破壊 ◆c92qFeyVpE


「んっ、くぅ……この…………はぁっ……」

少女は自分の身体を束縛するそれから必死に逃れようと身を捩っていた。
無事な左手で何とか拭い取ろうとするが、白く粘度の高いそれはぐちゅり、と嫌な音を立てるだけで少女の肌へと吸い付いている。
グローブ越しにその冷たい感覚が伝わり、少女は不快感に顔を歪め左手にも吸い付いてきたそれを力づくで引き剥がす。

「っの……いい加減に……!」

声を震わせ、白い粘質な物体に包まれたその身を無理矢理捻る。

「ディバイン……バスター!」

強引にトリモチを吹き飛ばし、スバルはその場に立ち上がり側に落ちていたライティングボードを拾い上げる。
髪やら顔やらに吹き飛んだトリモチがついたままなのが少し気持ち悪いが、左手にもトリモチは付着してしまっている、拭うと余計悲惨な目にあいそうだ。
グローブをはずそうにも、自分の右手は存在しない……改めてその事を認識し、思わず瞳を伏せる。
右手……母の形見であるリボルバーナックルを装備するその腕は奪われてしまった。
管理局の技術でこの右腕は再び戻すことができるだろうか?
もしも戻らなければ――自分は二度と、母の形見を手に戦うことができなくなってしまう。

(……母さん、ギン姉、ごめん……!)

しばらく胸に湧き上がる悲しみと戦い、これからの事について考える。
――これからどうするべきか?
チンク達を追いかける? 相手はバイクだ、すでに補足可能な範囲からは離れているだろう。
それともタチコマを探すか? 恐らくはドラスの言葉に騙されたまま希少鉱石を探しているはずだ……ほんの少し、スバルの心に迷いが生まれた。

この場にいる参加者のほとんどはガジェットのような存在……それは正しいのだろうか?
少なくともボブは自分を騙そうとしてたようには見えない。むしろドラスを狙ったあの行動は、今となっては正しかったと思える。
タチコマだってそうだ、むしろ自分と同じようにドラスに騙されていただけででは……
休む間もなく訪れた狂気に自分を見失いかけていたが、少し時間を置いて頭から血が下がった状態で考えてみるとどうにも辻褄があわない。
ノーヴェにしたってそうだ、側にいた変なドラム缶もどきは攻撃をしかけてきたが、彼女自身はむしろ自分を止めようとしていた……

何の保証も、確証もない……だけど、ただ信じたかった、まだ何かの間違いだと信じていたかった。
スバル=ナカジマとしての人を信じる思いが、荒ぶった心を静めていく。
スバルの瞳から狂気の色が少しずつ抜け落ちていき……

そんなスバルを撃ち砕くかのように辺りに銃声が響き渡り、警戒すると同時にPDAから音声が流れ出す。


『――――の2ブロックとなります』

断続的に続く銃声に警戒を続けつつ、放送を聞き終わったスバルはショックで動きが取れなかった。
それは破壊された者の多さによって……ではない、今呼ばれた者の内二人、それは自分が破壊したことを思い出したためだ。
ここにいるのはただの機械、ガジェットのような物、そう何度思い込もうとしても体が動いてくれない。

本当にガジェットと同じなのか? ボブは、タチコマは、ドラスは、しっかりとした自我を持って『生きて』いたのではないか?
自分を襲い、破壊したあの二人も同じだったのでは? 自分は……『壊した』のではなく『殺して』しまったんじゃないのか?

「あ、ああ……ちが、嫌……」

――なーんだ、お姉ちゃんも僕たちを騙してたんだ、殺し合いを止めるなんて言っちゃってさ、お姉ちゃんも殺してるんじゃない。

「っ!? ち、違う! 私は、私は……!」

――殺人罪で逮捕だー! あれ? この場合適用されるのは器物損壊の方かな?

「やめて……違う、私は、だって……」

――スバル=ナカジマ、お前もシグマの手の内だったか。ここで処分する。

「違う違うチガウ! 私は、あんな奴の言う事なんて!」

――じゃあ、なんで二人も殺したんだよ? 私まで殺そうとしたくせに。

「あ、あああ……」

――管理局の教えというのも安いものだな、ノーヴェを殺すというのなら、その前に姉がお前を殺す!

「うわああああああああああああああああああああああ!!!」

自分が生み出した幻の言葉にスバルの治りかかっていた心は抉られていく。
信じたい、こんな事を言うわけがない、そう思う心そのものが崩れゆく、ドラスの裏切りは彼女から「信用」という言葉を削りとっていた。
正気の色を取り戻しかけていた瞳は、再び狂気、そして恐怖の色に染めあげられる。

「違う、ちがう、チガウ、チガウチガウチガウ!!」

やめて……そんな目で見ないで!
私だって、殺したくなんて!

――はぁ、何やってんのよ、バカスバル。

「ティア……!?」

――認めなさい、あんたは『殺した』のよ。

「あ、あああああ……!」

――スバル、どうしちゃったのかなぁ……私達は管理局員なんだよ? 助けなきゃいけない人を殺して、どうする気?

「な、なのはさん……! ち、違うんです、これは、これは……」

――判ってるよスバル、これは……

幻のなのはとティアナの二人が『何か』を持ち上げスバルに見せ付ける。

――これは……『あなたが殺した』二人だよね。

「いやあああああああああああああああああああ!?」

――酷いです、服が欲しかっただけなのに、痛いじゃないですか、イタイイタイイタイ……

「やめてよ! だって、あなたが、あなたが襲い掛かって!」

――大丈夫だよスバル、わかってるから。スバルは悪くないもんね。

「え……あ、なのは、さん……?」

――でもねスバル、他の人はスバルが殺人鬼だって思ってる、殺される前に殺してやるって向かってくる。

「そ、そんな……」

――だから……その前に、殺しちゃおう。

「――――え?」

――だって仕方ないよね、黙ってたらスバルが殺されちゃうんだよ? なら、殺すしかないじゃない。

「だ、だけど、それじゃあ……」

――気づいてるんでしょスバル? もう、あんたは戻れないって。

「あ……やめて……」

――でなくちゃ、スバル自身が作り出してる私達が、こんなこと言うはずないもんね。

「やめて、やめてよぉ……」



『スバル=ナカジマは、ただの人殺しなんだ』



「やめてえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」


隻腕の少女はライティングボードを駆る。何かから怯えるように、ただがむしゃらに逃げ続ける。
その瞳は狂気と恐怖の二色のみで染まり、元の面影を残していない。
『恐怖』によって辺りに響き続ける、聞き覚えのある銃声から遠ざかり、『狂気』によって参加者を探して彷徨い続ける。

「壊すんだ……全部、みんな……!」

少女の心は、戻らない……

【E-1 路上/一日目・朝】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:右腕が肩口からありません(出血はなし)、あちこちにトリモチ付着、精神が非常に不安定
[装備]:滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、サブタンク(満タン)@ロックマンX、テキオー灯@ザ・ドラえもんズ
    ナックルの弾薬(27/30発)@仮面ライダーSPIRITS、ライディングボード
[思考・状況]
基本思考:恐怖。
1:目撃した機械を破壊する。ドラスを最優先で破壊する。

※本編開終了後からの参加です。
※サブタンクは満タン状態です、使えばエネルギーの回復が可能です。
※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。
 一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。
※T-800の住む世界、スカイネット、T-1000に関する情報を得ました。
※T-800のことを、ボブと呼んでいます。
※T-800からの情報より、シグマの背後にはスカイネットがいるのではと考えています。
※ボイルドの脅威を認識しました。
※ドラスが自由に姿を変えられることを知りました。


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068:運命交差点(後編) スバル・ナカジマ 107:ユガミズム





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