強者をめぐる冒険 ◆hqLsjDR84w



 別に意図したわけではないのだが、目の前に広がるふざけた光景に反射的に歯を軋ませてしまう。
 戦う相手と武器――特に宝貝の類――を求めて移動していたら、連絡通路を見つけた。
 入るかどうか迷ったが、やたらとゴチャゴチャした住宅街――崑崙山とも金鰲島とも、どこか雰囲気が違った――を移動するのは癇に障るので、入ることにした。
 暫く経ち、連絡通路の終わりが見えたと思って外に出れば……一面雪景色が広がっていた。

 考えるまでも無い――ナメられている。
 脳内に、嘲けるような笑みを浮かべているシグマという男の顔が浮かび上がる。
 アイツは気に入らない。
 いきなり呼び出して、壊し合えだのぬかし、歯向かった女を殺し、爆弾を仕込んだだのぬかし、俺が攻撃するよりも速く移動させた。
 思い出しただけでイライラする。アイツは気に入らない。
 さらに、アイツは俺の宝貝を全て剥ぎ取った。
 気に入らない。アイツは絶対に殺す。
 その為にも宝貝を見つけたいのだが……

「ちッ……」

 舌打ちを吐き捨てる。
 よく分からんことを言っていた青髪の女と戦ってから、何一つ動くものが見つからない。
 最初に呼び出された部屋では、沢山の強い『におい』を感じた。
 青髪の女も強かったが、あの場にはそれと同等のにおいのする奴等が何人もいた。
 にもかかわらず、さっきからそのにおいが全くしない。
 馬鹿げているにも、程がある。
 壊し合え――いや、宝貝人間にも魂は宿るのだから――殺し合えと言うのなら、もっと狭い場所に移動させればよかったものを。
 わざわざこんな場所に移動させるなど、何を考え――

「ッ!!」

 考えながら移動していたら、突如何かの気配を感じた。
 かつて四聖の李興覇との戦闘中に感じた、殷の大使聞仲の気配にもどこか似ている。
 しかし、違う。聞仲では無い。そもそも奴は太公望が封神させた。
 聞仲ではないが……このにおいは知っている。
 そうだ、アイツだ。
 クク、やっと見つけた。俺の相手になりそうな奴を。
 待っていろ、すぐに行く。


 A-4北部上空。
 そこに真っ白な長い毛を持った犬が、参加者の一人であるナタクを背に乗せて飛行している。
 いや、それは犬ではない。犬の形をしている、仙人や道士の力を増幅させる道具――『宝貝』。名は哮天犬。
 並の仙人を遥かに凌駕する実力を持ち、天才道士としてその名を仙人界に轟かすヨウゼンが、多大なる信頼を寄せる宝貝だ。
 哮天犬は本来ならかなりの速度を出せるのだが、現在はせいぜい常人が走るより少し速い程度に制御されている。

「ッ!!」

 それまでイライラとぶつけようの無い怒りを募らせていたナタクが、唐突に凄まじい勢いで首を右に振り、両の目を見開く。
 視線の方向はそれまで見ていた、軍事基地の存在する北方向とは別。マップに鉱山が描かれた北東。
 数秒ほど目を見開いてから、目を閉じる。
 そしてゆっくりと瞼を上げると、顔面にニィと笑みを浮かべ、右腕を前に伸ばす。

「哮天犬」

 バトル・ロワイアル開始以後、宝貝の使用による体力の消耗が増していることに、KOS-MOSとの戦闘を終えて暫くしてからナタクは気付いた。
 それ故に、見つけた強者と全力で戦いたいナタクは、これまで哮天犬に乗っての移動を封印していたが――それを解禁する。
 ナタクは哮天犬の名を呟くと、哮天犬をさらに上昇させ、そのまま哮天犬を全速力で駆動させる。
 凄まじい速度で宙を駆ける哮天犬の上で、ナタクは浮かべた笑みを隠そうともせず、心を躍らせていた。
 その進行方向は――北東。

 何故、ナタクが哮天犬での移動を解禁したのか。
 理由は至極単純。
 逃がしたくないのだ、丁度いま嗅ぎ取った気配の持ち主を。
 何の気配か。ナタクが、先ほどからずっと求めいていたもの。即ち、強者。
 さらに詳しく言えば、最初にシグマがバトル・ロワイアルの開始を宣言した部屋で、その存在を参加者に派手にアピールした男――T-1000。
 ナタクはT-1000が発していた威圧感――ナタクのいう、強者のにおい――に、惹かれた。T-1000との戦闘を心から望んだ。
 だからこそ、やっと見つけたT-1000を逃したくはなかった。





 ナタクが哮天犬に乗って移動を開始してから、少し時が過ぎる。
 先ほどナタクが抜けてきた連絡通路まであと数メートルという所に、緑色の髪のロボット――マルチが辿り着いた。

「ふう、やっと着きました~」

 マルチは疲労と安堵が入り混じった溜息を吐くと、そう呟く。
 動くたびに少しずつ水滴が飛び散るほどに、彼女の服――上半身には、今何も着込んでいないが――は、びしょぬれになっていた。
 確かにマルチは雪景色が広がるエリアA-4から歩いてきたが、別に雪が降っているというわけではない。
 それにもかかわらず、何故マルチはそこまでびしょぬれになってしまっているのか。それは――――

「あうう、本当に長い道のりでした。雪道は大変です……」

 マルチはそう言うと、ガクリと頭を垂らす。
 そう、彼女の服がびしょぬれになってしまっている理由。
 それは、何度もズッこけたからだ。
 断っておくが、別にライディング・ボードを使いこなそうとか考えて、それに飛び乗ったりしたわけではない。
 ただ普通に歩いていただけなのに、転んだのだ。それも、何度も。それはもう、何度も。
 ……これでメイドロボットとしての仕事をこなせているのか心配になってしまうが、まあそれは置いておこう。

「街で服が見つかれば、いいんですけどねえ……」

 スカートを両手で押さえ、そのまま力を込めて捻ることで染み込んだ水を抜きながら、マルチは期待と不安を込めた呟きを漏らす。
 数回スカートを搾ってある程度水分を抜き取ると、マルチは連絡通路に視線を流す。

「では行きましょうか。
 街なら色んな人が集まるでしょうから、もし洋服屋さんがなくっても誰かを壊して、服を貰えばいいですもんね」

 そう言うと、マルチは連絡通路へと足を踏み入れた。
 いつバトル・ロワイアルの参加者に出会っても攻撃できるように、ゼットセイバーは右手に携えてある。
 乗って移動することは諦めたが、盾には使えるのでライディング・ボードは左手に構えてある。
 そして、顔には笑みを浮かべていた。思考は壊れてしまっても、その笑顔だけはどこまでも普段の彼女だった。

 ……数歩進んだところで、またしてもマルチは足を滑らせズッこけた。
 雪道を歩いてきたために、踏み固められたことで氷塊となった雪が靴の裏に付着していたのだ。
 こういうところもまた、どこまでも普段の彼女だった。



【A-4 連絡通路/一日目・早朝】
【マルチ@To Heart】
[状態]:上半身裸。背中・腰部損傷(行動に支障無し)。シグマウイルスに感染。服が濡れている。
[装備]:ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼットセイバー@ロックマンXシリーズ
[道具]:支給品一式(不明支給品0~1)
[思考・状況]
基本:???
1:町に行って服を探す、他の参加者からはぎ取ってもいい。
2:移動手段が欲しい。
3:急いでセリオさんたちを見つけて破壊しますっ♪
4:ライディングボードは使えそうにないです……




(この辺りのはずだが……)

 感じ取ったT-1000の気配の元へと移動していたナタクが、それまで最高速で駆動させていた哮天犬のスピードを緩める。
 ナタクが飛んでいるのは、A-3に連なる鉱山の上空。
 ナタクは戦闘を求めるもの特有の嗅覚で、強者が存在するか否かや、その強者がどこにいるかを認識できる。
 離れた場所にいたのにも関わらず、かつて西岐へと降り立った聞仲の存在に気付いたときのように。
 仙界大戦中、崑崙山の仙人及び道士に無断で金鰲島内部で、王天君を捜索していたヨウゼンの気配に気付き、合流できたときのように。
 とはいえ、バトル・ロワイアルにおいて非常に有効なその能力をシグマが制限しないわけもなく。
 今のナタクには、せいぜい『この辺りに、最初の大広間で目をつけたシグマの影武者がいる』くらいしか分かっていない。

 戦う時は何も考えずに、ただひたすら撃つ!! 撃ち続ければ、必ず一つくらいは当たる!!

 以上が、ナタクの戦闘に対する考え。
 その自論に従い、どこかにいるはずのT-1000を燻し出そうと、M.W.Sを右腕に装着。
 ビームランチャーとボムを入り混ぜた弾幕を展開させれば、T-1000は必ず現れる――そう考えて、右腕を下に向ける。
 が、そのまま数秒ほど考え事をしているかのような表情を浮かべると、舌打ち。下に向けていた右腕を元の位置に戻す。
 そして己が跨る宝貝の名を呟くと、そのままゆっくりと地面へと下降させ、哮天犬を地上三メートル程度――T-1000探すのにちょうど良い高さ――を低速で飛行させる。

 別にナタクは、自論を曲げたわけではない。今も彼の自論は、彼の中にちゃんと存在する。
 ならば、どうして彼はM.W.SでT-1000を燻り出そうとしていたのを止めたのか。
 答えは、ただM.W.Sのエネルギー消費を勿体無がっただけ。
 戦闘で消費するならともかく、ただ相手を燻り出すのにエネルギーを消費するのは惜しい――ただ、そう考えただけだ。


 城茂との戦闘により、ボディ四散。
 即座にPDAの回収、再生を試みる。
 PDAの周囲五メートルに存在する中で、最も質量の大きい液体金属の塊を頭部とする。
 PDAの付近の液体金属がPDAに纏わりつき、最も質量の大きい液体金属の塊へとPDAごと移動する。
 頭部を構成するのに十分な量の液体金属を集める。
 次にバトル・ロワイアルの参加者の混乱を招くために、城茂の姿へと変形――ERROR! ERROR!
 エラー発生。
 辛うじて、顔面の八十七パーセントを構成したところで、ボディを構成する液体金属を動かすことが出来なくなる。
 理由――七十六パーセントの確率で、城茂の放った高電圧の電気エネルギーにより、形状維持能力に障害が発生した。
 優先順位変更。ボディの再生よりも、形状維持能力に発生した障害を取り除くことを優先。
 推定所要時間計算――十三分三十二秒。
 さらにシグマによる制限を考慮に加えると――――一時間二十二分零秒。


 一時間二十二分四秒経過。
 形状維持能力に発生した障害、デリート完了。
 推定所要時間と実際に要した時間の微弱なズレ――誤差の範囲と見なして、問題無し。
 まず頭部を構成させる。
 構成速度、耐衝撃性に、後遺症無し。
 頭部完成。
 散らばった液体金属の行方をサーチ。全身の九パーセントほどが、五百メートル以上離れた場所に存在。
 全ての液体金属を集わせるまでの推定所要時間計算――十二分四秒。


 八分十一秒経過。
 下半身を除いて再生完了。下半身分の液体金属、随時回収中。

 ――ガサリ

 音波受信機が、反応。
 近付いてくる速度、足音が存在しないことから――何らかの方法で飛行している確率、九十九パーセントオーバー。
 何らかの道具を使用している確率――飛行能力を持つ参加者の数が不明なため、計算不可。
 しかしこれまで出会った参加者全てが、飛行能力を所持していなかったことから、可能性は大と考えてよい。
 『シグマに協力し、このデスゲームを円滑に進めるように行動せよ』
 スカイネットより与えられた使命の一つ。これを果たすのに、移動手段は必須。
 下半身分の液体金属が欠如しているが、問題無し。
 PDAから、武器――レーザーガンを転送。PDAを離れた場所へ投擲。
 投擲と同時に、近付いてきた参加者と目があう。


 ビシュン、ビシュン。ビシュン、ビシュン。ビシュン、ビシュン。ビシュン――――

 一定のリズムを崩さずに、銃声が鳴り響く。
 音源は、T-1000――現在の姿は、仮面ライダーストロンガーの物だが――の持つレーザーガン。
 しかし哮天犬を操るナタクは、放たれるレーザーをことごとく回避し、それだけでなく少しずつ距離を取る。
 既にT-1000とナタクの距離は、最初にT-1000が引金を引いた時と比べて、十メートルほど離れてしまっている。
 そうなればもう、全速力で駆動する哮天犬の上のナタクをレーザーが穿つのは至難の業となる。
 それでもT-1000に下半身があれば、持ち前の脚力でレーザーの発射源を動かすことで、ナタクが回避し続けるのも難しくなっただろう。
 だが、現在のT-1000に下半身は無いわけで。最初にナタクの頬を掠めた以外、レーザーは掠りすらしない。
 邂逅からたっぷり四分ほど経過した頃、それまでただ哮天犬に跨って回避していただけのナタクが動く。
 己の跨る宝貝の名を呟き、上空へと走らせる。
 それを気にせずレーザーを放ってくるT-1000に、M.W.Sを装着している右腕を向け、一言。

「つまらん」

 言うより早く、M.W.Sからボムを射出。
 上空から重力による加速もプラスして落ちてくる火薬の塊。
 しかしT-1000内のコンピューターは、下半身が存在しない以上は迫るボムをそのまま喰らうしかない――などというマヌケな命令を下しはしない。
 T-1000は、それまでナタクへと向けていたレーザー銃の銃口を即座にボムへ向けると、一切の躊躇無く引金を引く。
 銃口から射出されたレーザーは、見事にボムを打ち抜き――ボムは空中で爆散。
 ボムの破片が降り注ぐのは防げないが、その程度のダメージはT-1000には至極無意味なもの。
 再生に数秒とかからないし、再生しながら他の行動をするのに支障も無い。

 ――その程度のダメージだけ、だったならば。

 現実にはその程度のダメージではすまず、T-1000の体に二十を越える大量風穴が空くことになる。
 視線をボムへとずらすのを見越して、T-1000が銃口をずらした瞬間に、ナタクがM.W.Sから放ったビームランチャーによって。
 さすがのT-1000もそれだけのダメージを負えば、瞬間的に再生は出来ず。再生しながらの行動も出来ず。
 哮天犬に跨ったナタクの接近を許し、取り落としたレーザーガンを回収されてしまうことになる。


 ビームで撃ち抜かれた男――シグマの影武者の体が、少しずつ再生していく。
 それにしても、凄まじい早さだ。
 再生を終えていないのを分かっていながら、影武者に奴のレーザーガンを見せ付けて尋ねる。

「貴様。最初の大広間で、シグマとかいう男の影武者役をやっていた男だな?」
「……」

 返事は無い。
 まあ、いい。他にも質問はある。

「出会ったとき既に、下半身を失っていたな?
 誰か他の参加者にやられたんだな、そいつの名前と特徴、どこにいるかを教えろ」

 そいつと戦いたいからな――と言おうか迷ったが、止める。
 わざわざ言う必要も無い。

「……」

 またしても返事は無し。
 さすがに、苛立ってくる。

「貴様――――ッ!?」

 『ナメているのか』。そう、言おうとした瞬間。
 背に衝撃が走った。
 おそらくは蹴りか拳、或いはタックルか。どちらにせよ支給品による攻撃ではなく、体を用いた一撃。
 衝撃の勢いで、哮天犬から落とされる。
 地面が迫っているが、そんなことはもはやどうでもいい。空中で首を後ろに回し、衝撃を加えてきた奴を確認する。
 そこにあったのは、黒いピッタリとした服と銀色の靴を纏った――――下半身。
 一瞬、何が起こっているのか理解できなくなり、哮天犬の下腹部を蹴った勢いで迫る下半身に気付くのが、遅れる。
 迫る下半身。俺との距離、僅か二メートル。哮天犬では間に合わない距離。
 空中での移動は、風火輪が無いため不可。
 乾坤圏か金磚、或いは火尖鎗を地面に向かって放ち、その衝撃で移動。蹴りをやり過ごし、体勢を立て直す。それも不可。
 ならば、M.W.Sか影武者から奪ったレーザー銃で代用すれば――いや、火力が足らない。

「ガあ……」

 考えている間に、下半身が落下している俺に追いつき、蹴りを俺の脇腹に放つ。
 その威力は最初の不意打ちより重く、落下しかけていた俺を再び空中に追いやる。
 衝撃でレーザーガンを手放してしまったが、まだM.W.Sがある。照準を下半身に合わようと、下半身に視線を投げる。

「な!?」

 下半身の右足がぐにゃりと、まるで液体のように崩れた。
 その状態変化に、脳裏を過るのは先程まで戦闘をしていた影武者。
 考えてみれば、下半身の服と影武者の服は、どこか似ている。
 しかし、今はあえてその事を思考の外へ流す。考えている間に攻撃されては意味が無い。
 まずは攻撃。下半身と影武者の関係について考えるのは、それからだ。
 視線を形態を変えようとしている下半身から、M.W.Sへ。
 右腕を動かす、方向は下――下半身。同じ方向に視線も移し、そして驚愕。
 攻撃を受け流して再生するだけだと思っていたが、そんな事も出来るのか。
 下半身の右足が形態を変え、三メートルはある長さの針となっていた。
 いや、違う。
 あれはただの針ではなく、異常な長さの針を持った――――注射器。


 液体金属をほんの二グラム付着させたPDAを投擲。
 辺りに散らばった液体金属を、付着した液体金属を目標に回収。そこで下半身を構築の開始する。
 構成完了後も近づいてきた参加者が無事ならば、シグマウイルスを流し込む。
 スカイネットより与えられし使命のうち、三つ目。
 『シグマウイルスの効果の調査』の為に。
 それまでに参加者が破壊されたならば、それを行うことは不可能。
 三つ目の指令には反するが、問題は無い。
 一つ目の指令――『バトル・ロワイアルを円滑に進める』為だ。
 一つ目の指令と三つ目の指令の両方に従うには、『ある程度強い戦闘力を持つもの、あるいはバトル・ロワイアルに乗っていないもの』に、シグマウイルスを流すべき。
 現在戦闘中の参加者は、おそらくバトルロワイアルに乗っている。
 ただレーザーガンを撃っているだけにもかかわらず、破壊したのなら――シグマウイルスを流すに値しない。


 四分経過。
 液体金属の回収、下半身の構成完了。
 戦闘中の参加者にシグマウイルスを流す価値はあるか――――判別不可。
 判断材料が少なすぎる。
 レーザーは回避しているが、攻撃を行わない。
 瞬間、参加者が口を開き、何か――爆弾の可能性、九十パーセント。回避不可。威力未知数。到達前の破壊推奨――を落下させた。
 参加者の右腕に装着されているオレンジ色の物体を、爆弾を収納してあると認識。
 即座にレーザー銃で狙撃。落下してきた爆弾は、空中で爆砕。破片――威力極小。回避の必要無し――が散らばる。

 ――CAUTION! CAUTION!

 イレギュラー発生。
 上半身に衝撃。形を保つ――不可。辺りに散らばる。
 参加者の持つ武器からビームが放たれた。
 再認識――あの武器はビームを放つことが出来、爆弾も収納してある。
 判別完了――――あの参加者にはシグマウイルスを流す価値がある。
 参加者の背後に跳躍。
 勢いを乗せた蹴りで、飛行手段から落下させる。
 落下している参加者に追撃。
 右足を変形。シグマウイルスを流し込む形態とする。
 落下中の参加者にこれを回避出来る確率、計算。
 空中での移動が可能ならば、初撃はともかく追撃を食らうはずは無い。
 よって、一パーセント未満。


 空中のナタクは一瞬だが、変形するT-1000に目を奪われた。
 ナタクの体内にシグマウイルスを流し込まんと、T-1000の右足が変化したのだ。
 その形状は先が鋭く、細く、そして長い。
 まるで注射器。そして、その形態となったのが――――T-1000の判断ミスだった。
 注射器となったT-1000の右腕を見た瞬間、ナタクは目の色を変える。
 カッと目を見開くと、歯が軋むほどに強く噛み締め、M.W.Sの装着された右掌を握り締める。
 そして、咆哮。言葉には表せない、ただ自らに喝を入れる為の行為。
 ナタクは、迫る注射器の最先端部を腰を捻ることで回避。
 しかし、針はグニャリと曲がり、地面に引っ張られ落下するナタクを追う。
 ナタクがM.W.Sの装着された右腕を動かす。しかし、T-1000は動じず。
 ボムは近距離では放てず、ビームランチャーは狙いをつけねばならないことを知っていて、そのままM.W.Sを鈍器として使用してもダメージが無いと判断したためだ。
 T-1000の注射器となった右足に振り下ろされる、M.W.S。意に介さずナタクに迫る注射器。

 ――バチリ。

 瞬間、ごくごく小さい奇妙な音が周囲に響く。
 M.W.Sから帯電ロッドを展開させたのだ。
 T-1000は計算外の攻撃に、一瞬だけ動きが止まる。
 しかし、行動に支障をきたすほどのダメージはない。仮面ライダーストロンガーの超電子の技には、遠く及ばない。
 やっと地面に着地したナタクに注射器を向けようとして――構成する液体金属を辺りに飛び散らせた。
 ナタクがM.W.Sから放ったボムが、爆破したのだ。


「……ふん」

 ボムの爆発によって舞っていた砂煙が消えてから、立ち上がる。
 先ほどまで下半身が立っていた場所へと視線を投げると、銀色の雫が散らばっている。
 やはりあの影武者と同じものか。そう確信し、再生中だった上半身にも目を向ける。
 再生を終えた影武者の上半身と目が合う。
 気にとめずに、影武者の物と思われるPDAを拾って操作する。
 支給品の項へ行くと、高性能探知機というものが見つかる。
 これがあると、強者を探すのが楽になりそうだな。
 そう思い説明を見ると、驚愕する。
 『同エリアに参加者が存在する場合、どこにいるかを探知し、さらにその参加者が誰であるか詳細に画面に映し出す』
 想定より遥かに機能が豊富だ。
 影武者だけあっていい武器を支給されている――ということか。

「哮天犬」

 上空の哮天犬をこちらへと移動させ、飛び乗る。
 乗ってからこちらを見ている上半身にPDAを投げつけ、言葉を投げる。

「道具は頂いていく。次に会うまでに、せいぜい回復して武器を手に入れておけ」

 いまだ、奴のにおいは消えていない。
 奴はまだ戦える。
 奴は最初に会ってから、上半身と下半身がくっついた万全の状態では戦わなかったが、万全の状態でまた会えたなら……もう一度戦いたい。


 ナタクがいなくなってから、T-1000は再生を行う。
 その姿は、仮面ライダーストロンガーのまま。
 殺し合いに乗っている――厳密には違うのだが――ナタクになるよりも、ストロンガーの姿になった方が混乱を招くと判断したのだ。
 液体金属を集わせながら、T-1000内の思考AIは考える。
 何故、ナタクはあの距離でボムを射出したのか。
 あまりに予想外の行動。
 捨て身の行動という存在は知っているが、そんなことをするようには思えなかった。
 そんなことをするのなら、もっと早くしたはず。

 ――T-1000は導き出せそうにないが、答えは簡単だ。

 目の前に何よりいけ好かない存在があったから。
 ただ、それだけ。
 そのいけ好かない存在とは、ズバリ注射器。

 かつて、ナタクは初めて戦いたくない相手に出会い――その相手を最大出力で以って殺した。
 殺したくは無かったが、そうしてくれと頼まれ、ナタクには他に出来ることが無かった。
 その戦いたくない相手を殺したのは、その相手が暴走したからだ。
 自我が無くなり、形態を変え、破壊だけを行おうとするほどに。
 暴走した理由。それが、その相手の父親の使用した注射器だった。

 初めて出会った戦いたくない相手を殺すはめになった、理由。その姿をT-1000はとったのだ。
 そもそもナタクは気に入らないもものは、とことん破壊するタイプ。
 己のダメージなど意に介さずに、T-1000にボムを射出するのは自明である。
 しかし、T-1000がその結論に至ることはないだろう。
 それを知らないのだから。
 そもそもシグマが参加者の情報を細かく教えていれば、こんなことにはならなかった。
 しかし、教えなかった。
 わざわざT-1000に参加者同様の制限をかけたり、教えておけば壊し合いで必ず有益となる情報を教えなかったり。
 シグマとスカイネットが考えていることとは、はたして――――



【A-3 東部・山麓の岩陰/一日目・早朝】
【T-1000@ターミネーター2】
[状態]:上半身再生済み、下半身四散(再生中)
[装備]:シグマウイルス(残り2回分)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:バトル・ロワイアルが円滑に進むように行動する。シグマとスカイネットの命令には絶対服従。
1:身体の再生を待つ。仮面ライダーストロンガーの姿となる。終わり次第、2以降の行動を再開する。
2:他の参加者に出会ったら容赦なく攻撃。
3:可能ならば他の参加者にシグマウイルスを感染させる。不可能ならば破壊する。
4:ただし、T-800は最終的に破壊する。
【その他】
※シグマウイルスはT-1000の体内に装備させられた状態で存在し、T-1000の体が相手の体内に侵入した際に感染させることが可能




 においを感じ取る前のように北へ向かおうとして、それをやめた。
 先ほど落としたレーザーガン。燃料を気にしなければいけない現状、あれは必要だ。
 ボムの爆風によりどこかへ飛んでいってしまったようだが、そこまで遠くへは行っていないはずだ。
 そう考えて哮天犬を少し高く飛ばすと、黒光りするレーザーガンはすぐに見つかった。
 レーザーガンを拾って、引き金を引く。
 ビシュンという音がする――が、何も起こらない。
 もう二回引き金を引くが、またしても何も出ない。

「ちッ」

 舌打ちが漏れる。これは壊れている。
 わざわざ探したのに、無駄足だった。
 レーザーガンを投げ捨て、哮天犬に飛び乗る。
 すると、哮天犬に置いてあった探知機が何かを映し出していることに気づく。
 レーザーガンを探している間に、隣のエリアに来てしまったのか。
 まあいい。何か映し出すということは、誰かいるのだろう。
 詳細なデータを見る気は無い。
 戦闘の際、俺が有利になってしまうからだ。

「城茂、そしてT-800……か。奇妙な名だ。
 見た感じ、二人で行動しているのか。つまり群れているということか……強いのか?」



【B-3 西部・鉱山/一日目・早朝】
【ナタク@封神演義】
[状態]:疲労(小)、頬にレーザ痕(行動に支障無し)、全身にボムによる火傷(行動に支障無し)
[装備]:哮天犬@封神演義、M.W.S.(ボム残り七発 ビームランチャー エネルギー87%)@ゼノサーガシリーズ、高性能探知機
[道具]:支給品一式、ランダム不明支給品1
[思考・状況]
基本思考:強い敵と戦う。弱者に興味はない。馴れ合うつもりはない。
1:城茂とT-800か……
2:武器を探す(宝貝優先)
3:回復を終えたT-1000とは、また戦いたい。
[備考]
※仙界大戦終了後からの参戦。



【レーザーガン@メタルギアソリッド:故障確認】
※B-3西部に転がってます。
※鈍器としてなら、使えるかも?


時系列順で読む


投下順で読む



050:狂えし少女は何思う マルチ 068:運命交差点(前編)
023:秩序と蓮花 ナタク 080:エンカウント
043:雷電激震 T-1000 068:運命交差点(前編)





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