千の偽り、万の嘘 ◆2Y1mqYSsQ


 シャトル発射基地内は、無骨としか言いようがなかった。茶々丸が分割ファイルの存在を諦めきれず、探し回っているのである。
 付き合っているコロンビーヌの目的は、あくまでも勝の元に帰ること。
 茶々丸が自分のことを疑っている以上、下手な行動はとれない。
(一刻も早くこの娘を殺すのが、一番いい手なんでしょうけど……乗り気しないのよね)
 話をしているとき、茶々丸が人間に恋をしていることに気づいた。本人は否定していたが。
 恋に憧れ、恋を知ったコロンビーヌとしては、心情的には殺すのを避けたい相手ではある。
 とはいえ、コロンビーヌに茶々丸を殺すことに躊躇いはないだろう。
(だって……勝ちゃんが待っているものねぇ)
 パンタローネから聞いた、叶わぬ勝の恋。コロンビーヌが入る隙ができたことに喜びを感じていた。
 帰るためなら、コロンビーヌは手段を選ばないだろう。
(そうね。優勝して、最後の一人になって願いが叶うなら……この身体を人間にしてもらうのもいいわね)
 うっとりと、コロンビーヌの表情が蕩ける。茶々丸の監視内だが、気にする様子はない。
 人間の『恋』に憧れ、恋ゆえに創造主を裏切った人形なのだ。
 新たなる身体を得て、人間として勝に再会するのも、悪くないと考え始めている。

 その思考が、勝に対しての裏切りとも露も思わずに。


 茶々丸はデーターベースを起動させて、キーボードを操作する。
 分割ファイルを得れば、主催者シグマに反撃を行なえるのだ。手を緩めるわけにはいかない。
(とはいえ、この分割ファイルが脱出の手がかりとは、限らないのですが)
 茶々丸の頭を悩ませるのは、この分割ファイルが罠ではないかどうか、ということだ。
 シグマはわざわざこのコロニーを用意して、さまざまなロボットを集めているのだ。
 この場から逃げ出せる手段、要するに殺し合いを破綻させる要素が、この場にあるというのが不自然なのだ。
 茶々丸のように脱出を目指す物に対する罠だと考えるのが、自然だ。
(とはいえ、諦めるわけにはいきません……)
 たとえ可能性が低くても、茶々丸には他者を破壊してまで、戻ろうとは思わない。
 マスターであるエヴァンジェリンも、表面上では冷徹な態度をとりながら、壊しあいを良しとしないだろう。
 そして、担任である心優しきネギなら、必ずこの壊しあいを否定する。
 何より、心優しい茶々丸の他者を犠牲にして生き残ることなど、できはしなかった。
(とはいえ、コロンビーヌさんには何らかの拘束手段を用意しなくては……)
 茶々丸は警戒心も露に、視界の端でコロンビーヌを見つめた。
 PDAを余分に持っており、本人の言葉から殺害をした可能性が高い。
 今現在、なにを企んでいるのか分かった物ではない。しかし、茶々丸の荷物ではコロンビーヌを拘束して連れまわすことは叶わない。
 拘束自体は、エレベーター用のワイヤーなどを千切って使えばいいのだが、切断する手段もない。
 茶々丸の気ばかり、磨り減っていく。
 ゆえに、分割ファイルを検索しつつ、コロンビーヌに意識をやる。これが、作業を遅らせている理由だった。


 下のコロニーへ向かう通路の前にして、紫色のティラノザウルス型機会生命体は、悩んでいた。
 己が武装をチェックした後、PDAを器用に操作する。目的の物が見つからなかったのか、深々とため息を吐いた。
「やっべー、弾薬が結構減ってきた。番組が終われば自動的に補充されていたというのに……むむむ」
 色々な意味でギリギリな発言をするデストロンの破壊大帝、メガトロンは自分の武装をチェックして、頭を悩ませていたのだ。
 V3やハカイダーという強者を相手にするなら、あと一回で弾切れを起こすだろう。
 頭脳を駆使するメガトロンとしては、少ない弾薬で無茶に出る気はしない。
 騙まし討ちとて、弾薬を食う。PDAにあるアイテムに期待して操作したが、めぼしい物はない。
「かといって、接近戦を仕掛けるのも危険だしな。遠くから安全な場所で、バカを狙い撃ちするのが俺の得意分野なんだが……。
とはいえ、弾薬がありそうな上の工場地帯や、ハカイダーがチラッと言っていた南西のコロニーに行くのも考えもんだし」
 うーん、と唸りながらメガトロンが頭をかく。首を回すと、シャトル発射基地が目に入る。
「行くしかないか……ここにあれば、弾が切れるたんびに弾の補充のために各コロニーの基地に向かえばいいわけだしな。
補給ユニットでも支給されていたら、俺様に補給を使うのに……。あれ? 補給って自分には使えなかったけか? まあいいや」
 割と適当なことを呟きながら、メガトロンは進路を変更する。
 義体の頭の上に乗せて、念のために備えておく。抜け目がないのがメガトロンであった。


(しかし、殺風景なところだな)
 数十分後、メガトロンは基地へともぐりこんでいた。ティラノザウルスに乗っているように、義体を動かすのを忘れない。
 細かい演出に気を配れるメガトロンこそ、監督の器なのだ。視聴者を楽しませてこその名監督。
 彼にはその心得がばっちりあった。
 とはいえ、弾薬庫などを探ってはいるが、空振りばかりだ。
 ちょっとは配慮してもいいんじゃないか、とシグマ相手に愚痴を零しながらとぼとぼと歩いて行く。
(まあ、弾薬とかあれば、篭城しかねない奴が出るかもしれんし、妥当か)
 自分には不都合ではあるのだが、一応納得する。
 殺し合いをしろ、といったシグマの意図は不明だが、こもられて殺し合いをしません、じゃ話にはならないだろう。
 弾薬など、篭城にもってこいのアイテムを、篭城しやすい基地に放置しておくなど、メガトロンならやらない。
(まー、俺様なら、「今からアナタたちには殺し合いをしてもらいます」なんて言いはしないがなー。
コンボイとか呼び出せるなら、殺っちゃうよ? 普通に)
 それをしないということは、シグマの目的は暗殺ではないということか。
 とはいえ、そんなことを考えてもしょうがないので、メガトロンは相変わらず弾薬を探す。
 ふと、明かりがついている部屋があることに気づいた。人がいるようだ。
(あの、仮面ライダーとか言う奴じゃないよな……)
 とりあえず確かめよう。メガトロンはその部屋へと近づいていった。


「ねぇ、目的の分割ファイル見つかったの~?」
「……少し待ってください」
 コロンビーヌからかけられた声に対応しながら、茶々丸はようやく目的の物らしきファイルを見つけた。
 PDAに接続して、分割ファイルをダウンロードする。モニターのバーが伸びていく様子を、コロンビーヌと共に見守った。
 ファイルのサイズは大きく、どんなデータなのか茶々丸は固唾を呑んで見守った。
 だから、コンコンとドアをノックされた時は驚いた。コロンビーヌのいる手前、微塵もその様子を見せなかったが。
「……誰ですか?」
「まってよ、アタシ殺し合いには乗ってないー」
「ならそのままでいてください。二、三質問しますので」
 なるべく冷徹を装って茶々丸は告げる。ようやく手がかりらしき物を得たのだ。
 殺し合いに乗った物によって、ここを破壊されてはたまらない。とはいえ、相手を無碍に扱えるほど茶々丸は冷酷ではなかった。
 もしも戦いに脅えているか弱い女性であったら?
 心細いであろうことは容易に想像がつく。だからこそ、茶々丸は慎重にドアに近づいていった。
「ちょっと待ってもらっていいかしら? 茶々丸」
 その茶々丸を、コロンビーヌが止めた。茶々丸は今まで黙っていたコロンビーヌがいきなり動いたことに疑問を持つ。
 コロンビーヌはその茶々丸を無視して、ドアに一歩近づいた。


「そのままそこで待機してもらえるかしら?」
「えー? 独りじゃ心細いから、早くそっちにいきたのにー」
「あなたも入ってきていきなり撃たれたくないでしょ? そこから見えないけど、あたしは銃を構えているの」
 もっとも、それは嘘だった。コロンビーヌの支給品に銃はない。
 これは相手のことを探るための一言だ。もしも銃を恐れない相手なら、銃に恐怖する言葉は出ないはずだ。
 そうでなくても、かつてフランシーヌ人形を笑わせるために感情を学んだコロンビーヌなら、相手が脅えているかどうか判断ができる。
「そ、そんな怖いこといわないでよー。銃を降ろしてー」
「降ろしてもいいわよ。あなたが無害と分かったらね」
 ニヤリ、とコロンビーヌは微笑んで、相手の気配を探った。ゾナハ蟲を呼び寄せる。
 羽音すら、相手には悟らせる気はない。ゆっくりと静かに近くに寄ってきたゾナハ蟲に蕩けるような笑みを向ける。
「えー、どうすればいいのー?」
「そうね、まずはあなたの名前からよろしいかしら?」
「あたしー? あたしはねーナビコちゃん」
「へー、ナビコちゃんねぇ」
 コロンビーヌがいっそう笑みを深める。茶々丸が気づいたが、手で制する。
 茶々丸が気づいていることに、コロンビーヌが気づいていないはずがない。
「ねえ、あなた……PDAは見ているかしら?」
「な、なんのことかなー?」
「このPDAには名簿もあるの。そこに、ナビコなんて名前はないわ。
偽名を使ってあたしたちを欺こうなんて、おまぬけねぇ……」
 嬲るように、コロンビーヌが問い詰める。相手の反応を待った。


 コロンビーヌが偽名に気づいたことに、メガトロンはニヤリ、とほくそ笑んだ。
 ナビコの名を名乗ったのはわざとだ。このメガトロン、疑っている相手に馬鹿正直に名簿の名前を偽る気はない。
 あえて名簿にない名を名乗ったのには理由がある。
「えーん、ごめんなさーい。私、私どうしても怖くて……」
「へえ、何でそんなに脅えているのかしら?」
 メガトロンは内心、かかった、と喜びながら演技を続ける。しかし、獲物の警戒心は強い。
 ここでへまをしたら意味がない。メガトロンは慎重にことを進める。
「最初は仮面ライダーとか言う人に助けを求めたけど、襲われたのー!
いきなり変身とかして、パンチとかキックとかしてくるから、あたし、あたし……」
 なるべく哀れっぽく、かわいらしく義体に泣き真似をさせる。
 どこで手に入れたのか、目薬を義体の目にさして、涙まで演出した。
 破壊大帝メガトロン、やるなら徹底的にやる男だった。
「追われていたのね。けど、なぜあなたは無事だったのかしら?」
「PDAに支給されたアイテムが良かったのよ~。見て、私の支給品」
「ふ~ん、動物型ロボットねぇ……」
「恐竜型よー」
 相手の心が開き始めた。メガトロンの笑みが深くなる。もっとも、その笑みは悲しみの表情で上書きされて、偽られていたが。
 とはいえ、このまま彼女らと一緒にいられるとは思ってはいない。
 支給品だと偽った恐竜型ロボットは、メガトロン自身なのだ。戦う気がないというのなら、PDAにいれておけ、といわれるだろう。
 ドラム缶のような参加者、メカ沢に使ったように、この義体を使った騙しは一度限りのその場しのぎだ。
 ドアに視線を集中する。
「そろそろ、ドアを開けてくれないかしら?」
「ふーん、まあそうね……。いいわ、開けましょう」
 偽名を使ったのに本名を聞かないのが妙だったが、まあいい。メガトロンは開いていくドアをひたすら見つめる。
 完全にドアが開く、一瞬にメガトロンは全神経を向けた。
 メガトロンはもともと不意打ちをする予定であった。ドアが開ききった瞬間に、手持ちのミサイルを撃ち放つ。
 中には複数人いるだろうが、構いはしない。ミサイルで爆散させて、逃げればいい。
 ドアが徐々に開いていく様子に、メガトロンはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ続ける。
 完全にドアが開いた瞬間、メガトロンは「変身」と小さく呟いた。
 人型の形態に移行したメガトロンは、右腕を部屋に向けてミサイルを三発放った。
 爆炎がドアから熱風を伴って流れる。一丁上がり。メガトロンはそう静かに呟いた。


 もくもくと爆煙が晴れていく。内心でガッツポーズをとっているメガトロンは義体をPDAで送信して、内部へ入ろうとする。
 目的は、彼女たちが持っていたであろうPDAだ。弾薬などが入っていなくても、武器があれば使い物になる。
 死人にPDAなど必要ない。メガトロンが生き残るために有効に活用してやろう。
 ほくそえみながら進むメガトロンの背筋に、悪寒が走る。ほぼ勘による行動だ。
 とっさに後方に跳躍したメガトロンの目の前で、彼がいた位置へとドリルが抉りこまれた。
 人間大もあるドリルの襲来に唖然と口を開く。煙のようにドリルが消えて、視界の先に膜のような物で守られている女二人が目に入る。
 どうやら、あの膜で防御をしたらしい。メガトロンは思わず舌打ちをする。
「どうして分かったか、知りたい?」
 コロンビーヌが尋ねてくるが、メガトロンは無視する。そんな事実を知っても、意味がないからだ。
 無言でレーザーを発射してコロンビーヌに撃ち放つ。
「つれない人ねぇ。もてないわよ」
「ご安心を~。こう見えても夜の帝王も兼ねているのでね」
「下品ねぇ~。茶々丸、もういいかしら?」
「はい、こちらのダウンロードは終了しました」
「そう、それじゃもうやってもよさそうね」
「殺すのだけは、やめてください……」
「優しいわねぇ、茶々丸は。死ぬわよ?」
「忠告ですか? でも、私は……」
「なぁにゴチャゴチャ言ってやがる!」
 メガトロンは自分を無視して話を進める二人にレーザーを一発撃ちこむ。
 こいつらを殺したら弾丸を探さないと、などと考えながら。


 茶々丸のPDAの回収を待って、ゾナハ蟲の膜を解除する。
 あのロボットによるミサイルで多くのゾナハ蟲が吹飛んでしまった。
 どういうわけか、ゾナハ蟲の集まりが悪い。この戦いが済んだら、休んだ方がいいだろう。
(それにしても、調子に乗って話に合わせてくれて助かったわぁ~)
 元々、コロンビーヌは話しかけてきた彼を殺すつもりだった。だが時間を稼ぐ必要があった。
 コロンビーヌは最初、分割ファイルに興味を示していなかった。
 だが、茶々丸がテキストファイルに『体内の爆弾に対する説明ファイルの可能性が高い』と書かれた画面を向けられ、気が変わった。
 コロンビーヌにとっても、体内の爆弾は厄介だ。それをどうにかできる可能性があるなら、分割ファイルを破壊されるのを避けたい、と考えたのである。
 メガトロンがこちらを裏切ると分かったのは、ドアの隙間から覗いた時、恐竜の方の口がニヤリ、と微笑んだからである。
 義体の方の演技が完璧なのは認めるが、姿をごまかせる参加者がいるのは始まりの部屋で知っていたため、警戒していた。
 その警戒が役に立ったのである。詰めが甘いようだ。
(とはいえ、戦闘力が馬鹿にはできないわね)
 ミサイルの攻撃で、半分以上のゾナハ蟲を失った。ただでさえコロンビーヌが保有していた半分のゾナハ蟲しか活用できていない。
 再度使うには休憩が必要だ。今の状態なら、一度二度攻撃を防いだだけで、防御も攻撃もできなくなるだろう。
 ゾナハ蟲を攻撃に回せば、攻撃を防げるほど数を集めれるか、怪しい。
(と、言うことで茶々丸を守って戦う余裕はないのよね。せいぜい、PDAを破壊されないように、頑張ってちょうだい)
 冷徹な思考にコロンビーヌは従いながら、メガトロンの懐にもぐりこまんと目を鷹のように光らせる。
 彼女は相手を殺すことに、一切の迷いを持っていない。人を殺すのは勝が嫌っていることだが、相手はロボットだ。
 自動人形と大差はない。
(ちょうどよかったわぁ……)
 コロンビーヌが笑みを浮かべるが、その笑顔は勝に向けたいい笑顔の欠片も残っていない。
 あるのは、創造主フェイスレスに似た、エゴに塗れたイイ笑顔だけだった。


 遮蔽物を盾にレーザーをやり過ごし、茶々丸は現状を冷静に分析する。
 敵は恐竜に変形できるロボットだ。ミサイルやレーザーといった距離をとっての攻撃。
 そして恐竜に変形できることと、その巨大な体躯からパワーも充分にあると推察する。
 対して、茶々丸は体術を修めているとはいえ、身体能力は人間とそう変わりはない。
 かく乱するのがせいぜいだろう。対して、コロンビーヌは違う。彼女はメガトロンを攻撃できるほどの威力の技を持っている。
 コロンビーヌに対する疑惑は晴れないが、ここは協力をするしかない。
 レーザーとミサイルの砲撃がやむ。どういう理由かはわからないが、チャンスだ。
 茶々丸はメガトロンに向かって直進した。
「俺様を遅いと判断したのなら、それは間違いだ!」
 メガトロンが、恐竜の尻尾の部分に変形する左腕を横凪に振るった。
 予想よりも速いが、茶々丸は身軽に跳躍して躱す。そのままメガトロンの頭を蹴った。
 蹴りの反動で離れながら、地面を転がって遮蔽物に身を隠す。数秒前まで茶々丸がいた着地点に、レーザーが一発だけ飛んできた。
 敵は戦い慣れている。それが一番厄介だと考えながら、茶々丸は息を潜めた。
「隠れているだけじゃ、勝てないぜ。お嬢ちゃん」
 声が近いことに嫌な予感がした茶々丸は、その場を素早く離れる。瞬間、壁が恐竜の顎によって砕かれる。
 嫌な笑みを浮かべたメガトロンが、右腕を向けてきた。ミサイルやレーザーを放った、恐竜の頭だ。
 だが、レーザーもミサイルも茶々丸を砕かなかった。
「あいた~~!!」
 飛んできたハンマーがメガトロンの頭に直撃して茶々丸の腕に落ちる。
 コロンビーヌに支給されたグラーフアイゼンだ。コロンビーヌに視線を向けると、彼女は妖艶な笑みを返した。
「素手じゃきついでしょう。それ、貸してあげる」
 コロンビーヌは口だけで、時間を稼げと告げていた。茶々丸は無言で頷く。
 グラーフアイゼンを手に、茶々丸はメガトロンと対峙した。


(なかなか素早いな……)
 メガトロンは痛む後頭部を手の平で撫でながら、茶々丸の動きを分析する。
 メガトロンを翻弄する身軽な動きは認める。しかし、力がない。
 殴られたり、蹴られたりしたが、メガトロンにダメージはない。一番ダメージを受けたのは、あのハンマーが頭に当たった時だ。
(あの女は捨て置いてていいかな。ゴスロリっ娘が脅威か……あのドリルはやばい。ドリルをつけたまま突撃する奴もいるしな)
 どこかドリルに対して、必要以上に脅えながらメガトロンは標的をどちらにするか迷う。
 標的を強い方にして、そいつを殺して簡単に殺せる奴を後に回すのか。
 それとも、弱い奴を殺してから、強い奴に向かうか。
 幾多の戦場を駆け抜けたメガトロンの冷酷な頭脳が動く。
 ブラックウィドーなどには頭が悪いと見られているメガトロンだが、破壊大帝まで上り詰めた傑物である。
 そこまで単純ではない。一瞬どちらの手をとるか迷うが、メガトロンは標的を茶々丸に定めた。
 どういうわけか、コロンビーヌは手を出してこない。なら、二対一になる前に茶々丸を潰す。
 コロンビーヌに苦戦をするなら、素直に退けばいい。そうなる前に一人潰してPDAを奪う。
 戦闘した以上、基地に長居できないゆえに、メガトロンはそう判断した。
 弾薬は惜しいが、またいずれ補充すればいい。なにより、次こそは番組の切り替え時に補充されているかもしれない。
 メガトロンは真直ぐ茶々丸へと突進した。
「あらよっと!」
「くっ!」
 メガトロンの左腕が鞭のようにしなり、茶々丸の頭部へと振るう。身を低くされて、頭部を僅かに掠めただけだがメガトロンの想定内だ。
 横の資材を叩き潰し、スクラップを作り上げる。茶々丸の肘が爆ぜて、ハンマーの振る速度を上げる。
 右腕で受け止めて、甲高い金属をぶつけられた音が響いた。
「いったぁ~!!」
 右腕の装甲板がへこんでいることにメガトロンは憤慨する。
 叩き潰そうとして、宙返りをする茶々丸をみて冷静さを取り戻した。
(絶対この借りは返すもんねー!!)
 むかっ腹を立てるメガトロンが次々と障害物を破壊していく。逃げ場を少しずつ壊していっているのだ。
 茶々丸はその意図を理解しつつも、対処が取れないだろう。メガトロンがいやらしく、にやりと笑った。


 茶々丸は追い詰められながらも、起死回生の機会を狙ってメガトロンをつぶさに観察する。
 たった一度でいい。メガトロンの意思を逸らさねば。コロンビーヌが付け入る隙を作らねばならない。
 ふと、茶々丸が視界を回す。コロンビーヌがいない。
(まさか……)
 いや、そんなはずはないのだ。彼を倒さねば、彼女も身が危うい。ここで見捨てるメリットは薄いはずだ。
(本当にそうでしょうか?)
 疑いだすときりがない。いくら人がいい茶々丸とて、コロンビーヌのしてきたことを知れば疑わざるを得ない。
 鳩尾に、メガトロンの左腕が叩き込まれた。
「ぐ……あっ!?」
 野球ボールのように勢いよく跳ね飛ばされ、壁に全身を叩き詰められる。
 視界がショートして、白くなった。
「や~っと当たったよ。お嬢さん、もうお終いだ」
 茶々丸はグラーフアイゼンを杖代わりに立ち上がろうとするが、膝ががくがくと震えていうことを聞かない。
 一発で体内の回路がショートするほどの衝撃に、全身から煙があがる。やはり力は尋常ではない。
「まだ立ち上がるか。健気だな~」
 右腕を向けてきた。止めを刺すつもりだろうか。
 どうにかして茶々丸が立ち上がろうとして、グラーフアイゼンを掴む腕に力を入れる。
 その瞬間、グラーフアイゼンが消えた。再び、床の冷たい感触を頬に打ち据える。
 武器が消えたことに疑問を覚えるが、一つだけ納得がいった。
 コロンビーヌは、自分を見捨てたのだ。やはり、という気持ちと、寂寥感が胸を支配する。
 メガトロンのレーザーがあっさりと途切れ、ミサイルが出ないことに疑問を持つが、近寄ってくる彼を見れば自分の命が僅かだと分かる。
 それでも、諦めるわけには行かない。
(マスター……ネギ先生……)
 大切な人たちの元に帰る。茶々丸は最後まで抵抗しようとして壁に手をかける。
 メガトロンの右腕の、ティラノサウルスの頭を模した顎が開き、茶々丸を捉えた。

「ぐっへぇぇ~!!」

 奇妙なうめき声は、敵からあがる。ボロボロの茶々丸の前に、ふわりと体重を感じさせないほど柔らかくゴスロリ服を着た自動人形が着地した。
 メガトロンの顔面を殴りつけた右手のグラーフアイゼンを肩にかけ、茶々丸に妖艶な笑みを向ける。
「頑張ったじゃない。茶々丸」
 やけに彼女が、神々しく見えた。


「……すみません。私はあなたを疑っていました」
「そう。別にいいわよ」
「はい」
 内心とは裏腹に、無表情なまま茶々丸は立ち上がった。
 メガトロンは立ち上がり、忌々しげに表情を歪めている。コロンビーヌが戻ってきたことで、光明が見えた。
 茶々丸がかく乱して、隙を見てコロンビーヌが攻撃を仕掛ける。
 メガトロンを壊すつもりはない。戦闘力を奪えればいい。コロンビーヌがやりすぎないよう、注意をせねば。
 一歩前に出ながら、コロンビーヌに話しかける。
「コロンビーヌさ……」
 その瞬間、茶々丸の視界が激しくぶれる。上に下に、まるで回転しながら宙に舞っているような気分だ。
 ガン、と硬い音と共に、またも地面に茶々丸の頭がぶつかった。
 なにか重い物が頭にのしかかり、グシャッという音と共に、茶々丸の視界が黒くなる。
 その瞳は、二度と彼女の先生を映すことはなかった。


 コロンビーヌが戦線に戻ったことにより、逃げる算段をたてていたメガトロンの表情が驚きに満ちる。
 茶々丸を助けに入ったと思ったコロンビーヌが腕に刃を作り、首を刎ねたのだ。
 その上、地面に落ちた首をあっさりと踏み砕いている。崩れ落ちた身体に視線も向けぬまま、コロンビーヌが話しかけてきた。
「え~っと……」
「あたしの名前はコロンビーヌ。ねえ、あなた」
 コロンビーヌが笑みを身体ごと向けてきた。グラーフアイゼンを弄びながら、風に長い髪が揺れる。
 見る物が見れば、天使の姿にも見えただろう。
 その彼女がメガトロンに告げる。
「あたしと手を組む気はないかしら?」
 その言葉に、メガトロンはハァ? とだけ言った。


 先ほどまでのコロンビーヌと態度が百八十度違う。それには理由があった。
「あたしがこの娘を助けたのは、彼女のPDAを回収したかったからよ。勢い余って壊されたらたまらないものね」
 PDAが頑丈であることをコロンビーヌは知ってはいるが、念には念をいれたのだ。
「そのPDAにはそれほどいいアイテムがあるのか?」
「いえ、アイテム自体にはそれほど。けど、これにはあたしたちの爆弾をどうにかできるかもしれない情報が入っているのよ。
律儀に分割ファイルを集めたあの娘に感謝ね~」
「ほう、そりゃ確かに重要だ」
 メガトロンが皮肉を込めて告げる。本当にそんなことができるのか、疑っているのだろう。
 コロンビーヌとて、全面的に信じているわけではない。
「あくまで保険よ。保険。体内の爆弾なんて、邪魔以外なにものでもないもの。
元の世界に返っても爆弾が入ったままなんてごめんだしね」
「まあ、確かになぁ……」
 同意をするメガトロンだが、素直に認めたわけじゃないだろう。
 コロンビーヌは餌をちらつかせることにした。
「そうねえ。殴ったお詫びとして、あなたのミサイルやレーザーを補充してもいいわよ」
「あ~ん?」
「あたしの支給品に、補給装置というものがあるのよ。これがあれば、何回かあなたの弾薬やエネルギーを補充することができるわ」
「ほう……それは魅力的だが、俺様が弾切れなのはいつ気づいた?」
「茶々丸を追い詰める時、ミサイルやレーザーを使えばすぐに片がついたわ。
それに、一回弾切れしているのを忘れてレーザー撃とうとしたわよね? レーザーが途中で切れていたわ」
「よく観察している……」
 さて、どうしたものかと大物の真似をするメガトロンの答えを、コロンビーヌは気だるげに待った。


 顎に手を当て、メガトロンは現状を冷静に分析する。
 コロンビーヌの提案を蹴った場合、メガトロンは弾薬の切れた状態でこの壊しあいの場を勝ち抜かねばならない。
 いくら策略、騙しあいのプロとはいえ、下手は打てない。
 逆に乗った場合はどうか。
 コロンビーヌという戦力が手に入り、忌々しい体内の爆弾を解除できる可能性が出る。
 弾薬も回復と、一目には言うことはない状況だ。しかし、コロンビーヌは他人をあっさり裏切る女だ。
 仲間にして、いつ寝首をかかれるか油断が置けない。
 もう一つの選択肢は、コロンビーヌを殺してPDAを奪うこと。
 とはいえ、逃げに徹されれば一番上の選択肢と変わりない。
 と、なるとメガトロンの選択は決まっている。
「分かった。お前と組もう。俺様は破壊大帝メガトロン様だ。覚えておけ」
 二心ある部下を持つのは、デストロンで慣れている。今更、コロンビーヌと手を組むことなど怖くはなかった。
 男メガトロン、己が目的のためならば顔面に受けた痛みを忘れる。
(いつか、この恨みを晴らしてやる)
 いや、ひとまずおいておくことのできる男だった。


「で、コロンちゃん、今後はどうする?」
 馴れ馴れしく話しかけるメガトロンを鬱陶しく思いながら、髪を掻き分けて首を回す。
 視線をメガトロンに向けて、己の意見を言った。
「まずは下のコロニーの基地に行きましょう。分割ファイルは基地に隠されているみたいだし」
「なら、シャトルでも使うかね?」
「やめておきましょう。通路から行くわよ」
「それはどうしてだ?」
「気づかないかしら。シャトル基地の着陸したシャトルが収まる格納庫には、シャトルが二台あったのよ。
あたしたちの前か後に、誰か着たのよ。そいつと戦闘なんてごめんよ」
「なるほど……なら、とっととおさらばしないとな」
「その前にちょっといいかしら?」
「あん?」
 表情を歪めたメガトロンに、コロンビーヌはフラッシュメモリの形をした四角いプラスチックの塊を渡す。
 疑問を浮かべるメガトロンに、できの悪い生徒に説明する美人教師のように語り掛けてきた。
「PDAに通信機能をつけるソフトが入っているわ。説明によると、それで登録したPDA先に二エリア四方なら通信が取れるみたい。
あたしのにはすでに入れているわ。これで、離れての連携がとりやすくなるでしょう?」
「なるほど……もしも俺様がお前さんを襲っている振りして、助けに入った奴にもぐりこませる時とかには使えそうだな」
「そういうことよ」
 意外とメガトロンの理解の早さに、コロンビーヌは驚いた。頭の回転は見た目とは違って早いようである。
 ソフトを搭載した同士のPDAでしか連絡が取れないが、メガトロンのような相手なら互いに有効活用が可能だ。
 立ち上がって基地を出ようとしたコロンビーヌは、一回振り返った。
 茶々丸の死体だ。と、いうより残骸といった方がいいかもしれない。
 彼女は想い人に会えず、この壊しあいで散った。だが自分は違う。必ず愛しい勝の元へと帰る。
 そのため、人間を殺せない自分をフォローできる相手へと乗り換えた。
 もしも茶々丸が人を殺せるのなら、手を組んだままでも良かった。
 それが叶わないなら、人間を殺せる相手と組むのが当然の判断だ。
 コロンビーヌの判断は間違っていない。だから笑う。かつての創造主、フェイスレスのように。


【E-4 シャトル発着所内/1日目・午前】

【絡繰茶々丸@魔法先生ネギま! 破壊確認】
【残り 30人】



【コロンビーヌ@からくりサーカス】
[状態]:健康、気分高揚
[装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
     タブバイク@ゼノサーガシリーズ
[道具]:基本支給品一式×2、PDA(コロンビーヌ(通信機能付き)、パンタローネ、絡繰茶々丸(分割ファイル一つ))
     不明支給品1~5個(確認済み1~5(銃はない)) 、 スタングレネード(3/3)
     床屋セット(鋏、櫛、鏡) 開天珠@封神演義 たずね人ステッキ@ドラえもん 、アカネハウス11号@パワプロクンポケット8
     補給装置@スーパーロボット大戦OG(4/5)、PDAの通信機能付加ソフト
[思考]
基本:殺し合いに勝ち残り、優勝者の報酬として勝の下へ戻る
1:優勝するため他の参加者を殺す。ただし危なくなったら逃走を図る
2:『人間』が居なくなるまで、メガトロンと共闘。都合のいいときに切る。
3:アルレッキーノ、と協力出来るようなら協力する
4:もしアルレッキーのと自分が生き残った場合、自分を優勝させてもらうように懇願する
5:やっぱり人間は殺せない。人形は壊す。お人形みたいな人間も壊す。
[備考]
※参戦時期は死亡後です(原作40巻)
※フランシーヌ人形はサハラ編時の偽者だと確信しています
※全てのゾナハ蟲(コロンビーヌらが吐き出すものも)には以下の制限が掛かっています。
また会場の全域には十分なゾナハ蟲が漂っています。
1:外部には一切の害はありません(ゾナハ病の感染や機械類のダメージなど)
2:コロンビーヌが自分の武器として使用するのには問題なく使用できます
※ゾナハ蟲の制限にはまだ気付いていません
※グラーフアイゼンはシグマによりハンマーフォルムに固定されています
※タブバイクは飛行できません、他にも色々制限されています
※補給装置@スーパーロボット大戦OGは制限により、五回のみ補給が可能です
※二エリア以内なら、メガトロンのPDAと通信が可能です


【メガトロン@ビーストウォーズ】
[状態]:全身打撲。ダメージ中程度。エネルギー(100%)。弾薬(100%)。疲労小。
[装備]:ハイパージャマー@スーパーロボット大戦OG
[道具]:PDA(メガトロン(通信機能付き))、草薙素子のスペア義体@攻殻機動隊S.A.C、ランダム支給品0~1(確認済)
[思考・状況]
基本思考:優勝しサイバトロンの抹殺。その後シグマも倒す。
1:コロンビーヌと共闘。都合のいいときに切る。
2:優勝を目指す、自身による直接戦闘はしばらく避ける。しかし己の正体を知る者を殺せる状況なら、別。
3:チンク達へいつか復讐する
4:二度とハカイダー、仮面ライダーV3、凱に会いたくない。逃げる。
5:とりあえず、南下。弱者を狙う。
[備考]
※二エリア以内なら、コロンビーヌのPDAと通信が可能です



【支給品紹介】

【補給装置@スーパーロボット大戦OG】
スーパーロボット大戦OGに登場した換装武器。
エネルギー、弾薬を一分(一ターン)で補充ができる。


【PDAの通信機能付加ソフト@オリジナル】
PDAに通信機能を付加するソフト。
このソフトが入ったPDA同士なら、二エリア以内であれば通信が可能。


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