猫と女と太陽と ◆2Y1mqYSsQ.



「はあ、困ったなぁ……」
 星を見つめてため息を吐くのは、茶髪の両側にリボン止める女性。
 広川武美。またはモバイルレディ、それが女性の名だ。
 瞳を閉じ、何度目か分からないため息を吐く。
「何であたしがこんなことに巻き込まれたのかな……」
 彼女はブギウギ商店街でいつものように漢方薬の店で薬を見立てていた。
 そして、その帰り道に光が満ち、気がつけばいろいろな人が集まる会場にいた。
 爆発によって散る女性。彼女と同じ爆弾が、自分に仕掛けられている。
「大神の連中? ううん、あいつらは違う…………。
あいつらなら、こんな回りくどいことしない」
 連中に捕まったというのなら、良くて処分。
 せいぜい実験台として使い潰されるだけ。
 こんな殺し合いなど、非経済的なことに関わるはずがない。
 つまり、自分は何らかの事件に巻き込まれたのだ。運の悪いことに。
 おそらく、自分の能力が関係しているのだろう。だが、この能力など彼らに何の価値があるのだろうか?
「………………やっぱり駄目。ハッキングが出来ない。多分ジャミングされている」
 期待通りの結果だが、落ち込んで森を歩く。
 裏山にお気に入りの居場所を持つ彼女にとって、夜の森を歩くのはそんなに苦ではない。
 しかし、お気に入りの場所を思い出すと、胸が締め付けられる。
「……助けに来てくれるかな?」
 脳裏に浮かぶのは、ある日突然川原に住むことになった男。
 本人は商店街の危機を放って置けないからとそこを住処にしたのだ。
 最初は自分と同じ『作り物』の匂いを感じた。何度か交流を交わすうちに、自分とは似て非になる存在で、気になる相手となった。
 だが、そんな彼でも無理なことはある。
 この殺し合いで彼と再会するには、優勝をするか、主催者を倒して脱出するしかない。
 体内の爆弾の存在を思うとゾッとする。
 たとえ寿命が後半年もないとしても、恐ろしいのだ。
(どうするかな……)
 もう彼と二度と会えないかもしれないと分かっても、武美の瞳からは涙が零れ落ちなかった。
 彼女の涙は、感情からは流れない。
 あくまで、目の埃などを流すための『機能』である。
 涙も流せない武美は、とぼとぼと獣道を歩いた。


「いったいどーなってやがる。オイラたちはやっとあの砂漠を抜けて、元の世界に帰るはずだろ?」
 疑問を口にするのは、一匹の黒猫。
 しかも、二本足で立ち、腕を組んでいる。
 常識人が見れば化け猫と思ったのかもしれない。
 いや、事実一回化け猫と思われたことがある。
「まさか剛の野郎、また失敗したんじゃねーだろーな……」
 太い血管を頭に浮かばせ、そのままクロは進む。
 手にした携帯端末を器用に操り、名簿を映し出す。
 知っている名はミーしかいない。となると……
「あいつか? あのハゲ野郎がおいらとミーを連れてきたってことだな?」
 クックック……と凶悪な笑いを浮かべるクロ。
 体内の爆弾を仕込み、自分たちを弄ぼうとしているのだ。
 笑いが止まるはずがない。
「とりあえずだ……あのハゲ野郎をぶっ壊して元の世界に帰って剛の野郎を殴る!」
 理不尽な決定を迷わず告げる。
 巻き込まれた剛にとっては堪った物ではないだろうが、この場にいないのでは文句のつけようがない。
 最もつけたところで、痛い思いをするだけだが。
「ミーと合流するか。爆弾を外さないといけないしな。
待っていろよ……ハゲ。破壊のプリンスクロがもれなく壊しにいってやるぜ」
 やる気万全でクロが振り向いた瞬間、女性と目が合う。
 固まるクロ。目の前の女性はまじまじとクロを見たままピクリとも動かない。
 そこでクロの取った行動は……

「見世モンじゃねーぞ! コラァ!!」

 とりあえず、理不尽だった。


「アハハハ……クロちゃんって言うんだ。よろしくね。あたしは広川武美」
「ん、じゃあな。武美」
「またね~……って、こんなところに女の子一人にするの!? ヒドーイ」
「オイラは面倒ごとは嫌いなんだ」
「まあまあ、そう言わずに。か弱い女の子を守るのは男の子のロマンでしょ?」
「か弱い女は自分でそういわねー」
 クロは吐き捨てながら道をゆっくりと歩いた。
 その後ろを武美はついて来る。
 クロが足を止めると、同時に武美も足を止める。
 数回その行動を繰り返し、もともと我慢の足りない性格のクロがついに身体を震わせながら振り返った。
「おい……」
「何?」
「ついてくるなって言っただろ?」
「たまたま歩く方向が一緒なだけだよ」
 眼を逸らす武美に嘘をつけ、と内心毒づく。
 仕方ないとクロは歩くのを再開して……
「あっ」
 武美の呟きに構わず、クロは駆ける。
 クロにはやることがある。主催者を倒し、生き残って元の世界でジーさんバーさんを守るというオス猫の誇りが。
 それは荷物を背負ってやれることではない。
 だから……
「悪く思うなよ、武美。オイラが暴れるためにはお前はお荷物なんだ」
「馬鹿クロ……」
 呟く武美の姿に、電気スタンドのロボットの姿が重なる。
 なぜか、クロの胸がちくりと痛んだ。


「また一人か……」
 とぼとぼと歩みを再開した武美は心細さについ呟く。
 道は暗い。一人は心細い。
 こんな時、素直に泣けたら嬉しいのにと残念がる。
「あーあ……やっぱり泣けないのは辛いや……」
 気が重くなり、俯く。やはり、泣けないのは悔しいのかもしれない。
 武美の胸が締め付けられ、いつかさすらいの彼が颯爽と現れるのを望んでしまう。
 そんな現実、ありはしないのに。
 大神の実験台として扱われ、十年も生きれない寿命を持つ彼女は諦めるということに慣れすぎた。
「このまま……誰かに殺されちゃってもいいかな…………」
 おそらく、彼女の想い人、さすらいのナイスガイが聞けば怒ったであろう。
 そんな事実に気づかないほど武美の精神は磨耗していた。
 再度ため息を吐きかけた彼女の頭に、パラパラと葉っぱが落ちる。
 目を見開き、上を見ると……
「そんなに落ち込みながら歩いて、どこいくんだ?」
「クロちゃん……?」
 クロが枝に乗り、話しかけてきた。
 その顔にはニヒルな笑みが浮かんでいる。
「ま、しょうがないからオイラが一緒についていってやるよ」
「本当! さっすがクロちゃん、おっとこまえ!!」
「……やっぱ置いていこうかな」
「冗談冗談! ありがとう、クロちゃん」
 猫らしくクロは武美の傍に降り立つ。
 二本足で立つという猫らしくない動作に武美は慣れた。
 武美を見つめて、クロはもう一度にやりと笑った。


「武美、お前は何ができるんだ? あのハゲに呼び出されたんだから、なんかあるだろ?」
「あーうん、無線でハッキングが出来るけど……どうも無理みたい。ジャミングされている」
「やっぱりか……」
「でもさ、有線なら……どこかの回路さえ生きていれば、何とかなると思う」
「そんじゃ、あのハゲの位置を見つけんのは任せる」
「クロちゃんは?」
「オイラか? オイラは……」
 携帯端末を操作し、自分の支給品を呼び出す。
 未来世界のような光景に、武美は思わずおおっと、喝采を送った。
「こいつで暴れるだけさ!」
 ニヤっと笑ったクロの手に、サーベルと三つの銃口を持つアポロマグナムが装着された。
 こうして、熱血ハートのサイボーグに太陽の改造人間の銃が握られた。


「でもさ、猫の手で装着できるって無理ない?」
「大丈夫。ボンボンはそういうところ適当だから」
 ここはボンボンではない。
 そう突っ込むキャラは、その場にはいなかった。


【F-6 森林中央部/一日目・深夜】
【クロ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康
[装備]:アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1~2
[思考・状況]
基本思考:ハゲ(シグマ)をぶちのめす! その後剛を殴る。
1:とりあえず、ハゲ(シグマ)の居場所を探る。そして暴れる。
2:ミーと合流して、爆弾を何とかする。
※尻尾ミサイル、内臓ミサイルは装備されています。
※ガトリングやなんでも斬れる剣が没収されていることに気づいていません。
※参加時期は異世界編(五巻)終了後です


【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1~3
[思考・状況]
基本思考:クロについていく。
1:シグマの居場所を探る。そのため市街地に移動したい。
2:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。


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