その心、誰も覗かない ◆hqLsjDR84w


 サイドマシーンという名の黄色い車を駆るサブロー。
 アクセルを捻る右手に篭めた力の分だけ、生暖かい風が彼の全身に降り注ぐ。
 黄色いマフラーは音を立てて激しくなびき、ゴーグルで押さえ込まれているとはいえ髪も軽く乱れている。
 バイクを高速で走らせるのを好む人種の中には、風を切る感覚がたまらなく心地よいという者が多い。
 だが、現在のサブローはそんなものに身を委ねてはいない。
 決して、その手の感覚を捉えることができないワケではない。
 内蔵された触感制御装置により、風の心地よさを感じることは可能だ。
 実際、この地に呼び出されてからも幾度か感じ取っている。
 ただ現状では、それ以上に彼の心を支配するものがあるだけだ。
 その正体は、いったい何なのか。

 サブローを激しく拒絶したドラスも、長く同行していたフランシーヌも。
 その心、誰も覗かず。
 そもそも、彼の心とは……――――


 ◇ ◇ ◇


 エリアD-5のシャトル発着場に上がり込んだサブローは、すぐさまメガトロンの置き土産を目にした。
 置き土産を残した二人の目的上、アルレッキーノの亡骸は極めて人目につきやすい場所に放置されていたのである。

 強大な力でもって粉砕された残骸。
 奇跡的に形を保っていた生首の口内に、明らかに人為的に突っ込まれた右の腕。
 確かに少し前に会話した人形の変わり果てた姿――――ほんの一瞥すると、サブローは残されたメモを手に取る。
 死者を愚弄する行為に、ハカイダーは何ら動じない。
 もしも被害者が、仮面ライダーであったのなら、ゼロはひとまず保留として、獅子王凱であったのなら、そしてキカイダーであったのなら……
 確かにサブローは怒ったであろうが、眼前のオブジェには何の感傷も抱かない。

 サブローにとって、アルレッキーノは『どうでもいい輩』にすぎないから。

 かつて申し込まれた決闘を受けたのは、単に忠義に従って戦う者との戦闘に興味があっただけの話。
 サブローは戦った上で結論付けたのだ――『忠義に従って戦う者』とは、至極どうでもいい存在だと。

 結論に至った理由――アルレッキーノとの戦闘は、サブローが求める戦闘とは異なっていたから。
 仮面ライダーとのそれとは違う。ゼロのとも、凱のとも。
 言うまでもなく、キカイダーとの戦いとも。

 正義と忠義、漢字にしてしまえば一文字しか異ならない二つの道。
 往かんとする道が異なるだけで、全く違う存在だとサブローは理解したのだ。
 うまく説明することなど、サブローにもできはしない。
 ただ曖昧ながら言ってしまえば、悪の改造人間であるハカイダーの回路(こころ)が一寸たりとも揺れ動かない。

 アルレッキーノとの戦闘より悟った以上、サブローは『正義の味方』以外との戦闘にはもはや興味すら湧かない。

 キカイダーの破壊だけが目的であるサブローには、本来キカイダー以外の『正義の味方』も『どうでもいい輩』に含まれるはずだ。
 だが『正義の味方』との戦闘は、どうしてだかサブローの回路(こころ)を揺れ動かすのだ。
 機械仕掛けの肉体でありながら、理屈ではないのだ。

 もしも現在『忠義に従って戦う者』に決闘を挑まれても、サブローは無視をするだろう。それこそ自らが攻撃を受けるまで。
 もはや、サブローにとっては『どうでもいい輩』なのだから。

 ――――ぐしゃりと、サブローが決闘を汚すメモを握り潰す。

 しかし、メガトロンとコロンビーヌは別である。
 彼らは、サブローの背中に傷を負わせたのだ。
 『どうでもいい輩』相手とはいえ、背中の傷は戦士の恥。
 背中を見せての逃亡など、許せる道理がない。
 メガトロンに至っては、凱との決闘も汚した罪もある。
 『正義の味方』でなくとも確実に破壊せねば、破壊者としてのプライドが許せない。
 キカイダーとの完全決着を望むサブローは、自らの汚点を完膚なきまでに滅さんと決意した。

 シグマに関しても、同様に破壊することを決める。
 勝手に呼び出して殺し合いを命じるなど、参加者を下に見ているのだろう。
 シグマに軽視されたままでは、宿敵のキカイダーに無礼。
 サブローは、静かに怒りの炎を強くする。

(仕掛けてきたのは貴様らだ……首を洗って待っているんだな)

 メモを残しておいて、メガトロンとコロンビーヌが残っているとは思えない。
 そう考えたサブローは、アルレッキーノの亡骸に背を向けて外へと向かう。
 村雨良の時とは違い、埋葬などしない。奇妙なオブジェになっているのも直さない。
 『正義の味方』ではないアルレッキーノに対し、サブローには敬意を表する理由がなかった。
 誰もいなくなった部屋で、アルレッキーノの残骸は僅かに揺れ動く。
 彼の思惑と異なり、銀髪の人形を放置してきた男が跨るマシンのエグゾーストノイズによって。
 室内にエグゾーストノイズが届かなくなって暫くして、アルレッキーノの頭部が床に落下した。
 口内に押し込まれた腕がつっかえ棒となり、僅かに転がったところで動かなくなった。
 その瞳、何も映さない。


 ◇ ◇ ◇


 転送させたサイドマシーンに跨り、サブローは行き先を思案する。
 その理由は、メモに記されていた内容。
 『官庁街で待つ』――つまりメガトロンとコロンビーヌは、サブローと本郷猛が官庁街でぶつかるのを望んでいる。
 そう判断したサブローは、本郷猛がメモを確認したのならばアルレッキーノがあの姿のままで放置されてはいないとも考える。
 となれば、官庁街に向かってもおそらく本郷猛には出会えない。
 そして肝心のメガトロンとコロンビーヌだが、彼らが官庁街にいるとはサブローには思えなかった。
 本郷猛とハカイダーの決闘の途中で乱入――メガトロンとコロンビーヌならばやりそうなことだが、一度似たことをやっておきながら二度目はない。
 あくまで予想だが、メガトロンとコロンビーヌの狡猾さを知るサブローは確信を持っていた。

(逃亡するというのならば、あえて俺が向かった北へと向かったか……?)

 だとすれば、自身とかち合わないようにA-5の幹線通路を使ったのであろう。
 推測して、サブローはサイドマシーンで西を目指すことにした。
 メガトロンの頭脳が導いた策でさえ、サブローは覆す。
 前提が間違っていたのだ。
 キカイダーを破壊することだけが存在意義であるサブローの行動を、メガトロンが細かく予測できるはずがない。
 ハカイダーは戦うことしか知らない。
 戦って、相手を破壊することしか知らない。
 なぜなら、それこそが悪だから。

 ゆえに――――その心、誰も覗けない。



【C-5 路上/一日目 真夜中】

【ハカイダー@人造人間キカイダー】
[状態]:全身打撲。小ダメージ。エネルギー小消耗。ある程度メンテナンス終了。右肩を負傷(バイクの運転に支障は無い)
    自分に背を向けさせたメガトロンに対する冷静な怒り
[装備]:サイドマシーン@人造人間キカイダー、ゼロバスター@ロックマンX
[道具]:ハカイダーのPDA(支給品一式)、風見志郎のPDA(支給品一式)、バタフライナイフ@現地調達(左足に収納中)
    スズキ・GSX750S3 KATANA@仮面ライダーSPIRITS
[思考・状況]
基本思考:元の世界へ帰ってキカイダーと決着をつける。
1:A-5の幹線通路から左上コロニーに入り、メガトロンとコロンビーヌを見つけ出す。
2:メガトロンとコロンビーヌを破壊し、背中を向けさせた罪を償わせる。
3:ゼロが万全の状態で戦う。
4:村雨良の遺言を仮面ライダー全員に伝えた。仮面ライダーに会い、破壊する。
5:参加者を全て破壊する(『正義の味方』以外、もうどうでもいい)。
6:正直、アルレッキーノとラミアの死はどうでもいい。
7:凱、風見、敬介の死は惜しいが、キカイダーほどの衝撃ではない。
8:シグマを破壊する。
9:キカイダーに迫る、戦士に敬意。
※参戦時期は原作死亡後(42話「変身不能!? ハカイダー大反逆!」後)です。
※血液交換が必要のない身体に改造されています。


時系列順で読む



投下順で読む



144: ハカイダー 148:閉幕と始まり1





| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー