破壊の宴(1) ◆9DPBcJuJ5Q


「関係無い……関係無い…………関係無い………………関係無い……………………」
 スパイセットにより映し出される映像を見つめながら、コロンビーヌは呪詛のように言葉を繰り返し、繰り返し、繰り返し続けている。
 その様子を、傍のメガトロンは真剣に――否、値踏みするような視線で見守っていた。
 呪詛を繰り返すコロンビーヌの脳裏を過ぎるのは、『最古の四人』の最初の脱落者。
 最古の“しろがね”の復讐の姦計に、憐れに、そして無惨に、無様に壊れた自動人形、ドットーレ。
 自らの存在意義、存在理由。それを失くした/棄てた自動人形=廃棄人形(ジャンク)。
 醜態を晒しながら、自らの愚行を悔いることすら出来ずに壊れた同胞の最期が、コロンビーヌの恐怖を煽る。
 自分も、ああなってしまうのではないか。
 自分は、メガトロンに嗤われながら、愛しい彼の隣にずっと一緒に居続けるという願いも叶わず、ここで壊れてしまうのではないか。
 それでも、と。コロンビーヌは恐怖を自覚し、そのリスクを覚悟し、自らの想いに殉じるのだと決意した。
 故に、滅びの呪詛を唱え続ける。
「フランシーヌなんか、関係無い……!」
 それに、コロンビーヌには確信があった。あの時のドットーレと今の自分の結果は、絶対に大きく違うものになるのだと。
 ドットーレの存在意義=フランシーヌの人形/哀れな道化。
 コロンビーヌの存在意義=フランシーヌの人形/そして……。
 その胸に初めて抱いた無垢なる祈りと共に、呪詛は紡がれていく。
「フランシーヌなんか――私に! 関係無い!!」
 ――そして、滅びの呪詛は此処に完成した。
「ほっほ~う……」
 その様子を、メガトロンは愉快そうに、そして楽しそうに見届けた。
 そして、スパイセットが映し出す離れた場所の様子に目を移す。
 映し出された人影は4人。
 その中で、銀髪の女性に跪く楽師の姿は、一際注目を引き寄せていた。





時は、少し遡る





「いや~、コロンちゃんがこんなに素敵な便利アイテムを持っていて助かったわん♪」
 言いつつ、メガトロンはコロンビーヌが転送した、この状況に最適とも言える支給品・スパイセットを大事そうに撫でた。
 その直前に散々言葉責めされたことは、最早忘却の彼方だ。
 見た目幼女からの辛辣な言葉に「アッー!」とか「いや~ん!」などと言って悶えている姿は、全デストロン戦士、そして初代メガトロンの尊厳に関わるので、疾うに忘却の彼方だ。
「はいはい、おべっかはいいわよ」
 コロンビーヌは溜息混じりにそう言って、メガトロンにさっさと仕事をしろ、と視線で訴えてきた。
 それに応じて、メガトロンは渋々と作業を開始した。
 このスパイセット、本来ならばかなり広範囲を動き回れるようだが、制限によって移動可能な範囲を半径100mにまで制限されていた。
 だが、同じ施設内を動き回る分には――今回のような場合には、それだけで充分だ。
「それじゃ、マイクはハカイダー達の方に、カメラの方は外に送っておこうか」
「取り敢えず、それの操作はメガちゃんに任せるわ」
 メガトロンの言葉に、コロンビーヌはどこか投げ槍に頷いた。
 聞いてみたところ、どうやら彼女はこの手の精密機械の扱いは得意では無いらしい。
 そうして、外からやってくるであろう本郷と、一室に篭り対戦相手を待ち受けるハカイダーの様子を、それぞれ映像と音声で2人は見守った。
 しかし、それから十数分が経過しても変化無し。
 静謐とした空気が、辺りに満ちる。
 30分が経過。
「……静かだな」
「……静かね」
 沈黙に耐えられなくなったのか、2人は何となく、口を開いた。
「……コロンちゃん、5秒CMで番宣していい?」
「ちょっと、態々騒がないでよ」
「じょ、冗談だよ、冗談~。……お、外に動きありだ」
 退屈のあまり若干おかしくなったメガトロンの許に調度良く、外を見張っている映像に、こちらへやってくる何者かの姿が映し出された。
 やってくるのは、緑色の服を着た女と、どこかコロンビーヌに似通った印象を受ける道化師だった。
「あれは……アルレッキーノ」
 道化師の姿がアップにされると、その名前をコロンビーヌが呟いた。やはり、知り合いだったようだ。
「コロンちゃんのお知り合いか。で、そのアルレくん達は何しに来たと思う?」
 気分転換にちょっとそこまでひとっ走りに、などということはあるまい。脚本にそう書いてあったら仕方ないけどな。
「あいつ、この壊し合いには一応乗って無いらしいわ」
「ほうほう。で、コロンちゃんのことも知ってるのか?」
「いいえ、知らないはずよ。だって、あいつの前の連れの茶々丸ちゃんは、私が壊しちゃったんだから」
 そう言って、コロンビーヌはクスクスと笑った。その様子に、メガトロンもニヤリと不敵に笑った。
「悪い女だね、コロンちゃん」
「茶化さないでよ。で、何をしに来たかだけど……もしかしたら、あいつ、本郷ってやつの仲間になったのかもしれないわね」
 コロンビーヌはあっさりと、そのように断言した。アルレッキーノの気性をよく知るコロンビーヌがそう言うのだから、その可能性は極めて高いと考えていいだろう。
 それに、ここにはどうやら正義の味方気質の者が多い様子。ならば、正義の味方に仲間が着々と増えることも、気の合う者同士それも円滑だろう。事実、地球に漂着した初代コンボイ率いるサイバトロンはそうやって地球人と協力関係を結んだという。
 加えて、ここに人質と共に決闘の刻を待つハカイダーがいるということと、その場所を目指して真っ直ぐに突き進んでくること。これらだけでも、彼らが本郷の仲間である可能性は7割。コロンビーヌの証言も加えれば9割だ。
 だとしたら、それはなんという好都合であろうか。
「そう、か……まぁ、そうだとしたら却って好都合か。その場合は、コロンちゃんが潜り込むのも簡単だろう?」
「ええ、そうね」
 アルレッキーノは、コロンビーヌがこの壊し合いに乗っていること……は、もう過去の話か。メガトロンと共に主催者の座を狙っていることを知らない。ならば、旧知の誼で本郷達への仲間入りは容易いだろう。
 後は、PDAの通信機能を駆使してメガトロンが外部から本郷組を奇襲すれば、それはとても効率的なことになるだろう。
 いや、自分の姿は既に過去のものでは無い。おニューの素敵なメタルスボディだ。上手く取り繕えばハカイダーをも騙して易々と、この場でメガトロンも共に潜入できるだろう。
「んじゃ、マイクの方も外に向けるか。ハカイダーの方はこのウサミミでカバーだ」
 これからのことを考えれば、さして大きな動きを見せないだろうハカイダーよりも、これから動く上で重要になるアルレッキーノ+オマケの動きの方を重視すべきだ。
 コロンビーヌもその提案に納得すると、メガトロンはウサミミを装着し、スパイセットを操作した。




 アルレッキーノとラミアがシャトル基地に辿り着くと、上階の窓が開け放たれ、そこから2人の人影が飛び降りてきた。
「その女……貴様ら、本郷の仲間だな。本郷はどうした」
 着地して早々に問いかけてきたのは、黒い髪に額のゴーグル、特徴的な丸いラインの靴の男。
 本郷から聞いたハカイダーの人間の姿――サブローと一致することを確かめると、しかしアルレッキーノはリュートを構えて油断無く、口を開いた。
「そのことについて、話がある」
 サブローの険しい視線と先程の身のこなしから、アルレッキーノはハカイダーが鳴海にも匹敵する実力者であると看破した。
 ふと、サブローが小脇に抱えていた人物に目を向ける。
 銀の髪に、銀の瞳、そして今の主・エレオノールに酷似した容貌――それは見紛うこと無き、フランシーヌ人形……の、偽者だ。
 偽者だということは、分かっている。分かっているはずなのに、こうして直に対面すると、やはり戸惑ってしまう。
 偽フランシーヌ人形はラミアと言葉を交わした後、アルレッキーノへと視線を向けた。
「アルレッキーノ」
 そして、声を掛けられたアルレッキーノは反射的に跪いていた。
 この行動に、ラミアとサブローは勿論のこと、アルレッキーノ自身も驚いていた。唯一人、偽フランシーヌ人形だけがそれを当然のこととして受け入れていた。
 ……いや、待て。目の前の自動人形は、この御方は――
「ふ、フランシーヌ、様……?」
 ――本当に、偽者なのか?
 今更な疑問が、アルレッキーノの思考に浮かんだ。
 しかし、アルレッキーノの驚愕と混乱も知らず、フランシーヌは言葉を続けた。
「アルレッキーノ、よくぞ無事でいてくれました。貴方もミーと共に本郷達と合流できたのですね」
 アルレッキーノのことを心配していたのだと、フランシーヌは言う。
 ……そのようなお言葉は、エレオノール様からも、フランシーヌ様からも、賜ったことは無かった。いや、リョーコはそうだったか。
「アルレッキーノ、どうしたのだ?」
 ラミアからの問い掛けにも耳を貸さず、アルレッキーノは、自分が見たことも無いフランシーヌ人形に問うた。
「貴女は……本物の、フランシーヌ様であらせられるのか……?」
 その問いに、サブローとラミアは不思議そうな顔をしたが、唯一、フランシーヌだけが、ああ、と、納得していた。
「本物の……。そうですか、気付いたのですね、私が作った私の身代わりに。……いえ、それも当然のことでしょうね。私が『真夜中のサーカス』を去って10年。貴方達『最古の四人』ならば、見抜くこともあるでしょう」
 10年? 何を言うのです。貴女が我々を棄てて行ったのは、もう100年も前のことでしょう……!
 すると、その声が聞こえたのか、フランシーヌは“申し訳無さそうな表情”になり、俯き加減になった。
「許してください、アルレッキーノ。私は……“疲れて”しまったのです。何時まで経っても“笑う”ことが出来ず、創造主様の望みを叶えることの出来ない自分に……」
 彼女の口から語られた言葉の数々に、アルレッキーノは確信した。
 時間の誤差は気になるが、そんなものは些細なことだ。
 今、重大なことは、唯一つ。
「お、おお……貴女は、本当に……本物の、フランシーヌ様であらせられるのですね」
 フェイスレスから告げられた、残酷な真実。
 100年間、自分達は本物と偽者の区別が出来ず、それこそ『道化』であったということ。
 それまでの100年と、それからの100年。かつてならば何の感慨も懐かなかっただろうが、今のアルレッキーノは違った。
 嗚呼、その歳月の何と空虚であったことよ。
 しかし、鳴海に出会った頃から、その空虚は埋められていった。
 そして、エレオノールに仕え、リョーコや仲町サーカスの面々と交流を持った、今のアルレッキーノには、分かるのだ。
 このフランシーヌ人形こそが本物であり、『それからの100年』に付き合わせてしまった哀れな偽者とは全く別な存在なのだと。
 幸いなことに、フランシーヌはそれを首肯してくれた。
「はい。……アルレッキーノ。私は、私に尽くし続けてくれたお前達を見捨てた愚かな自動人形です。ですが、そんな私でも良いのなら……どうか、この悲しい戦いを終わらせる為に、貴方の力を貸して下さい」
 跪くアルレッキーノに手を差し伸べて、フランシーヌはアルレッキーノに助力を請うた。
 それに対してアルレッキーノは、帽子を取り、最上の礼を示した形で――
「その頼みは聞けません、フランシーヌ様」
 ――フランシーヌからの頼みを断った。
「そう、ですか……」
 この返答に、フランシーヌは“残念そうな”表情になり、俯いてしまった。
 アルレッキーノはエレオノールと見紛うフランシーヌの百面相を不思議に思いつつも、言葉を続けた。
「どうか、ご命令を。フランシーヌ様から、このアルレッキーノめに」
 改めて、深々と頭を下げたアルレッキーノに、フランシーヌの様子は窺えない。
 だが、フランシーヌが顔を上げ、“毅然とした表情”になる様子が、アルレッキーノには目に浮かぶようだった。
「『真夜中のサーカス』の長、フランシーヌの名に於いて命じます。アルレッキーノよ、この戦いを終わらせる為に、私に力を貸しなさい」
「ははっ! フランシーヌ様の御心のままに!!」
 即答。
 200年の間一度も無かった、夢にまで見たフランシーヌからの命令という至福に、アルレッキーノは自分が人間だったら、幸福に打ち震えていることだろうと確信した。
 すると、アルレッキーノの肩に手が置かれた。それに応じて、顔を上げると――
「ありがとう、アルレッキーノ」
 笑顔があった。
 微笑――微かな笑みであったとしても、それは紛れも無い笑顔だった。
 それは、誰の笑顔か? 誰が、微笑んでいるのか?
「お、おお……おおおお……!」
 アルレッキーノは、自分が震えていることが分かった。歓喜のあまり、壊れそうなぐらい震えている。
 身体ではなく、アルレッキーノに宿る“ナニカ”が震えていた。
「ど、どうしたのだ、アルレッキーノ……?」
 心配そうにラミアが声をかけてくるが、悪いが、今はそれどころではないのだ!
「お笑いになられた! フランシーヌ様が、お笑いになられた!!」
 どうして、これを叫ばずにいられようか? 喧伝せずにいられようか?
 否、断じて否。
 天も次元も突破して、それこそ来世にまで届くほど、声を張り上げるべき事だ!!
「笑った……? 私が、今、笑っていたのですか?」
「ああ。俺の目にもそう映ったが、それがどうかしたのか?」
 自分でも信じられないのか、フランシーヌは自分の顔を触りながら呆然と呟き、傍らに立つサブローがそれにあっさりと頷いた。
「私は……笑えたのですね」
 それを聞いたフランシーヌは、満足気に、嬉しそうに、喜ばしそうに、幸せそうに――また、笑った。
 おお、おお――機械仕掛けの神よ! これは、お前の仕組んだ因果律だというのか!?
「パンタローネ! ドットーレ! 見ているか!? コロンビーヌ、早く来い!! フランシーヌ様が――エレオノール様ではない、正真正銘、本物のフランシーヌ様が、お笑いになられたぞ!! 勿体無くもこの私に、笑顔を賜わしてくれたぞ!!」
 喜悦、至福、幸福、歓喜……いずれの言葉でも言い表せぬ感情に身を任せて、アルレッキーノは叫び、吼えた。
 此処に、『真夜中のサーカス』200年の宿願が成就されたのだ。
 それが、喜ばしくないはずが無い。




「……おい。これはどういうことだ?」
 完全に今の状況から置いてけぼりを喰らっているサブローは、同じ境遇の本郷の仲間の女に問いかけた。
「さあな。私にもさっぱりだ。だが、本人はとても喜んでいるようだ。大目に見てやってくれ」
 どうやら女の方もさっぱり分からないようだ。
 そういえば、本郷と決闘の約束を取り付けた時に、あの男はいなかったはずだ。恐らく、その後から参入した新参者なのだろう。
 ならば、分からないのも仕方の無いことか。
「そう、か。まぁ、いいが。それで、本郷はどうしたのだ?」
 肝心の本題を男――アルレッキーノから聞けそうに無いので、女――フランシーヌから聞いた、恐らくはラミアとかいうヤツに、サブローは問いかけた。
 ラミアはそれにすぐに頷き、簡潔に事情を教えてくれた。
「彼は現在、ある男を止める為に行動している。だから、此処に到着するのは約束の刻限よりも遅くなるそうだ」
「なに? 本郷が囚われのフランシーヌよりも優先するとは……そいつは何者だ?」
 仮面ライダー1号である本郷猛が、人質を見捨てることなどありえない。ならば、ありえるとすればどのような状況か。
 それは、放って置けば周りに多大な災禍を齎す手合い――ハカイダーのような決闘者【デュエリスト】とは違う、見境の無い戦闘者【ターミネーター】の討伐。
 恐らくはその辺りだろうと、ハカイダーは当たりをつけた。尤も、それと納得が出来るかどうかは別問題だが。
「エックス。あの、青いボディアーマーの、シグマと因縁を持つ男だ」
「なんだと……?」
 その名は、敬介とフランシーヌから聞かされた名前だ。
 そういうことか、とサブロー――ハカイダーは納得した。
 堕ちた正義を、真の正義で叩き直すか、いっそ自らの手で討とうと言うのだろう。
 ZX、V3、X――ハカイダーが出会った仮面ライダー達の先輩であり、彼らの正義の魁たる人物として、満点であり当然の回答だろう。
 ――だが、ハカイダーはそれだけで納得も、満足も出来ない。
「アルレッキーノ。どうして貴方が、エレオノールの名を知っているのです……?」
 すると、フランシーヌが何事かを呟いていた。
 どうやら、あちらの話はまだまだ長引きそうだ。




 スパイセットが見せ続けた一部始終を見届けて、コロンビーヌは慌てふためいた、周章狼狽した。
「うそ……嘘でしょ!? 今更、本物のフランシーヌ様だなんて!!」
 コロンビーヌ、パンタローネ、アルレッキーノ。
 『最古の四人』の内ドットーレを除いたこの3人が並び、そこにフランシーヌ人形が列記される。そうなれば、フランシーヌ人形が偽者であると考えが至るのは至極当然のことであった。
 だというのに、あのフランシーヌ人形は本人の言だけでなく、コロンビーヌから見ても本物に相違無かった。
 それだけではない。スパイセットのカメラの位置が悪かった為に見えなかったが、フランシーヌは笑ったという。アルレッキーノに笑いかけたという。
 ……コロンビーヌは、腹が立っていた。
 暢気に喜んでいるアルレッキーノに対してでも、今更現れた本物のフランシーヌに対してでもない。
 フランシーヌが笑ったという事実に、一瞬でも歓喜した自分に。フランシーヌから至上の栄誉を賜ったアルレッキーノに嫉妬した自分に。
 そんな自分に腹が立って、絶望した。
 自分は未だに、『真夜中のサーカスのコロンビーヌ』だということに。
「お~い、コロンちゃ~ん。どったの~?」
 気さくに話しかけてくるメガトロンにも、ツッコミを入れる気力が湧いてこない。
 グラーフアイゼンを手放し、壁を背凭れにして虚空を見上げながら、コロンビーヌは、ポツリ、ポツリ、と語り始めた。
「メガちゃん。私達、『真夜中のサーカス』の自動人形はね、主であるフランシーヌ様には絶対に逆らえないの」
「……マジか?」
 コロンビーヌのただならぬ雰囲気に、メガトロンもおちゃらけた空気を引っ込めて、真剣な表情で問うた。コロンビーヌはそれに、力無く頷いた。
「ええ。フランシーヌ様に命じられたら、最悪、自決させられる場合だってありえるでしょうね」
 事実、サハラで“しろがね”との決戦の際に現れた、“しろがね”が用意した偽フランシーヌ人形の「動くな」という命令にも、コロンビーヌ達は抗えなかった。
 それが偽者と分かっていても、瓜二つというだけで抗えなかったのだ。それを突破するのにも、どれだけの時間を費やしたことか。
 これが本物となれば……最早、抗うことは不可能だ。フランシーヌの意志に従順に従う自動人形になるしかない。
 それこそが嘗ての自分の姿であったというのに、コロンビーヌはそんな自分の姿を想像して怖気を覚えた。
「んで、どうする気だ? 今更、あいつらに尻尾を振る気か?」
 メガトロンは言いながら、右腕と一体化している銃口をコロンビーヌに向けた。
 フランシーヌには逆らえません、と素直に認めれば、この場でメガトロンに殺される。これは脅しでも警告でもない。
 普段から悪ふざけが過ぎるメガトロンだが、その本質は冷酷にして冷淡、無情にして非情、破壊軍団デストロンを束ねる破壊大帝。
 使えぬ駒を1つ握りつぶす程度、蟻を踏み潰すようにやってのけるだろう。
 僅かに曝け出された破壊大帝の本性、その殺気に晒されながら、コロンビーヌは思考を重ね――やがて、決意した。
「…………メガちゃん。これからちょっと、賭けをしてみるわ」
 思い出すのは、無様に壊れた同胞――ドットーレの姿。
 自分もああなってしまう可能性は、大いにある。
 だが、やるしかない。
「賭け金は?」
「私の存在全て。負ければ、全てを失う……けど、勝てば――私は、本当の意味で“私”になれる」
 私が“私”に成る為に――私は、“私”の全てを賭ける。
 メガトロンはコロンビーヌからの返答を聞いた後、暫時思考し、やがて銃口をコロンビーヌから退かした。
「OKだ。ここまでコンビを組んだのも何かの縁だ、きっちりばっちり見届けてやるよ。どのような結果になろうとも、だ」
「ありがと」
 壊し合いという最悪の演目、その舞台で得た奇縁。
 それに対して感謝の言葉を素直に伝えると、コロンビーヌは儀式を始めた。
 『真夜中のサーカスのコロンビーヌ』を破壊するという、危険な儀式を。




「関係無い……」
 苦しい。
「関係無い……」
 苦しい。
「関係無い……」
 苦しい。
「関係無い……」
 苦しい。
「関係無い……」
 苦しい。
「関係無い……」
 苦しい。
「フランシーヌなんか、関係無い……!」
 苦しい。
 どうして、こんなにも苦しいのだろう?
 どうして、こんなにも苦しいのに、逃げ出したいと思わないのだろう?
 ……そんなの、決まっている。
 この苦しみの向こうに、彼がいるから。
 この苦しみにも勝る喜びが、待っているから。
 だから、どんなに苦しくても、どんなに辛くても、耐えられる。
 ああ、気付いてよかった。この気持ちに。
 あなたは今、ここにはいないけれど……必ず、会いに行くから。
 “私”が、この気持ちを届ける為に、会いに行くから。
 だから、待っていて。
 ……そうだ、この気持ちを持つ“私”に――

「フランシーヌなんか――私に! 関係無い!!」

 ――そして、滅びの呪詛は此処に完成した。

「いよ、新生コロンちゃん。生まれ変わった気分はどうだ?」
「――勿論、最高よ」


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125:戦っちゃいますか?(前編) アルレッキーノ 破壊の宴(2)
125:戦っちゃいますか?(前編) ラミア 破壊の宴(2)
126:このまま前へ進むのみ ハカイダー 破壊の宴(2)
126:このまま前へ進むのみ フランシーヌ 破壊の宴(2)
126:このまま前へ進むのみ メガトロン 破壊の宴(2)
126:このまま前へ進むのみ コロンビーヌ 破壊の宴(2)





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