荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42



眩い日光を切り裂いて、白のバイクが疾風を巻き爆走する。
運転するのは銀髪の少女、チンク。すぐ後ろに腰掛ける紅い装甲の男はゼロ。
名乗りあった後は、二人の間にほとんど会話もない。
目的地であるゴミ処理場に着くまで、辺りに響くのはサイクロン号の排気音だけかと思われた。
しかし女の合成音声が、チンクのPDAと、ゼロの持つ二つのPDAより流れ出る。
ブレーキがかけられた時には、もう周囲は圧倒的な量のゴミに囲まれていた。
二人はバイクから降りるとそれぞれ放送に耳を澄ませる。

やがて放送が終わり、ゼロが廃棄物の峰に背を預けた。
「どうやら、ノーヴェ達――それに、エックスも無事なようだな」
腕を組みひとまず息をついた彼に、少女の硬い声が投げかけられた。
「そろそろノーヴェの居場所を答えてもらうぞ。ノーヴェ“達”と言ったな。誰かが共にいるのか?」
「……ここに送られて、最初に会ったのがノーヴェだ。
向こうも俺と会うまで誰も見ていないと言っていたが、今は二人同行しているはずだ。
別れた時はタンクローリーに乗っていた」
チンクはつり上がった右目で鋭くゼロを睨みつける。
「同行者の構成、今までの行動。ノーヴェがどちらへ向かったか。知る限りのことを話せ」
「今度はこちらの番だ」
尋問そのものの問いにも眉一つ動かさず、ゼロは冷厳とした眼で相手を見据えた。

「俺は、お前がシグマの甘言に唆され壊し合いに乗った、と思っていた」

「……何、だと?」
予想外の言葉に、チンクが声を震わせる。
「望みという餌に釣られた犬に成り下がり、欲望のまま奴の思い通りに動いている。
 ――違うか?」
問いが終わる前に、ゼロの頬を衝撃が襲った。
殴打の痛みに顔をしかめて前を向けば、憤怒の表情が目に映る。

地の底から響くような声音で少女は吼えた。
「取り消せっ……シグマは、奴はセインの仇だ!誰が、奴の犬になっただと?
私の望みは、ノーヴェを守り、シグマを殺すッ!それだけだ!」
「では、壊し合いには乗っていないんだな?」
チンクの激情を受け流し、感情の窺えない声で問う。
「当たり前だ!奴の言葉を信じるなど、反吐が出る」

鼻を鳴らして、ゼロは口を開いた。
「忠告しておいてやる。こんなことで一々熱くなっているようでは、貴様に奴は倒せん」
瞬間。逆流する血がチンクの頭を真っ白にした。
あまりの怒りに歯の根が震え、噛み合わない。
今は眠っているはずの男の言葉が、脳裏にちらついていた。
「貴様や風見が何を言おうと、関係ない」
彼女は固く握った右拳を再度振り上げる。
「私は、絶対に奴を粉々にしてやる!!何があろうともだ!」
殴りかかられた側は避けようともせず、ただ悠然と言い放つ。
「――同感だ」
顔面に吸い込まれるはずだった拳は、直前で相手の掌に掴み取られていた。
放せ、と声を荒げかけた唇をチンクは引き結ぶ。
「俺も奴を地獄に落としたくて仕方がなかったところでな。今度こそ舞い戻れんよう、
念入りに斬り刻んでやるつもりでいたが――粉々にしてくれるなら、ありがたい」
相手の無感動だった瞳の奥に、鋭く研がれた刃を感じ取り。
チンクは腕の力を抜き、乱れていた息を整えた。

「どうやらお前は嵌められたようだな」
腕を組み直し、ゼロがこともなげに告げる。
「いや、お前だけじゃない。俺やノーヴェ達、下手をすれば他の奴らもだ」
「どういうことだ?」
急に変わった相手の態度を奇妙に感じながらも、チンクはおぼろげに見当をつけていた。
「お前、紫色をした恐竜に会ったか?2m以上の機械の巨人に変形する、狡猾な奴だ」
「知らんな。俺は、今ノーヴェに同行している二人から、お前が壊し合いに乗っていると伝えられた。
だがその二人も、誰かからその話を聞いただけのようだった。
“チンクはセインを生き返らせるために壊し合いに乗った”と」

チンクは衝撃に目を見開く。悪評が流されるかもしれない、と予想したことはあった。
だが実際その存在を伝え聞けば、なんと悪意に満ちた噂であることか。
愕然として俯く少女の様子を目にして、ゼロの表情に苦々しさが混じる。
しかし。
「……その二人の話を聞かせろ。信用できるのか」
顔を上げたチンクの瞳には、意志の光が戻っていた。
ゼロは内心感嘆の息をつき、答える。
「恐らく二人とも、お前とは面識がないだろう。片方はお前とノーヴェを取り違えていたほどだからな。
どちらも壊し合いには乗っていない様子だった。名は確か、黄色い方がロボ。
小さいドラム缶のような男がメカ沢と――」
「メカ沢!?」

――メカ沢という随分と好戦的な男だった。黄色いロボットを従えて襲い掛かってきたぞ
――壊し合いには乗っていないと言っただろう、何とか撒いてやった

自然とチンクは紫色の恐竜の言葉を思い起こしていた。
これらの言葉には、ひとつの真実がある。
「あの紫色の恐竜がメカ沢という男と黄色いロボットに会った」という点だ。
そして、ゼロいわく“壊し合いに乗っていない”メカ沢達は自分に関する悪評を“誰か”から受け取っており。
対して自分は“メカ沢達が壊し合いに乗っている”という伝聞を“敵”から受け取っている。

チンクの中で、情報の糸が一本に繋がった。
心当たりのある様子に、ゼロの訝しむ気配が伝わってくる。
「私や風見達を殺そうとした紫の恐竜は、そのメカ沢とロボに会っている。
そして“壊し合いに乗ったその二人から逃げてきた”と、私達に言った。裏切る前にな」
「なるほどな」
ようやく得心がいったように、ゼロが頷く。


そこからは、チンクが必要とする手ごろな金属を探しながらの会話となった。
――ノーヴェ達はE-3から、北へ向かった。
そう教えられた瞬間から、チンクは駆け出したくなる思いを堪えている。
スバルを止めるにも、ボイルドや他の襲撃者に相対するにも、残りのナイフだけでは心もとない。
ゴミの中から見つけた穴のないデイバッグの中に、金属片を押し込んでいく。

壊し合いに乗った者についての情報交換は、ごく簡単なものだ。
説明は相手の容姿や危険度、遭遇位置、大まかな能力程度で済ませている。
「本当にその……ハカイダーが、ノーヴェ達を追う心配はないのか」
「奴は強い相手と戦うことにしか興味がない。
慣れない武器を持ったノーヴェや、非戦闘用の二人をわざわざ追わないはずだ」
チンクの表情は険しい。
ゼロは“仮面ライダー”が、変身して戦うサイボーグだとは知らない。
チンクが風見達の話をしていないこと、銀の仮面の男が名乗りを上げなかったことがその理由。

ゼロとノーヴェを襲ったという銀の仮面の男の特徴は、風見の仲間の一人とあまりに酷似している。
しかしあの風見が仲間と認める男が、無差別に人を襲うだろうか。
それとも、ゼロが嘘をついているのだろうか?
目の前の男はいけすかないが、もはや壊し合いに乗っているようには見えなかった。

「……もう十分集まったか」
デイバッグを背負って立ち上がったチンクに、ゼロは背を向ける。
「待て。お前、この後どうするつもりだ」
「修理工場へ向かい、膝の故障を直す。歩くだけなら問題ないが、タンクローリーに追いつくには少々荷が重い。……お前は、ノーヴェ達の元へ行くのだったな」
「ああ。いずれ修理工場へ戻るつもりだがな」
できることなら、ノーヴェ達を連れて戻りたいものだ。
そう考えたチンクの方へ、ゼロは自分のPDAを差し向けてデータを送信した。
「ノーヴェ達に会ったら、まず俺に会ったと叫べ。近づけたら、今送ったテキストを見せてやるといい。送信者欄があるはずだ。証拠の足しにはなる」
「わかった」

チンクの答えを聞くと、ゼロは振り向いて南に歩み去っていく。
数瞬、チンクは迷う。時間が惜しいのは確かだ。――しかし。
ゼロの隣に、押し転がされるサイクロン号が並んだ。
「餞別だ、持っていけ」
言葉と共に、ゼロの手にふわりと柔らかい物が載せられる。
緑がかった、淡い青のリボンだった。
「……何だこれは」
可愛らしい品物をつまみ、半目になって問う。
「身に付けると、スピードと魔法耐性が上がるそうだ。ノーヴェが世話になったようだからな。
貴様に借りを作ったままというのは癪に障る」
「役に立つのは分かったが。これを俺にどうしろと……」
「そんな所まで面倒は見切れん。その鬱陶しい髪を三つ編みにでもすればいい」
ぎょっとする相手の反応を受けて、少女は初めて愉快そうに笑った。

「大体貴様、戦闘用だろう。製作者はどういうつもりでそんな無駄な長さにした?
私の造り主ですら、そこまで酔狂ではないな」
「知るか!……大方、髪にコンプレックスでもあったんだろうよ」
憮然とするゼロを捨て置き、チンクはサイクロン号に跨った。
「修理工場にいるのは二人。ポッドで寝ている方が風見、橙色の髪の男は凱だ」
肩越しに振り返り、そう告げる。そのままマシンのエンジンをかけた。
少女を乗せて、驚異的な速さで走り去るサイクロン号。

その場に一人残されたゼロは嘆息し、掌の上のリボンを渋い顔で見つめた。
「三つ編み……か」



【H-2 路上/一日目・朝】
【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:左膝を破損、エネルギー消費(大)、全身のアーマーに大きな傷、疲労(大)
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ カーネルのセイバー@ロックマンX4、
    トリモチ銃@サイボーグクロちゃん 、アトロポスのリボン@クロノトリガー
[道具]:支給品一式 PDA×2(ゼロ、村雨) 不明支給品0~2(未確認) 
     空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:シグマを倒す
1:修理工場を目指し、膝の修理が終わり次第チンクの仲間と情報交換
2:日付の変わる頃(二日目00:00)にハカイダーと決着をつけるため、スクラップ工場に再度向かう
3:ノーヴェの様子が気になる
4:エックス、ギンガを探す
5:シグマ、何を企んでる?
6:ハカイダーに……

[備考]
※ノーヴェたちを生体パーツを使用したレプリロイド(のようなもの)と解釈しました。
※ノーヴェから時空管理局と平行世界に関する知識を得ました。
※チンクから彼女を襲った参加者の情報を得ました。
※参戦時期はX4のED~X5開始前のようです



建物の間をすり抜けて、一陣の風が西へと駆ける。
「風見は、ゼロと凱を信用するだろうか」
凝った肩を回し、チンクは目を細めた。

ゼロの語ったシグマの本体――レプリロイドの理性を狂わせるプログラム、シグマウイルス。
機械による洗脳とは比べ物にならない、爆発的規模で広まる狂気。
唯一の有効打である抗体プログラムでさえ消滅は不完全という、ロストロギア顔負けの恐怖。
ゼロは、シグマウイルスが生体部品に効果を持つなどとは聞いたことがないという。
それが本当なら、生身の脳を持つ戦闘機人は影響下にない。

――空ろな瞳をしたスバル、そして様子のおかしい風見の仲間。
一体彼らを狂気に溺れさせたものとは、何なのだろうか。



【G-2 南西/一日目・朝】

【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:小程度の疲労、全身に小ダメージ、固い決意、運転中
[装備]:ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(3/30)
[道具]: 支給品一式、不明支給品0~1、サイクロン号(1号)@仮面ライダーSPIRITS 、
金属の詰まった平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:ノーヴェを守り、シグマを破壊する
1:E-3の北方へ行きノーヴェを探し、誤解を解く。
2:志郎と共に本郷・茂・ギンガ・ノーヴェを探し、合流する。
  スバル、敬介は警戒。またノーヴェを最優先にする。
3:ノーヴェと合流後、もしくは数時間たったら修理工場へ戻る
4:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない
5:スティンガー、シェルコートを手に入れる
[備考]
※参戦時期は本編終了後です
※優勝者の褒美とやらには興味がなく、信用していません
※志郎を信用していることに気付きました。
※ゼロと情報交換を済ませました。


【アトロポスのリボン@クロノトリガー】
ロボの恋人、アトロポスの身に付けていたリボン。
ロボが身に付けた場合、スピードは+3、魔法防御力は+10 、ステータスに加算される。
効果は身体か服に触れていれば発動。
ロワでは、ロボ以外が身に付けた場合にもある程度効果を持つように調整されている。


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068:運命交差点(後編) ゼロ 090:紅の戦士達
068:運命交差点(後編) チンク 089:兄弟/姉弟/家族(後編)





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