怪人タイプゼロ C-6ブロックの決斗!  ◆DNdG5hiFT6


――奇襲は失敗した。
あの2体は警戒を強めているだろう。
そのことから再度奇襲をかけるにはリスクが高すぎると判断。
情報は惜しいが、戦闘継続を最優先事項とし、TV局近辺からの撤退を開始する。



*   *




ライドチェイサーは風を切り、一路TV局へ向かう。
近未来の技術で開発されたホバーバイク・ライドチェイサー“シリウス”。
小回り重視の仕様とはいえ、ミーの知るどんなバイクよりも高速であることは間違いない。

だがそれだけのスピードを持ってしてもミーには遅くにしか感じられない。
その原因はすでに6時間で10人が壊されているというこの状況にある。
壊され……いや、殺された6体ものサイボーグ。
恐らくはその殆どが“力のないもの達”なんだろうな、とミーは思う。
弱肉強食……非情だがそれが真実の一端であることを元野良猫のミーは知っている。
そして彼がこの場所で出会った少女も間違いなく“力のないもの達”に属するものである。

初音ミク。
どこか浮世離れした歌の好きな少女型ロボット。
この世の悪意があることすら知らないその瞳は、生まれたての子猫のようでどうしても放っておけない。
恋とは違う、何処か母性にも似た感情(ミーは雄猫だが)に心が逸る。
だが、さっきの放送を聴いてからどうにも嫌な予感がミーを不安にさせ――

「……ってうおっとぉ!」

急制動と共にライドチェイサーが急停止する。
物思いにふけっていたミーは、慣性の法則を殺しきれず本郷の背中に思いっきり顔をぶつけてしまう。

「あててて……ど、どうしたの本郷さん?」
「あれを見てくれ、ミー」

本郷の視線の先……ここから100mもないところだろうか。
民家と民家の間、細い路地に何かがある。
よくよく目を凝らしてみればそれが人間の、それも少女が倒れている姿だと判別できる。
倒れているのは青いボディスーツの少女。
蒼く長い髪が顔を覆っているためその表情は伺えず、その生死もはっきりしない。

普段のミーならば少し慎重に辺りを窺うはずだ。
だが先程までぼんやりとミクのことを考えていたからだろうか?
倒れた少女のの姿が不意に緑の髪の少女と重なったのは。
その瞬間、ミーはライドチェイサーから降りて一直線に駆け出していた。

「!! 待つんだミー!」

本郷の制止も聞かず、駆け出したミーは全速力で走り出す。

「おーい、大丈夫かー!」

倒れている少女はミーの大声にも反応しない。
気絶しているのか、それとも――
その焦りは更に歩幅を短くし、知らず知らずのうちにペースを上げる。
少女まで残り10メートル。
だがそこで、倒れていた少女が突如立ち上がった。

「え!?」

驚き、急停止するミー。
だが少女はそんな様子にはお構い無しに、体の陰に隠していたものを構える。
それは一般家庭で良く見る底の浅い片手なべ――いわゆるフライパンだった。

「な、何だ!?」

戸惑うミーを尻目に、女はそれを投擲する。
その目標はミー……ではなく、すぐ傍の民家。
高速で投げられたフライパンは窓を突き破り、瞬間、家が閃光に包まれる。

(家が、光っ――――?)

だがその瞬間、背中に衝撃を受け、前方へと弾き飛ばされる。
それが自分を助けるためだと気付いたのは、背後で耳を劈く爆音を聞いた瞬間だった。

「本郷……さん?」

振り向いたミーが見たのはかつて家だったもので、今はただの瓦礫の山であるもの。
そこには動くものが一つも存在しない。
ミーはただ、その光景を呆然と見つめる。

少女……ギンガが行ったのは単純なガス爆発であった。
建物内――台所だけだが――を密閉、そこにガスを充満させ、窓際に鍋辺りを置いておく。
そこに高速で別の金属をぶつければ火花が発生し――あとは見ての通り。
予想外に臭いがきついので目くらまし程度にしかならないかと思ったが、嗅覚センサーが働いていなかったのか、それとも他の要因があったのか。
どちらにせよ運良く一体を無効化することが出来た。


その結果に満足しながらギンガは動き出す。
機械的に、もう一体のネコ型サイボーグを破壊するために。
PDAから天王剣を転送。
ギンガは格闘技の達人ではあるが、剣術に関しては素人に近い。
さらにミーは猫の小動物のサイズでしかない。
ゆえに逆手に持ち、頭から串刺しにするのが最も効率的と判断する。
そしてギンガの目の前、ネコ型サイボーグは呆然とした面持ちで瓦礫の山を眺めている。
恐らくは感情の処理に時間がかかっているものだと判断する。
だが油断も慢心も、そして躊躇もなく全力を持って振り下ろす。

だから――ネコ型サイボーグがその一撃を受け止めたのはギンガにとって予想外の出来事だった。

ギンガが天王剣を振り下ろした瞬間、ミーは瞬時にPDAから棒状の物体を取り出し、受け止めた。
背後から襲い掛かる刃を見もせずに。

「お前か……お前が、やったのか……!」

言葉に宿るのは怒気と呼ばれるもの。
だがそれは自分たちを騙した女に向けてだけのものではない。
ミーの中に浮かんだのは自分に対する怒り。
自分の中の焦りが、軽率な行動が、仲間を、本郷を――殺したのだ。
内へ外へと渦巻く怒りは、殺気へと変化しギンガへと襲い掛かる。

だがその怒りを受けてもギンガの心は揺るがない。
ただ冷静に距離をとり、剣をしまって拳を構える。
機械のように冷静沈着に、ベストな選択肢を選び続ける。
だが、その冷静な態度はどうしようもなくミーの心を逆撫でした。

「よくも、本郷さんをぉぉぉぉぉっ!!」

――スピードは速い。戦闘慣れもしている。
――だが動きは直線的。仲間を撃破され短絡的になっていると推測される。

ギンガはそう判断し、カウンターに移行するべく体を動かす。
事実、単純な剣の軌道は軸を僅かにずらすだけで空を切る、が。

「――!!」

突如発生した斬撃がギンガの肌を切り裂いた。
しかも複数。突如空間に爪が発生したかのように幾重もの切っ先が空中に出現したのだ。
研ぎ澄まされた反射神経が一瞬でアウトレンジまで退避させるものの、
青いボディスーツは切り裂かれ、露になった素肌には血が滲んでいる。
だが、それだけのダメージを受けても眉一つ動かさず、ギンガは冷静に分析を行う。

――複数の斬撃を発生させる剣と確認。魔力反応はなし。
――乾坤圏と類似したものと推測する。
――全身のダメージチェック開始。
――出血を確認。ただし戦闘に支障ないレベル。
――ネコ型サイボーグの戦力予想を上方修正後、戦闘行動を続行する。

その行動に一切の揺らぎはない。
だが逆にミーは見てわかるほどにうろたえていた。

ミーの手に握られている棒状の物体の名は“青雲剣”。
魔家四将の一人、魔礼青が使用する宝貝である。
“斬撃が増加する”など信じていなかったが事実少女を切り裂いた。
そう、切り裂いたのだ。

「血……」

表情の変わらぬはずのミーの顔に焦りが浮かぶ。
それもそのはず。彼はこの場にいるものは機械がほとんどだと思っていたのだから。
完全なる機械ならば割り切りもしやすい。
だが、宇宙人ならいざ知らず、目の前にいるのは少女。
その肉を切り裂く感触と血を流す姿は無意識のうちにその切っ先を鈍らしてしまったのだ。

――そ、そうだ! あいつは本郷さんの仇なんだ! でも……!

銀猫は心中で迷う。
だが突如身を翻し逃げ出したギンガを見て、ハッと顔を上げる。

「に、逃がすかぁ!!」

追撃のため足に力を入れる。
だがその瞬間、ギンガは空中を蹴り、急速反転する。

ミーの持つ青雲剣に対しギンガが編み出した対策は単純なものだった。
斬撃が増加したとしても腕そのものが増えるわけではない。
ならば斬撃が開始される前にそれを振るう腕自体を狙えばいい。
文字通りの猫の手払う――普通ならば針の穴を射抜くような技量が必要だ。
だが迷いのあるミーの動きは精彩を欠いており、その“穴”は広がっている。
鞭のようにしなる右足がミーの手から青雲剣を弾き飛ばした。

「ぐっ……こ、こんにゃろおおおおおっ!!」

だがそれでもミーは進撃を止めない。
爪を伸ばし襲い掛かる。
だが対するギンガは左手をドリルに変化させる。
改造手術によって得られた力――リボルバーギムレット。
爪とドリル。硬度が同じならば回転による力の分、砕かれるのは前者であるのは自明の理。
更に重ねられるは一撃必倒の格闘技・シューティングアーツ。
リーチ、スピード、技の切れ……どれをとってもミーに勝機はない。
故に純白の“錐”が唸りを上げ、ミーを粉砕せんと迫る。

だが、その瞬間、ギンガに向け、横合いから何かが飛来する。
視線を向けたギンガが見たのは赤いフライパン。
先ほど自分が仕掛けに使ったもので焦げ跡がついている。

何故フライパンが自分に向かって飛んでくるのか?
その疑問を考えるまもなく反射的に身を捻り、かわす。
故にその隙は――その陰に隠れ、続いてきた影にとっさに対処できなかった。

「ハアアアアアッ!!」

蹴りを放つ影。
とっさに魔力障壁を張るが、あまりの威力に結界が軋みをあげる。
何とかバックステップで距離をとるが、完全に奇襲の機会は潰されてしまった。
だがそれでも表情一つ変えず、距離をとる。

そしてミーの傍、先ほどまでギンガがいた場所に颯爽と降り立つのは仮面の男。
赤い複眼に緑のボディ。似ても似付かぬトノサマバッタの異形。
出会う場所が場所なら恐ろしくもあるかもしれない。
だがその瞬間、その異形を掛け値なしにはかっこいいと思った。
助けを呼べば答える、正義の味方のようで。
そしてTV局の屋上で見たその姿は、間違いなく彼のものであった。

「……無事か、ミー」
「本郷さん、無事だったんだね!」
「ああ。だが今の俺は……」

真紅のマフラーをなびかせながら異形は答える。

「仮面……ライダーだ」

   *   *   *


……本郷はギンガの狙い、即ち爆発を察知した瞬間、ミーを突き飛ばし、退避させた。
そしてその後、爆風の中に飛び込む瞬間仮面ライダーへと姿を変えたのだ。

その複眼が見つめるのはギンガの服装。
ブルーのボディスーツに顔のマーク。
その姿は首輪を爆破されたセイン、そしてその姉だというチンクという少女たちと瓜二つだ。
ゆえに彼女達の仲間であることは間違いないだろう。
そしてその目的は、恐らく――

「最初に聞いておく……キサマはあの少女を、シグマに殺された少女を生き返らせるためこの戦いに乗ったのか?」

その答えはNOである。
ギンガは死者が生き返らないことを理解している。
稀代の天才と呼ばれたプレシア・テスタロッサですら不可能だったのだ。
またいかなロストロギアでも“完全蘇生”は実現していない。
それにあらゆる情報を総合してもシグマという男が約束を守る確率は低いと考えている。
故に今のギンガが目的とするのはノーヴェ、チンクとの合流及び脱出である。
その中に“セインの復活”という項目は含まれていない。

だがギンガはそれを口にしない。
敵に情報を与えるメリットがないと判断したが故に。
従ってタイプ・ゼロは無言のまま、再び戦闘態勢に入る。

その行動をどう捉えたのか。
本郷も答えるように構え、刹那の膠着が生まれる。
その膠着を破り、先に動いたのはギンガ。
フットパーツの加速を使い、青い弾丸と化して仮面ライダーに接近する!

「――ナックルバンカー」

唱えられるワードは近代ベルカ式。
ゼロニウム製の体をも貫いた拳が仮面ライダーの胸部へと炸裂する。
だが――

(――浅い)

柳のような手ごたえに攻撃が失敗したことを知る。
ライダーがインパクトの瞬間、後ろへ飛んだのだ。
だがギンガは追撃を選択。
フットパーツの力で空中で再加速。
ライダーに向かって再び一直線に襲いかかる。

だが対するライダーも体を反転させ、民家の壁を足場に水平方向にジャンプ。
真正面からギンガを迎え撃つ。
その速度は互いに高速。故に相対距離は一瞬でゼロに。
二体の戦闘用改造人間は鏡写しのように拳を振り上げ――

「ナックル――」
「ライダァァァァァァ……」

そして、激突する。

「バンカー」
「パァァァァンチ!!」

力ある言葉と共にぶつかり合う2つの拳。
片や魔力で、片やショッカーの超科学によって強化された拳がぶつかり合い、火花を散らす。
その威力は――互角。
発生する巨大な反動を逃がすように背後へと距離をとり、同時に大地に降り立つ。
その距離は先程よりも近いが、一歩で踏み込むには遠い距離。

これで戦いは仕切りなおしになる――かに思えた。
だが、ギンガは休む間もなく再度加速。
その行動はまるで壊れた機械のように愚直な突撃を繰り返すように見える。
だが、自分達を罠にはめようとしたギンガが、そんな単純な攻め手で来るとは本郷には思えず、警戒の度合いを強くする。

そしてそれは事実――その通りであった。
シューティングアーツは基本的に高速接近、一撃必殺、高速離脱の連携によって成り立っている。
彼女今もっているフットパーツでは最高速及び持久力において本来使用するブリッツキャリバーに届かない。
だが空中ダッシュを可能とするフットパーツは中距離だけならばブリッツキャリバー以上の3次元的な動きを可能にする。
そして王ドラ、クロ、武美、灰原、ゲジヒト、ラミア、バロット、ミー……
6時間でタイプも何もかも違うロボット達と戦闘を繰り返したギンガは今やフットパーツを完全に使いこなしていた。
それがシューティングアーツを極めたギンガと合わさるとどうなるか……その答えがここに現れる。

「何ッ!?」

ギンガは壁を、そして空中を蹴り、三次元的な攻勢をかける。
その動き、まさに変幻自在。
空中でゴー・ストップを繰り返しながら攻撃を加える。
それは百戦錬磨の仮面ライダー1号にとっても初めての相手をする戦法であった。

「くっ……!」

どんな達人といえども初めて遭遇する攻撃には戸惑いが生まれ、隙を生む。
故にギンガはその隙を突き、背後を取ることに成功する。

「ストームトゥース」

魔力を込めた左の二連打。
ライダーも急いで振り向くが間に合わない。
1撃目で防御を打ち破り、2撃目のチョッピングレフトがライダーを捉える。

「ぐっ……!」

ファーストヒット。この戦いにおいて有効打が初めて炸裂する。
だがギンガの猛追は止まらない。
続けざまに右、左と放たれるワンツーのコンビネーションブロウ。
しかし対するライダーは体勢を立て直すと、見切り、腕で払い、逆に更に深く懐へと潜行する。

「はああああああっ!!」

クロスレンジと言うのも生ぬるい、言わばゼロレンジでの一撃。
コンスタントに振るわれた拳は、密着状態でも十分な威力を持つ。
だが、ギンガはあくまで冷静に大地を踏みしめる。
フットパーツで強化されたギンガの脚力は、密着状態での体当たりを可能とする。
いや、むしろ体で押し切るそれは突進(チャージ)と呼ばれるもの。
衝突の瞬間の打撃力こそ無いものの、体勢を崩すには十分すぎる威力。
事実、その突撃を受け、ライダーは大きく体勢を崩す。。

「……」

そして3度目、フィールドを纏わせた拳を握る。
今度は威力を殺す暇も与えない。
完全なるチェックメイト。
その最後の一手を加えるために足、腰、腕と力が連動し、右腕が最高速で打ち出される。
発射された拳は速度、鋭さ、威力――まさに弾丸。
射撃/打撃武術(シューティングアーツ)を体現するかのような一撃が放たれる。

「――!!?」

だがここでミーの野生の反応にも驚かなかったギンガの表情が、初めて動揺を露にする。
それもそのはず。必定のはずの未来が覆されたのだから。

ナックルバンカー。
ギンガの習得したベルカ式近接魔法。
フィールドを張った拳で殴るという単純、だがそれ故に強力で多様性のある魔法である。
故に攻撃に対する盾として使ったことはあった。
拳と拳、力と力を持って拮抗したこともあった。
だがこうも完璧に――フィールドごと受け止められたことはなかった。

そう、本郷猛は、仮面ライダーは不可視のフィールドごとその拳を受け止めたのだった。

それは例えるならば生身の人間が目隠しをしたままで、高速で飛来する鉄球をキャッチするようなもの。
普通ならばまず手が砕け、続いて体を粉砕されてしまう自殺行為。
だがギンガがゲジヒトの一撃で浅くない傷を負っていたこと。
そして何より仮面ライダー1号の膨大な戦闘経験がそれを可能にした。
まるで野球のボールを受け止めるが如く衝撃を逃がし、見えざる一撃を受け止めきったのだ。

そして心の揺れは例外処理の開始までに僅かなタイムラグを作り出す。
それはほんの僅かな、刹那とも呼べる隙。
だが、その隙を見逃す仮面ライダーではない。
ギンガが行動を起こすよりも先に、零距離まで接近したライダーの両手が喉と太腿を押さえつける。
この状態で喉を潰す、いや、首を砕けばライダーの勝利。
だが、本郷は、仮面ライダーはそれでも最後の希望に懸ける。

「……もう一度聞くぞ。拳を引く気はないのか?」

だがその血を吐くような叫びも彼女には通じない。
腕を砕けばこの拘束から脱出できると考え、表情を変えないままで左手をリボルバーギムレットへと変化させる。

「そうか、やはりそれがお前の答えなのか……!」

茂もこうして望まぬ命を奪ったのだろうかか?
マスクの下で歯を噛み締めながら、本郷は決意する。

「……ならば、これ以上キサマに最悪の記憶を刻ませるわけにはいかない!
 だから俺は……お前を倒す!」

その瞬間、ドリルを突きたてようとしたギンガが感じたのは重力の消失、そして浮遊感。
そして強大な遠心力と共に上下前後左右、全ての感覚が消失する。
投げられている、と気付けたのはギンガが優秀である証拠。
ただの雑魚ならば自分がどういう常態にあるかも把握できまい。
喉と腿を掴んだままの状態で抱えられ、回転させながら上空へと放り投げられる!

「ライダァァァァ、きりもみシュートオオオオオオオオッ!!」

余波で竜巻を巻き起こしながら、必殺の技が炸裂する。
その名に偽り無く、錐揉み回転をしながらギンガの体は遥か上空へと投げ上げられた。
――無防備な体制のままで。

「トオッ!!」

強化された脚力で地を蹴り、バッタ型改造人間は続くように天を舞う。
その目的は追撃。放たれる技ははライダーキック。
幾多の怪人を屠ってきた仮面ライダー、最強の必殺技。
ここに、形勢は完全に逆転した。
今度はギンガの前に破壊という必定の未来が立ち塞がったのである。

だがスカリエッティによる洗脳は、どんな状況でもギンガに冷静な思考を強制させる。
そして冷静な思考はいかなる時でも最善の一手を導き出す。
PDAを操り、自分とライダーの中間地点に巨大なヘビの人形――マンバの巨体を出現させる。
空中に突如出現した鋼鉄の大蛇は視界を塞ぐどころか、質量という武器を持って仮面ライダーに襲い掛かる。

だがその巨体を目の前にしてもライダーは冷静そのものだった。
突き上げられた足を引くことなく、とっさに身を捻る。
そのまま螺旋を描き、高速回転を始めるライダー1号の体。
ショッカー怪人・イモリゲスを倒した初代ライダー48の技の一つ。
その名も――

「ライダァアアアアアアアッ!! スクリューキィィィィィック!!」

大蛇をドリルと化した蹴撃が炸裂し、粉砕した。
だが一撃はそれだけに留まらない。
貫通力に優れた一撃は自動人形だけでなく、その背後のギンガすら破壊せんと牙を剥く。
だが、

「何ィ!?」

発せられた感情は驚き。
マンバの向こう側、いるべき場所にギンガの姿はなかった。
結果としてライダーの攻撃は文字通り空を切る。
そのまま地上に降り立ち、辺りを探るがギンガは完全に姿を消していた。
警戒を解き、変身を解除する本郷。
だがその姿を見てミーは言葉を失う。

「ほ、本郷さん……!?」

本郷の全身は火傷を負っていた
そう、いくら神業的なタイミングで変身したとはいえ、至近距離からの爆風をその身に受けたのだ。
無傷であるはずがない。
だがその苦痛をおくびにも出さず、ミーに問いかける。

「……ミー、ヤツは?」

「あ……ごめん……見失った」

マンバの巨大な体躯はミーの視界をも塞ぐような形になっていたのだ。
あれから逃げたのは分かるが、何処へ逃げたのかまでは把握できていない。
周囲にいまだ立ち込めるガス臭も追跡を困難にさせている一因だろう。

そして2人の思考はそこに留まらない。
自分達は北へ向かい、その後Uターンし南下している。
そこで出会っていないということは、あの少女は自分達はとは逆方向からやってきたのだろう。
――即ち、TV局のある方角から。

しかも彼女は怪我をしていた。
それは何らかの戦闘行為を行った証拠。
冷静に考えれば別の所で戦闘があったのかもしれないし、ミクたちが力を合わせて撃退したのかもしれない。
そう、冷静な頭脳が訴える。
だがいくら理性がそう訴えようと、感情は最悪の結末を押し付ける。
ミーの脳裏に過ぎるのはオイルの海に沈むラミアの、フランシーヌの、そしてミクの姿。

本郷も同じものを想像したのだろう。
その表情に苦いものが走る。
だが、それでも本郷は、“仮面ライダー”は『TV局へ向かおう』とは口にしない。
何故ならば命を奪うことにためらいのない危険人物を放っておくわけには行かないからだ。
そういうものなのだ。本郷猛……いや、仮面ライダーという生き方は。
だから、ミーはこう答える。


「――だったらボクがココに残るよ!」

本来なら自分がTV局に駆けつけたい。
だが先ほどの戦闘を鑑みるに本郷は、仮面ライダーは自分よりも“強い”。
ボディスペックよりも、別の何かが。
常に冷静さを見失わない心と常に人を気遣う優しさ……それに彼には人を安心させる“何か”がある。
ならば自分が行くよりも、きっと確かな力になるはずだ。
だからミーは決断する。
妬みも、後悔もなく――ただ、少しの悔しさを滲ませて。

「……わかった。ミクたちは俺に任せろ。だからこちらは頼むぞ」

その言葉は短いが確かな信頼の証として、ミーの全身を駆け巡る。

「もしも発見出来なかった場合は下手に移動せずここにいてくれ。
 TV局で彼女達の無事を確認したらすぐにここに戻ってくる」

首を縦に振り、了解の意を示す。

「自分の為すべきことをするんだ、ミー。そうすればきっと光明は……見える」

本郷は膝を突き、視線を合わせながら微笑む。
相手に視線を合わせる……それは相手が猫の姿をしていようと決して馬鹿にしない、対等な相手として見てくれている証。
ミーにはそのことが嬉しく、また少しだけ心苦しい。
自分は彼に幾つも隠し事をしているのだから。
だがそれを押し隠し、鋼鉄の胸を叩く。

「まっかせといてよ! アイツ、絶対に見つけてとっちめてやるからさ!」

その姿を頼もしそうに見つめると、本郷は表情を引き締めTV局へと向かう。
ライドチェイサーが風を切り裂き、一直線にTV局を目指す。
一人の男の強靭な意志と共に――


【C-6 路上/一日目・午前】
【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:全身に軽度の火傷、ライドチェイサー搭乗中
[装備]:ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
[道具]:支給品一式、トマト×97@THEビッグオー
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:テレビ局へ急ぎ、ラミア、フランシーヌ、ミクと合流する。
2:その後【C-5】に戻り、ミーと合流する
3:殺し合いに乗っていないもの保護、及び合流。
4:風見、敬介、茂と合流。
5:アルレッキーノ、コロンビーヌにフランシーヌ人形のことを伝える。
6:村雨とパンタローネの二人を倒した者を見つけ出し、この手で倒す。
7:シグマに関する情報を集めたい。

※原作8巻(第32話 称号)から参戦。
※アルレッキーノ、パンタローネ、コロンビーヌの特徴を知りましたが、コロンビーヌの格好を旧式のものと勘違いしています。
※茂は殺し合いに乗ってしまった相手を、止む無く殺してしまったと判断しています。
※A-5に、トマトを三個お供えしています
※ミーと情報交換をしました。
 ただし、彼をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
 クロが己と同様の理由でサイボーグとなった事は知りません。
※この会場には、異世界の者達も呼ばれたのではないかと推測しています。
※シグマは参加者達に使われてる技術・参加者達の構造そのものに興味があるのではと思っています。


本郷の背が視界から消えると同時、銀色の猫は踵を返す。

「さて、と……行くか!」

あの少女は時間もない上にダメージを負っていた。
あまり遠くまでは逃げれないはずだ。
だが周りにはガスが残っており、嗅覚による追跡は望み薄だ。
だから民家を逐一調べ回るしかない。
だが目の前に広がる住宅街はあまりに広大で、一軒一軒調べまわっていたら恐らくは日が暮れてしまう。
それでもミーは進む。自分の成すべき事を成すために。
そのことがあの少女を守ることに繋がると信じて。

【C-5 住宅街/一日目・午前】
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康
[装備]:青雲剣@封神演技
[道具]:支給品一式、不明支給品(0~2個)
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:襲ってきた女(ギンガ)を探し、撃破する。
2:シグマ打倒の為、仲間を集める。
3:風見、敬介、茂と合流。
4:クロとは合流したいと思う反面、彼に剛の事を暴露されるのではと恐れている。
5:本郷に対し、少々の罪悪感。
※なんでも切れる剣、ガトリング等の武装は没収されています。
※悪魔のチップの制限については後続の書き手にお任せします。
※茂は殺し合いに乗ってしまった相手を、止む無く殺してしまったと判断しています。
 彼に対する警戒心は完全に消えています。
※本郷と情報交換をしました。
 ただし、自分をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
 クロが本郷と同様の理由でサイボーグになった事は話していません。


【支給品紹介】
青雲剣@封神演技
魔家四将の一人、魔礼青が使用する宝貝。
複数の斬撃を発生させる魔剣。


個体名“本郷猛”の離脱を確認。
警戒モードを一部解除する。


――あの時、私は自動人形を盾とした瞬間、決断を迫られた。
即ち攻撃か、防御か、回避か。
生存のための次なる動きを。

そのうち最も成功確立が高いのは“攻撃”であった。
特に乾坤圏を選択した場合の撃破確率については70%以上と推算された。
だが連戦の後の疲労した体では、乾坤圏を放てば良くて行動不能――最悪、意識を失ってしまっただろう。
それでは“ミー”と呼ばれるネコ型サイボーグの前に無防備な状態を晒すこととなる。
過去に遭遇した2体のネコ型サイボーグとの共通項、および先程の斬撃から見ても“ミー”はかなりの戦闘力を有すると推測される。

更に――“本郷”と呼ばれる男は何度もこちらの予測値を遥かに上回る性能を見せた。
そのことを計算に入れると成功確率は50%を割ってしまう。
故に私は退避を選択した。


……そして、それは正解だったらしい。
私があの大蛇の人形を盾として呼び出すことを予測していたとは思えない。
だが“本郷”はとっさの判断により、技を切り替え粉砕した。
あの威力から見るに、別の技でカウンターを狙っていればこちらが撃破されてしまっただろう。

身体能力、技量、そしてそれ以上に冷静な思考・判断力。
これらの要素を高次元で併せ持つ、“本郷”をこの戦場における有数の強者だと判断。
本郷猛――"カメンライダー"を任務達成のためのA級危険因子と認定する。


そして思考をこれからの行動方針に切り替える。

いかにカメンライダー相手でも多対1ならば勝機はある。
やはりノーヴェ、及びチンクとの合流を優先すべきである。
だが全身の裂傷、カメンライダーとの戦闘で発生したダメージ及び平衡感覚の一時的低下、想定以上に消費した魔力――
先程の戦闘で受けたダメージはそのどれもが決して無視できるものではない。

頼みの綱のエリクサーは先程の襲撃で完全に使い切ってしまった。
よってこの状況で推奨される行動は休息。
都合のいいことに戦闘を起こしたのは住宅街の中だ。
先程の辺りに立ち込めたガス臭といい、こちらから行動を起こさない限り、見つかる可能性は限りなく低い。
接近されたとしても生体センサーを携帯しておけば十分対応できると判断する。


そう判断し、壊し合いの最中だというのに、ミーが探しているというのに迷いなく目を閉じる。
こちらの方が効率的だと判断した、ただそれだけの理由で。

然もあらん。今の彼女はするかしないか、0と1で動く自動人形。
任務達成のために動く自動機械なのだから。

その目的は唯一つ――そう、すべては、破壊のために。


【B-6 民家/一日目・午前】
【ギンガ・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】右腕に刺し傷、全身に浅い切り傷、疲労(大) 魔力消費(中)、全身にダメージ、睡眠中
【装備】フットパーツ@ロックマンエックス、乾坤圏@封神演義
    生体センサー@メタルギアソリッド、天王剣@クロノトリガー、
【道具】支給品一式×2(ギンガ、王ドラ)
【思考・状況】
基本思考:敵(ナンバーズ以外)の破壊
1、休憩後、ナンバーズと合流
2、敵を探し、破壊する

※外壁が異常に堅いことに気づきました。
※カメンライダー”をAクラスの警戒対象として認識しました

※【C-6】に大破したマンバ@からくりサーカスが放置されています。



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079:交錯する想い、その行方 本郷猛 100:SPIRITS/魂の群れ(後編)
079:交錯する想い、その行方 ミー 098:DRAMATIC IRONY
078:もう一度歌声を ギンガ・ナカジマ 104:その身に纏う心の向きは





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