オープニング ◆2kGkudiwr6




私――初音ミクはヴォーカロイド。
いつも皆さんのために、作っていただいた歌を歌うんです。
たまにオンチとかネギとか言われてるけど違います。多分。
今日も、皆さんのために歌を歌いに行く……はず、でした。


「……あれ?」

ふと気付くと、そこは異様な光景になってた。
薄暗い空間。金属だけで出来た飾り気のない空間。周囲にはたくさんの人。
コンサート会場かと思ったけど、スポットライトはないしそもそもここはステージの上じゃないみたい。
まるで、どこかの基地みたいな感じ……私は行ったことないけど。
ぼけっと周りを見ていると、ふと一段上のステージにスポットライトが当たって一人の男の……
人間じゃないみたいだけど、ともかく男のロボットが照らし出された。
少なくとも、歌手じゃないと思う。あんな怖いボーカロイド仲間はやだ。

「ここに集められたレプリロイドの諸君……いや、ロボットと呼ばねば分からん者が多いか?
 私の名はシグマと言う。ここに呼び出されたものの一部は知っていると思うがな」

その男のロボットさんはそう言った。自己紹介らしい。れぷりろいどって何だろう?
シグマという名前なんて私は知らない。シグマ、Σ……何かの形式番号かな?
私が考えこんでいる間に、全身青ずくめのヘルメットを被った男の……ロボットさんが立ち上がった。
やっぱりこの人もボーカロイドっぽくない。

「シグマ、何のつもりだ! 何が目的でこんなことを!」
「騒ぐなエックス。まだ話は終わっておらん。
 ――諸君には、特別に設営された舞台で殺し合いをしてもらう」
「え」

つい、声を出して驚いてしまった。
殺し合い?ってことは、私に戦えってこと?私はボーカロイドなのに?
でもシグマさんが私の声を気に止めた様子は無かった。それも当然だと思う。
このロボットの言葉に何か……驚きじゃなくて怒りとかを表した人達もいるんだけど……
反応したのは、けっこう数がいたからだ。そんなざわめきを、シグマさんは重々しい声で黙らせた。

「まぁ――我々の場合壊し合いという方が適切ではあるがな。
 勘付いた者もいるだろうが……ここにいる者の全ては身体構成の一部に機械を使っている。
 もっとも、戦闘用ロボットだけを集めたわけではない。よって道具が無いと戦えない者もいるだろうが、
 その点に関してはこちらから武器を配布しよう。何が入っているかは運次第だがな」

要するに、私でも戦えるようなアイテムが貰えるんだろうか?ロードローラーとか。
そんなことを考えて、ふと違和感に気付いた。シグマさんの様子がどうもおかしい。
少し考えて、すぐ気付いた。おかしいのは、口の動きだ。実際に喋っているにしては声と口が合ってない。
それに音の感じも、目の前にいるロボットさんが直接喋っているというよりは……


「会場のマップやエネルギーパックなども同様。ただしこれらは全員に配っておこう。
 食料の方がいいという者も考慮して有機的な食料も入れてある。その点の心配は無い。
 なお、道具は全て配布済みの携帯端末に入っている。
 戻す際には取り出した端末が必要になるから十分注意をすることだ。詳しくはデータを見たまえ。
 さて……無論、ただで壊し合えと言うのではない。最後の一人として勝ち残った者には望みの報酬を用意しよう。
 金、物品、自身の改造強化、殺人依頼――死者の復活。思うが侭だ。さて――」

その時だった。
私が違和感をはっきりとした形にするより早く……いきなり床の下から声が響いた。

「悠長に説明なんかしてる暇あったら、少しは自分の安全に気を配った方がよかったね?」

まるで、水の中から出てくるかのように床から飛び出てきたのは水色の髪の女の子。
シグマさんに何かさせるどころか振り向かせさえさせずに、後ろから羽交い絞めにした。

――いや、正確にはしようとした。

「チンク姉! 見てのとおり捕まえ……え?」

腕を回したその瞬間、シグマさんが崩れた……ううん、溶けたんだ。そのまま、水銀のような何かに変わる。
その子が反応する暇も無い。更に後ろから現れたもう一つの影が、彼女を投げ飛ばす。
……それは、シグマさんの姿だった。
私が驚いている暇も無い。むしろ本当に驚くのは、ここからだった。
あとから来た方のシグマさんが、何か合図のようなものを送る。その瞬間、だった。

彼女が――爆発した。

「な……セ、セイン!?」

からんころん、ぐちゃりびしゃり。
煙が上がる。いろんなモノが散らばっていく。誰かの声が悲しく響く。
けど、後から来たシグマさんがそれを気に止めた様子は無い。
表情を少しも変えずにもう一度話し始めていた。
水銀や遺体へ振り向くことさえしないで、何事も無かったかのように。

「シグマが……二人!? いや……」
「エックス、最初にいたシグマはダミーだ!」
「その通り、私が本物のシグマだ。
 液体金属の彼は協力者でね、先ほどまでは隠し扉の後ろから音声のみを送らさせてもらっていた。
 私なら急所を一突きにすることは容易いが、逆らった場合どうなるか実演する必要がある。
 見ての通り、ここにいる誰もが機能停止する程度の威力は保持しているし……遠隔操作での爆破も無論可能だ」
「貴様……!」
「ここにいる者の全ては何かしら身体構成の一部に機械を使っている、とは先ほど言った通り。
 故に爆弾を仕込むことは可能であると分かっているだろう……我々は機械なのだからな」

眼帯を付けた女の子――チンクちゃんって言うらしい――の鋭い視線を、シグマさんはあっさり受け止めた。
――床に散らばっている女の子の死体を、全く見向きもしないで。
機械がある代わりに血とかそういったものが少ない分、逆に実感が湧かない。むしろ奇妙に感じる。私も機械なのに。
奇妙と言えば……溶けたはずの水銀が、私に視線を向けているような気がするのも奇妙だけど。

「爆破を行う条件は先ほどの通り私に対し反逆を行った場合、もしくはあまりに壊し合いが行われない場合。
 他、こちらが指定した禁止エリアに侵入しようとしても爆破は行われる。
 今ここで何か探ろうとしている者は見逃すが……転送後はそうもいかん。
 行動は精々慎重に行いたまえ――では、これより転送を開始する」

変わらないで響く、重々しい声。歌なんて歌えないと思う、きれいじゃない声。
それが私が今日ここで聞いた――最後の声だった。


「ではT-1000、貴様も会場へと転送する。
 管理・指揮はスカイネットが指示した通り、私に任せてもらおう」
「…………」

シグマの言葉と同時に、偽のシグマを演じていた液体金属――T-1000は人の形を取り、肯定の意を伝達する。
程なくして、イレギュラーハンター達が使用するのと同じ転送装置によってT-1000の姿も消え……
シグマはただ一人ほくそ笑みながら呟いた。

「並行世界か……面白い概念だ。
 さてどう出るエックス、そしてスカイネットよ……!」




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GAME START 初音ミク 001:みんなのうた
GAME START セイン
GAME START T-1000 016:マルチ、遭遇、軍事基地にて、ターミネーターと。
GAME START チンク 022:赤い戦士と銀髪隻眼少女の邂逅
GAME START エックス 014:仮面にかくした正義の心。シグマ達をぶっとばせ
GAME START ゼロ 005:紅の出会い
GAME START シグマ





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