リアリスト    ◆2Y1mqYSsQ.



「我が名はグレイ・フォックス! いざ参る!!」
 灰原は対峙する敵が名乗り上げたのを聞き、ただ黙する。
 切り開かれた森の中、鳥の囀りが聞こえるが、戦場においては意味を成さない。
 もっとも、灰原にとって鳥の囀りなど、何の価値もないのだが。
 せいぜい、足音をまぎれさせるのに便利だ、程度だ。
 とはいえ、人工物のコロニー内に鳥を置くのか疑問を持つが、それを思考するのは後だ。
 目の前のサイボーグらしき男を分析する。
 達人級の剣術に強化された身体能力。CCRに所属していた時でも、お目にかかったことのないほどの強敵であろう。
 目的の推察をするなら、強者に戦いを挑むといったところだろうか。
 灰原は力比べなどには興味はない。
 任務を遂行するのには、力だけでは足りないのだ。かつての部下にCサポートをつけたように。
 バランス。それこそが任務を遂行するのに足るもの。
 目の前の男は強敵だ。正面から向かえばこちらが負けるだろう。
 だが、人を殺すのに力はいらない。
 修羅場を潜り抜けた経験、死を恐れぬ自制心。
 CCRという空っぽの、偽りの組織を支えるために生まれた灰原は仕込み杖の刃を構える。
 陽光を反射した刃は、虹色の刃を持つ刀を手にしたグレイ・フォックスを映していた。
 目の前の男が修羅場を潜り抜けたことも、死を恐れない自制心を持つことも想定している。
 動きが、思考がプロだ。生きては戻れないかもしれない。
 だがこの命、安いものだ。壊れれば取り替える。その程度の存在だ。
 だから灰原は死を恐れない。死に興味を持たない。
 淡々と、己が仕事をこなすのみ。
 灰原は迫り来る刃をサイドステップで避けながら、かまいたちを起こした。


 グレイ・フォックスは木々を切り裂く風の刃を避けて、赤いモノアイを灰原へと向ける。
 名前は知らない。それでもいい。
 身体に走る痛みが懐かしい。ジョーという男はそれだけの痛みを与えてくれた。
 ここには人外の力を持つ者が跋扈する殺し場だ。目の前の男も斬撃を風と変えて撃ち放つ。
 躍る心をヘルメットに隠し、怪しく輝く虹の刃を煌かせる。
 大木を二本、まとめて斬り裂いた。敵には逃げられたが、凄まじい切れ味にグレイ・フォックスは満足をする。
 これなら、人外の力を振るうものたちにも劣らない。
 痛みを与え、最大限の反抗を受けることができる。
 無力な連中に興味はない。むしろ足を引っ張る分邪魔だと判断する。
 最後の一滴まで力を振り絞るような死闘。
 スネークとでしか味わえなかった殺し合いを、己が意思で求めてさまよう。
 その上でまたも死に損なうようなら、
(スネーク、キサマと再びまみえるのも、悪くはない……!)
 グレイ・フォックスの中央のモノアイが血のごとく赤く光る。
 ゆらりと、視線を灰原に向けて、走ろうとした瞬間、後方へと飛びのいた。
 一瞬後にグレイ・フォックスがいた地点を……いや、その手前を撃つ、威嚇の意味での射撃が起こったのだ。
 地面が蒸発する程の熱量を持つ光弾。人の拳ほどの大きさだが、威力は目の前で証明されていた。
 ゆっくりとグレイ・フォックスが発射された地点へと振り向く。視界の端には、灰原も同様の行動をとっていた。
 青いヘルメットを被り、どこかジョーを髣髴させるような真摯な瞳。
 ロックマンがロックバスターを二人の間へと放ったのだ。
「殺し合いをやめてください! そんなことをしている場合ではありません!!」
 かの男は、いや少年はそう告げてきた。


 ロックマンは目の前で行われた激闘の跡を見て、悔しさに歯を食いしばる。
 殺し合いが行われた現実が、ロックを襲ったのだ。十体ものロボがキッドのように死んだ。
 なのに、今また目の前で殺し合いが行われている。
 なぜ誰もシグマに反抗を示さないのか。
 なぜ誰も他人を壊したがるのか。
 ロックの心が悲しみに暮れる。もともとロックは戦闘用として作られたわけではなかった。
 家庭用ロボットであるロックが、ワイリーにより暴走した兄弟を止めるため、やむを得ず戦闘用へと改造するように懇願したのだ。
 それから、幾度もワイリーのたくらみを阻止するためにロックは戦い続けた。
 今もまた、シグマの野望を打ち砕くため、友であるキッドに報いるため、戦いを止める。
 悲しい思いはさせない。
 ロックのバスターは、無益な争いをやめるためのバスターだ。
 たとえそれが、暴力を止めるための暴力であっても。
 それに心を痛めても。
「殺し合いをやめてください! そんなことをしている場合ではありません!!」
 ロックは止めるわけには行かない。平和が好きだから。ライト博士がいて、ロールがいて、ラッシュがいるあの平和な世界が。
 たとえ、幾多のロボットの血【オイル】でぬれた世界であっても。


「いいたいことはそれだけか?」
 グレイ・フォックスは告げて、一瞬でロックとの距離を詰める。
 横凪に振るった攻撃を、ロックは跳躍して避けた。大木が一本、轟音を立てて崩れるが、グレイ・フォックスは追撃の手を緩めない。
 神速の速さでロックに迫るが、グレイ・フォックスの背筋に悪寒が走る。
 地面をガリガリ削って無理やり急停止すると、グレイ・フォックスの鼻先をかまいたちの斬撃が通り過ぎた。
 男は青いロボットの傍へと立った。二対一。構いはしない。
 グレイ・フォックスが全てを斬り裂く刀の柄を握り締める。覚悟はできたか? と、自然と零れた。
 息を呑むロックが目に入る。灰原は再び斬撃を繰り出してくるが、軌道は一直線。
 見切るのは容易い。しかし、一瞬だけ視線を逸らしたおかげで、姿を見失った。
 いや、近くにいる。グレイ・フォックスは木々を切り倒しながら探し続ける。
「逃げても無駄だ。姿を見せろ」
 そして俺に痛みを与えろ。
 己が心の中だけで、呟いた。


「この場も長くは持たない。だが、僅かな時間だけだが確認が取れる。君は壊しあいに、シグマに反抗を示している。違うか?」
「え……もしかして、あなたも!!」
 灰原はサングラスの下の瞳を、木々を切り倒すグレイ・フォックスへと向けながら頷いた。
 グレイ・フォックスの身体能力だけでなく、大木をあっさりと切り倒す刀の威力にも警戒せねばならない。
 仕込み杖の刃で受け止めようものなら、刀ごと自分を切り裂くだろう。灰原はロックへと視線を向ける。
「君の力を俺に貸して欲しい。灰原という。俺が前衛。君が後衛だ。問題は?」
「僕の名前はロックマンといいます。ところで……あの人を殺すのですか?」
 ロックの表情が沈む。灰原はその様子を見守り、不思議に思った。
 シグマに反抗をするのなら殺し合いを続ける連中は排除するべき存在である、情けをかけるべきではない。
 もっとも、灰原に情け、という感情は未知のものだったが。
「殺さなければ、この場は切り抜けられまい?」
「いえ……戦闘手段を奪うだけでいいはずです。僕が前衛に出ます! ですから、殺すのだけは……」
「そういう問題ではない。俺が前衛で戦い、君が後衛で補佐する。それがバランスが取れる」
「なら約束してください。絶対に殺さないと……」
 灰原は押し黙る。戦闘において敵を殺さずに済ませようなど、格好の的だ。
 しかし、約束しなければロックの助力は得ない。なら一人で戦うのもいいが、ロックは灰原が初めて出会う、シグマに反抗し、協力が可能な有志だ。
 手放すのは惜しい。
「……できるだけ善処はしよう。今は言い争っている暇はない」
「分かりました。援護は任せてください」
 灰原は静かに頷く。現状の打破。
 そのために、ロックと組んでグレイ・フォックスへと躍り出た。


 ロックは右腕をバスターに変えて、キッドの形見のガトリングをPDAに転送する。
 キッドの想いを撃ち込む相手はこの殺し合いの参加者じゃない。
 首謀者シグマを捕らえるためのものだ。決して殺すためのものじゃない。
(壊れた参加者も、キッドもきっとライト博士なら……!)
 ロックは本当は、そんなのは無理だと知っている。たとえロボットであったとしても、大切なメモリーを傷つけてしまえば、本人は戻らない。
 たとえキッドが動くことが可能になるほど修復されても、それはキッドでなく、キッドの姿をした別人なのだ。
 それでも、優しいロボットであるロックは自分を騙す。
 キッドの死に耐え切れるかどうか、自信がないからだ。本当は、その悲しみを乗り越えているのに。
 与えられたロックバスターは平和の願いを込めてエネルギーをチャージする。
 目の前の灰原という男は死なせはしない。
 もう、キッドのように。二度と目の前で取りこぼしなどしない。
 ロックは静かな決意を右腕のバスターに込めて、灰原の背後を守るべく、正面を向いた。


「ほう、出てきたか。いい度胸だ。褒めてやる」
 グレイ・フォックスの言葉にも灰原は無言で答える。もっとも、相手が何を言おうがグレイ・フォックスの興味の対象外だ。
 一気に前進して、首を刎ねんと刃の狙いを定める。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 少年の甲高い声が響き、人の上半身ほどもあるエネルギー弾がグレイ・フォックスへと迫った。
 しかし、グレイ・フォックスの想定内。焦らず地面を蹴って、木の枝にふわりと着地する。
 グレイ・フォックスが目を見張ったのは、次の瞬間だった。
 グレイ・フォックスは灰原のかまいたちが来ると踏んでいたのだ。なのに、視界を支配するのは灰原の体躯。
「くっ!」
 グレイ・フォックスは呻き、上体を逸らしながら刃を避ける。
 不安定な姿勢のまま、変わらず突き進む灰原に突きを入れた。灰原の頬に一文字の傷が走るが、浅い。
 刃の引き戻しは、身体能力の差にてグレイ・フォックスが速い。
 すれ違いざまにもう一撃与えようと、刀を振るった。その刃は、灰原の身体の手前で止まる。
 グレイ・フォックスは本能に従い、後方へと跳躍した。すぐ後、グレイ・フォックスが足場にしていた枝が光弾に巻き込まれる。
 先ほどよりも小さい光弾だ。
(あの腕のレーザーガンに似た武装は出力を調整できるみたいだな……しかし、戦場での手加減など、愚かなっ!!)
 グレイ・フォックスはロックに対し、憤慨する。戦場にて死にたくても死ねない男もいるのだ。
 ロックの手加減は、そういう男たちを、自分を馬鹿にしている。
 相手にその意図がないことは知っている。それでも、グレイ・フォックスは怒りを感じずにはいられなかった。
「キサマ……」
 グレイ・フォックスは呟いて、標的を変える。まずはロックから始末しよう。
 虹がきらめき、樹木を蹴って加速する。刃の先端がロックの喉に伸びる。
「いい位置だ」
 その呟きだけが、やけに大きく聞こえた。


 灰原は淡々と移動を続ける。グレイ・フォックスの剣術は見事の一言だ。
 刃筋を逸らさず、迷わず振りぬき、虹の性能を120%引き出している。その気になれば、鉄さえ斬ることも可能だろう。
 だが、灰原に負ける気はなかった。いや、負ける要素を見出せない、と表現したほうが正しかった。
 ロックのバスターの威力を計算に入れ、全員の位置を頭に入れ、静かに身体をスライドする。
 グレイ・フォックスがロックへと飛び掛っていく。
 敵にとって、後方からの支援攻撃は脅威だ。灰原が間合いを取った今、ロックに迫るのは常道だ。
 もちろん、グレイ・フォックスも馬鹿ではない。こちらのかまいたちを計算に入れて、ギリギリ射線に入らないように動いている。
 だが、灰原にとってはこの射線こそ、望んだものだ。この射線こそ、己とロックを生かす。
 灰原はカチリ、匕首を鳴らして仕込み杖を横一文字に振りぬき、風の刃を放つ。
 軌道は大きく逸れたが、目的のぶつを切り裂き、ロックとグレイ・フォックスの間に大木が倒れた。
「なにっ!」
 散った木の葉が目晦ましとなり、土埃が盛大に舞い上がる。後はロックに任せた。
 太陽の輝きをエネルギーに変えたロックバスターを構えて、ロックが跳躍している。
 グレイ・フォックスはまだ視認していない。

「うおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 ロックの叫び声が森に響く。
 光が木々を切り裂いて、グレイ・フォックスの胸元へと飛び込んだ。
 勝敗は、決した。


(俺はこのまま負けるのか……)
 ロックバスターの熱量と爆発力に吹き飛ばされ、大木に背をぶつけるグレイ・フォックスは痛みを実感しながら微笑んだ。
 生きている。
 痛みこそが、その証だ。生死を懸けた戦いこそが、グレイ・フォックスの精神を高揚させる。
 薄れいく意識のなか、今度は死ねるのか。
 そう思考した瞬間、グレイ・フォックスの感情を刺激する一人の男の幻影が浮かぶ。
(スネーク!!)
 あの男は、もっと生を実感させた。もっと死を感じさせてくれた。
 この程度で、グレイ・フォックスは満足できるのか。己自身に問う。
 答えは……否。
 まだ足りない。あの男、スネークとの激闘はまだ遠い。
 赤いモノアイがカッ、と光って倒れる身体を踏ん張って支える。全身から煙が上がって、激痛が走るが関係ない。
 灰原が近づいている。グレイ・フォックスは獣となった。

「…………ッ!」

 ただの無言。されど、その覇気は獣の王のごとく。
 声にならず、覇気でグレイ・フォックスは吼えた。虹という名の牙が煌き、灰原を襲う。
 思考などない。痛みなどない。死など考えない。
 ただそこには一匹の手負いの獣がいた。
 獣の牙が、獲物を切り裂き、液体が木々を濡らした。
 グレイ・フォックスは、舞い落ちてくる木の葉の中、悠然と振り向いた。


 油断していた。いや、あれほどの高エネルギー弾を受けながら、グレイ・フォックスは攻撃を仕掛けてきたのだ。
 サイボーグが想定以上の性能を見せるなど、イレギュラーの事態に灰原は驚きを示す。
 かつて、過去に彼の部下が示したイレギュラーと似たような状況だ。
 追い詰められたものが見せる、鬼気迫る動き。容易く、灰原の計算を超えるその動きを、目の前の敵は見せたのだ。
 おそらく、灰原には一生理解できないだろう。
 感情を不要のものと考え、捨てることを実行している灰原には。


 だが、誰よりもそのことを知っているロボットがいた。
 兄弟の暴走を止めるために戦闘用の改造を受け、幾多の死線を潜り抜け、ドクター・ワイリーから世界を守り続けたロボット。
 ロックマンは平和を愛し、誰かを守るために慈愛と勇気の『感情』を強く持つ、ロボットだった。
 だからこそ、ロックは獣の刃に自らの身を晒した。その刃が、ロックの身体を引き裂いても。
 刃はロックの左腕から、左太股までを通り過ぎ、エネルギー回路が突然途切れて火花を拭く。
 無理して加速したためか、膝関節から煙が吹き出ていた。振り向くと、灰原は無事だ。
 ロックはホッとして、ロックバスターに力を込める。エネルギーがチャージされていき、途切れがちな視界の中、手負いの獣へと狙いを定めた。
 キッドのようなことは、もう起こさせはしない。

「ロックバスターーーー!!」

 ロックは吼えた。人間よりも優しく、人間よりも勇気のあるロボットとして、灰原を守るために。
 友であるキッドのようなことは、二度と起こさないように。
 切断された左肩付近の回路がショートして爆発を起こす。ロックのヘルメットが宙に舞い、人工頭髪が零れ落ちる。
 太陽の輝きのごとき光弾が、ロックバスターから吐き出された。
 グレイ・フォックスを太陽のエネルギーを内包する光弾が飲み込み、全てを焼き尽くした。


「くくく……くくく…………」
 グレイ・フォックスは静かに笑い、先ほどの灰原の退却の手際のよさに感心していた。
 自分が期待したとおり、ジョーに感じた高揚感をまたも二人に感じた。
 ここは死に場所に困らない場所だ。だからこそ、生き残ったのにグレイ・フォックスに絶望が訪れなかった。
 身体の損傷が酷い。だがそれも己が望んだこと。
 痛みを感じることを感謝しながら、己にのしかかっていたバイクのある場所へと戻ってきた。
(あの男を追うか……?)
 灰原は己に問い、首を横に振った。ロックは致命傷だろうが、灰原はまだ戦える。
 追いかければ死は必須だ。死を求めるといってもグレイ・フォックスは自殺志願者ではない。
 すべての力を振り絞る場を求める。
 誰の命令でもない。グレイ・フォックスは倒れているバイク・白いカラスを引き起こす。
(南下してみるか)
 PDAによる禁止エリアに、発電所が指定されていた。
 とはいえ、発電所の半分を禁止エリアに指定だ。なぜそんな中途半端なことをしたのか、グレイ・フォックスは気になった。
(発電所にこもる奴がいるのか?)
 もしそうだとすれば、強者の足かせにしかならない。斬り捨てるまでだ。
 キーをまわすとエンジンが起動し、排気音が森に轟いた。
 グレイ・フォックスは南の発電所へと向けてバイクを走らせる。
 鬼が出るか、蛇が出るか。
 グレイ・フォックスの心が僅かに高揚した。



【F-6北部/一日目・午前】

【グレイ・フォックス@メタルギアソリッド】
[状態]:全身打撲。全身火傷。ダメージ大。疲労大。チャージショット二発分のダメージ
[装備]:虹@クロノトリガー。白いカラス(全体に焦げ跡あり)@人造人間キカイダー
[道具]:支給品一式(PDA)×2。水消耗。
[思考・状況]
基本思考:闘って兵士として死ぬ
1:発電所に行き、人を探す。
2:ジョー以外にも、痛みを、死を与えてくれる相手を探し、戦う。
3:強者についている弱者を、戦いの邪魔をされないように殺しておく。
4:いずれロックマンと灰原(いずれも名前を知らない)と再戦する。

※原作死亡直後からの参戦です
※『ライドル@仮面ライダーSPIRITS』『トランスメタルドライバー@ビーストウォーズ』がF-5エリアに落ちています。



「ロックマン、ロックマン……」
 ロックがうっすらと目を開けると、身体を揺さぶるサングラスをかけた男がいた。
 彼は、自分と一緒に殺人者と戦った灰原という人だ。彼は無事のようだ。
 ロックはホッとする。今度は割り込むことに間に合った。彼は無事なのだ。
「よかった…………」
「……ロックマン。君自身の身体は、俺を庇って重症だ。それのどこがよかったんだ?」
「灰原さんが……無事で……」
 ロックは心のそこから、そう告げた。
 灰原があの刃に切り裂かれるのを阻止するために全力をかけたかいがあった。
 ロックは人間を守るために生まれた。誰かを守るために生まれた。
 誰かを助けることは当然であり、誰かを守ることは信条ですらある。
「……俺には理解ができない。俺より君のほうが、単体戦闘力は上のはずだ。
君が生き残るほうが、シグマを打倒する確率が上がるはず。なのに、君は俺を庇った」
「気に……しないでください……」
 ロックは灰原に微笑んだ。灰原はただ、合理的に考えて尋ねたのだが、ロックは灰原が庇ったことを気に病んでいると思ったのだ。
 だからこそ、安心させるように柔らかい笑みを浮かべたのだ。
「僕は……戦うのは嫌いだから……だから、誰かを守るほうが……向いていたんです……。
もともと……家庭用…………ロボットだったから……」
「そうか」
 灰原がため息を短く吐いて、視線を向けてきた。
 サングラスの下で表情は分からない。だんだん、ロックの視界がぼやけていく。
 限界が近いようだ。
 自分をおいて、先に言ってくれ。言葉にしようとしたが、うまく喋れない。
 ロックは祈った。
 すべてのロボットが、平和でありますように、と。


 灰原はロックの言葉全てが、理解できなかった。
 戦闘力があるロックは、自分より弱い灰原を庇い、シグマの勝率を下げた。
 結果を見れば悪くなっているのは明らかなのに、彼自身は満足していた。
 灰原は不思議でしょうがないが、そういう人種がいることもまた、理解していた。
 ロックは灰原の部下と同じなのだ。
 感情、などという不確かなもので動き、悩み、判断を容易く狂わせる。
 同時に、瞬間的な出力は凄まじく、灰原の計算すら揺るがせる。
 ベクトルは違うが、あのグレイ・フォックスという殺戮者もまた同じ人種なのだろう。
 灰原は学習する。
 かつての部下や、ロックのようなタイプの相手はシグマを倒すのに有用だと。
 感情というものを不要だと思っていたが、かつての部下やロック、グレイ・フォックスを見るに、うまく使えば戦力となる。
 ならば、使わない手はない。ロックのような参加者は貴重だ。
 ロックは灰原にそのことを気づかせてくれた。だから礼を言おう。
「ロックマン、君のおかげで大事なことに気づいた」
 ロックが口を開閉させる。もはや声を出す力もないのだろう。
 ロックの口が、よかった、という動きをした。このままでは数時間も持たない。
 だが、北に向かえば修理工場がある。そこでどの程度直るか知らないが、向かう価値はあるのだろう。
 だから、灰原はロックの……
「ロックマン、だから俺は君と似たタイプの仲間を集めよう。そのために死んでくれ」
 首を刎ねた。灰原は首など、斬り慣れている。ロックは苦しまず逝った。
 ロックの柔らかい表情を浮かんだ生首が、回路をショートさせて転がる。
 灰原は一目散に、その場を離れた。


 ロックを殺したのには理由がある。
 グレイ・フォックスがこの近くにいるからだ。ロックを、怪我人を連れて逃げ切れるほど、敵は甘くはない。
 それに、別の殺戮者に出会えば、ロックどころか自分もろとも死ぬからだ。
 それでは、シグマを打倒する確率が大幅に下がる。どれくらいの人数がシグマに反抗を示しているか知るまでは、一人でも多く、確実な戦力は欲しい。
 正直、ロックを殺すのは惜しかった。せめて、運び出す手段さえあれば、違ったのかもしれない。
 仕方なく、灰原はロックを切り捨てた。
 もっとも、ロックだから切り捨てたのではない。重傷者で、素早く運ぶ手段がないから切り捨てたのだ。
 重傷者が己であっても同じこと。
 自分の喉に仕込み杖の刃をあてがい、ロックを一人行かせる結果になっただけだ。
 シグマを倒す確率を上げる。灰原はその手をとることしか思考しない。
 今回は、感情を力に変える男を切り捨てることになった。
 だが、次はそうはいかない。
 ロックやかつての部下のように、感情を力に変える仲間を集める。
 シグマを打倒するために。
 灰原のサングラスが冷たく輝く。彼はひたすらに、現実主義者であった。


【G-5 森/一日目・午前】

【灰原@パワポケシリーズ】
[状態]:打撲。
[装備]:リシュウの仕込み杖@スーパーロボット大戦シリーズ
[道具]:支給品一式(PDA)×2、ゆうしゃバッジ@クロノトリガー。ガトリング砲@サイボーグクロちゃん(弾薬三十~四十パーセント消費)
    ダンボール@メタルギアソリッド、大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険 五光石@封神演義
[思考・状況]
基本思考:シグマとその協力者達の捕獲、不可能であれば破壊して本社に帰還する。
     未知の技術の情報収集、及び回収して大神に持ち帰る。
1:ロックマンやCCR時代の部下のように、感情を力に変える参加者と組む。
2:バッチの表がでたので北のコロニー(工場地帯)に向かう。
3:使えそうな人材の確保、油断はしない
4:この戦場からの脱出
※本編死亡後からの参戦です


【ロックマン@ロックマン 破壊確認】
【残り 31人】



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074:真剣勝負 灰原 109:↓↓ ↑ →
074:真剣勝負 グレイ・フォックス 116:涙の証明
092:Rock And Call ロックマン GAME OVER





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