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最終章~緑の梢を揺らし渡る風 《緑は波動。全てを切り裂く力の刃》 例のとおり、ロックが特殊武器を付け替えるのは数秒。 ざっ!と振るわれたその右腕に、ぶぅん・・と鈍い振動音をさせて、光の刃が生まれた。 周囲を薄緑色の光に包まれたエネルギーブレード。 それはたとえ人知の及ばない材質のリーバードの装甲とて難なく切り裂く、強力なものなんだそうだ。 俺は思わず、読みかじった『ディグアウター・その工夫と武器』のあるページを思い出してしまう。 タッ、と軽い靴音を残して、ロックが突進する。 単純で直線的な動きながらいつでも左右どちらへでもよけることができる、バランスのいい足運び。 バスターを連射してエンテの気をそらすことも忘れていない。 エンテの体から飛び出した槍状の突起が雨や嵐のごとくロックを襲い、 振り回した尾の先端を凶悪な棘の塊にして叩きつける。 隙あらば大きく空気を口から取り入れ、青く揺らめく炎を吐き出し、芯から燃やそうとする。 それをロックは、あるいは避け、あるいは切り払い、横へ飛んで、跳ねとぶ床の破片を身を縮めて避け、 炎が来ればすんなりと引いて効果範囲の外へ出る。 そうして・・ やっと見ているだけの俺にもロックの狙いがわかった。 俺は気付いた。エンテが自分の体の操作を誤って、細く針のように鋭い攻撃突起を伸ばすのではなく、 細いには違いないが腕ほどの幅のある攻撃突起を伸ばしてしまう瞬間が、さっきからちらちら増えていた。 エンテに疲労がたまっている。 ロックは、それを待っていたんだ。 苛立たしげに鎌首を振り上げ、 エンテがまた針状・鎌状・剣状の攻撃突起をおりまぜてどっと攻撃をしてきた。 そのなかに、明らかに太い一本。 見つめるロックの、深い緑色の瞳がきらりと輝いた。 ガガガガガガガガガガガッ!! 床へ壁へ、ロックを貫きそこなった刃物群が突き刺さる。 破片が舞い上がり、粉塵が踊る中を青色のアーマーが上へと突然駆け上がった。 一本だけ太い攻撃突起の上を、危なげなく疾走する。 その先は、エンテの首元へ続く攻撃への足がかり。 じゃ、じゃああああああっ!! エンテが驚愕の叫びをあげ、慌てて突起を引っ込めようと身震いをする。 ロックを振り落としてしまおうと体全体をねじらせる…。 その全ての行動は、流れるようなロックの疾走に対し、果てしなく遅すぎた。 ロックの体はすでに、足場を力強く踏み切って宙にあった。 「うおおおおおおおおおおっ!!」 ギュオオオオオオッ!!!! ロックが発する腹のそこから響くような唸り声と、 エンテの怒りの叫びがシンクロして通路内の空気に波紋を描く。 肩の上に担ぎ上げるように構えたエネルギーブレードが、最大の輝きを放って・・・。 それは威圧するようなエメラルドグリーン! それを見上げて。 紅く容赦なく冷たく光るリーバードの瞳までもが、内側から起こる何かにゆらいだような。 そんな気がした。 最終章~青き夜空夜明けは遠く ズバシュウッ!!! エンテの首元に緑色の光の刃が食い込み、噴水のような火花を上げる。 エンテの体は長い一本の棒を飲んだように硬直。 ロックはブレードを突き刺したままそれを切り離し、さっとその場から離れてこちらへ回避して来た。 直後。 エンテの全身が物凄い爆音と共に弾けた。 その体を厚く覆っていた、赤い液体金属がすべてふっ飛び、湿った音をたてて床といわず天井といわず、 俺やロックの全身にも降りかかった。金気くさい匂いが立ち込め、俺は思わず咳き込んだ。 液体金属を己の体として動かし、定着させていた機能が死んだんだ。 初めて見る、エンテの骨格。 白くアンバランスで、図鑑で見た恐竜の骨格から足と手と…それと、 いろいろな個所を無造作に引き抜かれたような物足りない骨格で・・薄くなった闇の中、 ぼんやりとかすれる白色をしていた。 俺にはそれが憐れにさえ見えた。ただリーバードの瞳だけが血のように輝くばかりで、 最初感じた威容の欠片はもう何処にもうかがえない。 こういうのも自己憐憫とかいうんだろうか。 『ロック!ロック大丈夫!?』 無線が叫ぶ。 ロックは床に仰向けに転がって、荒い息をついていた。 全身も、その周りの床も赤い液体金属に覆われて、ちょっと見大惨事のようだった。 まあ・・・それは俺も同じなのだけれど。 見やると、目があう。ロックはだらっとした動きで片手を挙げた。 「後、頼む」 「ありがとうロック」 俺は笑って、肩の弓を下ろした。ここから先が、俺の舞台。ゆっくり休んでてくれロック。 《青は光。扉の鍵なる雨色の閃光》 さっき。エンテがロックの緑色の刃に倒れたその時。 俺の中で何かが音を立てて外れた気がした。 それが多分・・・アリアがエンテに絶対に攻撃できないようにするためのプログラム…というか、 枷が外れた音なんだと思う。 アリアがこの世から姿を消す前に語ってくれた、 決して多くはない言葉たち。俺はそれらを心の中で噛みしめた。 ――この弓はね、エンテ・・・―― 劇的な己の変化に戸惑う様子を見せるエンテ。 それを冷静に見つめながら、俺はこんどこそしっかりと、雨の弓を構えなおした。 床に片膝を立て、ひと動作で弓を引いた。 視界に俺の空色の前髪が降りかかり、その隙間から狙いを定める。 ・・・そうなんだ。矢はいらない。 エンテに攻撃をするこの瞬間だけ。雨の弓にはエネルギー状の矢が生まれるんだ。 きりり、と懐かしい音は弓蔓の音。その音に意識は集中し、 引き絞った弦の抵抗を支える人指し指と中指は、慣れた痛みを握り締める。 ――きっと島の民の未来を開いてくれる―― 思い出せ。波の下に潜む大物を貫く瞬間を!俺は弓漁師だ!この島においても指折りの。 逃さない。 何物も、この鏃(やじり)からは逃れられない! …それは自己暗示のようで、祈りのよう。 何もなかった弓と弦の間に、青く輝く光の矢が生まれた。矢はしっとりと静かに輝いて、 実体が無いくせに確かな手ごたえを返してくる。 矢のひかえめな輝きにエンテが気付いて、その骨ばった頭部をこちらへぐるりと回す。  穴みたいな暗闇の奥に、エンテのリーバードの瞳が光った。 (・・・・) 俺は何かに祈った。神様でも悪魔でもない・・・なんだろう?・・・・何かに。

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