、これ助けてくれた人ね、は風来坊みたいな人で! 一人で戦うって言ってたんだよ」
「いるわけねーだろそんな奴。少なくともオイラと顔を合わせるくらいするはずだ」
ウィルナイフを腹にしまいながら突っ込む。この顔は嘘を吐いてる顔だぜ、明らかに……

「クロちゃんはそんな感じだったじゃん」
「…………」

痛いところを突かれた。確かにそうだ。

「さ、それよりここは危ないからどっかいこ!
 さっきの爆発で人が集まるかもしれないし!」
「…………」

歩き出す――言うまでもなく早足で――武美を見て、オイラも肩を竦めながら歩き出した。
要するにそこまでしてこっから離れるほど、灰原って奴とは一緒にいたくないと。
無事だったところを見る限り……武美の敵じゃないが決して一緒にいたくはない奴ってことか。
……どんな奴なんだ?



明らかにクロちゃんはあたしの言葉を信じてないけど、ともかくついてきてくれてる。
質問する様子も無い。だからそれでいい。早足で歩きながら、あたしはさっきの会話を思い出した。

――それだけで、腹が立つ。

「問題は無い。お前が殺し合いに乗っている可能性は低いだろう、モバイルレディ」
「え?」

それを聞いた時、空気が凍ったように思えた。実際に凍ったのは、あたしの思考だけれど。
モバイルレディ。大神があたしに付けたコードネーム。
あたしは友子達みたいにテロリストやってるわけじゃないから、大神についても詳しく知らない。
知らないけど、大神があたしたちに対してとった行動くらいは大まかに知ってる。
そして、あたしをこの名で呼ぶ奴がどんな奴らかってことも。

……つまり、こいつは大神の一員。それに本当の目的を知ってるくらい、中枢にいるレベルの。

まずい、と思った。確かライフル以外にも、支給品の中に何か武器があったはず。
けど、今から出して間に合うんだろうか……そもそも、あったところで勝てるの?
そう混乱するあたしを無視して、平坦に言葉は続く。

「CCRのリーダーとして、お前に関してはある程度報告を受けている。
 能力、用途、そしてテロ活動を行った様子が確認されていないこともだ。
 サイボーグ同盟の一員ならともかく、逃げ出したお前を積極的に殺しにかかる必要はない。
 帰ってから今更テロ活動を始めようなどと愚かな真似はしないだろう」

……思考の方向を慌てて切り替えた。
それは、つまり。


「……ここでは任務とか考えるだけ無駄だから協力しようってこと?」
「多少の差異はあるが、肯定だ」

思わず、溜め息。
まあ、CCRと組むなんて色々と嫌だけど……言っていることはおかしなものじゃないと思う。
まず生きてなきゃなんにも出来ないんだから。少なくともこの時はそう思った。
あたしが納得したのを理解したのか……クロちゃん達の方向に注意を向けながら、灰原は自分のPDAを出した。

「オレのPDAにルガーのIDを登録してもらいたいのだが」
「え……ああうん、いいけど」

PDAをぴぴっといじって、灰原のPDAにライフルのIDを入力する。
CCRの人間と一緒にするものとは思えないほど、まっとうな行動だ。
多少警戒が緩んだからだろう。思わず、PDAを返しながら愚痴っていた。
……今思えば、しなきゃよかった。しなきゃこいつにとっての当然を知らなくて、普通に行動できただろうから。

「……なんでわざわざ警戒されるような呼び方したわけ?」
「他に信用するに足る理由がないからだ。組んでいるということは理由としては弱い。
 殺し合いをするものが組むという可能性は低いがないわけでもない。二人程度なら特にな。
 危険人物が組む具体例としては、サイボーグ同盟の不良品どもを見れば分かる。
 ならば、あらかじめ明かしておくのが無難だろう。潜入を疑われては困る」

……多少ムカつくけど、間違ってはいない答えだ。
答えるために友子達をごく自然にバカにする必要があったようには思えないけれど。

「……あたしがサイボーグ同盟みたいな考え持ってるかもしれないから殺しておくか、とは思わなかったの?」

だから、思わず言ってしまった。ここが、分岐点――互いの根本的な違いが、明らかになる場所だった。

「主催者への対策として情報分野の能力は非常に重要だ。
 代用品が存在する可能性は極めて高いとはいえ、保険は掛けておくべきだろう。
 ハッキングの方法や道具……あるいは参加者が他に全くなければ詰む」

……かなりムカつく言い草が聞こえたのは、幻聴じゃない。残念なことに。
反論する余裕も……いや、その言葉の意味を把握するより先に、CCRのリーダー殿はご丁寧にも続けてくれた。

「それに失敗作のお前を回収したところで、大神グループに大した利益はあるまい」
「…………!」

唇を噛む。
保険。失敗作。だから殺す必要はない。
こいつにとって、あたしのその存在はその程度でしかない。
しかも何よりムカついたのは、表情と声音だった。
どこまでも冷静。どこまでも冷静。どこまでも、日常通り。
コイツは馬鹿にしようと思って言ったんじゃない。いや、そっちの方ならまだ慣れてるからいい。
コイツにとって、サイボーグ同盟のみんなを見下すのは息をするくらいに当然のことで。
あたしが失敗作なのは、日が昇ることくらいに常識なんだ。
――ああそうだ、分かってる。自分が失敗作だってことくらい。
……けど、何の心の準備もなく。
他人から当然のようにそういわれて平気なほどに、あたしは強くなかった。
そして、何よりむかついたのは。
こいつはそんなあたしの思いを全く汲み取る様子もなく……表情一つ変えずに、向こうを見ていた。

「……猫型サイボーグが相手の撃退に成功したようだな。
 紹介を頼みたいところだが」
「……どっか行って」
「む?」
「あんたとは組まないって、そう言ってるの!」

気がつけば、そう叫んでいた。
手が、声が震えている。
馬鹿げている。間違っている。そんな理屈を、感情が凌駕する。
……だから、目の前にいる奴は理解できないって顔になる。

「……自らの能力の程度は理解しているだろうし、私達が組むことに関しても」
「耳悪いわけじゃないでしょっ……!!」

この時ばかりは、泣けないことに感謝した。
こんな状況で目が涙で滲んでたりしたら、情けないにもほどがある。
……もっとも表情を見る限り、相手はあたしのことを情けない奴と思ったらしいけれど。

「寿命タイマーを仕込まれていながら大神に反逆しなかったことから察するに、
 他の不良品どもよりまともに物事を考えているだろうと判断していたのだがな。
 あの猫型サイボーグの戦闘力はなかなか惜しいものだが……まあいい。
 互いに死んでいなかったならば再び巡り合うこともあるだろう。
 ルガーの譲渡、感謝する」

そう冷たく告げて、灰原はどこかへと消えていった。
温かみなんてないどこまでも事務的な口調、どこまでも論理的な行動に、
僅かな――けれど確かな、見下した音色を込めて。

一つだけ、決めた。
……生き残ってやる。絶対に。
ここから脱出するためのすごい功績を残して。
そうして胸を張って風来坊さんのところに帰ってやる――絶対に。


【E-7/一日目・黎明】
【クロ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:装甲各所に軽い凹み
[装備]:アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS、
    ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(なんでも斬れる剣があった場所に収納)
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1(武器ではない)
[思考・状況]
基本思考:ハゲ(シグマ)をぶちのめす! その後剛を殴る。
1:とりあえず、ハゲ(シグマ)の居場所を探る。そして暴れる。
2:ミーと合流して、爆弾を何とかする。
3:とりあえず、今は武美を深く追求する気はない。
※内臓ミサイルは装備されています。尻尾ミサイルは使用済み。
※ガトリングやなんでも斬れる剣が没収されていることに気づきました。
※参加時期は異世界編(五巻)終了後です

【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1~2(クロ好みの武器はないが武器は最低一つある)
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:シグマの居場所を探る。そのため市街地に移動したい。
2:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。


【F-6/一日目・黎明】
【灰原@パワポケシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:リシュウの仕込み杖@スーパーロボット大戦シリーズ
   スタームルガーミニ14(残弾29)@現実
[道具]:支給品一式、ゆうしゃバッジ@クロノトリガー
[思考・状況]
基本思考:シグマとその協力者達の捕獲、不可能であれば破壊して本社に帰還する。
     未知の技術の情報収集、及び回収して大神に持ち帰る。
1:空港を目指し、情報を集める
2:使えそうな人材の確保、油断はしない
3:この戦場からの脱出
※本編死亡後からの参戦です
※武美にあるのはせいぜい保険程度の価値だと思っていますが、クロはそれなりに高く評価しています。

【E-6 森林/一日目・黎明】
【ギンガ・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】左腕にかすり傷と切り傷、右腕に軽い火傷 疲労(大)
【装備】フットパーツ@ロックマンエックス、乾坤圏@封神演義
   Glock 19(CCR仕様、弾数2/15)@パワプロクンポケット8、
   予備マガジン4、生体センサー@メタルギアソリッド
【道具】支給品一式×2(ギンガ、王ドラ)、エリクサー@クロノトリガー、不明支給品0~1
【思考・状況】
基本思考:敵(ナンバーズ以外)の破壊
1、敵を探し、破壊する

【エリクサー@クロノトリガー】
スクウェアお馴染みのHP・MPを全回復するアイテム。一本だけ。

【Glock 19(CCR仕様)@パワプロクンポケット8】
弾数15発の自動拳銃。予備マガジンは五つ(だったが一つ消費)。形状などは一般的なものと変わらない。
ただしCCRの使用する火器はサイボーグを一発で撃ち抜ける威力を保持しており、
パワポケ世界の技術水準を考えても現実のそれより威力は高いと思われる。

【生体センサー@メタルギアソリッド】
敵兵が接近すると振動し、敵兵が近づくに連れて振動が強くなる。

【スタームルガーミニ14@現実】
セミオートライフル。弾数30発。

【ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー】
サイボーグ化した凱が左腕に収納しているもの。
凱の意志次第で切れ味が変わる他、凱が感知できる特殊な電波を発信している。

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007:猫と女と太陽と クロ 067:そいつは人情派サイボーグ
007:猫と女と太陽と 広川武美 067:そいつは人情派サイボーグ
012:暗闇の旅路 灰原 069:死体を前に、灰原は問う
006:ギンガ幻影 ギンガ・ナカジマ 065:全ては、破壊のため





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