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ロックマンXセイヴァーⅠ 第参章~過去~」(2008/08/28 (木) 16:12:49) の最新版変更点

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ロックマンXセイヴァ-改定版 第参章~過去~ 第一話 「よし・・行くぞ!」 エックスは、掛け声と共に目の前の扉を、 問答無用のチャ-ジ・ショットで破壊した。 そして、そのまま煙に紛れてのダッシュで内部に突入する。 エックスは屈んでバスタ-を、 セイアは直立してサ-ベルを構えた。 ゆっくりと晴れていく煙の先から、確かな人影が見えた。 そして、数秒後には、その人影は完全に二人の視界に入った。 「・・!」 「なっ・・。」 白衣を着用し、頭髪は白髪。 白衣には”W”の文字を入れた、老人型レプリロイド。 そして、老人の隣には、頭一つ分ほどの小さなカプセルが設置されている。 カプセルは、何かの液体で満たされており、コポコポと泡が立ち上がっている。 中には、何やら脂ぎった豆腐の様な物体が浮かんでいる。 「フフフ・・待っていたぞ、ROCKMAN。」 驚愕する二人を尻目に、老人は静かに口を開いた。 「お前・・か!・・VAVAを復活させたのは!」 エックスが叫んだ。 その額には、異常なまでの冷や汗が浮かんでいる。 それは、この老人の発する、妙なプレッシャ-のせいだ。 わけのわかない“何か”。 まるで、何度倒しても復活してくる、あのシグマを前にしているような。 「ククク・・ロックマンが二人・・。ついにこの時が来た。」 「っ・・質問に答えろ!!」 プレッシャ-を跳ね返すように一喝するが、 老人は全くと言っていいほど動じていない。 不意に老人は右手を上げた。 すると、小さな光が現れ、一枚のリングへと姿を変えた。 そして、それをエックス目掛けて投げつけた。 「っ!?」 リングはエックスに着弾すると共に、そのサイズを急激に変え、 エックスの身体を拘束した。 避ける間もなかった。 「兄さん!・・・この野郎ぉぉぉ!!」 サ-ベルを振りかぶり、勢いよく斬り掛かる。 が、老人は高出力の光剣を、何ごとも無いようにアッサリとかわした。 そして、歳を感じさせない回し蹴りで、セイアを吹き飛ばした。 「ついにこの時が来た・・ワシの敵・・ワシのライバル・・ワシの天敵。 ROCKMANに復讐するこの時がな!!」 復讐・・? 天敵・・? ROCKMAN・・? セイアの頭の中に次々と疑問符が飛び交う。 何を言っているんだ? 第二話 そして、エックスの脳裏には、ユ-ラシア墜落事件時にシグマが言っていた、 “素晴らしいパ-トナ-”と言う言葉が蘇った。 「まさか・・貴様・・あの時・・シグマに・・!!」 「フフフ・・その通りじゃ。シグマを使って貴様を殺し、 ゼロを覚醒させようとしたんじゃがな。 所詮はオモチャ。余興に過ぎない。 ただの役立たずじゃった。」 そう言って老人はニヤリと笑った。 その目には、あのVAVAをも凌ぐ狂気が宿っている。 「じゃが・・奴の全デ-タはコピ-済みじゃ。 もう少し役に立ってもらおうか?出るのじゃシグマ!!」 老人が右手を振り上げると同時に、背後の暗闇から、 一体の人影が出現した。 印象的なスキンヘッド。 目から鼻にかけての青いアザ。 「これが・・シ・・グマ・・?」 話しには聴いていたが、その余りの威圧感に緊張を隠しきれていない。 でも・・倒さないと。 セイアは咄嗟に身構えた。 しかし、その瞬間には既にシグマは、セイアの視界から消え去っていた。 「っ!?」 危なかった。 途轍も無い速さで繰り出されたシグマの攻撃を、 なんとかサ-ベルで受け止めることが出来た。 しかし、それがやっとだった。 余りの重さに両手がブルブルと震えてしまう。 「くぅ・・うぅ・・はぁぁぁ!!」 直ぐ様バランスを崩させ、超高速のパンチラッシュを浴びせ掛けるセイア。 しかし、次の瞬間には、セイアの腹部に鈍い衝撃が走っていた。 気がつくと、エネルギ-の宿ったシグマの拳が、 セイアのみぞおちに直撃していたのだ。 「ぐっ・・・げほ・・。」 力無く膝を突き、咳き込むセイア。 ア-マ-の上からだとは言え、内臓にかなりのダメ-ジがあったのか、 口元を抑えていた掌が、真っ赤な血の色に染まっている。 今のセイアは無防備だ。 しかも、シグマがこの隙を逃す筈などない。 シグマは、背中に装着されていた、大型の斧を抜き、 大きく振りかぶった。 -やられる・・。 恐怖の余り、目を瞑った瞬間。 「あぁぁぁぁ!!」 「ほぉ・・。」 バチィィンと、エネルギ-の中和された音が、辺り一面に響いた。 エックスは、自らを拘束していたリングを、無理矢理に引き剥がしたのだ。 「マグマ・ブレ-ド!!」 肩に収納してある、ゼット・セイバ-を抜くと、 その刃は、いつもの蛍光色のエネルギ-ではなく、 灼熱の焔に変わっていた。 シグマは、標的をエックスに変え、バトル・アクスを振り下ろした。 第三話 鉄の焦げる匂いが鼻をつく。 エックスのマグマ・ブレ-ドと、 シグマのバトル・アクスが、正面から激突したからだ。 「くっ・・・そ・・。」 少しずつ、エックスのセイバ-が押し込まれていく。 完全に押しきられるのも時間の問題だろう。 「ぅ・・・・・っ!?」 キィンと言う甲高い音が響く。 それと共に、ゼット・セイバ-の柄が、勢いよく宙を舞った。 シグマのバトル・アクスは、そのままの勢いで、エックスに襲いかかったが、 咄嗟にエックスが避けたため、地面に叩き付けられた。 そして、エックスは直ぐ様バック転で間合を取った。 すると、跳んだ先では、既にセイアがバスタ-にエネルギ-を集中させ、 その銃口をシグマに向けて立っていた。 「喰らえぇぇ!!」 重い衝撃音と共に、銃口から、蒼いエネルギ-の塊が放たれた。 バトル・アクスを地面に叩きつけたことによって、バランスが崩れ、 シグマは今無防備な状況にある。 一瞬の轟音が耳を打つと共に、シグマは蒼いエネルギ-弾に呑み込まれた。 多量の煙が辺りを舞う。 「セイア・・油断するな。こんな程度でやられるような奴じゃない。」 落下してきたセイバ-を、パシッと受け止めるエックス。 そして、再び握り直し、その蛍光色の刃を発生させる。 「・・うん・・。」 セイアも肩のサ-ベルに手をかけた。 除々に煙が晴れていく。 それに比例して、中の人影がゆっくりと視界に入ってくる。 「・・・・来る!」 エックスが叫んだ。 地面を蹴る音と共に、シグマが大きく跳び上がった。 「っ!」 上昇していくシグマに向け、セイアはバスタ-を連発したが、 その全てはシグマのバトル・アクスに叩き落とされてしまった。 そして、シグマは直ぐ様アクスを振りかぶり、落下の勢いと共に振り下ろした。 「・・電刃!!」 すかさず電撃を帯びたライジングで迎撃するセイア。 甲高い激突音と同時に、サ-ベルとアクスが火花を散らす。 「隙だらけだぜ!!喰らえ!!」 その隙にエックスのフルチャ-ジ・ショットの蒼い閃光がシグマを包み込んだ。 しかし、甘かった。 「なにっ!?うぁぁ!!」 セイアが気がついたときには、バスタ-をものともしないシグマの豪腕が、 セイアの頭を鷲掴みにしていた。 落下の勢いに任せ、セイア地面に叩きつける。 「あぁぁぁぁ!!」 全身に激痛が走った。 押さえた口もとに、微かな赤い液体が付着している。 第四話 「うぉぉぉ!!」 怒りを露にし、エックスはセイバ-を抜き、降下様に振り下ろした。 しかし、その剣撃が、シグマの身体を斬り裂くことは無かった。 素早くバトル・アクスを手にしたシグマが、ゼット・セイバ-を柄ごと吹き飛ばしたからだ。 カラァンと言う乾いた音を立てて地面に落下するセイバ-の柄。 「くっ・・・。」 縦斬り・・横斬りと迫ってくるアクスを避け、 エックスはバスタ-を向け、連続的に放った。 ダメ-ジを与えるつもりは無い。 シグマの注意を、セイアから自分に向けさせるためである。 不意にシグマの眼部に光が宿った。 やばい! 思った瞬間には、それは一筋の光となり、エックスに迫っていた。 ギリギリで回避したものの、右肩のア-マ-を削り取られた。 次は躱せない・・。 エックスが覚悟を決めた瞬間、突然シグマが大きくバランスを崩した。 起き上がったセイアが、不意にシグマに足払いをかけたからだ。 一瞬の隙が生じた。 「「今だ!!」」 「滅閃光!」 「トライア-ド・サンダ-!!」 拳に宿したエネルギ-・・滅閃光と、 瞬間的にチャ-ジを完了し、出力を増したトライア-ド・サンダ-が、 直接的にシグマの身体に流し込まれた。 「やっ・・・っ!?」 ズン・・と言う、何とも言えない衝撃が、 セイアの背中を走った。 「なっ・・?」 激痛が走る。 鮮血が滲む。 セイアの背中に、シグマのバトル・アクスが突き立てられたからだ。 「くっ・・うぁぁぁぁ!!」 思い出したような悲鳴が辺り一面に響く。 セイアは、背中を押さえる姿勢で膝を突いた。 「シグ・・マ・・貴様・・!!」 エックスのバスタ-にエネルギ-が収束していく。 それを確認したシグマは、邪悪な笑みを浮かべると共に、 セイアの背中からバトル・アクスを引き抜いた。 「うぉぉぉ!!」 一直線に放たれた蒼い閃光。 一片の狂いも無い正確な射撃ではあったが、 それはいちも簡単にシグマに叩き落とされ、多量の煙を発生させた。 そして、その瞬間には、既にエックスの姿はなかった。 「っ・・くそぉ・・。」 出血は止まった。 幸い、ア-マ-が頑丈に造られていたため、軽傷ですんだが、 ノ-マル状態で受けていたら、命は無かっただろう。 サ-ベルを地面に突き刺し、それを杖にして立ち上がる。 そして、眼前の攻防に視線を向ける。 素早い剣撃、拳・・蹴り。 エックスにとって、接近戦は余り得意分野では無いはずだ。 しかし、そんな事はセイアも百も承知。 シグマのアクスの様な武器を持つ者に対して、射撃攻撃は無力に近い。 無論・・シグマの様な手練が相手の時の話だ。 しかし、接近攻撃ならば、その巨大さ、リ-チの長さゆえに、 どうしても隙が生じてしまう。 エックスは、そこを狙っているのだ。 「っ・・兄さ・・。」 セイアのバスタ-に、蒼と紅の光が収束していく。 そして、完全に膨張しきったバスタ-の狙いを、 シグマに定めた。 第五話 バトル・アクスをセイバ-で受け止め、素早く蹴りを放つ。 しかし、威力が足りない。 余った左腕で豪快に殴り飛ばされ、エックスは勢いよく後方へ吹き飛んだ。 シグマは、エックスを追う形で前方へ飛び、アクスを振りかぶった。 エックスは回避することが出来ない。 このまま振り下ろされれば、シグマのアクスが、エックスをモノの見事に真っ二つにする事だろう。 しかし、シグマのバトル・アクスが、エックスを真っ二つにする事は無かった。 「ハァ・・ハァ・・僕はまだ・・ハァ・・終わっちゃいない!!」 セイアの放ったプラズマチャ-ジ・ショットが、豪快にシグマを包み込んだのだ。 しかし、効果はない。 セイアの姿を確認したシグマは、標的をセイアに定め、 飛び込んできた。 「うぉぉぉぉ!!」 アクスをサ-ベルで受け止め、受け流しつつ、サ-ベルをアクスごと吹き飛ばさせる。 そして、直ぐ様拳の連撃を浴びせ掛ける。 「はぁぁ!!」 強烈な火花が両者の間でスパ-クする。 スピ-ドは僅かだが、シグマが上。 「がはっ!!あぁぁ!!」 一瞬の隙を突かれ、セイアはシグマの拳によって、 地面に叩き付けられた。 -身体が・・動かない・・。 立ち上がろうと、地面に手を突くが、力が入らず、 身体を持ち上げることが出来ない。 -やられる・・。 シグマは、足元に転がっていたアクスを拾い上げ、 ゆっくりとした動作で振り被った。 「っそぉ・・シグマぁぁ!!」 途中弟への攻撃を阻止しようと、エックスが飛び込んできたが、 その攻撃はいとも簡単に受け流され、続けざまのシグマの攻撃によって、 エックスはその場に平伏した。 シグマの冷笑に背筋が凍る・・。 逃げられない・・。 殺される・・。 セイアの頭の中で、二種類の文字が飛び交う。 「っ・・・うぁ・・。」 声が出ない・・。 このままやられちゃうのか? このまま真っ二つにされてしまうのか? ・・しかし、シグマのアクスがセイアに到達することは無かった。 「・・えっ・・?」 その瞬間、現れた紅い影が、一瞬にしてシグマを吹き飛ばした。 「なっ・・まさか・・ゼ・・ロ・・兄さ・・?」 紅い影がゆっくりと振り返った。 全身真っ赤な鎧を着た、長い金髪の青年。 何故・・? 自分の兄であるゼロは、数十分前の闘いで、自分が葬ってしまったはず。 目を見開いたまま、立ち上がろうともしないセイアに、 ゼロと呼ばれた青年は、ゆっくりと歩み寄ってきた。 第六話 「大丈夫か・・?ロックマン・セイヴァ-・・セイア・・だったな?」 ゼロはセイアを優しく抱き起こし、そう言って微笑した。 「初めまして。オレはゼロ・・お前のもう一人の兄・・って事になるか?」 「あ・・ゼロ兄さ・・どうして・・?」 ようやく声が出た。 他にも色々と聞きたいことはあった。 しかし、今はなにより、彼がどうしてここにいるのかが知りたかった。 それに、ゼロについて、エックスは「ユ-ラシア墜落事件の時から行方不明」と聞かされていた。 「でも・・信じてるんだ。きっとゼロはどこかで生きてるって・・。」 そう言った兄の顔が忘れられなかった。 なんとか立ち上がったのか、エックスが小走りに走り寄ってきた。 「ゼロ!ゼロ・・!生きてたんだ・・。」 「当たり前だろ?大体・・シグマごときにやられてたまるかよ。 …まっ・・オレ自身どうやって復活したかなんてわからねぇよ。 気がついたら動けるようになってたんだ。」 ゼロは、そこまで言うと、肩のセイバ-を抜き放ち、 吹き飛んだシグマに視線を向けた。 「ゼロ兄さん・・?」 「感動の対面はここまでだ・・。シグマはオレが引きつける。 その間に、エックス・・セイア、お前達はあのジジイをなんとかしてくれ。」 ゼロは言い終わる前に、飛びかかってきたシグマに剣撃を浴びせ掛け始めた。 セイアとエックスは、深く頷くと、瞬間的なダッシュで、 部屋の隅に立っている、白衣の老人に立ちはだかった。 「ふん・・ゼロ・・か・・まさかオリジナルが生きているとはな。 まぁいい・・今ごろ奴など用済みなのじゃからな。」 老人は、視線の先で剣を振るう、紅き闘神に対して、 忌々しそうに呟き、口の端を上げた。 「まぁ・・今はそれよりも・・。」 老人の視線がセイアとエックスに向けられる。 充血したような赤い瞳からは、シグマを越える”何か”を感じとることが出来た。 「も・・もぉ逃げられないぞ!!」 セイアは叫ぶと同時に、足元に転がっていたサ-ベルの柄を拾い上げ、 光剣を発生させた。 「エックスの弟・・ロックマン・セイヴァ-・・。 そしてロックマン・エックス!・・ハッキリ言ってガッカリしたぞ?」 「なに・・?」 エックスは目を細めた。 「たかがシグマ程度にあそこまでてこずるとはな・・。 残念じゃよ・・ROCKMAN・・。」 「ロック・・マン・・?」 違う・・彼の言っているROCKMANは、 自分達の名前のロックマンじゃない・・。 伝説のレプリロイド・・ROCKMANの事・・。 「まだ判らないか?ふっ・・判らないじゃろうて・・。 記憶を封じたのか?まぁいい・・。 このままの貴様たちを殺すことも出来るが、 それではワシの気が済まん! 今・・貴様等の記憶を取り出してやろう・・。」 その瞬間、老人の両手から放たれたエネルギ-球が、 防御する暇もなく、二人を拘束した。 『なにっ・・?うぁぁぁぁぁ!!』 凄まじいエネルギ-の流れと共に、二人の頭にある映像が走った。 第七話 いつからだっただろう・・? 俺・・いや僕は、世界で初めて『心を持ったロボット』を生み出した天才科学者ト-マス・ライト博士によって、 家庭用お手伝いロボット『ロック』としてこの世に生を受けた。 博士や・・妹のロ-ルと一緒にくらす毎日は、とても幸せだった。 でもね・・そんな幸せも、長くは続かなかったんだ・・。 ある日突然・・僕の兄弟であるロボット達が、人類に反旗を翻し、街を破壊し始めた。 悪の科学者アルバ-ト・W・ワイリ-博士によって、兄弟は改造されていたんだ・・。 もはや軍や警察なんかが敵う相手じゃなかった・・。 どうすればいい・・? 僕はただ黙って見ているだけなのか? ううん・・それは出来なかった。 気がついたら、僕はライト博士に、 「僕を戦闘用に改造してください!!」 と叫んでいた。 別に悔いはなかった・・みんなの平和を勝ち取りたかったから・・。 平和を象徴する蒼い鎧を着て、僕は戦地へと旅だった。 僕は「ロックマン」になったんだ。 闘いは辛かった・・。 何度挫けそうになったことか・・。 それでも僕は・・なんとかワイリ-の所まで辿り着いて、 彼の野望を阻止した。 やっとこれで平和になるんだ・・。 でも・・それで終わりじゃなかった。 それから幾度となく、僕はワイリ-と闘った。 何度も何度も何度も何度も何度も。 いつしか僕の名前は、家庭用ロボット「ロック」としてではなく、 戦闘用ロボット「ロックマン」として、世間に知れ渡っていた。 そして・・数えて十回にも及んだワイリ-の世界征服の野望を打ち砕いた後・・ 一旦、世界は平和になったかと思われた。 でも・・ある日ワイリ-は、見たことも無い紅いロボットを連れて、僕に闘いを挑んできた。 ロボットの名は「ゼロ」・・世界初の「進化するロボット」。 僕は全力で応戦した。 最初は僕が優位に立っていた・・でも・・ゼロは闘えば闘うほど強くなっていった・・。 それでも僕は・・なんとかゼロを相打ちに持ち込んで・・。 悔いはなかった・・みんなの平和勝ち取りたかったから・・。 大破した僕は・・ライト博士に回収されて、新たな技術を持って生まれ変わった。 僕・・俺は「ロックマン・エックス」として・・。 後世で何かが起こったときの救世主として、俺はカプセルに封印された。 カプセルを見つけたのは、21世紀の天才科学者ジェ-ムス・ケイン博士だった。 封印状態のまま彼に発見された俺は、なんとかケイン博士の解析によって封印から醒めた。 その時、なんらかの理由で記憶を失っていたけれど・・。 思えば・・その時記憶を失ったからこそ、今の俺がいるんだと思う。 百年前の宿敵・・ゼロもまた、「赤いイレギュラ-」として捕獲され、 ハンタ-への道をたどった。 そして出会った俺達は・・自分達の生い立ちも知らずに、無二の親友となり、 その絆の深さによって、何度も世界を危機から救った。 …皮肉な話しだ・・。 第八話 未だに頭がボンヤリとしている・・。 過去と現代の自分は統合された。 過去の「ROCKMAN」としての自分と、現代の「ロックマン・エックス」 そして「ロックマン・セイヴァ-」としての自分。 「ふん・・ようやく思い出したようだな・・。 ROCKMAN・・。」 老人は、ブンブンと頭を振る二人に向かって、口の端だけを上げる笑みを浮かべた。 そして、エックスよりも先に意識を覚醒させたセイアは、一瞬の驚愕を覚えた。 目の前にいる老人と、蘇ったばかりの記憶の中の人物の姿が一致したからだ。 「ま・・まさか・・まさか貴様は・・。 Dr.・・ワイリ-・・?」 呟くように問うと、老人は答える代わりに、再び口の端を上げた。 「ワイリ-・・!!」 バスタ-を老人・・いやワイリ-に向け、戦慄するエックス。 「何故だ・・?何故・・!! お前は・・お前は生きてるはずなんか・・。」 当たり前だ。 Dr.ワイリーは百年前の人物。 しかも、その時点で既にかなりの高齢だったはず・・。 なのに・・何故? ワイリ-は、無言で自分の脇のカプセルを指さした。 「・・・?」 目を細め、改めてカプセルの中身に視線を走らせる。 緑色の液体で満たされたカプセル。 浮かんでいるのは、脂ぎった豆腐のような物体・・。 見たことがある・・。 いつだっただろう? 必死に記憶の端っこを掘り返してみる。 「・・なっ・・まさか・・!」 「なに?なに・・兄さん。」 「まさか・・貴様・・!!」 右手で口元を覆う。 その顔色は、セイアから見ても明らかに青い。 「そうじゃ・・ワシの・・脳じゃよ。」 『!!?』 「貴様と相打ちになったゼロ・・あやつを修理していたときじゃ・・。 ようやく修理が終わり、あやつを起こした瞬間・・ワシはあやつに・・。 死ぬ寸前・・以前造っていた、医者型ロボットに、ワシの脳を摘出させたのじゃ。 もはや!ワシの目的は世界征服ではない!! ROCKMAN!貴様に復讐することじゃ!!」 明らかにおかしい・・。 セイアはそう悟った。 自分がロックだった時も、彼は悪の心を持っていた。 しかし、それ以上に非常に人間らしい一面もあった。 確かにワイリ-の立場から見れば、自分達は憎むべき敵だろう。 しかし、その異常な執着心はどこから来るのだろう? 「ワイリ-・・いいだろう!!来い!相手になってやる!! そして・・総ての闘いを終わりにしよう・・!!」 エックスは静かに、それでいて確かな口調で、己のバスタ-をワイリ-へ向けた。 ワイリ-は、不気味に笑うと共に、サッと片手を上げた。 それに反応し、ワイリ-の背後から、ドクロの装飾品をつけた戦闘機が、 壁を派手に破壊し、出現した。 ワイリ-は、元人間とは思えないほどの跳躍力でそれに乗り込んだ。 戦闘機は、そのドクロの両目を不気味に発光させた。 「ワイリ-・マシン・パ-フェクト・・覚悟しろエックス!セイア!」 ワイリ-が叫ぶと共に、ドクロの両目から、超出力のエネルギ-弾が、 一発・・二発・・三発。 「っ・・レイ・スプラッシャ-!!」 セイアは、直進してくるエネルギ-弾を、ジャンプで飛び越え、 当然のように追尾してきたそれを、黄金のマシンガンで相殺した。 そして、その間にファルコン・ア-マ-を転送したエックスが、 既にチャ-ジしていたバスタ-を、ワイリ-・マシン目掛けて、一気に放った。 「喰らえぇぇぇ!!」 第九話 針のように鋭く、素早いチャ-ジ・ショットは、ワイリ-・マシンの装甲を撃ち抜くことは無かった。 着弾する寸前、ワイリ-・マシンの展開したバリアが、いとも簡単にバスタ-を弾き返したからだ。 セイアが続けて、スト-ム・トルネ-ドを放ったが、やはり直撃する寸前、拡散し、消滅した。 「フハハハ!!貴様等のパワ-程度で、このバリアが破られるか!」 マシンの上部に搭載されているマイクから、勝ち誇ったようなワイリ-の声が響く。 「なら・・これはどうだ!」 エックスの白い鎧は蒼い光に包まれ、次の瞬間には、滑らかな外装の黒い鎧に姿を変えていた。 忍者の様な外見に、フェイス・マスク。 そして、今まで蛍光色だったゼット・セイバ-が、その出力を大幅に増し、 黄金の光剣へと姿を変えた。 エックスが地面を蹴った。 セイアには、その姿が掻き消えたように見えた。 「えっ?」 「なんじゃと!?」 「円月輪!!」 エックスが出現したのは、ワイリ-・マシンの上部。 エックスは、瞬間的に跳躍し、天井に張りついていたのだ。 降下様に、エックスが振り下ろした黄金の光剣は、 容赦無くワイリ-・マシンのバリアを斬り付けた。 破れてはいない。 しかし、ほんの刹那の間、ワイリ-・マシンのバリアはグニャリと歪んだ。 セイアはそこを見逃さなかった。 「いっけぇぇぇ!!」 バチバチとプラズマを帯びたエネルギ-弾が、 歪んだバリアを突き抜け、マシン本体に撃ち込まれた。 直撃。 しかし、装甲が厚いため、ダメ-ジの程は全くと言っていいほど無かった。 「ふん・・やりおるわ・・。これはどうじゃ!」 「なっ・・?冷たい・・。」 ワイリ-・マシンの放つ、確かな冷気を、セイアは察知していた。 ワイリ-・マシンの周りの空気が、瞬時に冷やされている。 学校の理科の時間で習った、水分が凍結する温度は、確か零度だったから・・。 いや・・今感じる、この冷気は、零度なんて生暖かい温度では無い。 「気をつけろ!来る・・!!」 エックスが叫んだ瞬間、待っていたかのように、ワイリ-・マシンを周りを、 大量の氷弾が取り囲んだ。 二人がそれを確認した瞬間には、それは既に放たれていた。 「うぉぉぉぉ!!」 エックスは円月輪。 セイアはプラズマチャ-ジ・ショットで、氷弾を消しにかかるが、 その余りの量に、相殺しきることが出来ず、数発の氷弾が、二人の身体に撃ち込まれた。 飛び散る鮮血すら、その氷弾によって凝結し、塊となって床に転げ落ちる。 そして、セイアとエックスのア-マ-の持つ熱によって、 一瞬にして氷弾は溶け、辺り一面を水蒸気が満たした。 これでは視界が悪い。 エックスもセイアも、大したダメ-ジは受けていないが、これでは敵の動きを捕えることが出来ない。 無論、ワイリ-・マシンに赤外線スコ-プなどが搭載されていることは、 セイアでさえ察しがついた。 「うぉぉぉぉぉぉ!!」 「ぬっ!?」 突然の咆哮。 それと共に、満たされた蒸気が、少しずつ歪み始めた。 そして、次の瞬間蒸気が晴れた。 現れたのは、目一杯のエネルギ-をバスタ-に込めた、セイアの姿だった。 放たれたプラズマチャ-ジ・ショットは、正確極まりない射撃ではあった。 しかし、やはり直撃の寸前、先程のバリアに弾かれた。 「ハァ・・ハァ・・。」 「ゼロとエックスの力を合わせ持つ・・ロックマン・セイヴァ-。 ふん・・ROCKMAN特有の諦めの悪さじゃの。じゃがな!!」 次に放たれたのは、先程の氷弾から一変し、灼熱の炎弾だった。 色から察するに、第三次シグマ大戦時に、シグマが放っていた炎など、足元にも及ばない火力だ。 「セイア、伏せろ!」 直ぐ様セイアを伏せさせ、炎弾に向けてバスターを向ける。 エックスを包む鎧は、既に先程のシャド-・ア-マ-では無かった。 白を基調としたカラ-リングの、エックスが第三次シグマ大戦時に使用した、 通称サ-ド・ア-マ-。 以前、エックスが破棄した残骸を、エイリアとゲイトが解析し、 フォ-ス・ア-マ-同様、完全ではないにしろ、復活させたものだ。 「フロスト・シ-ルド!!」 放ったのは、絶対零度の氷によって作られた、氷のミサイル。 第十話 凄まじい回転を施したフロスト・シ-ルドと、灼熱の業火は、音を立てて空中で激突した。 最初は互角に思えた出力であったが、除々にフロスト・シ-ルドに亀裂が走り、 次の瞬間、砕け散ると共に蒸発してしまった。 「ショットガン・アイス!!」 勢いを緩めずに直進してくる炎弾に向け、避けきれないと判断したセイアは、 直ぐ様、氷の散弾で迎撃したが、 「なっ・・うぁぁぁ!」 何の障害もないとでも言うように、アッサリとショットガン・アイスを打ち消した炎弾は、 跳躍で回避しようとするセイアを尻目に、彼の身体をその灼熱の炎で包んだ。 「フロスト・タワ-!」 一方エックスは、炎に身体を包まれながらも、すぐに巨大な氷柱を発生させ、それを打ち消した。 「ハァ・・ハァ・・マグマ・・ブレ-ド!!」 ゼット・セイバ-を抜き、灼熱の刃を収束させる。 そして、持ち前の瞬発力で、瞬時にワイリ-・マシンの眼前に出現したエックス。 「無駄じゃと言うに!!」 ガチャリとマシンの一部に搭載されている、何かの射出機の様な機械が、向かってくるエックスに向けられた。 そして、一瞬の溜めの後、常識では考えられないほどの出力で、一本の巨大なレ-ザ-を放った。 「!?」 斬り付ける瞬間に、飛び上がっていたのが運の尽きだった。 空中では方向回避すらする事が出来ない。 いや・・もしこれが地上だとしても、この一瞬では、例えエックスでも回避できなかっただろう。 声を上げる暇もなく、エックスの身体は、緑色の閃光に包まれていた。 しかし、次の瞬間、閃光の中のエックスの姿が、瞬時にして掻き消えた。 「えっ?・・。」 エックスと同様、フロスト・タワ-で炎を打ち消したセイアは、突如として姿を消した兄に、 小さく声を上げた。 「なんじゃ!?」 「灯台下暗し・・ってね・・喰らえ!!」 強威力のバスタ-発射音が、セイアの耳を打った。 掻き消えた兄の姿を、軽く頭を振りつつ探索すると、エックスはワイリ-・マシンの丁度死角となる、 真下にバスタ-を上に向ける形で立っていた。 エックスは、レ-ザ-が放たれる直前に、ソウル・ボディによって創った自らの分身と、 密かに入れ替わっていたのだ。 放たれたバスタ-は、バリアの張られていない、無防備のワイリ-・マシンに直撃し、 先程、エックスに向けて放ったレ-ザ-の射出機を、モノの見事に粉砕してみせた。 「ぬぅ・・小癪な!」 スピ-カ-から響く、ワイリ-の声は怒気を孕んでいる。 次にマシンが放ったのは、バリバリと電撃を帯びたエネルギ-弾。 弾速が凄まじい。 「!?しまっ・・。」 「フルム-ンⅩ!!」 今まさに直撃しようとする電撃弾は、咄嗟に放たれたセイアのフルム-ンⅩが、 横に押し込む形で弾道を曲げてられていた。 第十一話 「Ⅹ・滅閃光!!」 間髪入れずに、エネルギ-を灯した己の拳を、思い切り地面に叩き付けたセイア。 次の瞬間には、ゼロの真・滅閃光を上回るほどの巨大なエネルギ-波が、 勢いよく、大破し地面の露出している床から噴出した。 当然、土煙が辺りに充満していく。 手応えがない。 恐らく、回避したか、バリアで防ぎきったか・・。 バスタ-のチャ-ジが完了したエックスは、自分とセイア目掛け、次々と放たれるワイリ-・マシンの攻撃を、 ゼット・セイバ-で撃ち落としつつ、蒼い閃光を帯びた銃口を、 目の前の土煙に向け、放った。 直撃はしなかった。 しかし、そのエネルギ-は、辺りの土煙を晴らすには充分すぎるほどだった。 「電刃Ⅹ!」 続けてセイアが、待っていたと言わんばかりに、エネルギ-を収束させたサ-ベルを、 思いきり左から右へかけて一閃し、蒼いエネルギ-波を放った。 放たれたそれは、回避しようとするワイリ-・マシンの右端の部分を、 まるで豆腐でも斬り裂くかのように、アッサリと切断してしまった。 「生意気な・・。」 ワイリ-・マシンの下部に搭載されている、巨大な銃口から、 ドス黒いエネルギ-弾が、次々と放たれた。 連続的に発射されたそれを、セイアは真月輪で撃ち落とし、 エックスはチャ-ジ版フロスト・シ-ルドで防ぎきった。 しかし、最後に放たれた特大のエネルギ-弾は、真月輪を粉砕し、 フロスト・シ-ルドを撃ち抜き、二人の身体を包んだ。 だが、次の瞬間、先程と同じように、エネルギ-弾の中の二人の姿は瞬時にして掻き消えた。 「ぬっ・・またか・・。」 「ソウル・ボディ・・そして旋墜斬!!」 「同じく・・ライジング・ファイア!!」 上空と足元。 既に二人は同時に入れ替わっていた。 セイアの滑空しながらの剣撃と、エックスの打ち上げる形の炎。 ワイリ-は、慌ててバリアを発生させるも、旋墜斬がバリアを歪ませ、 その歪みを突き抜けたライジング・ファイアが、ドクロの頭部部分に位置する、 バリア発生装置と思われる機器を、粉々に破壊した。 「なにぃぃぃぃ!?」 驚愕を帯びたワイリ-の声が響いた。 昔、何度も何度も聞いた、その声。 しかし、彼は今や人間ではない。 かといって、レプリロイド・・ロボットにすらなれていない。 セイアもエックスも、それが酷く悲しかった。 それでも・・撃たなければ・・。 セイアとエックス、二人はバスタ-の銃口をワイリ-・マシンに向け、 集中できるだけ、総ての力を注ぎ込んだ。 『これで最後だぁぁぁぁ!!』 「馬鹿なぁぁぁぁ!!」 次の瞬間、二人分の蒼い閃光が、放たれた凍結弾、炎弾、エネルギ-弾をものともせず、 完全にワイリ-・マシンを包み込んだ。    第十二話 「ハァ・・ハァ・・くっ・・。」 蛍光色のセイバ-を握りしめた紅い影。 巨大な斧を振りかざした紫色の影。 先程から、その二つの凄まじい攻防が、数十分に渡り繰り広げられていた。 しかし、総ての武装、ラ-ニング技を使用して立ち向かったゼロだったが、 戦況は未だに武装がバトル・アクスしか無い筈のシグマが有利だった。 「くっ・・うぉぉぉぉ!!」 荒い息を無理矢理に整え、ゼロは吠えた。 左手をバスタ-へ変形させ、目の前のシグマへ向けて、連続的に放つ。 シグマは、放たれたそれを、全て右手一本で掻き消し、 左手のアクスを振り下ろした。 リ-チは完全に届いていない。 しかし、アクスの振りが巻き起こした、エネルギ-の波、衝撃波と呼べるモノが、 ゼロのア-マ-を、バタ-の様にアッサリと斬り裂いてみせた。 「っ・・ぐぁぁ!!」 短い悲鳴を上げ、ゼロはその場に膝を突いた。 ア-マ-の胸部が、右肩から左腰にかけて斬り裂かれている。 余りの切れ味に、損傷はア-マ-を突き抜け、生身の身体にも及んでいる。 右手で傷口を抑えつつ、フラリと立ち上がるが、 闘いのダメ-ジと出血によって、意識が朦朧としてしまっている。 セイバ-を地面に突き刺し、左手のバスタ-を構える。 そして、エネルギ-を放とうとした瞬間。 ドン・・と鈍い衝撃が、ゼロの左手を走った。 左手のバスタ-が暴発したのだ。 当たり前だ。 この激戦の中、出力以上のエネルギ-を、何千発と放っているのだ。 その余りのエネルギ-環境に、例えゼロの身体とてついていくはずが無い。 「ぐぁっ・・くっ・・。」 カラァン・・と右手のセイバ-が滑り落ちた。 そして、代わりに、空いた右手で左腕を握りしめる。 シグマは、ゼロのその様子に、心底邪悪な笑みを浮かべ、 わざとゆっくりとした動作で歩み寄ってきた。 一思いにアクスで斬り裂けばいいモノを・・。 シグマは、それをせず、自身の拳でゼロを殴り飛ばし、倒れ込んだゼロを左足で踏みつけた。 既にダメ-ジが限界に達していたゼロのア-マ-に、 音を立てて亀裂が走る。 抵抗しようにも、もうシグマの足を振り払うことも不可能だ。 第十三話 ---オレは・・オレは・・。 不意に意識が遠ざかっていく。 恐らく、次に気を失ったら、もう二度と目を覚まさないだろう・・とゼロは密かに確信していた。 ---オレは・・何をしているのだろう・・? 一体自分は何のために生まれた? それは・・ワイリ-が宿敵ROCKMANを破壊する。 それだけの為。 ---一体オレに何が出来たんだ・・?・・アイリス・・。 記憶の片隅で頬笑む少女。 答えが返ってこないと判っていても、ゼロは自問し続ける。 ---すまない・・アイリス・・オレは・・。 彼女との最後の時間が頭を過る。 彼女が絶命する寸前・・自分に呟いた言葉・・。 あれは・・一体何だったのだろう? ---オレは・・。 「オレ達レプリロイドは・・結局みんな・・イレギュラ-なのか!!?」 第四次シグマ大戦。後に「レプリフォ-ス大戦」と呼ばれる事件。 元凶のシグマを倒し、総監ジェネラルが命をかけて地球への攻撃を阻止したスペ-ス・コロニ-。 崩壊していくコロニ-の中から、なんとか脱出ポッドを見つけ出し、 地球へと帰る、冷たい宇宙空間で、ゼロは一人自問していた。 「なんで・・どうしてこうなっちまうんだよ!!?」 その問いに優しく答えてくれる者はもういない。 「結局・・誰も護れなかったんだ・・アイリス・・。」 数時間前、自らが葬った少女を想う。 ---彼女が何をした? ただ・・平和を望んでいただけ・・。 ---なぜオレは殺すことしか出来なかったんだ・・? あの娘がイレギュラ-だったから・・? ---そうか・・イレギュラ-なんだ・・。 そう言って納得させた。 誰でもない・・自分を・・。 ---でも・・あの娘は誰も殺しちゃいないし、傷つけてもいない・・。    オレに刃を向けただけ・・そうだろう? 彼女は最後・・なんて言ったのだろう・・? ---一緒に・・レプリロイドだけの世界で暮らしましょ・・? そんなものは幻・・幻なんだ・・! ---ふふ・・そうよね・・でも・・信じたかった・・。 アイリ・・ス・・。 ---ゼ・・ロ・・わた・・のぶ・・きて・・。 『ゼロ・・私と兄さんの分まで生きて・・』 それが、彼女の残した最後の言葉。 「あぁ・・約束するよアイリス。オレは・・。」 そっと呟き、ゼロは眼を閉じた。 第十四話 ---アイリス・・すまない・・その約束は・・守れそうにない・・。だが・・。 グッと全身に強張らせる。 ギシギシと関節が悲鳴を上げるが、そんな事はどうでもよかった。 今は・・シグマを倒す・・それだけだった。 自分を踏みつけているシグマを、思いきり振り払い、 拾い上げたセイバ-で、連続的に斬り裂く。 シグマは、ゼロの突然の行動とダメ-ジによって、驚愕と悲鳴の声を上げた。 疾風を撃ち込み、シグマを後方へ押しやる。 ---コイツだけは・・絶対に連れていく・・。大元はオレの責任だ・・。 不思議と身体中の激痛は無くっていた。 その代わりに、誰か暖かい腕に包まれているような、そんな感覚さえした。 ---そしてオレ死んだら・・お前の所へ行って・・謝りに行くよ。 いつの間にか、ゼロの身体を、炎のような真紅のオ-ラが包んでいた。 それは覚醒を意味する。 しかし、それは前回の禍々しい赤紫色のオ-ラではない。 過去の破壊神としてのゼロと、現代の紅き闘神としてのゼロは、今統合された。 ---すまない・・そして・・。 無言でセイバ-を頭上に掲げる。 蛍光色だったそれは、オ-ラに呼応するかのように、その色彩を真紅へと変えた。 そして、それに比例するかのように出力を増し、数秒後には天井に届いてしまうほどに巨大化していた。 途中、シグマのアクスが巻き起こした衝撃波が、ゼロを襲ったが、 その衝撃はゼロ本体に届く寸前に、真紅のオ-ラによって掻き消された。 それを見たシグマは、大きく目を見開いた。 そして、続けざまに走り込み、アクスを振りかぶった。 直接的にアクスを撃ち込むつもりなのだ。 しかし、その刃も同様に、オ-ラに触れた途端、粉々に砕け散った。 「幻夢・・零・・!!」 ---ありがとう・・。 振りかぶったセイバ-を、大きく上から下へと振り下ろす。 そして、悔し紛れにシグマが張ったバリアを、無駄な抵抗とばかりに破壊し、 なんとか防ごうとするシグマ本体を、いとも簡単に真っ二つにした。 「消えろ・・シグマ!!」 セイバ-を横に放り捨て、右手をバスタ-に変形させる。 そして、二つに別れたシグマの身体に、容赦無くバスタ-を浴びせ掛けた。 轟音と共に、シグマの身体が完全に消滅してしまっても、ゼロはバスタ-を撃つのを止めなかった。 ---判った・・お前が望むなら・・アイリス。    オレはこの世と言う地獄の中を、這い蹲ってでも生きてやる。    だが・・オレ自身が・・お前の望んだ平和の障害になってしまような事があれば・・。    オレは・・。 静かにオ-ラが消え去った。 右手を素手に戻し、放り捨てたセイバ-を拾い上げる。 激戦の中で、メットの消失してしまった、金の髪を、軽く両手で上げ直した。 ゼロはこの時、ある決意を胸に抱いていた。 次回予告 ついにワイリ-を倒した!・・かのように思えたけど・・。 奴の怨念はこんな程度じゃ終わらなかった。 僕達は決着をつける・・百年前からの因縁に。 そして必ず帰るよ・・フレッドの・・クリスの・・みんなの所へ! 次回「ロックマンXセイヴァ-改定版最終章~別離・・そして・・~」 「お前が・・お前が全部悪いんだぁぁ!!」
第一話 「よし・・行くぞ!」 エックスは、掛け声と共に目の前の扉を、 問答無用のチャ-ジ・ショットで破壊した。 そして、そのまま煙に紛れてのダッシュで内部に突入する。 エックスは屈んでバスタ-を、 セイアは直立してサ-ベルを構えた。 ゆっくりと晴れていく煙の先から、確かな人影が見えた。 そして、数秒後には、その人影は完全に二人の視界に入った。 「・・!」 「なっ・・。」 白衣を着用し、頭髪は白髪。 白衣には”W”の文字を入れた、老人型レプリロイド。 そして、老人の隣には、頭一つ分ほどの小さなカプセルが設置されている。 カプセルは、何かの液体で満たされており、コポコポと泡が立ち上がっている。 中には、何やら脂ぎった豆腐の様な物体が浮かんでいる。 「フフフ・・待っていたぞ、ROCKMAN。」 驚愕する二人を尻目に、老人は静かに口を開いた。 「お前・・か!・・VAVAを復活させたのは!」 エックスが叫んだ。 その額には、異常なまでの冷や汗が浮かんでいる。 それは、この老人の発する、妙なプレッシャ-のせいだ。 わけのわかない“何か”。 まるで、何度倒しても復活してくる、あのシグマを前にしているような。 「ククク・・ロックマンが二人・・。ついにこの時が来た。」 「っ・・質問に答えろ!!」 プレッシャ-を跳ね返すように一喝するが、 老人は全くと言っていいほど動じていない。 不意に老人は右手を上げた。 すると、小さな光が現れ、一枚のリングへと姿を変えた。 そして、それをエックス目掛けて投げつけた。 「っ!?」 リングはエックスに着弾すると共に、そのサイズを急激に変え、 エックスの身体を拘束した。 避ける間もなかった。 「兄さん!・・・この野郎ぉぉぉ!!」 サ-ベルを振りかぶり、勢いよく斬り掛かる。 が、老人は高出力の光剣を、何ごとも無いようにアッサリとかわした。 そして、歳を感じさせない回し蹴りで、セイアを吹き飛ばした。 「ついにこの時が来た・・ワシの敵・・ワシのライバル・・ワシの天敵。 ROCKMANに復讐するこの時がな!!」 復讐・・? 天敵・・? ROCKMAN・・? セイアの頭の中に次々と疑問符が飛び交う。 何を言っているんだ? 第二話 そして、エックスの脳裏には、ユ-ラシア墜落事件時にシグマが言っていた、 “素晴らしいパ-トナ-”と言う言葉が蘇った。 「まさか・・貴様・・あの時・・シグマに・・!!」 「フフフ・・その通りじゃ。シグマを使って貴様を殺し、 ゼロを覚醒させようとしたんじゃがな。 所詮はオモチャ。余興に過ぎない。 ただの役立たずじゃった。」 そう言って老人はニヤリと笑った。 その目には、あのVAVAをも凌ぐ狂気が宿っている。 「じゃが・・奴の全デ-タはコピ-済みじゃ。 もう少し役に立ってもらおうか?出るのじゃシグマ!!」 老人が右手を振り上げると同時に、背後の暗闇から、 一体の人影が出現した。 印象的なスキンヘッド。 目から鼻にかけての青いアザ。 「これが・・シ・・グマ・・?」 話しには聴いていたが、その余りの威圧感に緊張を隠しきれていない。 でも・・倒さないと。 セイアは咄嗟に身構えた。 しかし、その瞬間には既にシグマは、セイアの視界から消え去っていた。 「っ!?」 危なかった。 途轍も無い速さで繰り出されたシグマの攻撃を、 なんとかサ-ベルで受け止めることが出来た。 しかし、それがやっとだった。 余りの重さに両手がブルブルと震えてしまう。 「くぅ・・うぅ・・はぁぁぁ!!」 直ぐ様バランスを崩させ、超高速のパンチラッシュを浴びせ掛けるセイア。 しかし、次の瞬間には、セイアの腹部に鈍い衝撃が走っていた。 気がつくと、エネルギ-の宿ったシグマの拳が、 セイアのみぞおちに直撃していたのだ。 「ぐっ・・・げほ・・。」 力無く膝を突き、咳き込むセイア。 ア-マ-の上からだとは言え、内臓にかなりのダメ-ジがあったのか、 口元を抑えていた掌が、真っ赤な血の色に染まっている。 今のセイアは無防備だ。 しかも、シグマがこの隙を逃す筈などない。 シグマは、背中に装着されていた、大型の斧を抜き、 大きく振りかぶった。 -やられる・・。 恐怖の余り、目を瞑った瞬間。 「あぁぁぁぁ!!」 「ほぉ・・。」 バチィィンと、エネルギ-の中和された音が、辺り一面に響いた。 エックスは、自らを拘束していたリングを、無理矢理に引き剥がしたのだ。 「マグマ・ブレ-ド!!」 肩に収納してある、ゼット・セイバ-を抜くと、 その刃は、いつもの蛍光色のエネルギ-ではなく、 灼熱の焔に変わっていた。 シグマは、標的をエックスに変え、バトル・アクスを振り下ろした。 第三話 鉄の焦げる匂いが鼻をつく。 エックスのマグマ・ブレ-ドと、 シグマのバトル・アクスが、正面から激突したからだ。 「くっ・・・そ・・。」 少しずつ、エックスのセイバ-が押し込まれていく。 完全に押しきられるのも時間の問題だろう。 「ぅ・・・・・っ!?」 キィンと言う甲高い音が響く。 それと共に、ゼット・セイバ-の柄が、勢いよく宙を舞った。 シグマのバトル・アクスは、そのままの勢いで、エックスに襲いかかったが、 咄嗟にエックスが避けたため、地面に叩き付けられた。 そして、エックスは直ぐ様バック転で間合を取った。 すると、跳んだ先では、既にセイアがバスタ-にエネルギ-を集中させ、 その銃口をシグマに向けて立っていた。 「喰らえぇぇ!!」 重い衝撃音と共に、銃口から、蒼いエネルギ-の塊が放たれた。 バトル・アクスを地面に叩きつけたことによって、バランスが崩れ、 シグマは今無防備な状況にある。 一瞬の轟音が耳を打つと共に、シグマは蒼いエネルギ-弾に呑み込まれた。 多量の煙が辺りを舞う。 「セイア・・油断するな。こんな程度でやられるような奴じゃない。」 落下してきたセイバ-を、パシッと受け止めるエックス。 そして、再び握り直し、その蛍光色の刃を発生させる。 「・・うん・・。」 セイアも肩のサ-ベルに手をかけた。 除々に煙が晴れていく。 それに比例して、中の人影がゆっくりと視界に入ってくる。 「・・・・来る!」 エックスが叫んだ。 地面を蹴る音と共に、シグマが大きく跳び上がった。 「っ!」 上昇していくシグマに向け、セイアはバスタ-を連発したが、 その全てはシグマのバトル・アクスに叩き落とされてしまった。 そして、シグマは直ぐ様アクスを振りかぶり、落下の勢いと共に振り下ろした。 「・・電刃!!」 すかさず電撃を帯びたライジングで迎撃するセイア。 甲高い激突音と同時に、サ-ベルとアクスが火花を散らす。 「隙だらけだぜ!!喰らえ!!」 その隙にエックスのフルチャ-ジ・ショットの蒼い閃光がシグマを包み込んだ。 しかし、甘かった。 「なにっ!?うぁぁ!!」 セイアが気がついたときには、バスタ-をものともしないシグマの豪腕が、 セイアの頭を鷲掴みにしていた。 落下の勢いに任せ、セイア地面に叩きつける。 「あぁぁぁぁ!!」 全身に激痛が走った。 押さえた口もとに、微かな赤い液体が付着している。 第四話 「うぉぉぉ!!」 怒りを露にし、エックスはセイバ-を抜き、降下様に振り下ろした。 しかし、その剣撃が、シグマの身体を斬り裂くことは無かった。 素早くバトル・アクスを手にしたシグマが、ゼット・セイバ-を柄ごと吹き飛ばしたからだ。 カラァンと言う乾いた音を立てて地面に落下するセイバ-の柄。 「くっ・・・。」 縦斬り・・横斬りと迫ってくるアクスを避け、 エックスはバスタ-を向け、連続的に放った。 ダメ-ジを与えるつもりは無い。 シグマの注意を、セイアから自分に向けさせるためである。 不意にシグマの眼部に光が宿った。 やばい! 思った瞬間には、それは一筋の光となり、エックスに迫っていた。 ギリギリで回避したものの、右肩のア-マ-を削り取られた。 次は躱せない・・。 エックスが覚悟を決めた瞬間、突然シグマが大きくバランスを崩した。 起き上がったセイアが、不意にシグマに足払いをかけたからだ。 一瞬の隙が生じた。 「「今だ!!」」 「滅閃光!」 「トライア-ド・サンダ-!!」 拳に宿したエネルギ-・・滅閃光と、 瞬間的にチャ-ジを完了し、出力を増したトライア-ド・サンダ-が、 直接的にシグマの身体に流し込まれた。 「やっ・・・っ!?」 ズン・・と言う、何とも言えない衝撃が、 セイアの背中を走った。 「なっ・・?」 激痛が走る。 鮮血が滲む。 セイアの背中に、シグマのバトル・アクスが突き立てられたからだ。 「くっ・・うぁぁぁぁ!!」 思い出したような悲鳴が辺り一面に響く。 セイアは、背中を押さえる姿勢で膝を突いた。 「シグ・・マ・・貴様・・!!」 エックスのバスタ-にエネルギ-が収束していく。 それを確認したシグマは、邪悪な笑みを浮かべると共に、 セイアの背中からバトル・アクスを引き抜いた。 「うぉぉぉ!!」 一直線に放たれた蒼い閃光。 一片の狂いも無い正確な射撃ではあったが、 それはいちも簡単にシグマに叩き落とされ、多量の煙を発生させた。 そして、その瞬間には、既にエックスの姿はなかった。 「っ・・くそぉ・・。」 出血は止まった。 幸い、ア-マ-が頑丈に造られていたため、軽傷ですんだが、 ノ-マル状態で受けていたら、命は無かっただろう。 サ-ベルを地面に突き刺し、それを杖にして立ち上がる。 そして、眼前の攻防に視線を向ける。 素早い剣撃、拳・・蹴り。 エックスにとって、接近戦は余り得意分野では無いはずだ。 しかし、そんな事はセイアも百も承知。 シグマのアクスの様な武器を持つ者に対して、射撃攻撃は無力に近い。 無論・・シグマの様な手練が相手の時の話だ。 しかし、接近攻撃ならば、その巨大さ、リ-チの長さゆえに、 どうしても隙が生じてしまう。 エックスは、そこを狙っているのだ。 「っ・・兄さ・・。」 セイアのバスタ-に、蒼と紅の光が収束していく。 そして、完全に膨張しきったバスタ-の狙いを、 シグマに定めた。 第五話 バトル・アクスをセイバ-で受け止め、素早く蹴りを放つ。 しかし、威力が足りない。 余った左腕で豪快に殴り飛ばされ、エックスは勢いよく後方へ吹き飛んだ。 シグマは、エックスを追う形で前方へ飛び、アクスを振りかぶった。 エックスは回避することが出来ない。 このまま振り下ろされれば、シグマのアクスが、エックスをモノの見事に真っ二つにする事だろう。 しかし、シグマのバトル・アクスが、エックスを真っ二つにする事は無かった。 「ハァ・・ハァ・・僕はまだ・・ハァ・・終わっちゃいない!!」 セイアの放ったプラズマチャ-ジ・ショットが、豪快にシグマを包み込んだのだ。 しかし、効果はない。 セイアの姿を確認したシグマは、標的をセイアに定め、 飛び込んできた。 「うぉぉぉぉ!!」 アクスをサ-ベルで受け止め、受け流しつつ、サ-ベルをアクスごと吹き飛ばさせる。 そして、直ぐ様拳の連撃を浴びせ掛ける。 「はぁぁ!!」 強烈な火花が両者の間でスパ-クする。 スピ-ドは僅かだが、シグマが上。 「がはっ!!あぁぁ!!」 一瞬の隙を突かれ、セイアはシグマの拳によって、 地面に叩き付けられた。 -身体が・・動かない・・。 立ち上がろうと、地面に手を突くが、力が入らず、 身体を持ち上げることが出来ない。 -やられる・・。 シグマは、足元に転がっていたアクスを拾い上げ、 ゆっくりとした動作で振り被った。 「っそぉ・・シグマぁぁ!!」 途中弟への攻撃を阻止しようと、エックスが飛び込んできたが、 その攻撃はいとも簡単に受け流され、続けざまのシグマの攻撃によって、 エックスはその場に平伏した。 シグマの冷笑に背筋が凍る・・。 逃げられない・・。 殺される・・。 セイアの頭の中で、二種類の文字が飛び交う。 「っ・・・うぁ・・。」 声が出ない・・。 このままやられちゃうのか? このまま真っ二つにされてしまうのか? ・・しかし、シグマのアクスがセイアに到達することは無かった。 「・・えっ・・?」 その瞬間、現れた紅い影が、一瞬にしてシグマを吹き飛ばした。 「なっ・・まさか・・ゼ・・ロ・・兄さ・・?」 紅い影がゆっくりと振り返った。 全身真っ赤な鎧を着た、長い金髪の青年。 何故・・? 自分の兄であるゼロは、数十分前の闘いで、自分が葬ってしまったはず。 目を見開いたまま、立ち上がろうともしないセイアに、 ゼロと呼ばれた青年は、ゆっくりと歩み寄ってきた。 第六話 「大丈夫か・・?ロックマン・セイヴァ-・・セイア・・だったな?」 ゼロはセイアを優しく抱き起こし、そう言って微笑した。 「初めまして。オレはゼロ・・お前のもう一人の兄・・って事になるか?」 「あ・・ゼロ兄さ・・どうして・・?」 ようやく声が出た。 他にも色々と聞きたいことはあった。 しかし、今はなにより、彼がどうしてここにいるのかが知りたかった。 それに、ゼロについて、エックスは「ユ-ラシア墜落事件の時から行方不明」と聞かされていた。 「でも・・信じてるんだ。きっとゼロはどこかで生きてるって・・。」 そう言った兄の顔が忘れられなかった。 なんとか立ち上がったのか、エックスが小走りに走り寄ってきた。 「ゼロ!ゼロ・・!生きてたんだ・・。」 「当たり前だろ?大体・・シグマごときにやられてたまるかよ。 …まっ・・オレ自身どうやって復活したかなんてわからねぇよ。 気がついたら動けるようになってたんだ。」 ゼロは、そこまで言うと、肩のセイバ-を抜き放ち、 吹き飛んだシグマに視線を向けた。 「ゼロ兄さん・・?」 「感動の対面はここまでだ・・。シグマはオレが引きつける。 その間に、エックス・・セイア、お前達はあのジジイをなんとかしてくれ。」 ゼロは言い終わる前に、飛びかかってきたシグマに剣撃を浴びせ掛け始めた。 セイアとエックスは、深く頷くと、瞬間的なダッシュで、 部屋の隅に立っている、白衣の老人に立ちはだかった。 「ふん・・ゼロ・・か・・まさかオリジナルが生きているとはな。 まぁいい・・今ごろ奴など用済みなのじゃからな。」 老人は、視線の先で剣を振るう、紅き闘神に対して、 忌々しそうに呟き、口の端を上げた。 「まぁ・・今はそれよりも・・。」 老人の視線がセイアとエックスに向けられる。 充血したような赤い瞳からは、シグマを越える”何か”を感じとることが出来た。 「も・・もぉ逃げられないぞ!!」 セイアは叫ぶと同時に、足元に転がっていたサ-ベルの柄を拾い上げ、 光剣を発生させた。 「エックスの弟・・ロックマン・セイヴァ-・・。 そしてロックマン・エックス!・・ハッキリ言ってガッカリしたぞ?」 「なに・・?」 エックスは目を細めた。 「たかがシグマ程度にあそこまでてこずるとはな・・。 残念じゃよ・・ROCKMAN・・。」 「ロック・・マン・・?」 違う・・彼の言っているROCKMANは、 自分達の名前のロックマンじゃない・・。 伝説のレプリロイド・・ROCKMANの事・・。 「まだ判らないか?ふっ・・判らないじゃろうて・・。 記憶を封じたのか?まぁいい・・。 このままの貴様たちを殺すことも出来るが、 それではワシの気が済まん! 今・・貴様等の記憶を取り出してやろう・・。」 その瞬間、老人の両手から放たれたエネルギ-球が、 防御する暇もなく、二人を拘束した。 『なにっ・・?うぁぁぁぁぁ!!』 凄まじいエネルギ-の流れと共に、二人の頭にある映像が走った。 第七話 いつからだっただろう・・? 俺・・いや僕は、世界で初めて『心を持ったロボット』を生み出した天才科学者ト-マス・ライト博士によって、 家庭用お手伝いロボット『ロック』としてこの世に生を受けた。 博士や・・妹のロ-ルと一緒にくらす毎日は、とても幸せだった。 でもね・・そんな幸せも、長くは続かなかったんだ・・。 ある日突然・・僕の兄弟であるロボット達が、人類に反旗を翻し、街を破壊し始めた。 悪の科学者アルバ-ト・W・ワイリ-博士によって、兄弟は改造されていたんだ・・。 もはや軍や警察なんかが敵う相手じゃなかった・・。 どうすればいい・・? 僕はただ黙って見ているだけなのか? ううん・・それは出来なかった。 気がついたら、僕はライト博士に、 「僕を戦闘用に改造してください!!」 と叫んでいた。 別に悔いはなかった・・みんなの平和を勝ち取りたかったから・・。 平和を象徴する蒼い鎧を着て、僕は戦地へと旅だった。 僕は「ロックマン」になったんだ。 闘いは辛かった・・。 何度挫けそうになったことか・・。 それでも僕は・・なんとかワイリ-の所まで辿り着いて、 彼の野望を阻止した。 やっとこれで平和になるんだ・・。 でも・・それで終わりじゃなかった。 それから幾度となく、僕はワイリ-と闘った。 何度も何度も何度も何度も何度も。 いつしか僕の名前は、家庭用ロボット「ロック」としてではなく、 戦闘用ロボット「ロックマン」として、世間に知れ渡っていた。 そして・・数えて十回にも及んだワイリ-の世界征服の野望を打ち砕いた後・・ 一旦、世界は平和になったかと思われた。 でも・・ある日ワイリ-は、見たことも無い紅いロボットを連れて、僕に闘いを挑んできた。 ロボットの名は「ゼロ」・・世界初の「進化するロボット」。 僕は全力で応戦した。 最初は僕が優位に立っていた・・でも・・ゼロは闘えば闘うほど強くなっていった・・。 それでも僕は・・なんとかゼロを相打ちに持ち込んで・・。 悔いはなかった・・みんなの平和勝ち取りたかったから・・。 大破した僕は・・ライト博士に回収されて、新たな技術を持って生まれ変わった。 僕・・俺は「ロックマン・エックス」として・・。 後世で何かが起こったときの救世主として、俺はカプセルに封印された。 カプセルを見つけたのは、21世紀の天才科学者ジェ-ムス・ケイン博士だった。 封印状態のまま彼に発見された俺は、なんとかケイン博士の解析によって封印から醒めた。 その時、なんらかの理由で記憶を失っていたけれど・・。 思えば・・その時記憶を失ったからこそ、今の俺がいるんだと思う。 百年前の宿敵・・ゼロもまた、「赤いイレギュラ-」として捕獲され、 ハンタ-への道をたどった。 そして出会った俺達は・・自分達の生い立ちも知らずに、無二の親友となり、 その絆の深さによって、何度も世界を危機から救った。 …皮肉な話しだ・・。 第八話 未だに頭がボンヤリとしている・・。 過去と現代の自分は統合された。 過去の「ROCKMAN」としての自分と、現代の「ロックマン・エックス」 そして「ロックマン・セイヴァ-」としての自分。 「ふん・・ようやく思い出したようだな・・。 ROCKMAN・・。」 老人は、ブンブンと頭を振る二人に向かって、口の端だけを上げる笑みを浮かべた。 そして、エックスよりも先に意識を覚醒させたセイアは、一瞬の驚愕を覚えた。 目の前にいる老人と、蘇ったばかりの記憶の中の人物の姿が一致したからだ。 「ま・・まさか・・まさか貴様は・・。 Dr.・・ワイリ-・・?」 呟くように問うと、老人は答える代わりに、再び口の端を上げた。 「ワイリ-・・!!」 バスタ-を老人・・いやワイリ-に向け、戦慄するエックス。 「何故だ・・?何故・・!! お前は・・お前は生きてるはずなんか・・。」 当たり前だ。 Dr.ワイリーは百年前の人物。 しかも、その時点で既にかなりの高齢だったはず・・。 なのに・・何故? ワイリ-は、無言で自分の脇のカプセルを指さした。 「・・・?」 目を細め、改めてカプセルの中身に視線を走らせる。 緑色の液体で満たされたカプセル。 浮かんでいるのは、脂ぎった豆腐のような物体・・。 見たことがある・・。 いつだっただろう? 必死に記憶の端っこを掘り返してみる。 「・・なっ・・まさか・・!」 「なに?なに・・兄さん。」 「まさか・・貴様・・!!」 右手で口元を覆う。 その顔色は、セイアから見ても明らかに青い。 「そうじゃ・・ワシの・・脳じゃよ。」 『!!?』 「貴様と相打ちになったゼロ・・あやつを修理していたときじゃ・・。 ようやく修理が終わり、あやつを起こした瞬間・・ワシはあやつに・・。 死ぬ寸前・・以前造っていた、医者型ロボットに、ワシの脳を摘出させたのじゃ。 もはや!ワシの目的は世界征服ではない!! ROCKMAN!貴様に復讐することじゃ!!」 明らかにおかしい・・。 セイアはそう悟った。 自分がロックだった時も、彼は悪の心を持っていた。 しかし、それ以上に非常に人間らしい一面もあった。 確かにワイリ-の立場から見れば、自分達は憎むべき敵だろう。 しかし、その異常な執着心はどこから来るのだろう? 「ワイリ-・・いいだろう!!来い!相手になってやる!! そして・・総ての闘いを終わりにしよう・・!!」 エックスは静かに、それでいて確かな口調で、己のバスタ-をワイリ-へ向けた。 ワイリ-は、不気味に笑うと共に、サッと片手を上げた。 それに反応し、ワイリ-の背後から、ドクロの装飾品をつけた戦闘機が、 壁を派手に破壊し、出現した。 ワイリ-は、元人間とは思えないほどの跳躍力でそれに乗り込んだ。 戦闘機は、そのドクロの両目を不気味に発光させた。 「ワイリ-・マシン・パ-フェクト・・覚悟しろエックス!セイア!」 ワイリ-が叫ぶと共に、ドクロの両目から、超出力のエネルギ-弾が、 一発・・二発・・三発。 「っ・・レイ・スプラッシャ-!!」 セイアは、直進してくるエネルギ-弾を、ジャンプで飛び越え、 当然のように追尾してきたそれを、黄金のマシンガンで相殺した。 そして、その間にファルコン・ア-マ-を転送したエックスが、 既にチャ-ジしていたバスタ-を、ワイリ-・マシン目掛けて、一気に放った。 「喰らえぇぇぇ!!」 第九話 針のように鋭く、素早いチャ-ジ・ショットは、ワイリ-・マシンの装甲を撃ち抜くことは無かった。 着弾する寸前、ワイリ-・マシンの展開したバリアが、いとも簡単にバスタ-を弾き返したからだ。 セイアが続けて、スト-ム・トルネ-ドを放ったが、やはり直撃する寸前、拡散し、消滅した。 「フハハハ!!貴様等のパワ-程度で、このバリアが破られるか!」 マシンの上部に搭載されているマイクから、勝ち誇ったようなワイリ-の声が響く。 「なら・・これはどうだ!」 エックスの白い鎧は蒼い光に包まれ、次の瞬間には、滑らかな外装の黒い鎧に姿を変えていた。 忍者の様な外見に、フェイス・マスク。 そして、今まで蛍光色だったゼット・セイバ-が、その出力を大幅に増し、 黄金の光剣へと姿を変えた。 エックスが地面を蹴った。 セイアには、その姿が掻き消えたように見えた。 「えっ?」 「なんじゃと!?」 「円月輪!!」 エックスが出現したのは、ワイリ-・マシンの上部。 エックスは、瞬間的に跳躍し、天井に張りついていたのだ。 降下様に、エックスが振り下ろした黄金の光剣は、 容赦無くワイリ-・マシンのバリアを斬り付けた。 破れてはいない。 しかし、ほんの刹那の間、ワイリ-・マシンのバリアはグニャリと歪んだ。 セイアはそこを見逃さなかった。 「いっけぇぇぇ!!」 バチバチとプラズマを帯びたエネルギ-弾が、 歪んだバリアを突き抜け、マシン本体に撃ち込まれた。 直撃。 しかし、装甲が厚いため、ダメ-ジの程は全くと言っていいほど無かった。 「ふん・・やりおるわ・・。これはどうじゃ!」 「なっ・・?冷たい・・。」 ワイリ-・マシンの放つ、確かな冷気を、セイアは察知していた。 ワイリ-・マシンの周りの空気が、瞬時に冷やされている。 学校の理科の時間で習った、水分が凍結する温度は、確か零度だったから・・。 いや・・今感じる、この冷気は、零度なんて生暖かい温度では無い。 「気をつけろ!来る・・!!」 エックスが叫んだ瞬間、待っていたかのように、ワイリ-・マシンを周りを、 大量の氷弾が取り囲んだ。 二人がそれを確認した瞬間には、それは既に放たれていた。 「うぉぉぉぉ!!」 エックスは円月輪。 セイアはプラズマチャ-ジ・ショットで、氷弾を消しにかかるが、 その余りの量に、相殺しきることが出来ず、数発の氷弾が、二人の身体に撃ち込まれた。 飛び散る鮮血すら、その氷弾によって凝結し、塊となって床に転げ落ちる。 そして、セイアとエックスのア-マ-の持つ熱によって、 一瞬にして氷弾は溶け、辺り一面を水蒸気が満たした。 これでは視界が悪い。 エックスもセイアも、大したダメ-ジは受けていないが、これでは敵の動きを捕えることが出来ない。 無論、ワイリ-・マシンに赤外線スコ-プなどが搭載されていることは、 セイアでさえ察しがついた。 「うぉぉぉぉぉぉ!!」 「ぬっ!?」 突然の咆哮。 それと共に、満たされた蒸気が、少しずつ歪み始めた。 そして、次の瞬間蒸気が晴れた。 現れたのは、目一杯のエネルギ-をバスタ-に込めた、セイアの姿だった。 放たれたプラズマチャ-ジ・ショットは、正確極まりない射撃ではあった。 しかし、やはり直撃の寸前、先程のバリアに弾かれた。 「ハァ・・ハァ・・。」 「ゼロとエックスの力を合わせ持つ・・ロックマン・セイヴァ-。 ふん・・ROCKMAN特有の諦めの悪さじゃの。じゃがな!!」 次に放たれたのは、先程の氷弾から一変し、灼熱の炎弾だった。 色から察するに、第三次シグマ大戦時に、シグマが放っていた炎など、足元にも及ばない火力だ。 「セイア、伏せろ!」 直ぐ様セイアを伏せさせ、炎弾に向けてバスターを向ける。 エックスを包む鎧は、既に先程のシャド-・ア-マ-では無かった。 白を基調としたカラ-リングの、エックスが第三次シグマ大戦時に使用した、 通称サ-ド・ア-マ-。 以前、エックスが破棄した残骸を、エイリアとゲイトが解析し、 フォ-ス・ア-マ-同様、完全ではないにしろ、復活させたものだ。 「フロスト・シ-ルド!!」 放ったのは、絶対零度の氷によって作られた、氷のミサイル。 第十話 凄まじい回転を施したフロスト・シ-ルドと、灼熱の業火は、音を立てて空中で激突した。 最初は互角に思えた出力であったが、除々にフロスト・シ-ルドに亀裂が走り、 次の瞬間、砕け散ると共に蒸発してしまった。 「ショットガン・アイス!!」 勢いを緩めずに直進してくる炎弾に向け、避けきれないと判断したセイアは、 直ぐ様、氷の散弾で迎撃したが、 「なっ・・うぁぁぁ!」 何の障害もないとでも言うように、アッサリとショットガン・アイスを打ち消した炎弾は、 跳躍で回避しようとするセイアを尻目に、彼の身体をその灼熱の炎で包んだ。 「フロスト・タワ-!」 一方エックスは、炎に身体を包まれながらも、すぐに巨大な氷柱を発生させ、それを打ち消した。 「ハァ・・ハァ・・マグマ・・ブレ-ド!!」 ゼット・セイバ-を抜き、灼熱の刃を収束させる。 そして、持ち前の瞬発力で、瞬時にワイリ-・マシンの眼前に出現したエックス。 「無駄じゃと言うに!!」 ガチャリとマシンの一部に搭載されている、何かの射出機の様な機械が、向かってくるエックスに向けられた。 そして、一瞬の溜めの後、常識では考えられないほどの出力で、一本の巨大なレ-ザ-を放った。 「!?」 斬り付ける瞬間に、飛び上がっていたのが運の尽きだった。 空中では方向回避すらする事が出来ない。 いや・・もしこれが地上だとしても、この一瞬では、例えエックスでも回避できなかっただろう。 声を上げる暇もなく、エックスの身体は、緑色の閃光に包まれていた。 しかし、次の瞬間、閃光の中のエックスの姿が、瞬時にして掻き消えた。 「えっ?・・。」 エックスと同様、フロスト・タワ-で炎を打ち消したセイアは、突如として姿を消した兄に、 小さく声を上げた。 「なんじゃ!?」 「灯台下暗し・・ってね・・喰らえ!!」 強威力のバスタ-発射音が、セイアの耳を打った。 掻き消えた兄の姿を、軽く頭を振りつつ探索すると、エックスはワイリ-・マシンの丁度死角となる、 真下にバスタ-を上に向ける形で立っていた。 エックスは、レ-ザ-が放たれる直前に、ソウル・ボディによって創った自らの分身と、 密かに入れ替わっていたのだ。 放たれたバスタ-は、バリアの張られていない、無防備のワイリ-・マシンに直撃し、 先程、エックスに向けて放ったレ-ザ-の射出機を、モノの見事に粉砕してみせた。 「ぬぅ・・小癪な!」 スピ-カ-から響く、ワイリ-の声は怒気を孕んでいる。 次にマシンが放ったのは、バリバリと電撃を帯びたエネルギ-弾。 弾速が凄まじい。 「!?しまっ・・。」 「フルム-ンⅩ!!」 今まさに直撃しようとする電撃弾は、咄嗟に放たれたセイアのフルム-ンⅩが、 横に押し込む形で弾道を曲げてられていた。 第十一話 「Ⅹ・滅閃光!!」 間髪入れずに、エネルギ-を灯した己の拳を、思い切り地面に叩き付けたセイア。 次の瞬間には、ゼロの真・滅閃光を上回るほどの巨大なエネルギ-波が、 勢いよく、大破し地面の露出している床から噴出した。 当然、土煙が辺りに充満していく。 手応えがない。 恐らく、回避したか、バリアで防ぎきったか・・。 バスタ-のチャ-ジが完了したエックスは、自分とセイア目掛け、次々と放たれるワイリ-・マシンの攻撃を、 ゼット・セイバ-で撃ち落としつつ、蒼い閃光を帯びた銃口を、 目の前の土煙に向け、放った。 直撃はしなかった。 しかし、そのエネルギ-は、辺りの土煙を晴らすには充分すぎるほどだった。 「電刃Ⅹ!」 続けてセイアが、待っていたと言わんばかりに、エネルギ-を収束させたサ-ベルを、 思いきり左から右へかけて一閃し、蒼いエネルギ-波を放った。 放たれたそれは、回避しようとするワイリ-・マシンの右端の部分を、 まるで豆腐でも斬り裂くかのように、アッサリと切断してしまった。 「生意気な・・。」 ワイリ-・マシンの下部に搭載されている、巨大な銃口から、 ドス黒いエネルギ-弾が、次々と放たれた。 連続的に発射されたそれを、セイアは真月輪で撃ち落とし、 エックスはチャ-ジ版フロスト・シ-ルドで防ぎきった。 しかし、最後に放たれた特大のエネルギ-弾は、真月輪を粉砕し、 フロスト・シ-ルドを撃ち抜き、二人の身体を包んだ。 だが、次の瞬間、先程と同じように、エネルギ-弾の中の二人の姿は瞬時にして掻き消えた。 「ぬっ・・またか・・。」 「ソウル・ボディ・・そして旋墜斬!!」 「同じく・・ライジング・ファイア!!」 上空と足元。 既に二人は同時に入れ替わっていた。 セイアの滑空しながらの剣撃と、エックスの打ち上げる形の炎。 ワイリ-は、慌ててバリアを発生させるも、旋墜斬がバリアを歪ませ、 その歪みを突き抜けたライジング・ファイアが、ドクロの頭部部分に位置する、 バリア発生装置と思われる機器を、粉々に破壊した。 「なにぃぃぃぃ!?」 驚愕を帯びたワイリ-の声が響いた。 昔、何度も何度も聞いた、その声。 しかし、彼は今や人間ではない。 かといって、レプリロイド・・ロボットにすらなれていない。 セイアもエックスも、それが酷く悲しかった。 それでも・・撃たなければ・・。 セイアとエックス、二人はバスタ-の銃口をワイリ-・マシンに向け、 集中できるだけ、総ての力を注ぎ込んだ。 『これで最後だぁぁぁぁ!!』 「馬鹿なぁぁぁぁ!!」 次の瞬間、二人分の蒼い閃光が、放たれた凍結弾、炎弾、エネルギ-弾をものともせず、 完全にワイリ-・マシンを包み込んだ。    第十二話 「ハァ・・ハァ・・くっ・・。」 蛍光色のセイバ-を握りしめた紅い影。 巨大な斧を振りかざした紫色の影。 先程から、その二つの凄まじい攻防が、数十分に渡り繰り広げられていた。 しかし、総ての武装、ラ-ニング技を使用して立ち向かったゼロだったが、 戦況は未だに武装がバトル・アクスしか無い筈のシグマが有利だった。 「くっ・・うぉぉぉぉ!!」 荒い息を無理矢理に整え、ゼロは吠えた。 左手をバスタ-へ変形させ、目の前のシグマへ向けて、連続的に放つ。 シグマは、放たれたそれを、全て右手一本で掻き消し、 左手のアクスを振り下ろした。 リ-チは完全に届いていない。 しかし、アクスの振りが巻き起こした、エネルギ-の波、衝撃波と呼べるモノが、 ゼロのア-マ-を、バタ-の様にアッサリと斬り裂いてみせた。 「っ・・ぐぁぁ!!」 短い悲鳴を上げ、ゼロはその場に膝を突いた。 ア-マ-の胸部が、右肩から左腰にかけて斬り裂かれている。 余りの切れ味に、損傷はア-マ-を突き抜け、生身の身体にも及んでいる。 右手で傷口を抑えつつ、フラリと立ち上がるが、 闘いのダメ-ジと出血によって、意識が朦朧としてしまっている。 セイバ-を地面に突き刺し、左手のバスタ-を構える。 そして、エネルギ-を放とうとした瞬間。 ドン・・と鈍い衝撃が、ゼロの左手を走った。 左手のバスタ-が暴発したのだ。 当たり前だ。 この激戦の中、出力以上のエネルギ-を、何千発と放っているのだ。 その余りのエネルギ-環境に、例えゼロの身体とてついていくはずが無い。 「ぐぁっ・・くっ・・。」 カラァン・・と右手のセイバ-が滑り落ちた。 そして、代わりに、空いた右手で左腕を握りしめる。 シグマは、ゼロのその様子に、心底邪悪な笑みを浮かべ、 わざとゆっくりとした動作で歩み寄ってきた。 一思いにアクスで斬り裂けばいいモノを・・。 シグマは、それをせず、自身の拳でゼロを殴り飛ばし、倒れ込んだゼロを左足で踏みつけた。 既にダメ-ジが限界に達していたゼロのア-マ-に、 音を立てて亀裂が走る。 抵抗しようにも、もうシグマの足を振り払うことも不可能だ。 第十三話 ---オレは・・オレは・・。 不意に意識が遠ざかっていく。 恐らく、次に気を失ったら、もう二度と目を覚まさないだろう・・とゼロは密かに確信していた。 ---オレは・・何をしているのだろう・・? 一体自分は何のために生まれた? それは・・ワイリ-が宿敵ROCKMANを破壊する。 それだけの為。 ---一体オレに何が出来たんだ・・?・・アイリス・・。 記憶の片隅で頬笑む少女。 答えが返ってこないと判っていても、ゼロは自問し続ける。 ---すまない・・アイリス・・オレは・・。 彼女との最後の時間が頭を過る。 彼女が絶命する寸前・・自分に呟いた言葉・・。 あれは・・一体何だったのだろう? ---オレは・・。 「オレ達レプリロイドは・・結局みんな・・イレギュラ-なのか!!?」 第四次シグマ大戦。後に「レプリフォ-ス大戦」と呼ばれる事件。 元凶のシグマを倒し、総監ジェネラルが命をかけて地球への攻撃を阻止したスペ-ス・コロニ-。 崩壊していくコロニ-の中から、なんとか脱出ポッドを見つけ出し、 地球へと帰る、冷たい宇宙空間で、ゼロは一人自問していた。 「なんで・・どうしてこうなっちまうんだよ!!?」 その問いに優しく答えてくれる者はもういない。 「結局・・誰も護れなかったんだ・・アイリス・・。」 数時間前、自らが葬った少女を想う。 ---彼女が何をした? ただ・・平和を望んでいただけ・・。 ---なぜオレは殺すことしか出来なかったんだ・・? あの娘がイレギュラ-だったから・・? ---そうか・・イレギュラ-なんだ・・。 そう言って納得させた。 誰でもない・・自分を・・。 ---でも・・あの娘は誰も殺しちゃいないし、傷つけてもいない・・。    オレに刃を向けただけ・・そうだろう? 彼女は最後・・なんて言ったのだろう・・? ---一緒に・・レプリロイドだけの世界で暮らしましょ・・? そんなものは幻・・幻なんだ・・! ---ふふ・・そうよね・・でも・・信じたかった・・。 アイリ・・ス・・。 ---ゼ・・ロ・・わた・・のぶ・・きて・・。 『ゼロ・・私と兄さんの分まで生きて・・』 それが、彼女の残した最後の言葉。 「あぁ・・約束するよアイリス。オレは・・。」 そっと呟き、ゼロは眼を閉じた。 第十四話 ---アイリス・・すまない・・その約束は・・守れそうにない・・。だが・・。 グッと全身に強張らせる。 ギシギシと関節が悲鳴を上げるが、そんな事はどうでもよかった。 今は・・シグマを倒す・・それだけだった。 自分を踏みつけているシグマを、思いきり振り払い、 拾い上げたセイバ-で、連続的に斬り裂く。 シグマは、ゼロの突然の行動とダメ-ジによって、驚愕と悲鳴の声を上げた。 疾風を撃ち込み、シグマを後方へ押しやる。 ---コイツだけは・・絶対に連れていく・・。大元はオレの責任だ・・。 不思議と身体中の激痛は無くっていた。 その代わりに、誰か暖かい腕に包まれているような、そんな感覚さえした。 ---そしてオレ死んだら・・お前の所へ行って・・謝りに行くよ。 いつの間にか、ゼロの身体を、炎のような真紅のオ-ラが包んでいた。 それは覚醒を意味する。 しかし、それは前回の禍々しい赤紫色のオ-ラではない。 過去の破壊神としてのゼロと、現代の紅き闘神としてのゼロは、今統合された。 ---すまない・・そして・・。 無言でセイバ-を頭上に掲げる。 蛍光色だったそれは、オ-ラに呼応するかのように、その色彩を真紅へと変えた。 そして、それに比例するかのように出力を増し、数秒後には天井に届いてしまうほどに巨大化していた。 途中、シグマのアクスが巻き起こした衝撃波が、ゼロを襲ったが、 その衝撃はゼロ本体に届く寸前に、真紅のオ-ラによって掻き消された。 それを見たシグマは、大きく目を見開いた。 そして、続けざまに走り込み、アクスを振りかぶった。 直接的にアクスを撃ち込むつもりなのだ。 しかし、その刃も同様に、オ-ラに触れた途端、粉々に砕け散った。 「幻夢・・零・・!!」 ---ありがとう・・。 振りかぶったセイバ-を、大きく上から下へと振り下ろす。 そして、悔し紛れにシグマが張ったバリアを、無駄な抵抗とばかりに破壊し、 なんとか防ごうとするシグマ本体を、いとも簡単に真っ二つにした。 「消えろ・・シグマ!!」 セイバ-を横に放り捨て、右手をバスタ-に変形させる。 そして、二つに別れたシグマの身体に、容赦無くバスタ-を浴びせ掛けた。 轟音と共に、シグマの身体が完全に消滅してしまっても、ゼロはバスタ-を撃つのを止めなかった。 ---判った・・お前が望むなら・・アイリス。    オレはこの世と言う地獄の中を、這い蹲ってでも生きてやる。    だが・・オレ自身が・・お前の望んだ平和の障害になってしまような事があれば・・。    オレは・・。 静かにオ-ラが消え去った。 右手を素手に戻し、放り捨てたセイバ-を拾い上げる。 激戦の中で、メットの消失してしまった、金の髪を、軽く両手で上げ直した。 ゼロはこの時、ある決意を胸に抱いていた。 次回予告 ついにワイリ-を倒した!・・かのように思えたけど・・。 奴の怨念はこんな程度じゃ終わらなかった。 僕達は決着をつける・・百年前からの因縁に。 そして必ず帰るよ・・フレッドの・・クリスの・・みんなの所へ! 次回「ロックマンXセイヴァ-改定版最終章~別離・・そして・・~」 「お前が・・お前が全部悪いんだぁぁ!!」

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