涙の証明(後編) ◆2Y1mqYSsQ.


 グレイ・フォックスは首を絞められる苦痛に、必死で抵抗していた。素子の力が並ではないのだ。
 苦痛と全身の痛みに、グレイ・フォックスは歓喜に身体を震わせていた。死と隣り合わせ。
 そして自らの意思で、命を酷使する。この感覚こそ、この戦場の臭いこそがグレイ・フォックスが求めていた物。
 決して他人の命令には命を懸けない。モルモットとして命を弄ばれない。
 その戦場と、命のやり取り、そしてスネークとの戦いこそがグレイ・フォックスに生の実感を与えてくれる。
 とはいえ、スネークとの再会までに命を落とすのも無様だ。全身に力を込め、この状況を脱するために腕を振り解こうとする。
 その瞬間、とうとうグレイ・フォックスに訪れた。
「ぐ……あ……」
 素子は首を絞められている苦痛の声だと認識していたが、実はそうではない。グレイ・フォックスが最も恐れる物。
 実験に使われていた薬物による、禁断症状が出たのだった。

「おおぉぉぉぉぉOOoooぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?」

 グレイ・フォックスの視線が上に向き、左右にぶれた。赤いモノアイが発する光が、小刻みに動く。
 全身が戦慄き、棒立ちとなりながらグレイ・フォックスはひたすら吼えた。
 首を絞めていたはずの素子は、吹き飛ばされたかのように尻餅をついている。
 禁断症状が出たとき、身体から衝撃波のような物が出るらしいが、グレイ・フォックスにも理由は分からない。
 実験に使った薬物の中に、ESPを促進する薬でもあったのだろうか?
 それよりも、グレイ・フォックスは薬の禁断症状によって引き起こされる苦痛に耐えかねて、地面に頭をぶつけた。
 このままでは、自分が消えてしまう。もっと痛みを。もっと苦痛を。
(スネーク! スネークはどこだ!?)
 答えは知っている。彼はここにはいない。この場でグレイ・フォックスを追い詰めたのは素子だから。
 ならば戦場で構わない。グレイ・フォックスはなりふり構わず、素子へと距離を詰めた。
 素子のつま先がグレイ・フォックスの鳩尾に入る。程よい苦痛が生まれるが、すぐに素子は吹っ飛んでいった。
 逃がすか。グレイ・フォックスは貫手を素子へと繰り出した。
「ガ…………ハ……」
 深々と突き刺さった腕。腕の中で潰れていく、いくつかの臓器の感触。倒れる素子を見て、グレイ・フォックスは己が戦場が、終わってしまったことを悟った。


(衝撃波……緊急時にはそんなものを発することが出来るなんて……。とことん、ここは不条理だわ……)
 素子は腕を引き抜いた敵サイボーグが、壁に頭をぶつけているのを見ながら終わりを悟る。
 薬物中毒者なのだろうか? 彼は薬物が切れたときと似たような反応を示し、衝撃波を発した。
「俺が……消える! 消える!!」
 この様子なら、しばらくはクロたちを追えないだろう。人工臓器をまとめて数個破壊され、脳の生命維持するのは難しい。
 もって数分。その前に済ませることがある。
『広川さん……聞こえるかしら? 広川さん……』
 素子は最後のコンタクトを取るため、武美へと回線を開いた。


 爆発した部屋を見つめて、武美は呆然とする。衝撃で壁まで吹き飛ばされたもの、どうにか気絶せずに済んだ。
 生きているのはエックス。クロのアポロマグナムを装着した右手が落ちていた。
「あ……あぁ…………」
 クロが死んだ。風来坊さんに似た男気溢れる、素直じゃない黒猫。
 散々武美を見捨てるといっておきながら、結局は助けていたクロ。
 もう会うことはない。会えない。だったら、誰が殺したのか?
 浮かび上がってこちらに戻ろうとするエックスと、武美の視線が合ってしまった。
 憎い。だけど武美にはエックスを倒し、クロの仇を取れるだけの力がない。
「…………俺が憎いなら、憎んでくれてもかまわない。けど……もし戦うのなら、容赦はしない」
「……ッ!?」
 鬼の視線が、武美を貫く。恐怖で罵ろうとした言葉が、止まってしまった。
 殺される。純粋な殺意に武美は動けそうにもない。悔しい。仇が取れないのなら、せめて泣いてあげたかった。
 自分はクロにしてやれることはない。武美に絶望が広がる。
「武美! 無事か!?」
 声に一瞬武美は身体を震わせ、ガクガクと壊れたロボットのように振り向いた。
 そこには金色ネズミが走りよってきたのだ。やがて武美を庇うように、ウフコックがエックスと対峙する。
「……クロを殺したのか?」
「……ああ。彼は戦っていた。イレギュラーだ。抵抗するな」
 そうすればこちらからは攻撃しない、とだけエックスは続けた。そのままエックスは歯牙にもかけず、ウフコックと武美の横をすり抜けていく。
 素子のところへと行くのだろう。武美は恐怖に震えながらも、怒りに突き動かされた。
「ウフコック!!」
「!? ああ、任せろ!」
 ウフコックは武美が掴んだのと合わせて、己の身体を銃器へと変身【ターン】させた。
 すぐさま反応したエックスに、武美は引き金を引いた。このとき、幸運が二つ起きる。
 射撃制御プログラムを素子から得たため、弾丸はエックスへと命中した。
 銃の反動に耐えれるほど武美には力がないため、姿勢が崩れてエックスの放った光弾が右肩を掠めて外れた。
 ウフコックが気を使って反動の小さな銃へと変身【ターン】していたのだが、まだ武美に耐えれるものではなかった。
 それが偶然にも、武美の命を救った。だが偶然によって得た命は、すぐに費える。
 エックスのチャージ音が室内で響いた。ウフコックが殻となってカバーしようと構えるが、武美は戦闘に無縁の存在。
 それでも、最後の瞬間まで武美は生存を望んだ。たとえ体内に仕掛けられた寿命によって、半年も生きられない身体としても。
「クロちゃあぁああぁああぁん!!」
 力を貸して。そういうつもりの叫びだった。
 瓦礫が飛び散る音が、武美とウフコックに届く。エックスにも音は聞こえたらしい。
 大きく開いたリラクゼーション室から小型発電のある部屋へとつながる穴より、黒い影が飛び込んでエックスの顔面を殴った。
 盛大に転がって吹飛ぶエックスを尻目に、メタルボディが露出し、隻腕になったクロは武美に振り向いて答える。

「あいよ」

 こんな時泣けたら、どれほどよかったのだろうか? 武美はそう思いながら、今度は喜びに満ちた告げる。
「遅いよ……」
 ボロボロになりながらも、クロはただいつものニヒルな笑みを浮かべていた。


「おい、武美。これ持っていろ」
「クロちゃんのPDA……なんで!?」
「いいから。ウフコック、力を貸せ」
「もちろんそのつもりだ。なにに変身【ターン】してほしい?」
「へっ……ガトリングだな。オイラの腕にはまって、緑色の円筒状の……愛用武器!」
「随分と物騒な相談だが……任せろ」
 ヴヴヴ……とエックスがチャージする音が聞こえる。悠長にしている暇はない。
 クロはボロボロの身体に気遣って威力を落とすな、とだけウフコックに注文を追加する。
 やがて、ウフコックが変化を終えてクロの左腕にダークグリーンの、四門の銃口がついた大型のガトリングが装着された。
 注文と違い砲身が二メートルほど長く、銃身を固定する三脚のような脚もついている。
 口笛を吹いて、ウフコックの変化をクロは満足していることを伝える。
 先ほどの電撃で、クロの生身の部分は焦げて機械部分はガタガタだ。
 撃ててこの一撃。『最後』の大暴れには相応しい。

「武美、そこにいろ。いいもん見せてやる」

 やけに武美の息を呑み込む様子を感じ取れたが、クロはひたすらエックスにガトリングを向けて身体を固定する。
 エックスのチャージはあと数秒で完了するだろう。そうはさせるか。
 クロは引き金を引いて、銃口をエックスへと向け続けた。
「ぐっ……!?」
「オラオラオラオラオラァーッ!!!」
 エックスはまたあのエネルギーをまとって、弾丸に耐えている。アポロマグナムを拾わなかったのは、弾切れだから。
 クロとウフコックはひたすら弾丸を排出し、エックスを倒すために鬼気迫った表情で反動を全身に受け止め続ける。
 ボン、とクロの背中が弾けた。意外ともろい。
「ちょっと! クロちゃん!!」
(分かっているよ。だからちょっとだけ……待ちやがれ)
 クロはガトリングを握る手を決して離さず、エックスを倒すことに全力を注ぎ込む。
 エックスがフリームーブのエネルギーを解いて、フルチャージを済ませたバスターをクロへと放った。
「まずいっ」
「馬鹿、ウフコック! 攻撃に徹しろ!」
 ウフコックが殻となり、クロを庇った。ウフコックはファルコンアーマーのバスターが、貫通性の高いショットだと知らない。
 だからこそ、バスターショットがクロの左腕を砕いたのは彼が悪いわけではなかった。この瞬間を、ウフコックが後に後悔することになっても。
「しま…………」
「どけぇえぇぇえ!! ウフコォォォォォォック!!」
 クロが叫び、ウフコックは彼がとる行動を認識して殻を解く。空いた視界に、次のチャージを準備するエックスがいる。
 クロはニヤリと笑った。ウフコックの行為は無駄ではない。現に驚いているエックスがいい証拠だ。
 素子を救援に迎えないのは残念だが、彼女なら一人でも何とかすると信じることにする。
 クロは頭両胸両脇両足に備えられた、九門のミサイル発射口を開いていた。

「おおぉおおぉぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉっ!!」
「クッ……!」

 クロの身体からミサイルが発射され、エックスに襲い掛かった。通路は爆炎と閃光が広がり、その場にいた人物全ての視界を奪う。
 光が広がる中、武美の無事を確認したクロは不敵に笑う。破壊のプリンスクロは、武美に襲い掛かる絶望を砕いた。


 どうにか外に出た武美は、死に掛けのクロを抱えて発電所へと振り返る。
 あそこには素子が戦っているはずだ。戻らなくていいのか、少し迷う。
『広川さん……聞こえるかしら? 広川さん……』
 素子の通信が届いた。そうか、これで確認を取ればよかったのだと今更気づく。
『草薙さん! クロちゃんが……クロちゃんが死にそうなんです!』
『そう……だったらすぐにこの場を離れて。私も……長くは持ちそうにないわ』
『草薙さんまで……』
 武美に絶望が襲い掛かる。胸に抱えている瀕死のクロと、警察である素子が死に掛けているのだ。
 この世に希望はない。そう現実が告げているような気がした。
『ええ。だからこそ、これが最後の通信になるわ。広川さん……いきなさい』
『…………一人で?』
『ウフコックがいるわ。彼を頼りにしなさい』
 確かに、武美はまだ一人ではない。立ち止まった彼女を心配そうに見ているウフコックがいる。
 彼は素子と通信していることを知らせると、律儀に黙っていた。
『……広川さん。確かに、あなたではウフコックを操って戦えなんて無理だわ。けど、私と出会ったのはあなたが初めて。
ウフコックを活かして、彼を扱える人間へ渡せるのはあなただけ。過酷だけど、お願いできないかしら?』
 武美は答えなかった。風で木の葉が揺れ、擬似太陽によって発せられる光が葉と葉の間から漏れて武美を照らす。
 爆発によって服は少し焦げて、顔は煤だらけ。熱によって髪も所々跳ねていた。
 もちろん、武美に格好を気遣う余裕はない。追い詰められ、殺されかけ、殺気を向けられた。
 武美とて、CCRの追っ手を差し向けられた経験を持つ娘だ。銃弾を撃たれたのも、一度や二度ではない。
 それでも、もう一度エックスの殺気を受けながら戦えるか、と問われれば無理だ。クロの仇を討ちたいのに。
『…………広川さん。この先、私はあなたに干渉が出来ない。だから、耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独にいるのも、変わるのも、死ぬのもあなたの自由。
だからこそ……あなたのゴーストに従って道を決め……な……さ…………』
『草薙さん……草薙さん! 草薙さん!!」
 もはや途中から、武美の声は口から出ていた。ウフコックが察したのか、くやしげに地面を叩いている。
「……あの警察の姉ちゃんも……逝っちまいやがった……のか?」
「クロちゃん……駄目だよ、喋っちゃ」
「へ……今も根性で……どうにか喋ってんだ……。もう……おせーよ……」
「馬鹿なこというな。一分一秒、死ぬまで生にしがみつけ。それが生きる者の義務だ」
「あたま……でっかちのネズミが……」
 辛らつだが、クロの声色にウフコックを蔑む様子はない。むしろ嬉しそうだったのが、武美の印象に残った。
「クロちゃん馬鹿だよ……。今まで黙っていたけど、あたし長く生きられないんだよ?
もって半年なんだから……クロちゃんのために涙を流すことも出来ないんだから……クロちゃんが命を懸ける価値なんて……」
 涙が出そうなのに、出てこない。命の恩人の死を悲しんでいることを、形にすら出来ない身に武美は呪った。
 ウフコックは無言。苦しそうな息遣いながらも、クロは武美に視線を向けた。
「そう……か……。だったら……ミー君に会えって……。剛っつうウスラトンカチは……あんなんだが腕は一流だ……。
ミー君に会って……事情を話せばあのお人好しなら……手を貸す……」
 武美は隠し事を告げても、態度の変わらないクロに驚いた。
 対して、クロは苦しそうながらも言葉を止めない。
「ばっか野郎……お前が寿命だからって……オイラが見捨てるわけないだろう。早く言えば……あのウスラトンカチのことを話してやったのによ……。
今なら……きっと泣ける機能もちゃんとつけてやるぜ……あいつなら……」
「か弱い女の子に……馬鹿はないでしょう、クロちゃん」
「自分で…………か弱いとか言うな……」
 武美は笑おうとしたが、うまく笑顔を作れなかった。クロは弱々しく、ウフコックへと視線を移動する。
「ウフコック……武美を頼む…………」
「ああ。委任事件担当捜査官として、クロの依頼を受ける。法務局を通すことは現在出来ない。
だが、これを断るのは武美に生存放棄を選択させないという、俺の有用性を破棄することだ。断りようがない」
「小難しいこといってんじゃ……ねーよ……。頭でっかちの……ねずみ野郎……。じゃあ、任せる……ぜ……」
 クロはただ、それだけ言って脱力する。武美の腕の中で、クロの体重が軽くなったような錯覚が起きた。
 揺すって名を呼ぶが、彼は揺するな!とも、うるさい!と怒鳴ることもない。
 熱血ハートのサイボーグクロ。彼はここで死んだのだと、武美は実感した。


 ウフコックは目の前で死んでいく戦士を、静かに見守った。たった一度、彼の武器となったがクロは武美を守るために、己が魂を燃やし尽くした。
 クロに敬意を払って、武美を見る。彼女が精神的に深い傷を追っているなら、多少荒い手を使わざるを得ない。
 スタンガンとなって気絶させ、迷彩ネットとなり身を隠させる。成功するか五分五分、もっと分が悪いかもしれない。
 だが、最終手段としてはウフコックが取れる唯一の手だ。出来ればそんなことしたくないと、武美の匂いを嗅ぎ取る。
(悲しみ……後悔……無念……。しかし、死の匂いはしない)
「武美、ここは……」
「ごめんね、ウフコック。ちょっとの間だけ……一分だけこのままにさせて……」
 武美の震える背中を見つめ、ウフコックは黙した。彼女の心の決着が着くならが、一分どころか五分も十分も待つ気だ。
 ウフコックは他者に何かを強要するような人格ではない。それにクロは報われてもいいはずだ。
 彼の死は、彼の有用性はウフコックにも武美にも刻まれた。それでも、エックスをあれで仕留めきれたとは思えない。
 生きて情報を持ち帰ることも、ウフコックたちの義務だ。そこまで思考が及んで、ウフコックは素子とクロを喪ったことを思い出す。
(俺は……また喪ってしまった……)
 ウフコックには仲間がいた。マルドゥック・スクランブル-09のメンバー――現在は緊急法令の一つだが、元々は独立機関だった――は、殺され、裏切り、欲望に飲み込まれた。
 ドクターと二人きりとなり、バロットと出会うまでウフコックは、我武者羅に己が有用性を証明し続けた。
 そのバロットも死んだ可能性がある。そして、素子とクロ。何度味わっても慣れない喪失。
 なのに、冷静に生き残る道筋を立てる、怒りに任せて感情的にならない自分は、結局のところ煮え切らない【ウフコック】なのだろう。


 きっかり一分、武美は抱いていたクロの遺体を降ろした。出来れば埋めてやりたかったが、その時間はないだろう。
 土を掘る道具もない。わざと土埃を目にかけて、涙を強制的に流してやろうか。そう思った。
(でも……そんなことをしている暇はない)
 あの人……風来坊さんなら、こういう時なんと言ったのだろうか? ヒーローとか正義とか断言して、先走るのだろうか?
 分かることは一つ。自分は風来坊さんのように強くはない。正義や正しいことのために一生懸命になれない。
 クロと素子が死んで悲しいのに、エックスと襲撃したサイボーグに対する恐怖心が上回っていた。
「えいッ!」
 武美は自分の両頬を強く叩き、パン! と大きな音が森に響く。ウフコックが驚いていた。
 平時であれば、こちらを心配そうに見上げるウフコックを可愛く思って笑っただろう。
 けれど、今はそうしている暇はない。武美はウフコックに左手を出す。
「逃げよう、ウフコック」
「…………武美。だい……」
「……大丈夫か、って言いたいなら、無理。そんなに簡単に立ち直れない……。仇も討てない……。
だから……ウフコック。あたし、助けを求める。きっと、クロちゃんや草薙さん、風来坊さんのようなヒーローがまだいるって、信じているから」
 だから、その人にあの二人を倒してもらう。その方が、脱出のためにもなるはずだ。
 武美は少しだけ走って、クロの死体へと振り返る。物言わぬ黒猫の死体。胸がキュッと締め付けられた。
「ごめんね、クロちゃん。必ず戻って……お墓作ってあげるから…………」
 この悲しみを吐き出すのは、今ではない。武美は壊れそうになる心を抱えながら、ウフコックと共にいく。
「武美」
 肩に乗るウフコックが話しかけてくる。武美は走りながらも、視線を向けた。
「君は泣けないと言ったが……今君は泣いている。涙が出ないだけだ。俺がそう証明する」
「ッ!?」
 武美はウフコックの言葉に、ハッとする。彼は堅苦しい。クロの言うとおり、頭でっかちにも思えた。
 だからこそ、適当なことは言わない。彼の優しさが、武美の心に染みた。
「くやしいなあ……。やっぱり涙が出ないのは、くやしいよ……ウフコック……」
 壊れそうな心が、ウフコックへと漏れた。彼はただ、静かに武美の傍にいてくれた。


 それからしばらくして、ウフコックが敵に回収されるとまずいとIDを武美のPDAへと移される。
 話を出したウフコック自身は、支給品という扱いに不満を示したが。
 彼女たちは、結局建物が崩れたというTV局方面へと逃げることにした。
 これは賭けだ。建物が崩壊したということは、クロや素子のように力のある戦士たちも向かっているかもしれない。
 あえてリスクを受け入れ、彼女たちは突き進んだ。
 クロと素子の仇をとるために。


【草薙素子@攻殻機動隊 死亡確認】
【クロ@サイボーグクロちゃん 死亡確認】
【残り二十五人】


【F-8 東/一日目・日中】

【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康、頭部に微ダメージ。煤で汚れている。軽い火傷。
[装備]:ウフコック@マルドゥックシリーズ
[道具]:PDA(武美、クロ)×2、ランダムアイテム1~2(クロ好みの武器はないが武器は最低一つある)
    アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS(弾切れ、発電所内にクロの右手と共に放置)、
    ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(クロの死体のなんでも斬れる剣があった場所に収納)、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:危険を覚悟で市街地へ向かう。
2:クロと素子の仇をとるよう、強い人に頼む。
3:シグマの居場所を探る。
4:軍事基地に行く機会があったら行ってみる。
5:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。
※【F-8】に王ドラの亡骸が埋葬されました。墓石がわりの石には“ネコ型サイボーグの墓”と刻まれています。
※メモに書かれていた連絡先の電話機は全て黒電話です。(留守電は効きません。)
※電波塔、テレビ局、学校、軍事基地、鉱山、スクラップ工場には電話をかけました。が、誰も出ませんでした。
※ボイルド(徘徊者)から情報を得ました。
※A-1・軍事基地に『何か』があると考えています。

※ウフコックは、ターンした物を切り離すこと(反転変身【ターンオーバー】)が出来なくなっています。
※ウフコックの参戦時期は、ボイルド死亡後です。


「グ…………ウウゥゥゥゥゥゥ…………」
 いつでも、この重度の禁断症状には慣れはしない。グレイ・フォックスの頭を侵すような感触。
 忘れるには、痛みを身体に受けるしかない。グレイ・フォックスが視線を死体へと向ける。
 この女は悪くなかった。拳で意識が飛びそうなほどの痛みを感じることもあったのだ。
 苦し紛れのグレイ・フォックスの貫き手を受けたあたりは、運が悪かったのだろう。
 それに、スネークならこの女以上の痛みを与えたはずだ。今まさに消えそうな意識を保つため、グレイ・フォックスは一発頭を壁にぶつける。
 この痛みでは駄目だ。自分を侵す感覚に抵抗できない。やはり戦場を求める必要がある。
 次の戦場を。グレイ・フォックスはフラフラとネズミが逃げた方向へと、PDAを回収してから歩いていった。
 バイクに乗りなおす余裕はない。派手に壁が爆破されている。ミサイルの類を装備している兵器があるのだろう。
 逃げ回るネズミと自分の戦力差としては、ちょうどいい。
 幾つもの戦場を潜り抜け、そして自分は……
(スネーク、キサマだけが俺を死へと誘ってくれる)
 だから殺そう。シグマを殺し、スネークに会うために。


【G-8 中央/一日目・日中】

【グレイ・フォックス@メタルギアソリッド】
[状態]:全身打撲。全身火傷。ダメージ大。疲労大。チャージショット二発分のダメージ
    薬が切れたことによる、禁断症状。
[装備]:虹@クロノトリガー。
[道具]:PDA(グレイ・フォックス、ドロシー、草薙素子、ドラ・ザ・キッド)×4。
    水消耗。ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、白いカラス(全体に焦げ跡あり)@人造人間キカイダー
    ブルースシールド@ロックマン、ジローのギター@人造人間キカイダー
[思考・状況]
基本思考:闘って兵士として死ぬ。もしくは優勝してシグマを殺し、スネークと殺しあう。
1:逃げたネズミ(ウフコック)を追う。
2:次の戦場へと向かう。
3:強者についている弱者を、戦いの邪魔をされないように殺しておく。
4:いずれロックマンと灰原(いずれも名前を知らない)と再戦する。

※原作死亡直後からの参戦です
※『ライドル@仮面ライダーSPIRITS』『トランスメタルドライバー@ビーストウォーズ』がF-5エリアに落ちています。


 エックスはフッ、と目を覚まし、周囲を見渡す。クロのミサイル攻撃によって吹き飛ばされ意識を失ったようだ。
 身体がギシギシ痛む。五体満足なのは、このアーマーのおかげだろう。
 それほど、クロの攻撃は激しかった。足音が聞こえ、正面を向くと白いヘルメットを被るイレギュラーが現れた。
 殺す。エックスは殺気を持って立とうとしたが、身体が言うことを聞かない。
 やがてそのイレギュラーは通り過ぎていった。悔しいが、休憩が必要だと自覚する。
(そういや、Xとの戦いで無茶した傷も、癒えていなかったっけ……)
 このままでは戦いようもないだろう。ファルコンアーマーを手にしても、まだ力が足りない。
 クロと呼ばれたイレギュラーは、見た目にも負傷が酷く生きてはいないだろう。
 だが、一人を倒すたびに満身創痍になっていけば、イレギュラーを全滅させることは叶わない。
 エックスは上半身を壁に預けて、楽な姿勢をとった。レプリロイドがもつ自動回復装置によって、動けるようになるまで待つしかない。
「元ヒーローか……」
 彼は女性を守ろうと奮闘していた。イレギュラーでなかった可能性は高い。
 それでも、戦っていたのだ。せめて目に映るすべての争いだけでも潰していく。
 願いと共に、鬼となったことに後悔はない。そのはずなのに……
「なんでこんなに……辛いんだ…………」
 エックスの頬を伝って、雫が落ちる。
 それが傷が開いて落ちた血【オイル】なのか、レプリロイドである彼が流した涙なのかは、確認できる人物はいなかった。



【G-8 発電所内/一日目・日中】

【エックス@ロックマンXシリーズ】
[状態]:疲労大、全身に大きなダメージ、絶望と後悔、自分が間違っていると認識しているが、退かない覚悟。
    爆風により装甲に凹み。
[装備]:ファルコンアーマー@ロックマンX5
[道具]:PDA(エックス、あ~る、バロット)、クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校  赤い仮面@現実、グロスフスMG42(予備弾数20%)
    NIKU・Q・マックス@サイボーグクロちゃん、ドクターケイトの杖@仮面ライダーSPIRITS(D-6 道路に放置)。
[思考・状況]
基本思考:壊し合いを潰し、シグマを倒す
1:休憩。自動回復装置で身体が癒えるのを待つ。
2:戦っている者を、誰であろうと潰す。
3:戦わない者は放置。
4:ゼロと合流。ただし、ゼロの賛同を得れないのであれば……
[備考]
※神敬介の名前を、Xだと思っていましたが、勘違いだったと思っています。
 また、神敬介が死んでしまっていると考えています。
※ライドアーマー“イーグル”@ロックマンX4は破壊されています。
※ファルコンアーマーの制限。
 1.フリームーブの時間は、本来の半分。
 2.フリームーブによる特定のダメージの無効はない(ただし、威力の軽減はある)。
※他にも、ファルコンアーマーの制限はあるかどうか不明。後の書き手さんに任せます。



時系列順で読む



投下順で読む



116:涙の証明(中編) エックス 129:遅過ぎた出逢い
116:涙の証明(中編) グレイ・フォックス 130:約束――俺の有用性
116:涙の証明(中編) 草薙素子 GAME OVER
116:涙の証明(中編) クロ GAME OVER
116:涙の証明(中編) 広川武美 125:戦っちゃいますか?(前編)





| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー