突っ走れ ◆V9YQ4knn.A



「本郷さん、風見さん……聞こえるか?」

 そう通信で呼びかけても両名からの返事は無い。
 この状況に城茂こと、仮面ライダーストロンガーは舌打ちを禁じ得ない。

「通信の制限位してるって考えて当然か……」

 考えれば当然だ。シグマと名乗ったあの男は殺し合いをさせたいのだ。
 参加者同士で勝手に連絡を取り合われては円滑に殺し合いが進まない。それではヤツの目的の妨げとなってしまう。

 それにしても……殺し合いだと?
 茂は喉を鳴らす。
 ヤツは、シグマは確かにそう言った。殺し合え、と。
 そして、その勝者には、その願いを叶える権利を与える。死者をも、生き返らせると。
 死者を生き返らせるなどとは正気の沙汰とは思えない。
 しかし、或いは、自分達をここに集めた技術、侮れない。死者の一人や二人蘇らせることも可能かもしれない。

 だが、だからと言って、

「あいつが……そんな事を望むわけねえだろうが」

 岬ユリ子は他人の命を犠牲にした命など望まないだろう。
 それに、自分も、他者の生を奪ってまで岬ユリ子を蘇生する事など、考えられない。
 彼女は十分に戦った。もう、静かに眠らせておくべきなのだ。


「へっ……ガラでもねえ事考えちまったな」

 言って、茂は鼻を擦る。
 そこで違和感を覚えた。何か小さな、違い。
 無造作にポケットへと手を入れ、中から違和感の正体を掴み出す。
 取り出したそれはシグマと呼ばれた男が携帯端末と言っていたものだった。

「チッ……」

 シグマの事が……この場に集められた時の事が思い出され、握り潰したくなる衝動に駆られるそれを、乱暴にポケットへ戻す。その時だった。
 偶然に茂の触れた支給品の項目より、彼への支給品が呼び出された。


「――そうかい」


                ◇  ◆  ◇ 


 この場で自分が知っているのは、本郷猛、風見志郎、神敬介。
 この会場に来て知ったのは、シグマ、シグマの偽物、X、水色の髪の少女、銀髪の眼帯の少女……チンク。

 チンクと言う少女はあの場で「チンク姉」と呼ばれていた。
 つまり、『殺された』あの少女は、チンクにとっての妹なのだ。(正直逆ではないか、と茂は思ったのだが。)
 城茂は孤児だった。だから兄弟などは知らない。
 兄弟を持つという感覚は理解出来ても、実感出来ないものだった。
 しかし、大切な人を殺されるという感覚は痛い程良く解る。自分がこの体になったのも、その為なのだから。
 ならば、そのチンクがこの場で取る行動なぞ、決まっている。

 ――主催者への復讐。或いは、殺し合いに乗っての死者の蘇生かも知れない。

 彼女がどちらを為すかは分からない。しかしどの道、自分は彼女に会ってみる必要がある。
 共に主催者を倒すという意味でも、復讐から立ち直らせるという意味でも、だ。
 復讐では駄目なのだ。それは、自分が良く知っている。

 茂の脳裏に浮かぶは友人・沼田五郎、岬ユリ子、そして……先程の名前も知らない少女。


「……俺は間に合わなかった。ヤツらに殺されるのをみすみす見逃しちまった。
 何も出来ずに……いや、何もしないで、な」

 碌に血も流せない千切られた体。姉との思い出もまとめて吹き飛ばされた頭。
 そして、自分に何が起きたのか分からずに死んだ瞳。

 ――こんなものを見せられて、
 ――こんなふざけた殺し合いをしろ、
 ――こんな様に反逆を考えるな、なんて、


「ムリだぜ……俺はしつけられた犬じゃねえ!!」

 ――俺は、

 怒りと共に地面を殴る茂の拳、その拳から発せられた圧倒的な量の電気が地面を飲み込み、爆音を出してコンクリートを消滅させる。
 煙が晴れた場所に佇む赤き甲虫のその姿。その名は、その名は……!


「俺は仮面ライダーストロンガー!!
 この殺し合いを……ブッ潰す!!!」

 ――正義の使者、仮面ライダーストロンガー!!


                ◇  ◆  ◇ 



「電チョップ!!」

 ストロンガーの叫びと共に轟音を立てて電柱が切断される。
 斜めに両断されたそれを担ぎ上げ、ブロック塀を蹴り飛ばすと誰のかもわからない家の庭目掛けて突き刺す。
 その時の勢いで、本来柱に付いている電線は千切れ飛んでいた。


「チッ……大分威力が弱まってやがるが……まあ、取りあえずこんなもんで十分か」

 やれやれと息を吐くと、茂は変身を解除し、突き立てられたコンクリートの棒に『名も知らぬ少女の墓』と刻む。
 『名も知らぬ少女』まで刻んだ茂は、そこである事に気付いた。

「いっけね……そう言や、セインって呼ばれてたな」

 かっかと今まで頭に血が上っていたが、冷静になると、確かにチンクは少女をセインと呼んでいた。
 申し訳なさそうに頭をかきむしり、茂は溜め息をついた。

 もう一度電柱を折ればいい。
 手袋を外す。銀のコイルで覆われた両手が露わになる。
 それを右に構え、頭を抜けて左へ流し、勢い良くスパークさせようとして、
 止めた。


「わりぃな……今は、こんなもんしか作れねえ。
 でもな、全部終わったら……どっか綺麗な所に、ちゃんとお前の体を埋めてやる。
 チンクってのもちゃんと連れてきてやる。ちゃんと、ああ……約束だ」

 そう言うと柱の前に支給品を置き、支給されたバイクに跨る。
 墓を直すなら、姉のチンク少女も連れて、どこか見晴らしのいい場所に、だ。
 それまでは『名も知らぬ少女の墓』でいい。これは自分が知ってる、何も出来なかった自分への戒めだ。
 必ず、この殺し合いを――シグマを叩き潰し、残されたチンクを――セインの遺体も連れて、ここから脱出するという、セインへの誓い。

「ボチボチ、行かなくっちゃな。じゃあな……」

 ――終わるまでは少し、『名も知らぬ少女』として眠っていてくれ。

 深夜の住宅に、茂の乗ったテントローの音が力強く響いていた。


【一日目/深夜】
【A‐5 路上】
【城茂@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康。変身による若干の疲労
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[思考・状況]
基本:殺し合いを潰す
1:本郷猛、風見志郎、神敬介と合流する
2:チンクと呼ばれた少女に会い、保護する
3:全部終わったらセインのちゃんとした墓を作る

※参加時期は仮面ライダーSPIRITS本編開始前より
※制限は攻撃の威力制限、回復速度制限です
※自身にかけられた制限(威力制限)には気がつきました



 時は少し遡って。ここは住宅街。

「あ、ありのまま今起こった事を話すぜ……。
 『ミサイルを焚き火にくべたと思ったら、いつの間にか殺し合いが始まっていた』
 な、何を言っているのか分からないと思うけど、オレも何をされたのか分からなかった……。
 頭がどうにかなりそうだった……。
 編集者の都合だとか超展開だとか、そんなチャチなもんじゃ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ……」

 フランス人の様な言葉の主はサイボーグ猫、ミーだった。
 ロミオ達がミサイルを焚き火にくべたら、殺し合いの場にいたなんて、正直こんな趣味の悪い出来事は初めてだった。
 そんな余りにも頭の中身が疑われる展開だったが、先程の感じでは冗談や夢の様には思えない。

「つまり、オレは正真正銘の殺し合いの会場にいるんだ」

 何とも人生最大の悪趣味なイベントだった。
 はあ、と肩を落とし、取りあえずの事を考えようとしたその時、
 爆音が、響いた。

「なんだ!? 今の音は」

 こんな場所での爆音というのは決して良い事では無い。
 例えば殺し合いに乗ったヤツがやったとか、殺し合いに乗ったヤツがやったとか、殺し合いに乗ったヤツがやったとか。

「でもまー、見逃しては置けないよなー」

 それでもミーには見過ごせ無かった。
 まあ、いざ襲いかかられたとしてもどうにか出来る自信はある。
 そんなわけでミーくんは現場に急ぐ事にした。

 そんで、現場。
 そこには何か赤いやつがいて、「ブッ潰す」とか言ったり、電柱を切ったり、ブロック塀を壊したり、その電柱を地面に刺したり暴れていた。
 どう見ても殺し合いに乗っていないとは思えない。
 あんなに破壊しておいて、実は自分、誰も殺すつもりはありません。てへっ。
 なんて言われても、信じる気は全く起きない。

 そんな事を考えていると、男はバイクに乗って立ち去っていってしまった。

「何やってたんだろ」

 少し気になったので、男が電柱を刺していった場所に向かう。そこで男は何やらやっていたのだ。

「えーっと……何々?」

 その場にはユリの花が置かれ、突き刺さった電柱には何か文字が書いてある。

「名も知らぬ……少女の……は、墓だってえええええええええええええええ!!」

 墓、という事は間違い無くそこには墓の主がいるという事。
 つまり、

「アイツは人を殺してたかもしれない!?」

 人を殺す様なヤツは墓を作らないだろう。
 しかし、もしかしたらそう言う事があり得るかもしれないのだ。


【A‐5 住宅街】
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品
[思考・状況]
1:何だってえええええええええええええええええ

※参加時期は異世界編(五巻)です
※城茂(名前は知らない)を危険人物と認識しました

※A‐5の住宅街に名も知らぬ少女の墓(本SS参照)があります
※名も知らぬ少女の墓にはユリの花@仮面ライダーSPIRITS(城茂の支給品)が置いてあります



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GAME START ミー 039:君の歌声に誘われて





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